第15話シュワシュワシュワリン
「おぅコルァ!メッツコブラツイストォオオ!」
ウツボの如く太く細長い生き物を締め上げる。コロネ曰くシュワリン等という愛らしい名前である魔物は声も出せぬまま悶絶死した。
「ふん。俺の脂肪にキスして眠りな……」
「よくやったわ、ぽっちゃり勇者」
「おぅよ。けどよコロネ。コイツペラペラふにゃふにゃで食うとこなんて無さそうだぜ」
「丁度いいわ。アンタも手伝って」
コロネは大きめのボウルを取り出す。
「ここにシュワリンの体液を"搾って"ほしいの」
「?」
言われるがままにシュワリンの尻尾から握りしめて搾ると、ボウルに流れ落ちた液体が発砲した。
シュワワッ
「こ、コイツァまさか……まさかぁああ!」
シュワリンを絞り切る。ボウルいっぱいに溜まった透明な液体は、後から後から気泡が発生。
「炭酸じゃねぇか!」
「正解。シュワリンは昔から食用として一部の美食家に人気だったわ。毒素がないからね。ただし」
「例によって高カロリーっつーわけだな」
「大正解。禁止される前は屋台で売られていたの。この炭酸にフルーツを掛け合わせれば――」
トクトク、コップに注がれる黄色い炭酸。淵に艷めくマンゴーがトッピングされる。
「じゃんっ、南国ミックスサワーの出来上がり!」
「ぐあああ天才か?!天才なのか?!いただきますじゅごごご!」
「待てのできない犬ね……ん、この甘ったるいシュワリン炭酸。懐かしいわ」
「南国フルーツの甘みと酸味が炭酸によって口の中で弾けて広がりやがる!カァアアッうめぇ!」
さながら仕事終わりの一杯である。
「そういえばよ、あの料理人、マカロンって女」
「胸でかかったなーって思い出してるの?」
「なんでだよ?!一人でマナフィールドに居るのはおかしくねぇかって思っただけだわ!」
「確かに……ぽっちゃり勇者のパワーを狙った誘惑って思ってたけど、バディかパーティがいるはずよね」
「マカロンは戦闘力もねぇ。一人じゃすぐ死ぬだろ」
「そうね。基本冒険者達の食事のために同行し、料理の腕磨きと金稼ぎ目的が殆ど。私みたいに戦える料理人はそう居ないわ」
「マカロンにも仲間がいるはずだぜ。わざわざ一番弱ぇ女を使って俺を仲間に引き込もうとした……どうにも胸糞が悪ぃ話だ」
「随分その女に惚れてるのね」
「あ?バッカちげーわ。あの時マカロンのことを誰も見張っちゃいなかったんだよ。つまり、親分は安全なとこでマカロンを危険な特攻に行かせたんだ」
「料理人は死んでも構わないと。確かに下衆な思考ね」
「あぁ。黒幕はこの世から美味い料理を作れる人間を消そうとしたっつーことだ。絶対許さねぇ!」
「弱者を差し出したことより飯が消える心配なのね……で、そのマカロンがアンタの誘惑に失敗して隠れ家に帰ったと。また違う方法で私達に近づいてくるかもね」
「協力ならいいが、もし俺たちの邪魔をしたり飯をバカにした暁にはよぉ」
拳を握りしめる。
グギュゥッ
肉が軋む音がするほどに。
「ぶっ飛ばす。絶対になぁ」
◇◇◇
マナフィールドのボスを探し森を行く。
「あぢ〜……なぁ、デモンフィールドの時みたく場所わかんねぇの?」
「デモンフィールドは初級の魔物しかいないわ。ボスも分かりやすい。マナフィールドから一気にフィールドのランクが上がるのよ」
「あ〜ゲームとかでもそうだよなぁ。フィールド自体複雑になってくのか」
「マナフィールドはまだ優しい方よ。ボスの居場所は大体の位置ならわかるわ」
「おっ、楽勝じゃん。ってコロネ、行き止まりじゃねぇかここ」
「この上よ。マナフィールドのど真ん中に、ボスはいる」
「は……この上っ、て……」
行き止まりかと思われた岩肌を見上げる。高くそびえ立つ崖のてっぺんは見えない。
「ふざけんな!どうやって上がるんだよ?!」
「決まってるじゃない。飛べばいいのよ」
「飛ぶってどうやって……」
バキバキ
木々をなぎ倒し、崖の傍に降り立つ巨大な馬。コロネは挑戦的に笑う。
「珍獣、ユニコーンの背中に乗ってね!」
「うおおお!馬肉ぅうう!!」
俺の背丈の倍以上ある角と羽を持つ幻の馬。ユニコーンを捕獲せよ。




