善人
「なんなんだあいつは」
不服を隠そうともしないリアン
「ああいうやつが、得てして出世するものさ…」
ルーが少し冷たく言った。
――と、そこへ街の住人たちが通りかかる
「あれはライト様じゃないか?」
「あれこそ騎士団の良心、ライト様だ!」
「・・・騎士団の良心?」
怪訝そうに呟くリアン
「おい、騎士団の良心ってどういうことだ?」
「知らないのかお前さん、あの方は先の魔獣討伐で真っ先に住民保護を訴えてくださった『善人ライト』様じゃないか」
「そうだ、あの方はいつも住民のことを気にかけてくれていてな。何度となく救民政策を上層部に具申されてくださったんだ」
「・・・あいつがか?」
「お前さん、『あいつ』なんて言っちゃいけねぇや。この街の住民はあのお方に絶大な信頼を寄せているんだぞ」
「ほう・・・これはとんだ食わせ物のようだな・・・」
ルーが住民に聞かれないくらい小さな声で呟く
「おい、こっちこいルー」
広場の片隅に呼び、ひそひそ声で話しはじめるリアン
(これはどういうことだ、ルー)
(そうだな、理由はともあれ、おそらくあやつは住民を味方につけることで上へとのし上がるタイプのようだな)
(それはそうだが、さっきの態度からは想像もつかないぜ)
(だから、簡単なことだろう、あいつには住民には見せない裏の顔があるということだ)
(・・・裏の顔か…)
(そうだ。しかし、その顔を私たちに見せたということは、むしろ儲けものだったかも知れない…)
二人でうなずき会う
人の世には、2面性を持った人間がよくいるものだ。
大きな声で「国民のため」を叫び、裏で私腹を肥やす政治家。
最初は良い顔をして近づき、ある時豹変したように暴力をふるうヤクザ。
そんな簡単な例はさておき。
善人としてふるまい友人関係を築き、ある程度信頼を得たところで、相手に気づかれないように詐欺を働く者もいる。
またこれは、恋愛関係でも起こりうる。
そう、「信頼」はときに悪人の「徳性」でもあり得るのだ。
聖都リュミエールは、果たしてそんな「善人ライト」という厄介な人物を抱えてしまっているのだった・・・




