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6話 見かけによらず

 見かけによらず


 春男の玄関には、母親から何か送られてきたとき以外は、基本的には自分の靴さえも置かれていない。そこに、靴がある時は誰かしら、家の中に入るときなのだ。そして、今日、そこに靴があった。

「春男?」

 家の中に入っていくと、ソファに座っていたのは、一本に密編みをした、ちょっとふくよかな男性だった。人相がひどく悪い。なんだか、こわそうな関係の人のようだ。一昔前の中国マフィアの映画にでも出てきそうな感じだとでもいうのだろうか。オレを見ると、なにやら、机に広げてあったものを片付け始めた。

「お。じゃ、おれはこれで、帰るよ。またな。」

「またねぇ。」

春男は彼を玄関まで送っていった。

「誰だ?」

「高校のときの先輩。」

あんな怖そうな人がいただろうか。

「浪人していたからほとんど校内で会うことはなかったと思うけどね。」

じゃ、なぜ春男が知り合いなのか、聞かないことにした。

「なにしている人なんだ?」

 ちょっと恐る恐るきいたのは、本当に人相が悪かったせいかもしれない。

「ああ、下着メーカーに勤めているんだよ。」

「……なんだか、買いたくないな。」

「買えるわけがないだろう。いや、買ってもいいけど、でもねぇ。」

 どうも歯切れが悪い。

「なんでだ?」

「だって、女性下着メーカーだよ?」

オレの口がぱっくりと開いた

「なんだって?あれが?」

春男はため息をついた。

「おい、顔で判断しちゃいけないよ。いや、たしかに、怖そうに見るんだけど。あれでも、彼はとても優秀な成績を収めているんだよ。」

 オレの口はまだふさがらなかった。女性たちがその事実を知ったら、売上が落ちるような気さえもしてもしている。

「だから、営業じゃなくて、開発のほうにいるんじゃないか。外回りをしたら、警察に捕まりそうになるんだって。」

本人もわかっているのだろうか?しかし、その気持ちもわからないではない。

「それでね、今度の新作を、見せてくれたんだ。なかなか面白かった。」

女性の下着を見て面白いと言うこいつの思考が分からん。

「どこが?」

「んー。バレンタイン用に、ハート型とか。クリスマス用に、赤と緑とか、ハロウィン用に黒とオレンジの上下とか、脱ぎやすいのとか、逆に脱ぎにくいのとか、いろいろあってねぇ。男は、下だけだからねぇ。」

なんだか、聞いているだけでげんなりしてきた。いや、下着は良いが、開発者があの男性の原案だと思うと、なんだか、夢が壊れたような気分になった。

「まだ、試作品はできてなくて、絵だけの状態なんだけど、そのうち出来上がったら持って来てくれるって。」

「ここに持ってきてどうするんだ?」

「ん?作品に使っていいって。」

オレは思った。春男の作品に下着を出すよりも、あの男性を主人公にしたほうがよっぽど面白いような気がする、と。


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