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七重結界


「なるほど、分身も擬態のひとつではあるな・・・」


感心しつつも、結界の元へと急ぐルー。



____________________



尚もアザゼルと闘うリアン。


分身の一人が、リアンへと一撃を見舞う。


――避ける


すかさず剣撃を喰らわすリアン。


――だが、これも空を斬る。


しかし、分身の数は減る。


分身の数は・・・ゆうに十体はある。いや、また増えた。


今度は、複数体で襲ってくるアザゼル。


一斉に剣がリアンの脚を狙ってくる。


――ジャンプ、ジャンプ、バク天で避けるリアン。


(・・・くっ)


(・・・こんなこと繰り返して、本当に奴を倒せるのか?)


弱気になる。


「おい!ルー!まだか!」


声を張るリアンだったが、その声は届かなかった。


――――すでに、結界の元へと辿り着いていたのだ。




_____________________



ルーは、静かに言った。


「アザゼル、お前は…ハデスを盲信しすぎた」


「パラドックス・ゲート」


この魔法は、闇魔法である。


確かに、自らや人間である仲間を回復させる魔法を使えるルーではあったが、流石に『聖』由来の結界を元へと戻す魔法までは使えない。


そこで、「聖なるもの」を「魔なるもの」へ反転させる、最上位の書き換え魔法を使い、結界そのものを壊すことにしたのだ。




ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・




七重の壁が次々と黒く染まり、聖なる輝きがドロドロとした闇の飛沫に変わって崩落する。




―――するとどうだろう、今まで空を覆っていた不気味な紫色が消えていくではないか。


毒をもって毒を制す。


まさにその言葉通りだった。




______________________




「おや?」


分身のひとりが口を開く。


「元」勇者リアンは、その機を見逃さなかった。


「おまえかああああぁぁぁ!」




ザンッッツ!!



リアンの剣は、アザゼルの胴を一刀両断した。



「・・・やったか!?」



リアンが叫ぶが、斬られたアザゼルの体からは血の一滴も流れなかった。


崩れ落ちたのは、泥のような粘液。


それは瞬く間に霧散し、背後からあざ笑う声が響く。


「フフフ・・・惜しいですね。ですが、私の『核』はそこにはありません」


声の主は、未だに「ライト」の顔の半分を残した歪な異形。


アザゼルは空中を浮遊し、眼下を眺めていた。


「結界を壊したところで、何が変わるというのです? 住民たちの精神はすでに砕け、彼らの絶望はハデス様への捧げものとして定着した。たとえ空が晴れようとも、彼らの心には二度と日は昇らない!」


「・・・それはどうかな」

ルーが悠然と歩み寄る。


結界の反転破壊に魔力の多くを割いたはずだが、その足取りに迷いはない。


「アザゼル、貴様は人間に化けてはいたが、『人間』のしぶとさまでは理解できなかったようだな・・・」


ルーの視線の先では、重力魔法で地に伏せられた騎士たちの間で、変化が起きていた。





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