第4話「アカツキファミリー」
翌日、朝食を終え一息ついているとドボルグが食器を下げに来た。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でしたっと、そうそう、これ昨晩依頼された地図です」
そう言って手書きの地図を渡してきた。
軽く確認したが問題なさそうだ。
「ありがとう。これなら迷うことなく行けそうだ」
「それならよかった!このままお出掛けですかい?」
「あぁ、そのつもりだ」
「じゃあ何かあったらまた連絡くだせい!ご武運を!!」
「お世話になりました」
ヨールズの声を背に手を振りながら去っていくドボルグを見送ってから席を立ち、俺たちは貧民街へ向かった。
「え?」
「どうした?」
「ここ貧民街・・・ですよね?」
「子供たちだけで遊んでます・・・」
「まぁ、確かに一般的な貧民街って感じじゃないわな」
道も綺麗に舗装され、ゴミも落ちてない。
「アカツキファミリーに現在は貧民街の治安維持とイーストウィッチの諜報の補助をしてもらっているんだ」
「そのおかげかな」
「へぇ・・」
ヨールズは何やら嬉しそうに遊んでる子供たちを眺めていた。
そうしている間に目的地へ到着。
一見すると普通の民家・・・本当にここなのか心配になりつつも呼び鈴を鳴らした。
「あいよー」
中から体格の良い若い男が出てきた。
「何か用かい?」
「ここ、アカツキファミリーの拠点で合ってるかい?」
そう言った途端、男が警戒を強めた。
「だったらなんだってんだ?」
「そう警戒しないでくれ、ボスに用があって来たんだ」
「あぁ?!ボスだぁ?!てめぇ、ナニモンだ!!」
「あ、いや、怪しいもんじゃなくて・・・あぁ、そうだ、これこれ」
そう言って懐中時計を見せたんだが・・・
「あん?そんな時計見せたって騙されねぇぞ!ますます怪しい!!」
「おい、なんだ騒々しい?」
民家からもう一人、初老の男性が出てきた。
「なんか怪しい奴が来まして・・・」
「怪しい奴・・・?・・・・・マナトさん?」
「おぉ、ゲドか!久しぶり!!」
「・・・お知り合いで??」
「馬鹿野郎!こちら大将のご友人のマナトさんだぞ!」
「?!しっ失礼しやしたぁぁぁぁあ」
「マナト様とはつゆ知らず!!誠に申し訳ございませんでしたぁぁぁ」
と土下座。
「若いのが大変失礼を・・・どうかお許し下さい・・・。」
ゲドまで土下座しそうな勢いだったんで慌てて止める。
「そういうのはいいから!ほら!注目も集めてるから一旦中入ろ?ね?」
そう言って謝り倒す二人を押し込めつつ俺らは家の中に入った。
「中も普通だな?」
部屋を見渡しながらそう言うとゲドが口を開く。
「そういえばどういった用件で?」
「ドボルグから連絡は来てないか?」
「あぁ、そういえば客が行くぞとの連絡は貰ってました。こいつにも話しておいたんですがねぇ・・」
と言いながらゲドが若いのを見ると気まずそうに眼を逸らした。
「そうか・・・実はな・・・」
一通り説明すると
「じゃぁ、そのお連れの方が?」
「あぁ、ヨールズ、指輪外していいぞ」
そう促すと他の2人もヨールズをようやく認識できたのか驚嘆の声を上げる。
「本当に聖女様だ・・・」
「かわいい・・・」
若いのがなんか言ってるがとりあえず本題に入る。
「それで本拠地に匿っておこうと思ったんだが、以前の拠点は引き払ったと聞いたんだ」
「はい、今は孫娘のミナ嬢が頭領を務めてまして、新たに拠点を設けたんです」
「それはどこに?」
「こちらです」
そう言って階段下の収納スペースの扉を開くとそこに別の空間が広がっていた。
「これは・・・空間魔法か?」
そう言いながらヨールズと共に入ると背後の扉が閉まって消えてしまい、周囲は真っ白な何もない空間となった。
「?!罠か・・・?」
そう警戒しているとくすくすと笑い声が聞こえたと思ったら入ってきた方とは逆側に扉が出現したと思ったら
「マーナートー!!会いたかったぁぁぁぁ」
と、明るい声と扉が開くと同時に少女が抱き着いてくる。
「ちょ、首!首絞まってる!!」
「あ!!ごめん!!大丈夫!?」
「けほっ・・うん、なんとか、って・・・ん?」
「?どしたの?」
「ミナかい?」
「そだよー!驚いた??」
「2重の意味で驚いたよ・・・」
「へっへー、久々の来客がマナトだったんでどっきり仕掛けてみましたっ!」
「最後に会ったって8歳のときだったっけか、いやぁ、大きくなったなぁ・・・」
「ちょっと、マナト!その言い方お爺さんみたいだよ!」
「まぁ、実際ジジイだしなぁ」
「見た目は全然変わらず若いんだから老け込まない!!」
「えぇぇ・・・?」
と、苦笑いしつつここで一旦話を切って聞きたかった事を聞いた。
「それはそうと・・・大将は・・・?」
「・・・うん、3か月前に・・・心臓の病気で・・・そろそろマナトが来るから会えるの楽しみにしてたんだけどね・・・」
「そうか・・・ん?3か月前?」
「そうだけど・・・どうかしたの?」
「いや・・・なんでもない、とりあえず暫くはごたごたするだろうから何かあれば手伝うよ!」
(まぁ、偶然だろう・・・)
「それはそうとヨルちゃんは?」
「あ、そうだった」
と、ヨールズの方を見ると少し引いた距離でこちらを伺っている。
若干俺を見るヨールズの視線が冷たい気がするような・・・。
「お邪魔ですかね・・・?」
「そんなことないよ!久しぶりだね!ヨルちゃん!!」
「こちらこそ久しぶりです。ミナさん」
「あら?二人とも知り合いか?」
「学院の同級生だったんです。というかミナさんとここで会えるなんて思ってもみませんでした」
「私もだよー。家の都合で学校中退になっちゃったから皆とも会える機会が減っちゃってどうしようと思ってたんだ!」
「ヨルちゃんがよければずっといてもいいんだからね!!」
「それはちょっと・・・」
「積もる話もあるだろうが一先ず移動しないか?」
「あ、そうだね!じゃぁ、案内するよー」
そう言ってミナが入ってきた扉から施設へ入った。
歩きながら周囲へ意識を飛ばしてみるとこれらの空間はミナのマナでできているようだ。
「ミナって空間魔法使えたんだな?」
「お、マナト、さっそく気付いたね!そうだよー!」
「以前マナトに教えてもらった通りに練習してたらできるようになったの!」
「いっぱい練習したんだよー。2年位前から結構大きな空間を作れるようになったんだ!」
「でさ、お爺ちゃんが亡くなって次期頭領に選ばれた時に思い出いっぱいの場所よりも新しい場所で始めるのもいいかなって皆と話して決めたんだ」
「なるほどな・・・じゃああの拠点は・・?」
「今はお父さんとお母さんが孤児院運営してるの」
「あんな広い場所遊ばせておくのも勿体ないってね!」
「そっか・・・」
個人的に大将とも付き合い長かった分、俺もあの家には愛着があったからそうやって活用されてるって聞いて安心した。
そういやミナの両親ってファミリーの支援を受けて学校や病院の運営にも携わってるんだっけか・・・。
あのゴロツキだらけだったファミリーも変わるもんだなぁ・・・
そう考えに耽りながら少し歩くと左手の窓越しに広い空間が見えた。
「ここは・・・?」
「屋内運動場!引きこもりっぱなしじゃ腕が鈍っちゃうでしょ!」
「今戦闘訓練の時間だと思う。」
運動場に十数人が組手等模擬戦をやっているようだ。
その中の肩乗りサイズの龍を従えた人物に目が留まった。
「・・・え?ヴァルナス?」
思わず二度見した
「ん?知り合い?」
「いや、昔ちょっとな・・・」
「あの人、10年位前にお爺ちゃんが拾ってきたんだけど、なんか不愛想というか協調性に欠けるというか・・・あの小さな龍は可愛いのになぁ・・・」
「龍がいるから訓練なんて不要だーなんて言っちゃって、まともに活動にも参加しないし・・」
「そうか、大将が・・・」
そう話してるうちにヴァルナスと目が合った。
彼は一瞬目を見開いたかと思うと顔を青くさせながらそそくさと運動場を後にしていた。
「・・・マナト、あいつに何したの・・?」
苦笑いのような何とも言えない表情をしつつ聞いてきた。
「機会があったら話すよ」
こちらも苦笑いで返しておいた。
そこからまた少し歩いてミナが足を止めた。
「ここが私の部屋!で、ヨルちゃんがよければこの部屋で寝泊まりしない?!」
「え?」
「ほら、ここってさっきも見たと思うけど大人ばっかりで同年代の娘がいないの」
「かといって外に出ちゃうとこの空間が消えちゃうんだ・・」
「だからこの機会を逃すとお泊り会ができないの!!」
ミナも本来ならまだ学生だったからなぁ・・・
それにしてもそうか・・・この空間魔法は制限付きだったのか・・・
「じゃぁ、お願いしようかな?」
「決まりだな!んじゃ俺は宿に戻るとするか」
「え?何言ってるの?マナトもここに泊まるんだよ?」
「そうは言うけど部屋ないだろ?」
「あるんだな~これが!隣の部屋のプレート見て!」
そう言われて見てみると、見慣れたプレートがそこにあった。
「ちゃんとマナトと私以外は入れない仕様もそのままにしてあるよ!」
プレートに手をかざすと俺のマナに反応して扉が開く。
そこには旧アカツキファミリー本拠地にあった俺の部屋が広がっていた。
「マナトは必ずまた来るってお爺ちゃんと話してたから移設の時にそのまま空間保存して持ってきちゃった」
「掃除もこまめにしてくれてたみたいだな・・・」
「もちろん!というかなんかもう掃除するのが日課になっちゃって・・・たはは・・」
「ありがとな!」
そう言ってミナの頭をぐりぐり撫でまくる
「にゃぁぁ、この感じ久しぶりぃいぃぃ」
「なるほど・・・あの時の頭ぐりぐりはここから・・・」
ヨールズさんがなにか呟いてたけど聞かなかったことにした。




