第84話 正解の重さ
観測室の空気は、すでに落ち着いていた。
さきほどの中規模変動は収束し、記録も完了している。
新人たちは、少しだけ誇らしげだった。
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「被害ゼロか」
「うまくいきましたね」
軽い会話。
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リュカも、端末を見ながら言う。
「正解でした」
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その言葉に、エマはわずかに反応する。
「……正解?」
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リュカは振り向く。
「はい。限定介入で収束。被害ゼロです」
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間違ってはいない。
むしろ理想的だ。
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エマは少しだけ考える。
そして言う。
「正解、だね」
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だが続ける。
「ただし」
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観測ログを呼び出す。
先ほどの波形。
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「もし三分待たなかったら?」
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リュカは答える。
「連鎖三十の時点で介入していたと思います」
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「結果は?」
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「……同じです」
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エマは頷く。
「そう」
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「じゃあ三分は無駄だった?」
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新人の一人が言う。
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リュカは少しだけ考える。
「無駄ではないです」
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「どうして?」
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「判断に納得できる」
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エマは、わずかに笑う。
「それが大事」
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端末を閉じる。
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「正解は一つじゃない」
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新人たちは静かになる。
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「早く介入しても正解」
「少し待って介入しても正解」
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「でも」
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エマはリュカを見る。
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「どっちを選んだかは残る」
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観測ログ。
音声記録。
再評価時間。
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すべてが記録される。
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リュカは、少しだけ息を吸う。
さっきの三分。
確かに短い。
だが、そこには迷いがあった。
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そして、その迷いが今、意味を持っている。
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「正解って、軽くないですね」
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リュカの言葉。
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エマは頷く。
「軽くない」
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「だから制度がある」
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観測画面に、また小さな揺れが表示される。
終わりはない。
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新人たちは、少しだけ静かになった。
さっきまでの軽さはない。
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リュカは、画面を見つめる。
さっきと同じ光点。
だが、見え方が違う。
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正解は出せる。
だが、その重さは、
まだこれから知ることになる。
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