表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦後処理官(英雄の後始末をしていただけの男)をリストラした王国、なぜか勝利の代償を払う  作者: 鷹宮ロイド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/102

第29話 それでも壊れた場所

 壊れたのは、小さな町だった。


 国境沿いの、交易路からも外れた場所。

 結界は簡素で、

 人も多くない。


 だから、

 誰も注目していなかった。


 その町では、

 「更新されたやり方」を取り入れていた。


 判断理由を書く。

 やらない判断も残す。

 無理な介入は避ける。


 記録は、丁寧だった。


 異常兆候は、三日前から出ていた。


地脈変動:小

結界出力:基準内

対応:見送り

理由:

自然回復の兆しあり


 判断は、間違っていない。


 少なくとも、

 その時点では。


 二日目。


 兆候は消えなかった。


 だが、悪化もしない。


対応:見送り

理由:

前日から変化なし

介入による周辺影響を考慮


 やはり、

 間違いとは言えない。


 三日目の夜。


 地脈が、静かにずれた。


 音も、光もない。

 ただ、結界の“支え”が外れた。


 町の南区画で、

 建物が一棟、傾いた。


 死者は出なかった。


 だが、住めなくなった家が、確かにあった。


 翌朝。


 記録は、こう締められた。


結果:

局所的破損

人的被害なし


 それ以上は、書けなかった。


 フォルン辺境領。


 報告を読んだエマは、

 しばらく言葉を失っていた。


「……やり方は、

 間違ってなかったんですよね」


「はい」


 アレインは、即答した。


「間違ってはいません」


 それが、

 一番残酷な答えだった。


「じゃあ、

 どうすれば……」


「分かりません」


 アレインは、正直に言う。


「これは、

 やり方の失敗ではない」


 沈黙。


「条件の問題です」


 町は、小さすぎた。

 余力が、なさすぎた。


 どんなに慎重でも、

 受け止めきれない場所はある。


 エマは、唇を噛む。


「……それでも、

 壊れた」


「はい」


「意味、あったんですか」


 その問いは、

 今まで誰も口にしなかった。


 アレインは、少し考えてから答えた。


「死者が、出なかった」


 それだけだ。


 救いとしては、

 あまりにも小さい。


 だが、現実だ。


 その町では、

 再建が始まった。


 時間がかかる。

 以前の形には戻らない。


 それでも、

 町は続く。


 エマは、その夜、

 長い記録を書いた。


判断理由:

当時は最善だった

結果:

壊れた

次に残すこと:

小さな場所には、

余力を先に作る必要がある


 初めて、

 「次」を書いた記録だった。


 フォルン辺境領では、

 今日も何も起きていない。


 だが、

 「壊れた理由」は、

 確実に共有された。


 それは、

 成功よりも重い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ