表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦後処理官(英雄の後始末をしていただけの男)をリストラした王国、なぜか勝利の代償を払う  作者: 鷹宮ロイド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/102

第88話 静かな後退

 フォルンの丘。


 風が、ゆっくりと流れている。


 かつてはここから、世界を見ていた。


 今は、ただ眺めている。


---


 アレインは、手帳を閉じた。


 最近、書き込む量が減っている。


 観測記録。

 判断補助。

 制度設計。


 どれも、以前ほど必要とされていない。


---


「……いいことだ」


 小さく呟く。


---


 遠くの都市。


 灯りが安定している。


 危機は起きているはずだ。


 だが、大きな揺れはない。


---


 フォルンの建物の中では、エマが資料を整理していた。


 新人研修の記録。


 判断ログ。


 監査報告。


---


「最近、先生来ないな」


 ぽつりと呟く。


---


 以前なら、何かあれば呼ばれていた。


 制度の微調整。

 判断の最終確認。


---


 今は、呼ばれない。


---


 不安はない。


 むしろ、少しだけ寂しい。


---


 中央危機統括局。


 セルディオは報告書を読んでいる。


「外部助言、不要案件増加」


 カルドが言う。


---


「アレインを呼ばなくても回る」


---


 セルディオは、静かに頷く。


---


「それでいい」


---


 制度は、自立し始めている。


---


 監査室。


 ミラが言う。


「思想が定着してる」


---


「人に依存してない」


---


 カルドは答える。


「それが理想だ」


---


 フォルンの丘。


 エマがやってくる。


---


「先生」


---


 アレインは振り向く。


---


「最近、呼ばれてないですね」


---


「そうですね」


---


 エマは少し笑う。


---


「ちょっと寂しいです」


---


 アレインも、わずかに笑う。


---


「私もです」


---


 短い沈黙。


---


「でも」


---


 エマが続ける。


---


「ちゃんと回ってます」


---


 アレインは、遠くを見る。


---


「はい」


---


「それでいい」


---


 制度は、完成していない。


 だが、自立し始めた。


---


 その夜。


 三地域で小さな揺れ。


 中央で判断。


 現場で実行。


---


 アレインは、その報告を見ない。


---


 必要ないからだ。


---


 思想は、誰か一人のものではなくなった。


---


 それは、静かな後退だった。


 だが、同時に前進でもあった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ