第91話 同時の気配
夜。
観測室の照明が少し落とされる。
日中よりも静かだが、集中は高い。
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リュカは、端末の前に立っていた。
さっきの判断の余韻が、まだ少し残っている。
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その時。
観測画面に、同時に三つの光点が浮かぶ。
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「……同時?」
新人の一人が呟く。
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北方。
西部。
南方。
三地域。
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規模はどれも小。
だが、タイミングが揃っている。
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エマが画面を見つめる。
「珍しいね」
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ミラも、少しだけ視線を鋭くする。
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「同時性あり」
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リュカは、ゆっくり息を吸う。
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過去の記録が頭をよぎる。
三地域同時危機。
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だが、今回は違う。
規模は小さい。
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「……どうする」
新人が小さく言う。
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エマは、リュカを見る。
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「やる?」
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短い問い。
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リュカは頷く。
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「やります」
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三つの画面を同時に開く。
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北方
連鎖:十八
余力:中
西部
連鎖:十五
余力:中
南方
連鎖:二十
余力:中
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単体なら、どれも小さい。
だが三つ同時。
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「再評価開始」
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同時に、三地域のデータが流れる。
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新人たちは、少し緊張する。
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「これって優先選択ですか?」
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誰かが聞く。
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エマは答える。
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「その一歩手前」
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まだ余力はある。
だが、余裕ではない。
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リュカは、三つの波形を見比べる。
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北方、安定。
西部、やや揺れる。
南方、少し強い。
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時間が流れる。
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同時に判断するか。
順番をつけるか。
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リュカは、小さく呟く。
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「全部、小さい」
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だが、三つある。
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それが、重い。
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ミラが静かに言う。
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「理由を」
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リュカは頷く。
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「三地域とも臨界未満」
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「だが南方が最も不安定」
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「北と西は収束傾向」
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言葉にする。
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そして決める。
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「南方、限定介入」
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「北・西、再評価継続」
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判断。
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部隊が南方へ動く。
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時間が流れる。
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南方、収束。
北、西もそのまま収束。
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「被害ゼロ」
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観測室に、静かな安堵。
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新人の一人が言う。
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「全部やらなくていいんだ」
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エマが答える。
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「全部やらないといけない時もある」
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リュカは画面を見つめる。
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三つの光点。
同時。
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だが、今回は乗り切った。
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小さい危機。
小さい判断。
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それでも、確かに重い。
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同時の気配は、消えていない。
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それは、この世界が変わっていない証拠だった。
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