第83話 初判断
観測室の空気が、わずかに変わる。
表示された波形は、先ほどより明らかに強い。
規模:中。
連鎖確率:二十八。
余力:中。
---
「さっきより上だね」
エマが静かに言う。
---
新人たちの視線がリュカに集まる。
さっきと同じように見える。
だが違う。
---
リュカは端末に手を置く。
「再評価開始」
声は落ち着いている。
---
数値が更新される。
連鎖確率:三十。
わずかに上昇。
---
五分待つか。
すぐ判断するか。
---
リュカは一瞬だけ迷う。
その迷いは、短い。
だが確かにあった。
---
「再評価延長。三分」
---
エマは何も言わない。
---
時間が流れる。
観測波形が揺れる。
少しだけ、不安定になる。
---
「連鎖三十五」
観測員が報告する。
---
さっきより明確だ。
---
リュカは息を吸う。
「限定介入」
---
即応部隊が動く。
結界が強化される。
---
数分後。
波形が落ち着く。
収束。
---
「被害ゼロ」
観測員が言う。
---
観測室に、小さな安堵が広がる。
---
新人の一人が言う。
「やっぱり簡単ですね」
---
その言葉に、エマは少しだけ目を細める。
---
「簡単に見えるだけ」
小さく呟く。
---
リュカは画面を見たまま言う。
「さっきより、少しだけ違いました」
---
「何が?」
新人が聞く。
---
「待つかどうか」
---
エマが頷く。
「それが判断」
---
リュカは、さっきの自分の迷いを思い出す。
短かった。
だが、確かにあった。
---
「制度があるから、迷わないわけじゃない」
エマが言う。
---
「制度があるから、迷える」
---
新人たちは、その意味をまだ完全には理解していない。
---
観測画面に、別の小さな揺れが表示される。
日常の一部。
---
リュカは、その光点を見つめる。
さっきより、ほんの少しだけ慎重に。
---
判断は終わった。
だが、理解は始まったばかりだった。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




