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マリーの独白

自分の部屋に戻ったマリーは、ベットの上に座り込んだ。

灯りをつけず、薄暗い部屋の中で今日起きた出来事を思い出す。


今日は継承の儀式の日だった。

アミュール家に伝わる『ダークナイト』の力を、正当な継承者である自分が受け継ぐ日。

私が生まれた時からこうなることが決まっていた。


この国を守り続けてきた守護者の一員となる。

物心付いたときから楽しみにしていたのに。


なのに。


彼女が奪っていった。


私の姉、ルカ・アミュール。


姉とは名ばかりだ。

彼女は私の義理の姉。

お父様の不貞の末に出来た子。

母親が彼女を生んですぐに死んだため、半分は血がつながった子を放り出せなかったのか、この家で一緒に育つことになった。


本当に、お父様はお優しい。


身分不相応な子供を育てるなんて。


彼女はいつもうつむいていた。

私が話しかけて『あげても』、彼女はいつも無様な答えしか返さない。

自信なさげに言葉を多く紡ぎ、場を白けさせる。


おまけに、ボランティアで育てられているのに、おかしいことに私達家族の輪に入ろうとする。


まるでピエロのようだった。アミュール家の中にいる、異物で道化。



だから、この儀式が終わったら彼女はお父様が決めた人と婚約して家を出て行くという流れだった。


婚約者には何度か会ったことがあるが、彼女にはもったいない人だった。


彼女の婚約者は王家の第二皇子だった。

妾の子の結婚相手としては分不相応だろう。


だが、アミュール家の血筋はこの国では絶対だ。

守護者の4家の内、攻撃に特化したダークナイトは国の独立の時に最も活躍した。

結果、明確には示されていないが、その血を継ぐアミュール家の序列が守護者の4家の中で一番高い。


だから、アミュール家とのつながりを持つため、結婚相手は王家の血筋を継ぐ者がほとんどだった。

現に、マリーの母も当時の第二王女だった。


だが、今の代で継ぐのは女のマリー。

この場合は婿を取ることになるが、王家の血筋に当たる男子を外に出すのは難しいものがある。


この代の守護者の家の継承者は偶然にもすべて女。

結果、その兄弟に王家の血があてがわれることになった。


それはルカも例外ではない。


序列や継承者の兄弟構成の結果、破格の相手が選ばれていた。


彼女にはもったいない相手だが、アミュール家から出ていくには必要なことだ。


自分が継承者となるのなら、仕方のないこと。


ボランティアも、もうすぐ終わる・・・・・・と、そう思ってたのに。


信じられないことが起こった。

ダークナイトの力は、彼女に継承された。

私でなく、ルカに。


なぜ、彼女なのだろう。私が継ぐべきはずなのに。


私が彼女より優れた存在なのに。

彼女には何の価値もないのに。


理解が出来ない。


私はアミュール家の正当な後継者で。

アミュール家の象徴の黄金の髪を持っていて。

お父様とお母様に大切に育てられて。

それ相応の教育を受けて。


私が継承すべきもので、選ばれし私の物だったのに。



マリーは立ち上がり、そばにあった燭台をつかんだ。

それを鏡に投げつける。


大きな音が屋敷中に響きわたったが、マリーの耳には届かなかった。


怒りで感覚が遮断されていたからだ。


だが、彼女はその感情が初めて抱いた物なのでわからなかった。

大事に育てられ、恵まれた地位が当然だった彼女にとって、怒りは無縁のものだった。


感情のまま、ひとしきり暴れた後、怒りの熱が過ぎ去った彼女はいいことを思いついた。


私が正当な継承者なの。

だったら、それを取り返さなきゃ。


マリーはぐちゃぐちゃになった部屋の中で微笑んだ。

さぁ、まずは周りにこの状況を訴えなければ。

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