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パクス・ウォビスクム ---あなたに安らぎあれ---  作者: 獅孔
第2章「“眼”捜索編」
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第2章 第0話「“傍観者”」


「ノクス様、本日も御神託をお聞かせ下さいませ……」


 ベネディクティオはノクス神父として、再びかつてルミナスが詠んだ言葉を唱える。


「……『栄光地に降り、神これを見監(けんかん)す。その栄光世界を照らす希望と成し、また自然に帰す』」


 当然、ベネディクティオにこの神託の真意は分からない。しかし、ベネディクティオが発する神々しい覇気が、その言葉を如何にもそれっぽく聞こえさせるのだ。これを聞いた信者は涙を流しながら謝恩の言葉を捧げ、教会を去っていった。


「あ〜っ、ベネっちったらまた神父様ごっこやってる〜」


 先程の信者と入れ替わりで入ってきたのは、ベネディクティオのよく知る少女──エテルノスであった。


「……人がいなかったから良いものの、此俺の正体を示唆するような言葉は控えるんだな。その首が飛んでも知らんぞ?」

「ベネっち、なんか機嫌悪い?」


 ベネディクティオのこめかみがピクリと動いた。


「まぁまぁ、落ち着きなよ。ここでわたしに怒鳴ったところで何も変わらないよ?」

「──チッ。その通りだな」


 何故ベネディクティオがこうも機嫌が悪いのか。それは、つい先日に起こった事件故であった。


「スコルピアが、ヴォイド・オレグを逃したかもしれん」


 “眼”の使い手だからと命だけは見逃していたスコルピアだったが、彼女がヴォイド逃走の手引きをした可能性があるのだ。これはあくまでベネディクティオの勘ではあるが、放置していたはずのヴォイドの死体の末路を誰も知らないところを見ると、ヴォイドが生きている可能性が拭いきれないのだ。


「ふ〜ん、スコルピアねぇ……“能力”にも恵まれず、運にも恵まれず……ベネっちが見つけて殺すのに、時間は要らないかぁ…………」

「時間が要らない訳がなかろう。此俺にはここで神父をやり、毎日愚民共に神託を聞かせなければならないのだ」


 そう。ベネディクティオにとっては神父という仕事が足枷であり、行動を制限している最たる原因なのだ。だからこそ、信頼できる部下──“四皇”の皆に頑張ってもらっているのだ。


「……ヴィリディスに会ったら、ヴォイド始末の命を伝えてくれ。此俺も、彼も忙しいからな」


 わたしだって忙しいんですけど、と愚痴りたくなったエテルノスはその言葉をぐっと飲み込んで返事をした。影にも入らず扉から出て行ったエテルノスを、ベネディクティオは横目で見送った。


「……頼んだぞ、同胞たちよ」




 * * *




 純白の壁。純白の床。純白の天井。全てが純白で出来た部屋に、彼は存在した。純白の髪に、純白の双眸。純白の肌を包むのは、純白の法衣だ。


「ほう、ルチアの中に存した『あれ』を調伏したか」


 彼は「世視の水晶」を使い、この部屋から1人の少女を見守る。少女に“神眼”の力が顕現して以来、彼は彼女に目を付けていた。


「……彼女を救ったのは、結局1回限りだな」


 彼が少女を救ったのは、彼女が“神眼”の力に目覚める直前の事件のみ。彼は少女に“神眼”の力を引き出せるよう手助けをした。果たしてその少女は、今も“神眼”の使い手として人々を救っている。


「まぁそれも良いだろう。その結果として、彼女はこうして目まぐるしく成長を遂げている……」


 「誇らしい限りだな」とだけ付け加えて、彼は机に置かれた白濁の液体を飲み干した。


「確か、カルピ……忘れたけど、そんな名前だったかな。美味しいではないか」


 彼はこれを持ってきてくれた“異世界人”に感謝しつつ、液体の残り香を楽しんだ。そして、彼は再び水晶に目を向ける。


「さて。最初に“神眼”を集め終えるのは誰だ?」


 彼は笑う。それは、“傍観者”としての余裕故のものであった。


 “傍観者”ルドゥム・スペクタンス。創造神ルミナスの代理の創造神であり、はたまた世界の均衡を保つ者。そんな彼は、ルミナスが死する直前に任じられた勅令を頭に浮かべていた。


「……まぁ、“神眼”を誰が最初に集めようとも、ルミナス様の思惑通りではあるが……」


 悠然たる態度で、ルドゥムはそう呟いた。彼──そしてルミナスの思惑は如何に。


「“堕天使”ベネディクティオ、それに“破壊の申し子”プルーヴィア。貴殿らの活躍を楽しみにしてるぞ?」


 ルドゥムはかつての友人と“破壊神(宿敵)の申し子”に、ルミナスの願いを託した。彼らがそれに応えてくれるのかは分からないが、ルドゥムは彼らを信頼している。


「2つの運命が衝突するのか、はたまた絡み合うのか。これは良い脚本が見られそうだな」


 ルドゥムは水晶に映る場所を変えた。そこにいたのは…………


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