第79話 制度の重さの先
制度更新から三か月。
中央危機統括局の廊下は、以前より静かだった。
慌ただしさが減ったわけではない。
だが、判断が軽く飛び交う空気が消えた。
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カルド・イーヴは、新しい統計を眺めていた。
余力使用率――安定。
再評価時間――平均二十六分。
小規模被害――さらに減少。
「削れ方が止まった」
副監査官が言う。
カルドは小さく頷く。
「完全ではない」
だが、崩れてもいない。
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中央会議室。
セルディオは最新の分析を提示する。
「制度更新以降、判断の偏りが減少」
北方。
西部。
南方。
介入率の差が縮まっている。
「地域差が消えつつある」
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ユリスは腕を組む。
「それでも効率は落ちた」
「落ちた」
セルディオは否定しない。
「だが崩壊確率は下がった」
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フォルン。
エマは、丘の上で新しい統計を見ていた。
「前より、静かですね」
「はい」
アレインは答える。
「制度が落ち着きました」
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「これで完成ですか?」
エマが聞く。
アレインは少し考える。
「完成しません」
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北方自治領。
ノア・リュカは、観測塔の夜勤を終えたばかりだった。
新しい記録が机にある。
> 判断責任者:ノア・リュカ
> 再評価時間:二十四分
> 判断:限定介入
> 被害:軽微
以前のような震えはない。
だが、慣れてもいない。
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彼は瓦礫のあった倉庫街を思い出す。
二人の名前。
消えない。
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中央監査室。
カルドは報告書をまとめる。
> 制度更新後、運用安定傾向
> 思想の空洞化兆候、減少
だが最後に書き加える。
> 完全解決ではない
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フォルン。
エマは、アレインに聞く。
「思想って、消えますか」
アレインは首を振る。
「消えません」
「じゃあどうなるんですか」
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「忘れられます」
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中央。
セルディオは、会議後に窓の外を見ていた。
都市の灯り。
危機はまだ来ていない。
だが、必ず来る。
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制度は守れるか。
思想は残るか。
答えは、まだない。
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その夜。
三地域で同時小規模揺れ。
再評価。
北、限定介入。
西、見送り。
南、限定介入。
被害、最小。
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世界はまだ危うい。
だが、少しだけ壊れにくくなった。
第6部は、
制度の修復から、
思想が社会に定着する段階へと進む。
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