48話 第三回最終回(後編)
最終回(後編)
朝からなにやら、電話が鳴っている。会社に入るなり、なんだか、そう思えるほど、あっちこっちで電話が鳴っていた。よくみると、隣の同僚の女の子も、電話対応をしている。坂口編集長もそうだ。
ようやく電話が終わった女の子に聞いてみた。
「どうしたの?」
「よくわからないんですけど……。」
「なんでですか?!」
なにやら坂口編集長が電話に向かって、怒鳴りつけていた。
「理由を!もしもし?もう!」
がちゃんと音を立てて切った。
「佐々木!」
「はい!な、なんでしょう。」
「円藤カルチャーセンターへ行って、取材中止の理由を聞いてきて。」
「円藤カルチャーセンター?いまからですか?」
「そうよ。今週の号の目玉なのよ!なにがなんでも、取材頼んできて!」
慌てて、さっそく向かってみた。名乗るなり、取材という言葉を言う前から断られた。
「取材はお断りを。」
「いえ、理由を聞かせていただきたいのですが……。」
「あれ、佐々木君?」
名前を呼ばれて振り返ると、そこには春男の父親がいた。どうりで聞き覚えがあった名前だと思った。ここは春男の父親が授業を習ったり、教えているところだった。受付嬢は声をかけた。
「あ、先生。お知りあいですか?」
「あー、先生って呼ばないでくれ。息子の友人だよ。どうしたんだい?」
「それが……。」
オレは取材を断られたという内容を話した。
「ああ、それねぇ。ちょっとおいで。」
そのままオレは春男の父親に連れられて、ちょっとしたロビーの椅子に座った。
「コーヒーでいいかい?」
「ああ、すいません。」
ずずっとコーヒーを飲みながら、にこやかに春男の父親はいった。
「実はねぇ、取材は伸ばしてもらったんだ。一ヶ月ほど。君のいる会社だけ。」
「え……。」
「ははは、息子の敵討ちー。しばらくすれば、戻ってくるんだろう?前の編集長。」
……。この親にあの子あり。静かに怒っていたようだ。にこやかに笑ってはいるが、その分かなり怖い……。春男もそんな傾向がある。
「ああ、そうそう、妻のほうにも手を回しておいたから、料理関係の取材も断るだろうね。」
手を回した?詳しくは聞くまい。オレは帰ってから理由を編集長に伝えた。
「なんで、売れてない作家の父親にそんな権利があるのよ!」
「春男の父親は、あそこで、生徒でもありますが、着付けなんかの先生でもあるんです。それも結構人気なんです。やめられたら、かなり損害を出すでしょうし。春男の母親はあの料理研究家のマキさんですから、まぁ、彼女ならこの会社でなくても、売り出せるでしょうし。あと。」
もうすでに魂でも抜けたかのような編集長は、悲鳴に近いように言った。
「まだなにかあるの!?」
「雑誌の取材に行った、この間のケーキ専門店と、下着メーカー、登山家には春男の友人がいるんです。」
ついに坂口編集長は魂が抜けたかのようになった。翌日。まだ三週間だというのに、前の編集長が復帰した。坂口代理から、辞表が届いたそうだ。
オレはすぐさま、春男の原稿を取りに向かった。まだ、桜の花が咲くには早そうだった。




