第2話「トール診療所」
フレイと言う少女に先導されて着いたのは表通りからは外れた静かな場所にあるこじんまりとした診療所だった。
俺は看板に書かれていた文字を読んでみると「トール診療所」・・・・トール?はて・・・どこかで・・・と思案していると
「先生ー!急患ー!!」
とフレイが扉を開けて入っていく。
慌てて一緒に中に入ったんだが、そこにいた老人を見て思い出した。
「トール!トールじゃないか!」
「!? マナト様?!」
「え?誰?」
「ってそんなのは後!ヨル姉が大変なの!診て!」
「お?おぉ、わかったわかった、大声出すでない」
とりあえず俺は抱えていた少女を診察台の上に寝かせ邪魔にならないよう部屋の隅で様子を伺う。
一通り診察を終えてトールが口を開いた。
「過労じゃな・・重めの・・・一体どうすればここまで・・」
フレイから一通り説明を受け、
「成程な・・恐らく碌にまともな休憩や食事を摂らないまま働かされていたんじゃろうな・・・」
「とりあえず点滴を打って様子見じゃ。婆さん!」
「はいよ~」
奥からシヴさんが点滴一式を持ってきて手慣れた手つきでセッティングしていく。
作業がひと段落して、ヨールズを入院患者用のベッドに移した後フレイを一旦家に帰らせた。
俺はというと一旦この診療所に泊まることになった。
患者がいるからと断りを入れたんだがトール夫妻が是非にとのことで。
というのも、昔話に花を咲かせたいのもあるが、ヨールズの立場等考慮した際に例のごろつきがここに押し寄せてきたときに夫妻では対応でき兼ねる。
だがマナト様がいれば可能だというトールの判断ということだ。
まぁ、トールは俺の力をある程度判ってるからな・・・。
俺自身もこの街の領主が市民に悪政を敷いているのであれば対応せねばならない。
フレイの説明にあった領主の代替わりも気になる・・・
領主は基本体調や市民の支持に問題がなければ続投する決まりになっている。
前回訪れた際に領主に会っているが市民からの評価もすこぶる高く、至って健康体で50を過ぎてるもののあと30年は現役で頑張ると豪快に笑ってたんだが・・・。
5年前の国の調査でも問題なしだったからこの5年間で何かあったとしか・・・しかも報告に上がってきてないのも気になる。
まだまだ分からないことだらけだが、とりあえず考えるのはやめにして夕食後にヨールズの様子を見に行った。
「起きていたか」
点滴が効いたのか熱も下がった様で大分顔色も良い。
「あなたは・・?」
「そういえば自己紹介がまだだったな。俺はマナト・ナナセだ」
軽く状況を説明した。
「そうですか・・・助けて頂きありがとうございます」
「礼ならフレイに言うといい。彼女の声が無ければ気付かなかったかもしれん」
「はい・・・。本当にあの子にもなんてお礼を言ったらいいか・・」
笑顔でそう言った直後、沈んだ顔でこう言った。
「そろそろ動けそうなので私は教会へ戻ります」
「それはいかん!」
トールも丁度様子見なのか部屋に入ってきた。
「点滴打って大分良くなったとは言え、過労を甘く見ちゃいかん」
「少なくとも2~3日はここで療養してもらうぞぃ?」
「でも、それだとお勤めが・・・」
「そんなもんよりお前さんの体調の方が心配じゃい!」
「いいか?そもそもお勤めなんぞしなくともワシら医者がおるんじゃから任せればいい!」
「でも、領主様が・・・」
「その話だが・・・」
二人の会話に割って入る。
「詳しく聞かせてもらってもいいか?なんだってお勤めなんて・・・そもそも聖女の件も初耳なんだが?」
ヨールズが言うには・・・3ヶ月ほど前から教会の司祭より「光魔法を使って人助けをしてもらう」という命を受け、毎日朝から日が暮れるまで働いていたという。
その際、お布施という形で結構な額を回収していたようだ。教会に納めてはいたが、よく領主の使いが大半を回収しに来ていたとも。
後はフレイから聞いていた状況とも一致する内容であった為、王都に一報を入れるべくマナ通信を開いた。
これを用いて、王都にいるとある人物に報告しておいた。返信があれば今後の活動指針にもなるだろう。
一通り会話を終えた後、夜も遅いので各位寝ることになった。
寝る前にフレイにも一報入れたかったので、使い魔に届けてもらうことにした。
「ルナ、ちょっと来てくれ」
虚空に小さなゲートを開いて呼ぶと黒猫が出てくる。
「ご主人、来たよ~」
「この手紙を届けてほしいんだ」
ヨールズ達との会話で決まった事を書いた手紙だ。
・ヨールズは暫く診療所で療養
・教会の手の物が捜索に出てる様子なので位置がバレない様フレイには申し訳ないが暫くは面会は禁止。
・同様の理由で何かしら聞かれても知らぬ存ぜぬを貫いてほしい
という内容だ。
手紙を預け、颯爽と夜の闇に消えてったルナを見送ってベッドに入った直後、
ルナから「彼女寝てたから翌朝直接渡すね~」と連絡が来たので「了解、お休み」と返し眠りについた。




