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戦後処理官(英雄の後始末をしていただけの男)をリストラした王国、なぜか勝利の代償を払う  作者: 鷹宮ロイド


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第30話 それでも続ける理由

 壊れた町の再建は、静かに始まっていた。


 瓦礫は片づけられ、

 仮設の住居が並び、

 人々は少しずつ日常を取り戻している。


 以前と同じ町には、戻らない。

 それでも、町は消えていなかった。


 エマは、その町を訪れていた。


 支援ではない。

 調査でもない。


 ただ、話を聞くために。


「……怖かったですよ」


 住民の一人が言う。


「でも、

 誰も死ななかった」


 それは、

 感謝とも、諦めともつかない声だった。


「前なら、

 どうなってたと思いますか」


 エマが尋ねる。


「さあな」


 男は肩をすくめる。


「でも、

 逃げる時間はなかったかもしれん」


 その言葉を、

 エマは胸に刻む。


 フォルン辺境領。


 名もなき建物で、

 報告が共有されていた。


「この町は、

 余力がなさすぎました」


 エマは、はっきり言った。


「判断以前の問題です」


 誰も否定しない。


「じゃあ、

 意味がなかったんですか」


 研修生の一人が、

 ぽつりと聞く。


 重い問いだった。


 アレインは、ゆっくり首を振る。


「意味は、あります」


 即答ではない。

 考えた上での言葉だ。


「続ける理由は、

 世界を完璧にすることではありません」


 視線を、

 全員に向ける。


「壊れ方を、選べるようにすることです」


 その言葉に、

 誰も口を挟まなかった。


 完全に守ることはできない。

 すべてを救うこともできない。


 それでも。


「考えずに壊れる世界と、

 考えた末に壊れる世界は、

 違います」


 アレインは、静かに言う。


「少なくとも、

 次に残せるものがある」


 エマは、自分のノートを開く。


 そこには、

 失敗も、迷いも、

 答えの出なかった問いも並んでいる。


 だが、

 白紙のページはもうない。


 数日後。


 各地から、

 新しい記録が届き始めた。


判断理由:

余力不足を考慮し、

先行的に避難を実施


対応:

実施せず

理由:

地域規模では、

回復力が不足しているため


 “余力”という言葉が、

 少しずつ、

 記録に現れ始めていた。


 フォルン辺境領では、

 今日も何も起きていない。


 だがそれは、

 偶然ではない。


 誰かが、

 続ける理由を考え続けているからだ。


 夕暮れ。


 エマは、丘の上でアレインに言った。


「……終わりませんね」


「はい」


 アレインは、空を見上げる。


「終わらせるための仕事では

 ありませんから」


 風が吹く。


 世界は、

 今日も完全ではない。


 それでも。


 続けられる形には、

 なりつつあった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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