マナの異変
――いつもの宿屋にて
またもや、例のごとく作戦会議が開かれていた。
「ミュリエル、それはホントか!?」
リアンが興奮気味に言った。
「ああ、未だ私のことを信頼してくれている配下の者がいくらかいてな。その者たちの陰での諜報の結果、ライトが不穏な動きを見せていることがわかった」
「それで、その動きというのは?」
ルーが言う。
「それがな…決定的なものではないようだ。ライトが夜な夜な聖都の結界に赴いては、妙な液体を取り出して注いでいる――そういうことだそうだ」
「妙な液体!?それはなんだ?」
「うん、そうだな・・・それ以上のことは現状、わからない」
いかに忠誠心の深い部下を持つミュリエルといえど、その部下たちは一般の騎士団員だ。
その能力にも限りがある。
表立って動くことのできないミュリエル。
それが事態を動かなくさせていた。
「しかし、その動き、絶対何かあるぞ」
「ああ、奴の裏にアザゼルのいる参謀本部がある以上、なにかあるな」
「どうにかならないのか、ルー」
リアンは焦る。
「いつものように、使い魔に頼るしかない・・・な」
おもむろに窓を開け放ち、使い魔を召喚するルー。
今回の使い魔は「ビート」、装甲の固い魔虫だ。
「このくらい小さい使役虫なら、奴の目を欺くこともたやすいだろう…」
「あとは、結果待ち・・・か」
ミュリエルがため息をついた。
―――翌日
ルーが早朝、みなに報告する
「ダメだ、『眼』がつぶされたようだ」
「なんだと?」
ミュリエルが驚きを隠さない。
「相手は思った以上に慎重にことを運んでいるようだ」
「チッ、奴の力を甘く見たか」
リアンは残念そうにそう言う。
「そうだな、我々が直に足取りをつかむしか無いかもしれん」
皆で、手分けして外回りをすることとなった。
_______________________
~夕暮れ近く、聖都の広場にて
「どうだ、二人とも何かわかったか」
リアンが急ぎ言う。
「わかったもなにも、お前は気づかなかったのか?」
ルーは怪訝そうな顔をした
「・・・どういうことだ?」
「街の雰囲気が以前に比べて、瘴気を帯びてきている。そうだな、マナの流れに何か異質なものが流れ込んでいるような・・・そして、何より重要なのは、住人たちのなかに様子がおかしいものが出ている」
「それは俺も気づいたぞ、何か虚空を見つめてボーっとしている奴を幾人か見た」
「ああ、騎士団員のなかにも、なにやらぶつぶつ独り言を言って上の空の者が増えているな」
街の様子が変わってきたのは、ライトが赴任してきてからだった。
最初は3人とも気のせいだと思っていた。
あれだけ善人と慕われる騎士団長が赴任してきて、意気軒高の住人たち。
だが、その異変はゆっくりと訪れていた。
神経質で、気に病みがちな者から、マナの異変を敏感に感じ取っていたのだ。
虚空を見つめるのは、マナの流れを幻視しているから。
また、独り言を言うのは、自らに注ぎ込むマナに脳をかき乱され、幻聴と会話しているから。
――そういうことだった。
「ミュリエルの情報と合わせると、やはり結界に何かしているのは間違いないな」
リアンは確信する。
「何か心当たりはないのか、ルー」
ミュリエルが言う
「・・・ある、な。以前に、アザゼルは『擬態』の能力を持つといったな。奴は諜報系の能力を持つのだが、厄介なことにもうひとつ重要な能力を持っている」
リアンとミュリエルが顔を見合わせる。
「それは、『精神汚染』だ」
事態は悪い方向へと推移していた・・・




