第77話 制度の更新
北方第六地区事故から、一週間。
中央危機統括局では、新しい運用案がまとめられていた。
名称は変わらない。
優先選択制度。
だが、中身が少し変わる。
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セルディオは、最終案を読み上げた。
「三点追加する」
室内が静まる。
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「第一」
指を一本立てる。
「見送り判断の再確認制度」
見送り後、
一定時間内に再評価を義務付ける。
「見送りは終わりではない」
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「第二」
「余力使用率の公開」
自治領ごとに、
余力をどれだけ使ったか。
全て記録される。
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「第三」
セルディオは少し間を置く。
「第三者監査」
カルドの部門が、正式に制度の中に入る。
監査は外ではなく、
制度の一部になる。
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ユリスは腕を組んだまま言う。
「制度が重すぎる」
「重くする」
セルディオは即答する。
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「軽い制度は逃げ道になる」
会議室が静まる。
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フォルン。
エマは、新制度案を読みながら言った。
「かなり変わりますね」
「変わりません」
アレインは穏やかに答える。
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「制度の名前も、目的も同じです」
「じゃあ何が」
「逃げ道が減った」
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北方自治領。
ノアは、新しい運用書を読んでいた。
見送り再確認。
余力公開。
第三者監査。
逃げ道は、確かに減った。
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だが、奇妙な安心感もある。
自分だけの判断ではない。
制度が支える。
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南方山岳自治領。
ライナは、制度改訂を見て小さく頷く。
「少しだけ、大人になった」
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中央監査室。
カルドは、静かに書類を閉じる。
「制度は完成しましたか」
副監査官が聞く。
カルドは首を振る。
「制度は完成しません」
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「なぜです」
「人が使うからです」
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中央会議。
セルディオは最後に言う。
「思想は制度では守れない」
誰も反論しない。
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「だが制度は、思想を支える」
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フォルンの丘。
エマが言う。
「少しだけ良くなりましたね」
「はい」
アレインは頷く。
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「完璧じゃない」
「完璧にはなりません」
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その夜。
三地域で小規模揺れ。
再評価。
限定介入。
見送り。
それぞれ迷いながら選ばれる。
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世界は、まだ危うい。
だが、制度は少しだけ重くなった。
第6部は、
思想を守る仕組みが、
ようやく形を持つ地点へと進んだ。
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