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パクス・ウォビスクム ---あなたに安らぎあれ---  作者: 獅孔
第1章「ヴォイドとルチア」
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第1章 第20話「作戦会議」


 ひと段落した事もあり、俺はクレオ・デウスにてニゲルとルチアとの3人で話をした。内容は、当然、コピアの事についてだ。ルチアはコピアと交代が出来るらしかったので、俺たちはコピアから直接話を聞いた。


 ざっと概要だけを話すと、コピアは『謎の男』こと、堕天使であるヴィリディスに攫われ、先程の“聖教会”に監禁されたんだとか。そこから、1人の女性の研究者らしき人物によって気絶させられ、そこからは自分の本心が全く無かったらしい。全てが何者かに操られている感覚。まるで、暗闇に潜む陰のような。

 それからコピアはスコルピアとしてルチアの中に潜伏し、ルチアの意識が完全に途絶えた瞬間に入れ替わり、この世に顕現したらしい。そして俺と出会い、「俺と会う」という目的を達成したコピアはスコルピアとしての自分から解放され、今に至るというわけだ。


 しかし、俺はここで釈然としない点があった。それは、何故攫われたのがコピアで、何を目的としていたか、だ。ルチアの意識内にコピアを潜ませる事で何か意味はあったのか。それが何故コピアでなければならなかったのか。そこに特別な意味があるなら、俺はそれを追求したい。

 俺はその旨を皆に共有した。2人はこの意見に賛同してくれた。


「確かに、たまたまコピアちゃんだったかもしれないけど、もしそれがコピアちゃんじゃなきゃならない理由があるなら、それは突き止めたいよねぇ〜」

「……私も、そう思います──そうだよね、ヴォイ兄! 何で私じゃなきゃなかったのか、私も知りたい!!」


 ルチアとコピアが入れ替わるタイミングはよく分からなかったが、俺たちは一旦これからの方針を決める事にした。


「まずはコピアから“聖教会”について知っている事を全部聞く。そして、奴らの目的を暴く。更に、それをしながら“眼”も集める。これで完璧だ」


 全員がこれに賛同の意思を見せる。そして──


「俺は絶対に、家族を殺したヴィリディスに同じ苦しみを与える」


 俺の真の目的もまた、そこにあった。










「ヴォイド。この剣を君に贈ろう」


 出発の支度をしている時に、俺はニゲルから1本の剣を差し出された。漆黒の宝石が鍔元に嵌められ、豪華に縁取られた剣。俺はその剣を見て察した。


「……俺に、“眼”の能力を使えと?」

「あぁ。本来であればオジサンが使う予定だったんだけど、これは君の方が使いこなせる。そう思ったんだ」

「…………」


 俺は、その剣を受け取らなかった。──いや、受け取れなかった。


「……俺は、この剣を受け取れない。俺の腰に携えてあるこの刀が、師匠の形見だからだ」


 かつて自分に剣を教えてくれたあの老兵が、死に際に俺に託してくれたのがこの刀であった。「倭ノ国」という国の生まれであった師匠の刀は巷では珍しく、その造形を真似しようとしてもここの刀鍛冶では不可能であった。

 そんな唯一無二のこの刀を、俺は手放す事が出来なかった。


「……そうか。それはオジサンも失礼な事をしたね」


 そう言って謝るニゲルを、俺は快く許した。


「それは、やっぱり貴方が使って下さいよ。俺には過ぎる力です」


 俺がそう言うと、ニゲルの表情が僅かに綻んだ気がした。


「……分かった。君がそう言うなら、オジサンちょっとは使ってみようかな」


 ニゲルは“眼”の嵌め込まれた剣を高々と掲げた。窓から差し込む陽光が、それを眩く照らしてくれる。


「──これを使って、守ってみせる」


 ポツリと、ニゲルはそんな誓いの言葉を発したのだった。










 最後に、此度の旅のメンバーを纏めよう。


 リーダー、ニゲル・アロガンティア。クレオ・デウス第4課の課長にして、クレオ・デウスの最強兵器である。


 サブリーダー、ヴォイド・オレグ。以下略。


 構成員、ルチア・ルミーネ。“眼”──“未来改変”──、そしてその内に眠るコピア・オレグが持つ“思考改変”も使える。

 どうやらあのコピアの奇怪な現象は“思考改変”であって、“過去改変”では無かったらしい。


 これが、俺たちが“眼”の捜索のために組んだチームだ──


「む、ワタシを忘れてもらっては困るぞ!」


 1人の少女が、机まで届かない身長を無理やり伸ばそうと背伸びをしている。


 机の上にひょこっと突き出た耳と、彼女の腰あたりから伸びるしなやかな尻尾は、どちらも獣人族の象徴だ。そんな獣人族にしては低い、ルチア程の背丈。その身を包むのは、露出度の異常に高い衣服──のような何か。腰程まで無造作に垂れる紫紺の髪。整った顔立ちを彩る紫紺の双眸は、そのドヤ顔によって細められている。大きく弧を描いている口は、今にも開かれそうな程までに吊り上がっていた。

 そしてその口が、今開かれる──


「ワタシの名はプルーヴィア! クレオ・デウス第4課の最強最高のおねーさんだ!!」


 まるで効果音でも付きそうな勢いで、プルーヴィアはそう言い放ち、腕を組んで仁王立ちした。しかし──


「……誰だ? 何寝ぼけた事を言っている」

「オジサンも知らないねぇ。第4課どころか、クレオ・デウスでも見た事ない顔だ」

「獣人族、ですかね?」

「そうだねぇ。あの耳と尻尾は獣人族のシンボルだ」


 各々がプルーヴィアに対する解釈を広げる中、彼女は片目を開けて様子を伺っていた。本来であれば、「えぇ!? あのプルーヴィア様!?」とか、「プルーヴィア様、その眩い輝きで私の目を潰さないでくださいまし」だとか、「プルーヴィア様、なんとお美しい姿。私、貴女様に一生ついて行きますわ!」などなど、そういった反応を期待していたのだろう。しかし、帰ってきた反応はいずれのものとも合致してはいなかった。ショックを受けたプルーヴィアは徐々に焦り始め、それを隠すかのように怒鳴り始めた。


「なぜ!! なぜお前たちはワタシの事を知らぬのだ!!」

「何故と言われても……」

「オジサンたちにはそんな事分からないよ?」

「知らないから知らないんだけどねぇ……」

「──ならば、今から覚えるのだ!! ワタシの名を、お前たちの脳に刻むのだ!!」


 そんなこんなで、俺たち3人パーティーに加えてプルーヴィアが仲間入りしたのだった。


「……彼女は一体、何者なんだ?」










「プルーヴィアは、今日からクレオ・デウス第4課に配属になった新人だ。仲良くしてやってくれ」


 プレジデントに問い合わせたところ、プルーヴィアはクレオ・デウスの新人であり、何故かこの“眼”の捜索という機密重大任務に当てられている。理由は分からないが、この事実がプルーヴィアの実力を裏付けている。


「……分かりました。それでは、これからは私(わたくし)が課長として責任を持って管理して行きます故、ご安心下さい」

「む。『管理』とは……人を物の様に言うでない!!」

「……ニゲルよ。任せたぞ」


 まぁ、ニゲルがいれば良い抑止力だろう。万が一プルーヴィアが暴走したとしても、ニゲルならば彼女を確実に止められるだろう。もっとも、俺が彼女に負ける確証は無いが。


 そんなこんなで、プルーヴィアが俺たちのパーティーに新しく加入した。


「フハハハハッ!! さて、我ら『“神……じゃなくて、『“眼”捜索隊』、出動だ!!」


 ……彼女の自由奔放っぷりには、少々ばかり手を焼きそうではあるがな。

 読者の皆様。獅孔です。第1章 第20話「作戦会議」を最後まで読んで下さってありがとうございます。

 このエピソードにて第1章完結という事で、今話が投稿された日(2026年9月9日)より1ヶ月間のお休みをいただきます。従って、第2章が始まるのは2026年10月7日(水)となっております。

 そして、それに伴って重大告知をさせていただにます。この小説が投稿された次週(2026年9月16日)に、パクス・ウォビスクム:外伝「追憶の黎明(プレリュード)〜銀髪の剣士と孤高の剣士〜」

 皆様により良い物語をお届けするための休みにして参りますので、何卒「パクス・ウォビスクム」、そして獅孔を末長くよろしくお願い致します。

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