冒険者の街 ブランメル
4 冒険者の街 ブランメル
馬車に乗って十時間、漸くブランメルに到着した。
馬車に乗っている間、二人は沢山のことを話した。自分の身の上から、笑い話まで。大いに盛り上がった。
馬車から出てきた二人は、誰の目から見ても親友のようで、会ったばかりの二人の姿は見る影も無かった。
「うぅん。やっと着いたぁ! 初めてのブランメル。何食べようかなぁ。何しようかなぁ。」
レディファーストというプシュケの粋な計らい?によって先に降りたネネルは、体をめいいっぱい伸ばすと、興奮した様子で言った。
「観光もいいけどさ、取り敢えず冒険者ギルドが先じゃない?」
馬車から降りて、こちらも伸びをした後、今にも走り出しそうなネネルを止めるべく冷静に指摘する。かく言うプシュケも、本当は興奮しているのであった。
「むぅ。じゃあその後、一緒に食べ歩きしよ?」
「お、良いな。」
二人はギルドに向けて歩き出した。
街は、当たり前ではあるが、村とは比べ物にならない発展ぶりで、都会という感じがした。街の人々は、全体的に洗練されている感じがして、村とはまた違う活気があった。
街の中をソワソワしながら歩く二人は、周りから見ると田舎者丸出しだったろう。しかしこれでも、二人は隠し切っているつもりなのだ。
しばらく歩くと、乾杯で揺れる酒とその真ん中に剣が描かれた看板があった。“冒険者ギルド”のマークである。二人は遂に着いたのだ。
「見て!プシュケ、ここが冒険者ギルドだよ。入ってサッサと受付済ましちゃおう!」
「お、おう。俺たち遂に着いたんだな、冒険者ギルドに。」
プシュケは感情に浸って、なんなら少し感動もしていた。
「うん。僕も君も、遂に冒険者になるんだね。」
二人は思い切り、一緒にギルドの大きな扉を開けた。少し重たかった。
ギィ〜という錆びの音がして、開き切ったと同時に、ギルド内の目線という目線が一斉にコチラに向いた。
すると、やや奥の方から巨漢が、音を立ててコチラに近づくとドスの利いた声で二人を威圧する。
「おい小僧! ここはお前らみてぇな半端モンが、女侍らせて来るようなトコじゃねぇんだよ!とっとと帰れ。」
これには流石のプシュケもムッとして、声を荒げようとした。その時、彼の前に細い腕がスッと現れた。“いいから見てて。”そう言っているようだった。
「ねぇオジサン、この人は僕を侍らせてなんかないよ? 友達なんだ。」
「はっ!どちらにせよ女見せびらかしてんのに変わりねぇよ。それに、お前らが半端モンなのは動かぬ事実って奴だ!」
そういうと、巨漢は拳を大きく振り上げた。ネネルが最初の一発を軽々避けると、今度はより強く握り締めて放つ。瞬間、プシュケの腕が、手が、反射的に動いた。プシュケの掌が拳を受ける。と、同時に、顔面蒼白の受付嬢がコチラに向かって走って来る。
「す、すごい…。トンガさんの拳を素手で止めるなんて。っじゃなくて! すみません。本当に。トンガさんにはギルマスがキツく言っておきますので。」
続けて、お怪我はございませんか?と聞かれたので、ありませんと答えた。
「あの、僕たちの冒険者登録、お願いできますか?」
「勿論です。では、冒険者登録に移らせてもらいます。この紙に、名前や年齢、性別、ジョブなどの記入をお願いします。その後、コチラに指をかざして頂いて、カードに読み込ませたら完了です。」
言われてた通りに手順を踏んで登録を済ませた。プシュケは、自分のジョブを“剣士”と書いたが、ネネルの事も気になるので、聞いてみることにした。
「なぁ、ネネルのジョブはなんだ?」
「僕は“暗殺者”だよ。」
「まぁ!アサシンだなんて珍しいですね。速技系ジョブの中でも一際修得が難しいのに。」
会話を聞いていた受付嬢が言った。その言葉を聞いてプシュケは(ふーん。珍しいんだ、アサシンって。初めて知ったけど、ここは知ったかで行こう。)なんて考えていた。
「アサシンって取得大変だったんじゃないか?」
「うん。まぁ、僕の時は試験官がツェラー先生だったからまだマシかな。」
ジョブを取得する為には、各地域の試験場にランダムで配属された試験官の試練に、合格する必要があるのだ。その試験官によっては、かなりの難題を出したり、審査が厳しかったりする事がある。その代表格として特に有名なのがバックラー先生だ。彼はその審査の厳しさと、鬼畜ぶりで恐れられている。つまり、ネネルは彼に当たらなかったからマシだと言いたいのだ。
「そうか。それは良かったな。あ、これお願いします。」
「あぁ。運が良かったと思うよ。僕もコレ…。ありがとうございます。」
二人から書類を受け取った受付嬢は、笑顔で感謝を伝え、すぐさま指をかざすよう促した。
これにて、二人の冒険者登録が完了したのであった。




