表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦後処理官(英雄の後始末をしていただけの男)をリストラした王国、なぜか勝利の代償を払う  作者: 鷹宮ロイド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/102

第65話 逃げの構造

 中央危機統括局・合同会議室。


 監査開始から二週間。


 カルド・イーヴは、ついに具体的な事例を提示した。


「北方第三地区。余力“十分”と記載。実際の即応部隊待機数、定員の八割」


 画面に数字が並ぶ。


「つまり、動けた」


 室内が静まる。


---


 ノア・リュカが、画面越しに応答する。


「待機数があっても、出動すれば将来危機に対応できません」


「将来危機の発生確率は?」


「予測上、三十パーセント」


「実発生率は?」


「……ゼロ」


 小さな沈黙。


---


「余力温存は合理的です」


 ノアは言い切る。


「制度に従いました」


「制度は“温存”を最優先にせよとは書いていません」


 カルドの声は平坦だ。


「“判断を機能させるための余力確保”とある」


「同じ意味です」


「違います」


 空気が凍る。


---


 フォルン。


 エマは、議事録を読んで顔を上げた。


「同じ意味じゃない」


「はい」


 アレインは頷く。


「温存は目的ではありません」


「余力は手段」


「そうです」


---


 中央会議室。


 ユリス・バンデルが口を開く。


「余力があれば安心だ。市民も安定する」


「市民は、今の損壊で不安定になっています」


 カルドは即座に返す。


「小規模被害は、統計的に許容範囲だ」


「積み重なっています」


「大崩壊は起きていない」


 堂々巡り。


---


 カルドは、一枚の資料を提示する。


「小規模被害件数、半年で一・四倍」


「誤差だ」


「死傷者数、微増」


「許容範囲」


「“許容”とは誰が決めますか」


 静かな問い。


---


 ノアは、苛立ちを隠せない。


「監査官は、現場を知らない」


「知っています」


 カルドの声は揺れない。


「だから、記録を見ています」


---


 フォルン。


 エマは呟く。


「制度を盾にしてる」


「はい」


 アレインは淡々と言う。


「責任を制度に預けている」


「それって……」


「逃げです」


---


 中央。


 セルディオは、二人の応酬を黙って聞いていた。


 ノアは制度に従っている。

 カルドは制度の精神を守ろうとしている。


 どちらも、規則違反ではない。


 だが、方向が違う。


---


「余力の定義を再確認する」


 セルディオが静かに言う。


「余力は“使わないため”にあるのではない」


 室内が静まる。


「必要なときに、使えるようにするためだ」


 ユリスは表情を変えない。


「その“必要”の基準が曖昧だ」


「だから監査がある」


 カルドが続ける。


---


 会議後。


 ノアは通信を切ると、机を叩いた。


「全部制度通りだ」


 自分に言い聞かせるように。


「何も間違っていない」


 だが、心の奥で小さな疑問が芽生えている。


 本当に?


---


 その夜、南方で小規模揺れ。


 ライナは即座に限定介入を選択する。


 余力は中。


 それでも使う。


「削れる前に止める」


 被害ゼロ。


---


 カルドは、その報告を見て小さく頷く。


「これだ」


 温存ではない。

 浪費でもない。


 必要なときに使う。


---


 逃げの構造は、目に見えない。


 制度の文言は同じ。


 だが、責任の向きが変わっている。


 壊れてはいない。


 だが、軽くなっている。


 第6部は、

 “責任を誰が持つか”の核心へと進む。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ