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 妖精は存在する。

 それも愛らしい妖精達が存在するのだ。

 花の妖精、木の妖精、草の妖精など様々。

 妖精が視えるのは、その存在を信じている者だけ。

 しかし、その存在を信じている人間の中には悪い者がいた。

 妖精を所有することで、富も名声も得られるという。

 それが事実かどうかはわからない。

 しかし、信じている悪者が妖精を捕らえている。

 私は、いや私達は、そんな悪者の手から妖精を解放することが目的。

 東京にある、とある高層ビル。

 闇夜に包まれたそこに潜入した私は、警備員に見つかっても不審がられないようにレディーススーツに身を包んだ。ボブヘアーは髪留めのバレッタでなるべく束ねている。伊達眼鏡をかけて、どっからどう見てもここの社員に見えるだろう。こう見えて高校生なんだけれどもね。幸い大人びて見えると言われるので大丈夫だろう。

 エレベーターで最上階を目指していれば、途中の階で扉が開いた。

 警備員だ。それも珍しいことに女性だった。


「わ、こんばんは。女性の方が警備員だなんて初めて見ました」


 思ったことをそのまま口に出して、にこりと挨拶をする。

 女性警備員は、どことなく小学校の親友に似ていた。生徒会長をするタイプの真面目で優等生だった彼女にちょっと顔立ちが似ているなぁと思った。

 そんな女性警備員は、私が押した最上階のボタンを覗き見ると「その階は立ち入り禁止ですよ」と教えてくれる。あはは、知ってた。


「ちょっと後ろ見せてくださいよ」


 なんて言って私は、女性警備員を上手く振り向かせることに成功させる。興味本位で見たかったと思ってくれた彼女の背中にスタンガンの持ち手を突き付けた。


「動くと撃つぞ」


 さっきの愛想のいい声とは違い、低い声を発してしまえば効果は覿面。

 それを銃だと勘違いしてくれた女性警備員は、両手を上げた。

 そのまま肩を掴み、エレベーターに乗せる。

 突き付けたスタンガンは離しておく。突き付けている場所を把握されていると、反撃される可能性があるからね。それに警備員に鉢合わせしたのは計画のうち。警備員が持っているカードキーが欲しかったのだ。

 最上階に登る。厳重に守られているとわかる扉が見えた。


「金目のものなんてないわよ」

「金目のもの“は”ないわ。はい、おやすみー」


 私はスタンガンを発動させて、気絶させる。

 倒れる時に床に頭をぶつけてしまわないように気を遣って、スッとカードキーを抜き取った。

 ピピッとカードキーを通して、エレベーターの扉より重たい扉を開く。

 中には長い廊下があった。そこを歩き進む。センサーでつくらしい灯りが、チカ、チカッとついた。奥にある扉には、ボタン一つで開けられるものだ。というかきっと外からではなくては開かない設計なのだろう。中にいる妖精が逃げないためだ。

 ボッと、ボタンを押し付けて、扉を開いた。

 すぐに感じるマイナスイオン。気のせいかも。

 だけれど、緑豊かな空間があった。森林公園みたいだ。

 ドームのような天井を覆いそうなくらい大きな気が一本立っていて、周囲は緑が茂っていた。小川もあって、せせらぎの音がする。


「ハーアイ! 妖精さん達! 助けに来ましたよ!」


 ドームの中に響き渡るように、大きな声を出せば、木の上からごそごそと顔を出す妖精が見えた。目で確認出来るだけでも、九頭はいる。丸っこい頭だったり、とんがった頭だったり。カラフルな頭というか髪をしている。

 でも決まって、目は宝石を嵌めたようなものだ。つぶらで愛らしい。

 蝶の羽根だったり、トンボの羽根だったり、羽根がなかったり。様々だ。

 人間を小人サイズにしたように小さな身体だったり、ずんぐりむっくりな二頭だったり。これも様々だ。

 人間なんてもう信用しないっといった様子だ。共通して可愛い顔なのに。

 しょうがない。ここに閉じ込めたのは、紛れも無い人間なのだから。

 信用を得るには、妖精からの説得に限る。

 私はボタンを開けて、胸の谷間に忍ばせていた妖精を出す。


「ぽにゅ! ぽにゅぽにゅ!」


 マスカットのような頭と枝豆みたいにぷっくりとしたお腹。そして、全体的に若葉色。

 瞳は、ペリドット色だ。クリンクリンのもの。名前は、ジェイ。

 発している言葉は私には理解出来ないがーーというか可愛いないつ喋ってもーー妖精達には伝わるらしい。ぽにゅで伝わるって。

 私は信用出来る人間でこれからここを脱出すると言ったのだろう。

 ポコポコと、木の葉の中なら出てきてくれた。


「さぁ、妖精の諸君。脱出しますよ」


 持ってきたカバンの中から爆弾を取り出す。

 壁に取り付けて、反対側の壁にまで避難するように呼びかけた。

 ピッと押して、ドカーンと爆発させる。

 壁はなくなり、夜風が入り込む。大丈夫、下には何もない。


「自由に飛んでいくもよし、ジェイと私を信じてついてくるもよし、自分で決めてくださいね。妖精さん達」


 私はウインクをしてから、反対の壁から助走をつけて走り出した。

 そして、夜の街に飛び込んだ。

 身体は重力に忠実に従って落ちる。夜の風は冷たい。

 すぐにパラシュートを開く。実は用意していたのだ。

 パラグライディングで近くの公園に着陸した。

 待ち構えていた仲間が手伝ってくれて、用意したバンに乗り込む。

 妖精は全員ついてきた。それに笑みを向けてから、横に座る男性の仲間に投げかける。


「監視カメラはちゃんと消しました?」

「当然、仕事は怠ってないぜ」


 なんてにかりと笑った。それならよし。

 発車するバンの中で、今回救出した妖精さん達に話しかける。


「これから行く場所にもたくさんの妖精さんがいるんですよ」

「ぽにゅ、ぽにゅぽにゅ! ぽにゅぽにゅぽにゅ」


 ジェイも語りかけた。摘んで伸ばしたような細い手を振り回す。

 その顔を覗いてみれば、キリッとしていた。私は笑ってしまう。

 そんな表情もキュートなんだよね。


「あの……ワタシの名前はアリー。あなたの名前は?」


 ピンクの短い髪を斜め上に立たせたヘアーで、モンシロチョウのような羽根を持ち、小さな人間のような妖精さんがおずっと話しかけてきた。

 八頭身のようで、長い足がスラリとして美しい。いや私も負けないくらいスタイルがいいと自負しているけれどね。これでも美人だと持て囃されている家とか学校とか。


「私の名前は、口無赤音くちなしあかねです。よろしくね」


 眼鏡を外して、にぱっと笑って見せる。


「ぽにゅぽにゅぽにゅ」


 ジェイがまた何か言っているけれど、私にはさっぱりだ。


「赤音さん、助けてくださり、ありがとうございます」


 代表してペコリと頭を下げるアリー。


「当然のことをしたまでです。お礼には及びません。それに私一人でしたわけではないですから、他の方にお礼を伝えてください」

「あ、いいよいいよ、妖精さん」

「悪い人間が閉じ込めちゃってごめんねー」


 仲間の人達は、気さくに笑いかけた。

 暫くして到着したのは、地下の駐車場。

 暗かったものだから、アリー達の顔に不安が浮かんだ。


「大丈夫。たくさんの妖精さんがこの先にいますから」

「……はい」


 微笑むとポッと頬を赤らめるアリー。

 後輩がよくそんな顔をして私を見てくるっけ。

 見慣れた光景だ。なんでだろう。

 不思議に思うも大して気に留める問題じゃないと私は、仲間と共に足を運ぶ。エレベーターに乗り込むと満員。その頭上には様々な姿をした妖精達がいる。ちなみにジェイは、また私の胸の谷間にすっぽり収まっていた。お気に入りの場所らしい。ブラウスのシャツに頭を引っ掛けて、うとうとしてしまっている。

 かくいう私も眠気に襲われて欠伸を漏らす。子どもは寝る時間だ。

 明日も学校だと思うと気が重い。休んじゃおうかな。でも休むと変に思われそう。平然を装って、行くしかない。

 チーン、と到着した一階は、庭園になっていた。

 そこには蝶は飛んでいるし、花も咲き誇っている。私は薔薇のアーチが特にお気に入りだ。アーチを潜る時、おとぎ話の世界に入り込んだような錯覚がするから好き。

 仲間の輪から外れて、一人そのアーチを潜る。あ、胸元にジェイがいるから一人じゃないっか。顔だけ後ろを振り返ると、アリーとその他の妖精も私についてきていた。

 アーチを抜けた芝生の上に、ゴロンと横たわる。


「ここはさっきの部屋と違って自由に出れるけれど、戻ってくる時は細心の注意を払ってくださいね! ここは妖精解放団体の隠れ蓑なんですから!」


 気持ちいいと背を伸ばしたあと、私は指を一本立てて注意事項を言う。


「まぁ、ここの団長さんから説明があると思いますから、あっちに行ってみてくださ……わわっ! みんな、ちょ、やめてっ!」


 綿毛の妖精さん達がこぞって、私の顔に抱き付いてきたものだからくすぐったい。綿毛のケープを身にまとう妖精さん達はもこふわである。払いのけたら怪我をさせてしまうのではないかと思うくらいちっちゃな身体なので、されるがままになった。


「またここにいたのか。赤音」


 聞き慣れた低い声が聞こえてきたかと思えば、綿毛の妖精さん達は私の顔から離れる。芝生を踏みしめながら歩み寄るのは、褐色の肌の男。そのくせ明るい髪は、白金色で長い髪を一つに束ねている。瞳はこれまた金。見目麗しい顔立ち。

 一見人間にしか見えない男だけれども、これでも三百年は生きているダークエルフである。証拠に妖精さんの存在を信じない人間に彼のことは視えないし、横に伸びたとんがり耳があるのだ。

 彼こそが、私をこの不思議な世界に導いた妖精さん。


「一仕事してきたよ、アレクス」

「ならば団長に報告をしたらどうなんだ?」

「私はおねむなの。他の人が報告してくれるでしょ」


 名をアレクス。

 私がそう言うと呆れたように息をついた。

 彼との出会い。それはちょっと気晴らしにパルクールをしながら、下校していた時のことだった。ひょいっと壁を悠々と超えた先にフードを深く被ったアレクスと、衝突してしまったのだ。

「ごめんなさい!」と謝ると彼は驚いた表情で「俺が視えるのか?」と言った。初めは何言っているんだと目を瞬いたが、アレクスは私をここに連れてきて妖精の実在を話して、そして哀れにも囚われているから救い出す者達を掻き集めていることを教えてくれたのだ。

 私はオカルト系を信じる質だった。だから幽霊だって、もちろん妖精の存在も信じていたからこそ、視えていたのだ。


「ジェイ! お前またそんなところでうたた寝をしおって!」


 アレクスに見付かり、ビクンと身体を震わせるジェイ。


「赤音も赤音だ! そんなところに忍ばせるな!」

「いや他にどこに忍ばせろって言うの? 胸の間がジャストフィットなんだけれど」

「お前なぁ……」


 そばに立つアレクスは、右手で顔を覆うと深々と息を吐いた。

 爆弾入りのカバンじゃあ、可哀想じゃない。

 うん、呆れている。私はケタケタと笑っては、大欠伸をした。


「私はこのまま寝るーおやすみー」

「寝るって……学校があるだろう、明日。休むと疑われかねないぞ」

「だから、ここから通学するよー」


 今日侵入した会社には社会見学しに行ったこともあり、疑われる可能性があるのならば、何食わぬ顔で登校した方がいい。

 わかっていると告げて、私はゴロンと寝返りを打つ。

「全く」と呟いて、アレクスはジェイを引っこ抜いた。


「新入りの妖精はあっちの方に行ってくれ。団長から話がある」


 そうアレクスが告げるのを聞きながら、私は瞼を閉じる。

 ふわっとまた顔に綿毛の妖精さん達が集まるのを感じた。

 くすぐったいなぁと思いつつも、ゆらゆらする睡魔に身を委ねる。

 


「……おやすみ、赤音」


 綿毛のくすぐったさがなくなった頬に、ちゅっと何かが押し当てられた気がするけれど、私はもう夢の中に意識を沈めていた。




 朝目覚めれば、毛布がかけられている。その毛布の上には様々な妖精さん達が眠り込んでいた。花のドレスを身にまとっているような愛らしい妖精さん達に、猫サイズの毛玉の妖精さん達、それに小さな小さな子どもの姿の妖精さん達。健やかな寝顔。

 隣にはアレクスの姿もあった。彼もここで寝たらしい。一人分スペースを空けた隣に横たわっていた。この男が三百歳というのだから、驚きだ。こちらも健やかな寝顔をしている。

 えいっと耳を人差し指で小突いてみれば、アレクスは眉間にシワを寄せてたじろいだ。そんな様子を、私はクスクスと笑った。




 




という夢を見たので書いてみました!

と言っても後半は考えたのですが!


続きも書いてみたいので連載の形を取りました!

気が向いたらでいいので覗いてみてください。

近頃スランプ気味なので、リハビリです!


スランプつらい!




20180525

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