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殲滅とか猛毒と呼ばないで~ホントにわたしデバフ聖女なんですか?~  作者: 爆微風


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第五話 お披露目で涙目



 正装をさせられたラスティには、新たな身分をいただく前に王族との面接があった。


 それを聞かされた本人はビクッと身体を硬直させたが、性格を知っている両親はまた両腕を引いて応接室へ運ぶ。



「いーやぁぁああ! エライヒトとの面接なんて寿命が削れちゃうぅう!」


「世界有数の大魔法使いがこれから責務を果たす聖女に何をすると言うの」


「悲しいが、お役目は逃れられないんだよ。君も貴族の責務を知っているだろう」



 両親は味方だが、下っ端研究者の心理に思い至るワケがなかった。

 もがき苦しむものの、体格で完全に負けていたラスティはほとんど逆らえず運ばれ、扉の中へ押し込まれてしまう。


 そこには、先程の指示を飛ばしていた美丈夫(びじょうふ)な事務官が立ち、そして全てを押し包んでしまいそうな圧力の塊である王が座っていた。

 先に『(おおやけ)の席ではない、対面するは王の意である』と言われていたので顔を見て話せるが、それは間近で圧力を浴びるというだけ。



「ようこそ聖女」


「あ、改めまして、ラスティ、で、でででっ、デス!」



 守護騎士四名が王の傍に控えており、それらに視線を向けていたら、いつの間にか彼からの圧力は失せていた。

 隣にいた長身の男が一歩前進すると、両親は下がる。



「久しぶりだね、ラス」



 聞き覚えがない、しかし懐かしい目つきで男が見下ろしていた。

 まるで小動物を愛でるような、宝物を眺めているかのような柔らかな表情。


 しかしその顔には、大きな(きずあと)があった。



「……おう、じ、さま?」



 黒髪黒目、それは変わらない。

 しかしヒョロっとしていた少年はマッシブな青年へと成長していた…… 身長の差は頭二つ分ほどだ。

 ただし、この体格に至るまでの過程はラスティもわずかに見ていた。

 引きこもりの研究者となってしまって忘れていただけで。



「そうだよ。ちゃんと話すのはあの事件以来だからもう三年になるかな」


「その、お顔は? 回復魔法は、治癒の水薬は、お使いにならなかったのですか!?」


「え、ああ…… 回復魔法(カイフクマホウ)を…… 使った結果、なんだよ」



 第二王子アルクス、彼の顔の大きな痕は、どうにも根深い話となる。

 そう察したラスティは黙り込み、それ以上踏み込むコトはできなかった。


 まだ魔法に関する知識が乏しい、それを悔しく思い、しかし元婚約者であった彼の差し出した手を握り返した。


 懐かしさと、愛おしさを思い返して。



「……まだその、ループタイ、使っていただけているの、ですね」


「君からの贈り物だから。聖女となっても、ラスはラスのままだ。僕はずっと……」



 ラスティは自分を『知っている』存在にすぐさま甘えたくなってしまうが、今がどういう状態かまでは忘れていない。

 忘れていないものの、この手を離すのは、ためらわれた。



「アルクス。旧交を温めるのは後だ。今は聖女の役割を先に告げねばならぬ」


「は。失礼をいたしました」


「良い。聖女は王家に並ぶ存在、そして庇護する存在。元々がどのような人物であれ、その役割を果たすよう導き、正し、対話せねば、な?」



 ためらっていたら圧力が満ち満ちて離れざるを得なくなった。

 聖なる衣装を着ていても、小心者の精神力を守ってはくれないようである。



 ☆



 着席し紅茶を出され、しかし口をつけるほどの気軽さは消え去ってしまった。

 魔法を使ったワケではないが、王という存在は小心者のラスティの精神力を削りに削っていたのだ。


 あるいは寿命も削り続けていたかもしれない。



「さて。聖女よ。かつて君は我が子らの祝いの席で能力の暴走など起こしたが…… 今もソレはコントロールできていないのか?」


「はぅいうえっと、いいえ、もう制御いたして、おります」



 この世界に存在する魔法は多種多様で、王のように希少な二重属性なども含めれば数万とも言われる。

 王都以外にも大きな街には魔法の学校もある。


 そして、貴族しか使えない『能力(スキル)』というモノも存在する。

 一般人でも発現はするのだが、ソレがあると知ったらほぼ貴族へと養子に入るから、この国でスキルと言えば貴族のモノという認識になる。


 もっとも、他の国では冒険者がそのスキルを活かし行動しているというが、また別の話だ。



「わたしの能力は『闇色粉塵(ブラック・スポアズ)』……カビやキノコを操る、ちからです」



 それは一定範囲に活性化された黴の胞子を充満させる。

 この中に居ると敵味方の区別なく生物の活力と行動力を奪われ、衰弱する。

 ただしラスティには影響せず、この空間では好きに特殊なキノコ、カビを作り出せるため、薬学研究に役立った。


 だが魔法全盛の異世界においては、キノコやカビを操る彼女は『魔女』そのものだった。

 だから『クロカビ令嬢』などと陰口を叩かれもした。



「聖女となったからにはもう暴発など許されぬ。心せよ」


「は、はっはいぃっ」


「うむ。聖女よ。この後にある『宣告』では聖女としてのちからも発現させるコトになる。聖女の印に聖なる杖(アンク・ハイレット)を近づければいいというのだが、君には前科があるからな、周りの者にもしもを繰り返さぬよう、気を付けるのだぞ」


「は、い、もちろ、んで、ござまひゅ……」



 ラスティは過去も思い返して気張ったつもりだった。

 だがもう、王から圧力はない。

 なぜなら告げるだけ告げたから。

 王にとって(まつりごと)はリアルタイムの処理能力を試される場所である。

 だから彼は全員を引き連れ、本日の予定を終わらせるために踏み出していた。



「ゆくぞ、アルクスとラスティに時間を作るため、儀式を一時間で切り上げたい」



 そう、聖女を敵視しているワケではない。

 とても真面目な王様なだけだった。


 それを知って、アルクスに微笑まれ、ラスティはやっと肩からちからを抜いた。

 お役目は驚いたが、懐かしい場所へと戻れたのである。


 いつかの王子の言葉がよぎった。


『状況の変化は、怖いよね…… でもそこで生きていくのなら、過去は経験として活かし、気持ちを切り替えるしかないかなあ。できるコトが増えた、って喜んでいいと思うよ、僕は』


 過去にそうアドバイスしてくれた少年は、今や王を支える美丈夫(びじょうふ)となった。

 王子に肩を支えられ、ラスティは王の背中を追いかけていく。





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