9話 梅雨の誤解(中編)
梅雨の誤解(中編)
「ここ?じゃ、ポストは、あ、あった。」
「あ、だめ。」
慌ててオレは安藤を止めた。
「え?なんで?」
「ポストなんて、へたすりゃ、一週間もあけない奴だぞ。ほら。」
ポストをあけて見せると、本当にぎっちりと広告やら、手紙などがいっぱい入っていた。本当に、下手すると、一週間は出ていないようだ。
「え、勝手に開けちゃまずいでしょ。」
「いいんだ。直接渡したほうがいいよ。こっちだよ。」
オレが階段を上ると、安藤もついてきた。
「え?知り合いなの?」
「まぁ、幼馴染みたいなもんだ。春男―。」
ドアを勝手に開けると、オレはぎょっとした。足が見える。足だけ。ん?よく見ると、わかった。普段は椅子に座っている春男が、ソファの上で横になっているせいだった。
「上がるぞ!さ、どうぞ。」
「あ、あの、おじゃまします。」
その声に春男もむっくりと起き上がった。
「お前、この部屋寒いぞ。除湿のしすぎだ。」
オレはそのまま除湿を止めた。
「そうかね?ずっとここにいると、やっぱりね。で、こちらは?」
「あ、あの!私、安藤といいます。実は、井上 真琴のことできました。これ!」
安藤は手紙を差し出した。
「ん?また手紙?」
「お前、いつから手紙のやり取りなんかしていたんだ?」
「んー、最近?」
春男ははさみを探し回っている。その間に、オレは上着をかけて、台所に立った。
「お茶でいい?」
「え?私?でも。」
「あー、いいから、どうぞ。」
オレは自分の家でもないのに、勝手にお茶を出した。春男は熱心に手紙を読んでいる。やがて。
「あー、そーか。どうりで。」と、納得していた。
「なんだ?」
「いや、前回の手紙がさぁ。これで。僕、ちょっと落ちこんでいたよ。最初から、こんな手紙なら気にしないんだけどねぇ。」
「なに!?」
春男がおちこんだ?慌てて、春男の差し出した手紙を見ると、手紙は黒かった。いや、紙がという訳ではなく、鉛筆でこすると出てくる文字だったのか、こすってあるのだ。しかし、文字も、バカ、つまらない、ドあほ、などなど暴言に近い……。
「なんだ、これ?」
「あ、あの、それは、真琴ちゃんのストレス解消方なんです。」
「ストレス解消?」
「そう。でも、書いた紙の下に、レターセットがあって、間違えて、入れちゃったって。あ、あの、それで、彼女も今日来るはずだったんですけど、風邪をこじらせてしまって。」
「あー、風邪は気をつけたほうがいいよ、下手すると、入院するからね。ところで、洋介と知り合いなの?」さすがに、自分が風邪で入院しただけのことはある。




