第54話 選択の責任
南方山岳の再建が本格化してから、一か月。
中央危機統括局には、正式な検証委員会が設置された。
目的はただ一つ。
「優先選択は妥当だったか」
会議室には、外部監査官、軍代表、議会代表が並ぶ。
セルディオ・クラウスは、中央に座っていた。
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「三地域同時危機において、南方を見送った判断について説明を」
監査官が言う。
セルディオは資料を開く。
「総被害最小化原則に基づく演算結果です」
北方三万、西部二万、南方一万五千。
連鎖確率。
地理的隔離度。
復旧可能性。
「数値は妥当と認めます」
監査官は頷く。
「だが、倫理的評価は別です」
室内が静まる。
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「倫理的評価とは?」
セルディオは問い返す。
「少数を犠牲に多数を救う選択が、常に許容されるのか」
重い言葉だ。
セルディオは、わずかに視線を落とす。
「常に許容されるとは思いません」
正直な答え。
「では、なぜ実行した」
「実行しなければ、三地域すべてが壊れる可能性があった」
「可能性です」
「高確率です」
数字は示している。
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「あなたは、南方の住民にどう説明する」
監査官の問いは鋭い。
セルディオは、短く答える。
「選ばなかったと」
ざわめき。
「冷酷だと言われるでしょう」
「言われています」
否定しない。
「それでも、選択は必要でした」
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フォルン。
エマは、検証会議の記録を読みながら呟く。
「全部、引き受けてる」
「責任者ですから」
アレインは言う。
「責任とは、判断を自分のものとして残すことです」
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検証会議は続く。
「あなたの判断で十八名が死亡した」
「はい」
「その重さをどう受け止める」
数秒の沈黙。
「毎日、受け止めています」
セルディオの声は揺れない。
「だが、もし選択を放棄していたら、四百を超えていた」
「仮定です」
「しかし、合理的な仮定です」
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「あなたは後悔していないのか」
最後の問い。
セルディオは、少しだけ目を閉じる。
「後悔はしています」
室内が静まる。
「だが、判断は変えません」
強い言葉だった。
「後悔と判断は、別です」
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会議は、最終結論を出す。
> 判断妥当
> 事後支援強化を条件に承認
承認。
それは免罪ではない。
ただ、制度としての肯定。
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南方。
ライナのもとに、その報告が届く。
「妥当、か」
彼女は苦笑する。
「十八は、妥当なのね」
だが怒りはない。
ただ、重さがある。
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フォルン。
エマが静かに言う。
「責任って、終わらないんですね」
「終わりません」
アレインは頷く。
「記録が残る限り」
「それは救いですか」
「救いではありません」
否定。
「だが、逃げ道を消す」
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その夜、セルディオは一人、記録室にいた。
南方の十八名の名前を、再確認する。
削除も修正もできる。
だが、しない。
残す。
自分の判断の重さとして。
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世界は、壊れ切らなかった。
だが、選択の責任は消えない。
十八の名前は、
制度の承認よりも重い。
それでも、選択は必要だった。
それが、第5部の現実だった。
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