七重結界
「なるほど、分身も擬態のひとつではあるな・・・」
感心しつつも、結界の元へと急ぐルー。
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尚もアザゼルと闘うリアン。
分身の一人が、リアンへと一撃を見舞う。
――避ける
すかさず剣撃を喰らわすリアン。
――だが、これも空を斬る。
しかし、分身の数は減る。
分身の数は・・・ゆうに十体はある。いや、また増えた。
今度は、複数体で襲ってくるアザゼル。
一斉に剣がリアンの脚を狙ってくる。
――ジャンプ、ジャンプ、バク天で避けるリアン。
(・・・くっ)
(・・・こんなこと繰り返して、本当に奴を倒せるのか?)
弱気になる。
「おい!ルー!まだか!」
声を張るリアンだったが、その声は届かなかった。
――――すでに、結界の元へと辿り着いていたのだ。
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ルーは、静かに言った。
「アザゼル、お前は…ハデスを盲信しすぎた」
「パラドックス・ゲート」
この魔法は、闇魔法である。
確かに、自らや人間である仲間を回復させる魔法を使えるルーではあったが、流石に『聖』由来の結界を元へと戻す魔法までは使えない。
そこで、「聖なるもの」を「魔なるもの」へ反転させる、最上位の書き換え魔法を使い、結界そのものを壊すことにしたのだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
七重の壁が次々と黒く染まり、聖なる輝きがドロドロとした闇の飛沫に変わって崩落する。
―――するとどうだろう、今まで空を覆っていた不気味な紫色が消えていくではないか。
毒をもって毒を制す。
まさにその言葉通りだった。
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「おや?」
分身のひとりが口を開く。
「元」勇者リアンは、その機を見逃さなかった。
「おまえかああああぁぁぁ!」
ザンッッツ!!
リアンの剣は、アザゼルの胴を一刀両断した。
「・・・やったか!?」
リアンが叫ぶが、斬られたアザゼルの体からは血の一滴も流れなかった。
崩れ落ちたのは、泥のような粘液。
それは瞬く間に霧散し、背後からあざ笑う声が響く。
「フフフ・・・惜しいですね。ですが、私の『核』はそこにはありません」
声の主は、未だに「ライト」の顔の半分を残した歪な異形。
アザゼルは空中を浮遊し、眼下を眺めていた。
「結界を壊したところで、何が変わるというのです? 住民たちの精神はすでに砕け、彼らの絶望はハデス様への捧げものとして定着した。たとえ空が晴れようとも、彼らの心には二度と日は昇らない!」
「・・・それはどうかな」
ルーが悠然と歩み寄る。
結界の反転破壊に魔力の多くを割いたはずだが、その足取りに迷いはない。
「アザゼル、貴様は人間に化けてはいたが、『人間』のしぶとさまでは理解できなかったようだな・・・」
ルーの視線の先では、重力魔法で地に伏せられた騎士たちの間で、変化が起きていた。




