第76話 責任の所在
北方第六地区事故から三日。
中央危機統括局では、臨時会議が開かれていた。
議題は一つ。
ノア・リュカの判断について。
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セルディオが静かに言う。
「制度違反はない」
事実だった。
再評価も行った。
音声記録も残した。
形式上は、完全に制度通り。
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ユリスが頷く。
「なら問題はない」
カルドが顔を上げる。
「問題はあります」
会議室が静まる。
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「制度違反ではない」
カルドは続ける。
「だが判断は誤りだった」
沈黙。
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セルディオが問う。
「では誰の責任だ」
カルドは即答する。
「ノア・リュカ」
逃げ道のない名前。
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北方自治領。
ノアは、自分の名前が議事録に載ることを知っていた。
当然だ。
自分が署名した。
自分が判断した。
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フォルン。
エマは言う。
「処分されるんですか」
アレインは首を振る。
「いいえ」
「どうして」
「処分では思想は守れない」
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中央会議室。
セルディオは結論を出す。
「処分なし」
ざわめき。
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ユリスが低く言う。
「甘い」
「違う」
セルディオは静かに否定する。
「責任は処罰ではない」
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カルドが続ける。
「責任は記録です」
画面に映る。
> 判断責任者:ノア・リュカ
> 結果:死者二名
消えない。
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北方。
ノアは、その記録を見つめていた。
逃げられない。
制度のせいにも、
恐怖のせいにもできない。
自分の名前だ。
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南方山岳自治領。
ライナは、その報告を読んで呟く。
「これが責任」
軽くない。
だが必要だ。
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フォルンの丘。
エマが言う。
「これ、怖い制度ですね」
「はい」
アレインは頷く。
「だから機能します」
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「もし先生だったら?」
エマが聞く。
アレインは少し考える。
「同じ間違いをするかもしれません」
静かな答え。
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「じゃあ制度の意味は?」
エマが問う。
「間違いを消すことではありません」
「じゃあ?」
「間違いを隠させないこと」
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中央。
セルディオは議事録に最後の一文を書き加える。
> 制度は免罪符ではない
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その夜。
北方で小さな揺れ。
ノアは、録音を開始する。
声は震えている。
だが、逃げない。
「再評価開始」
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思想は制度の中にある。
だが制度だけでは守れない。
責任を引き受ける人間がいて、
初めて意味を持つ。
第6部は、
思想が“制度”から
“人間”へ戻る地点に到達した。
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