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New Space Scrolls Ⅱ-名もなき者達の詩  作者: 乃木了一
第五章 それぞれの戦い
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2.通商破壊戦

「第四駆逐隊から入電。独航船、1隻探知。サマール方面へのワープ・ポイントに向け速度0.2光秒で航行中。推定排水量約5,500トン。中型貨客船のようです」オペレーターが報告する。

「攻撃させますか?」

幕僚のイサク・シャロン少佐の問いかけにウォラフソンは首を振った。

「いや、いい。おそらくカロディールからの避難船だろう。無駄に民間人の被害を出したくない」

ここ1ヶ月、ウォラフソン率いる第一機動部隊分艦隊はここカロディール星系で通商破壊戦を続けている。既に貨物船を中心に約20万トンの船を撃沈ないし拿捕している。目的はラカオからカロディールを通ってロレンツォに運ばれる水素燃料その他の鉱物資源の供給を断つことと、その攻撃によって帝国防衛部隊をおびき出し、可能であればそれを撃破することである。数千隻を有すると思われる帝国艦隊に対し、未だ正面から戦いを挑む戦力がないため、ゲリラ戦によって敵の戦力を漸減させようという目論見だ。

更に、この通商破壊戦は第一機動部隊に新たに加わった新戦力の慣熟訓練も兼ねている。オニール技術本部宇宙部部長らの尽力のおかげで、“ブルーリッジ級重巡洋艦”(旧帝国軍大型フリゲート艦)35隻に加え、“ブリザード級駆逐艦”(旧テラフォード警備艦隊所属R級警備艦を改装したもの)約150隻が既に戦列に加わっていた。

ブルーリッジ級重巡洋艦は長距離対艦ミサイル“ロングランス”を発射できるようにしたミサイル発射装置に換装するとともに、大きな容量をとっていたAIシステムを小型化し、空いたスペースにワグテイル偵察機4機を収納する格納庫とカタパルト2基、対空レーザー砲を増設している。

ブリザード級駆逐艦はR級警備艦にワープ・エンジンを増設したものを基本設計とし、対空・対艦両用連装レーザー砲2基4門、ミサイル発射口6基、対空レーザー砲8門を装備している。旧R級警備艦から改装された“初期生産型”30隻は独立したC&Cシステムが備わっているが、量産型(戦時急造型)のAIシステムはより簡略化され、他の構造もモジュール化されたものとなっている。そのため特に前者を “ブリザード-0型”(ゼロ型) 教導駆逐艦と呼び、各駆逐隊の旗艦に任じている。

ウォラフソンは駆逐艦100隻を5隊に分け、カロディール星系内のあちこちにばら撒いている。各駆逐隊には2隻ずつブルーリッジ級重巡洋艦が配備され、その偵察機を使って偵察支援を行っている。そのためウォラフソンの元には星系内の民間船や防衛艦隊の動きが逐次入ってきていた。

ウォラフソンの直接指揮下には旗艦ヒリュウを初めとするドライグ級空母20隻にタイラーのBバンディッツ中隊、ドナヒューのCチャリオッツ中隊、ブルーリッジ級重巡洋艦25隻を置くとともに、教育を兼ねて実戦経験の浅い将校らが配置されている。シャロン少佐もその一人である。モートンでもマックスウェル司令官の下、猛訓練が続けられているはずだ。

ウォラフソンは傍らに立つもう1人の人物に顔を向けた。

「カロディールの防衛艦隊司令官には会ったことがあるかい?」

「ヴァルマ大佐ですね。ええ、何度か。とはいっても艦橋のスクリーン越しですが。宙族取締まりの合同作戦で連絡をとったことがあります」

そう答えるのはボリス・ラーション中佐。年齢的にはウォラフソンと同じぐらいで、もとヴィヒトラント警備艦隊の隊司令だった男だ。テラフォード軍が旧帝国軍関係者に対し元の地位の約束と今後の公平な待遇を約束したことで、既に数千人の旧帝国軍関係者が志願してきていた。その大半は職業軍人として長年軍に努めてきており、逆に言えば新たな仕事に就くことを諦めた者達だ。

「どんな人物なのかな?」

ウォラフソンの問いにラーションは首を捻った。

「私も仕事で何度かお話ししただけですので詳しいことは分かりませんが、仕事は慎重で真面目な方だったように思います」

その時、二人の会話に割り込むようにオペレーターが叫んだ。

「第三駆逐隊から至急電! カロディール防衛艦隊が出港。総数約1,000隻!」

「よし、第三駆逐隊はそのまま距離をとりつつ艦隊を追尾せよ。残りの全駆逐隊は哨戒活動を中止し、攻撃態勢に移行しつつ所定のポイントに急行せよ」

シャロン少佐はウォラフソンに頷くと、通信担当オペレーターのところに行き宙域図を指しながら具体的に指示を始めた。


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