アザゼル
「これが・・・アザゼルの真の姿・・・!!」
リアンがその圧倒的なプレッシャーに息を呑む。
「リアン、ミュリエル。奴の精神攻撃に気をつけろ。奴は心の傷を突いてくる!」
ルーが警告するが、アザゼルは嘲笑う。
「傷? そんなものは必要ない。彼ら自身の『正義』が、彼らを破滅させるのだから」
アザゼルが指を鳴らすと、大聖堂の周囲に、狂気に陥った数百の騎士団員が集結した。
彼らは一様に虚ろな目で、ミュリエルを指差す。
「裏切り者を殺せ……」
「聖都を汚す魔王を……」
「ライト様こそが救いだ……」
「くっ、こいつら、操られて・・・!」
リアンは剣を振るうことができない。
相手はさっきまで自分たちを慕っていた者や、ミュリエルの部下たちなのだ。
「戦えないか? ならば、死ぬがいい」
アザゼルが剣を振り上げた。
キイイイィィィィィィン!
―だが、その一撃を防いだのは、ルーの放った影の壁だった。
「お前の攻撃は、たやすく受け止められる。忘れたか、その非力さを」
ルーがにやりと笑う。
アザゼルは確かに、強い。
しかし、その強さは諜報に特化されており、つまるところ「擬態」と「精神汚染」に尽きる。
ゆえに、物理攻撃は並みの魔族程度でしかないのだ。
ルーはミュリエルに背を向けたまま言った。
「ミュリエル。お前は騎士たちを頼む。正気に戻せるのはお前だけだ。リアン、お前はアザゼルの懐に潜り込め。隙は私が作る」
「ルー、お前は?」
「私は――あの結界―七重結界のひとつを叩き壊す」
「・・・大丈夫か!?」
「ハデスに一矢報いるまでは、死ねんよ」
ルーの全身から、これまでにないほどの漆黒の魔力が噴き出す。
それは周囲を破壊するためではなく、仲間を守るための、『温かい』闇だった。
「行くぞ、二人とも。これが我々の第一歩となる!!」




