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【改稿中】エクリプス 〜選ばれない月は、太陽を閉じ込める〜版権無視Ver.  作者: 月乃下 想
頂点を目指す者たち

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4-13

 高専祭本番は、吹奏楽部の演奏から幕を開けた。

 よく吹奏楽の大会で聴くような、なんちゃら序曲とかどうたらシンフォニーみたいな曲を3曲。

 そう、今の俺は吹奏楽部のチューバ吹きだ。ZERO SOUNDの真太郎じゃない、オーケストレーションの低音セクション。

 去年も高専祭の開幕は吹奏楽で、去年は流行りのJ-POPを多めに演奏したのだが、今年は新しい部長が吹奏楽らしい曲をやりたい! と言い、満場一致で決まった。

 吹奏楽でJ-POPって、なんか甲子園っぽいしね、祭りの始まりにはもっとダイナミクスの広い曲がいいと俺も思う。



「おつかれみんなー! さあ引き続き屋台も気合い入れるよ!!」


 新部長が檄を飛ばし、部員一丸となって屋台のセッティングを済ませる。さて俺は……と思っていたら、部長に声をかけられた。


「山谷ー、あんたはオーディオ部の手伝い行っていいよー」

「え、いいんですか? でもまだ屋台始まってもないし……」

「いーのいーの、こっちは人手足りてるから。それに沼田くんに頼まれてんのよ」


 はて、なぜここで沼田先輩? なんて鈍感なことは言わない。

 これはあれだ、高専に入ってから鋭敏に察知できるようになった、LOVEの気配だ、間違いない。


「あ、了解です。てか部長、沼田先輩と付き合ってるんですね──へぶっ!」

「おい山谷、あたしは温厚な方だと自負してるが、それは看過できんぞ」

「いだだだだだだだ!!! 部長痛い!!!!!」

「沼田は小学校から一緒なだけだ、次勘違いしたら……千切るぞ」


 何を!? 千切るって何を!!?

 というか、なんで俺の周りは、こうも武闘派な女子ばっかりなんだ。



 あと、俺のLOVEセンサーは何の役にも立たないことがよく分かった。




 部長の計らいで、オーディオ部の手伝いに向かう。会場からはもう楽器の音が聞こえてきていた。

 このライブ前に、楽器をチェックする音がたまらなく好きだ。

 これからライブが始まる。この音はSEじゃなく、人が出している音だ。そんな風に気持ちを無理やり引っ張り上げてくれる音が。それに、この音が知ってる人の音なら尚更だ。

 初日のヘッドライナーは中山先輩と沼田先輩のバンドだ。ECLIPSEのカバーバンドで、インディーズ〜メジャー初期の曲でセレクトしたって言ってたな。

 始まるまではまだ時間あるけど、入っちゃおうかな。ボルテージの上がりをリアルタイムで楽しむのもいいな。



「やっぱここに来たか山谷」


 突然声をかけられ、立ち止まる。

 この声は……!


 脳内に警報が鳴り響く。一刻も早く逃げなけ──


「待ちなさい、今日は奢れとか言わないから」


 武田だ。しかしなぜこいつが? 誰かに呼ばれたのか?


「お、おう武田。久しぶり」

「何言ってんの、ファミレスでよく会うでしょ」


 そうだ、なんなら一昨日もいたわこいつ。


「今日はどうした? 誰かのバンド呼ばれたとか?」

「違うって、お祭りって聞くと心が躍って足が勝手に……」


 そんな趣味があったなんて知らなかったなー。おぼえとこー。


「で、アンタたちも出るんでしょ? ZERO SOUNDの真太郎さん?」

「な、なんでぇいきなり!」


 やば、顔が緩んだ。ダメだってその呼び方は!

 あーでもこうやって呼ばれるの、最っ高にいいわー……。


「顔キモッ。さっさと元戻りな」

「ひどい……」

「で、ZERO SOUNDの番は?」

「あー、えっと、明日の15時か」

「明日なの!? 行けないじゃーん!!」


 え、そのために来たの? びっくりだけどありがとう。


「出番って今日になったりしな」「むり」

「まだしゃべってるでしょうが! 人の話は最後まで聞きなさい!!」

「すまん……」

「そっかー、姐さんの歌聞けないんだ、残念」


 おお、吉田先輩が見たかったのか。すまんな武田、次からは案内するぞ。



「山谷、ちょっと待ってて」

「いいけど、どうした?」

「一本電話する」


 言うが早いか、武田は電話をかける。相手はすぐ出たようだ。


「あ、エミごめん。明日キャンセルできない? ……え? いやいや、お願い」


 え、明日来る気? 用事あるんでしょ? 電話の相手も困ってるっぽいし、無理には……


「わかった! 今度スポッターのパフェ奢るから! わかった花火の乗ってるやつね、なんでもいいから!!」


 話がついたようだ、武田が電話を切って、カバンにしまう。


「明日の15時ね、行ける行けるー」

「パフェの力ってすげーな、んで何の用だったの?」

「あー、他校の男子とカラオケ……行きたくなかったしちょーどよかった」

「うわー……嫌そうな顔でカラオケの話するやつ初めて見たわ」

「山谷、知らない人と、まして男子とカラオケって嫌な顔にもなるでしょ」


 確かに。知らない人と密室で2時間かそこらか、地獄だわ。


「ってわけで明日、しっかりやんなさいよー! じゃあアタシは屋台回るわー」

「おー、楽しんできてー」



 ……いっけね、早く会場入らないと。



 体育館には全面暗幕がかけられ、いつもの快活な雰囲気は何処へやら、薄暗くなった会場に入る。

 会場直後は無音だが、やがてSEがフェードイン。往年のロックが流れ出し、観客の中にはSEにノッて揺れる者もちらほらと。

 時間が10分前になった頃、放送から会場の注意点がアナウンス。そうして時間が刻一刻と流れ、あと数分で開演ってところでおもむろにアンプから放たれるベースの音。4弦開放音を鳴らし、低音の響きをチェック。

 続いてギターがネックを持ち、弦に触れた音がアンプから漏れる。この、偶然出てしまった音ってやつが、いよいよ始まるライブへの期待や高揚を否応なしにブチ上げてくれる。


 そして、ある瞬間。突然SEが止まり無音に。


 ステージの照明は全て消え、会場からは光も音も全て消える。わずかに残ったのは、PA卓から漏れる機材のイルミネーションのみ。



 来る。



 直後、ハイスピードなドラムの4ビート。このイントロは、間違いない。JAILだ。

 ってことは、この4ビートが6……7……8小節目。ここだ。

 このタイミングで、ギターが冷徹なリフを刻む。

 ドラムとギターだけの、わずかな時間のランデブー。そして、



 全楽器が同時に1音目を叩き込み、ライブが始まった──

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