踏みにじられたプライド
ミュリエルの騎士団内での孤立は深刻だった。
一応、形のうえでは「騎士団長」のままだ。
警備の際に帯同するお付きの者はいる。
ある程度信頼のおける腹心もいる。
しかし、決定的に情報が不足していた。
あの一件以来、参謀内の情報が周りに上がってこないのだ。
――お飾りの「騎士団長」
そもそも、騎士団長が二人いる時点でおかしい。
明らかに、ミュリエルの立場を悪くする意図が垣間見られる。
それもそのはず、ミュリエルは騎士団内でこう呼ばれている
「魔王に毒された裏切り者」
確かに、事実かも知れない。
ミュリエルは、いつの間にかルシファーに信頼を寄せていた。
自分でも気づかぬうちに深く。
それは、あの「共闘」からだろうか?
「・・・いや違う」
一人ごちるミュリエル
ミュリエルは最初、リアンと一緒にいた魔のモノ「ルシファー」に刃を向けようとした。
そして、その鉾をいったん収めた。
確かに、それはリアンの顔に免じてだった。
しかし、事実はより奇妙だった。
あの時なぜか、ミュリエルは、心のうちではルーへ憐憫のようなものを感じていたのだ。
それは、ミュリエル自身にもわからないことだった。
なぜ、「魔」に哀れみの気持ちを抱いたのか。
「魔」を滅ぼさんとしている騎士団長としてあってだ。
「私はどうかしてしまったのかもな・・・」
自信を失っているミュリエルは、自分を責める。
周囲から孤立した人間は、得てして自分を責めるものだ。
今まで「長」を預かっていた、レベルの高いものならなおさら。
名ばかりの閑職へと追いやられているミュリエル。
その状況が、彼女の目を盲目へと誘っていたのかも知れない。
「ミュリエル様」
一人の騎士がミュリエルに近づいてくる。
「内密なお話が・・・」
ひそひそ話で案件を伝える
「!!」
話を聞き、驚きに目を見開くミュリエル
彼女のこれまでの行いは、やはり彼女の味方だった。
まだ、彼女を慕う勢力は「生きて」いたのだ。
暗雲たちこめる聖都リュミエールに、希望の灯が、いまひとつ灯ったのだった。
いや、それは言い間違えだ。
最初から、灯は消えていなかったのだ。




