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7話 春男の周りの女性

春男の周りの女性


 その日。仕事の帰りに家に向かって歩いていると、ウィンドウの向こうに春男が見えた。こんな通常のときに春男の姿を見つけられることにちょっとショックを受けつつ、しかし、よく見ると、もっと大きなショックを受けた。

春男の向かいに座っているのが、なんともきれいな女性なのだ。さらさらのロング部屋に洗練された格好。どうして春男と向かい合っているのか、疑問だ。

翌日、春男に聞いてみた。

「昨日、見かけたぞぉ?美人とお茶していただろう。」

「美人?そうだねぇ。たしかに、きれいだよね。」

どうも、春男の美的センスはよくわからない。あれがきれいでなくて、なにがきれいだというのだろう。

「誰なんだ?」

「高校時代の後輩。」

どうして、同じ高校時代を送ったはずなのに、こんなに知り合いに差があるのか、オレはいつも疑問で仕方がない。

しかし、そんなことは今はいい。あの女性の事を聞くのが先決だ。しかし、そこまで思ってから、ふと考えた。春男の知り合いの女性には、たいてい泣かされる。オレにとて、学習能力と言うものがあるのだ。

そっと聞いてみた。

「もうすぐ、結婚の予定とかある人なのか?」

「いや、この間、恋人と別れたって大騒ぎしていた。うちに酔っ払ったまま来てねぇ。そのまま愚痴を言いながら寝ていったんだ。おかげで、僕がベッドで寝られなかったんだ。今日は、そのおわびにって、お茶に誘ってくれたんだ。」

「寝ていった?」

「そう。しかも、朝になって記憶がぼんやりしていたらしいよ。あんなに騒いだっていうのに。」

春男はため息をついた。オレはそっと聞いてみた。

「お前、襲ったりしなかっただろうな?」

「彼女も、朝、そう言った。」

「それで?」

「そんな暇はないって言ったら、納得していた。まぁ、服を着たままだったから、そんなに気にしなかったのかも。」

 それで納得されるのは春男くらいなものだろう。しかし、もっといい台詞はなかったのだろうか。

「そっか。失恋かぁ。じゃ、転勤の予定でもあるのか?」

「ないと思うよ。わざわざ、転勤のない職場を選んだからね。母親と二人暮らしで、置いてはいけないからって。孝行な子だよねぇ。」

「じゃ、今、フリーなのか?」

「そうなんじゃない?」

 無意識のうちに顔が輝いた。今度こそ、幸運の女神がやってきたのかもしれない。

「じゃ、紹介してくれ。」

「紹介して、どうするのさ?」

「恋人の候補に名前を挙げる。」

「性転換でもするのかい?」

「は?」

「あの子の恋人、女性だったんだけど?あ、嘘だと思うなら、紹介するよ?」

オレはどん底にまで落ち込んだ。どうして、こんなに春男の知り合いとオレの相性は悪いのだろう!

なにか呪いでもかかっているのかもしれない。もう春男をたよりにせずに、自分で道を探そうと改めて心に誓った。


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