47話 最終回(前編)
第三回最終回 (前編)
「と、いうわけなんだ……。」
その日のうちにオレは春男の家に寄って、話した。かなりの興奮状態のオレに反して、春男はちょっと眉を上げただけで、そのほかは冷静だった。
「へぇ。」
「いや、へぇじゃなくってさ!」
「大変だねぇ、そりゃあ。」
春男の背後に立っていた、春男の父親も言った。
「そうなんです。」
オレはため息をついた。その日。春男の父親がきていた。春男の髪をついに見かねて、そろえている。
普段、春男の家に行く時は朝からメールをして、予定を聞いておく。それによって、行くかやめておくかが、決まるのだが、今回はそんな暇もなかった。
「とにかく、妹さんにもでも来てもらってファックスで流せ。な?」
「あ、ダメ。あいつ、いま、留学の準備で忙しい。」
「留学?」
「ああ、本人が行きたいというんで、まぁ、いいかなと思ってね。」
春男の父親ものんびり言った。ちょきちょきと、春男の髪を切りつづけている。
「どうするんだよ!クビになってもいいのか?」
「困るかも。」
かも、なのか!?なんだか、本人もよりもオレのほうが心配しているようだった。
「まぁ、なんとかなるんじゃないか?」
春男と一緒に、父親もにこやかに笑った。だめだ、こりゃ。
しかし、あきらめる気はなかった。こっそり、取りにくればいいのだと思っていたからだった。が!
「ちょっと、この作家の作品、まだ?」
「この資料は?」
「あれはどうなっていたの?」
とにかく、忙しい日々が続いた。睡眠時間もギリギリまで削っていた。そんな状態の中、春男と連絡をとっている暇がなかった。
今日は双子の作家の家に来ていた。見た目にも疲れて見えたのか、姉のほうが心配をしてくれた。
「大丈夫ですか?なんだか、お疲れのようですけど。」
オレは、うっすらと笑うことしかできなかった。
「そういえば、最近、春男さん、元気ですか?」
弟のほうが聞いた。最初に会ったときよりも、少し身長が大きくなっているようだった。この双子たちは珍しくも春男の作品のファンだった。
「あー。最近、会えなくって。」
「会えない?だって作品は?」
ここに来るたびに、なにか春男の話を一つしてせいか、作品を取りに言っていることもその理由まで知られていた。なにか話さないと、作品を渡してもらえないということでもあったのだが。時間があるときは、長めの話を。ないときは、次の作品のタイトルだけで終わることもあった。
それはさておき。
「編集長が変わって、方針が変わって、ちょっとねぇ。」
オレは言葉を濁した。まさか、春男がクビになりそうだとはさすがに言えなかった。不安そうな顔をした双子をあとに、次の家に向かった。
たった、一週間しかたっていないにもかかわらず、なんだか、どっと疲れていた。とにかく、帰ったらすぐに寝るという生活が続き、二週間たった頃、いっきにたくさんの電話が鳴り響きだした。




