40話 彼女到来?
彼女到来?
その日。紙を大量に買うから、手伝えとメールがきた。しぶしぶながらも仕事の帰りに、待ち合わせした駅に行くと、春男はなにやら両手にたくさん持っていた。ついさっき、近くの店で買ってきたらしい。なんだか、持つのが嫌になるくらい、重そうだ。
「春男。」
「もってー。」
さっそく春男は言った。思ったとおりだった。
「だから、一気に買うなっていつも言っているだろうが、こまめにいけよ。」
「だって、面倒なんだ。あれ?」
春男の見るほうを見つめると、なにやら女性がいる。彼女も気がついたようだった。
「あら、こんにちは。この間はどうも、楽しかったです。」
と、春男に向かってにこやかに微笑んだ。
「どうも。僕のほうも楽しかったですよ。」
「じゃ機会があったらまたご一緒しましょうね。それじゃあ。」
彼女はオレにも会釈をして町中へと消えていった。
「この駅らへんに住んでいるんだなぁ。」
「だ、誰?」
「ああ、ほら、君も会ったことがあるだろう?デパートの展示会の受付さんだよ。」
そういわれてみると、うっすらと記憶がある。
「いつ、仲良くなったんだよ。この間ーなんてさ。」
「えーっとあれはいつだっけかなぁ。」
考えながらも足は電車のほうに向かっていた。
「パン工場見学に行ったときかな?」
「は?」
「違うな。えーと、ビールでもないし、カーテンを見に行った時でもないし、なんだっけかなぁ。」
春男が必死に思い出そうとしていると、電車がきた。
「来たぞ。」
「ああ。あ、思い出した。電車の模型展示で会ったんだ。」
「模型……。」
そんなものまで見に行っているのかと、おれはため息をついた。せめて小説に関係するものでも見に行けばいいものを。
「なんで、一緒に行くことになったのさ?」
「違うよ。向こうで会ったんだ。お互いに一人だったから一緒にって回ったんだよ。」
「……つまり、あの人も模型を見に行っていたってことか?」
「大好きなんだって。」
オレはちょっとびっくりした。人の趣味は見かけでは決まらないようだ。
「面白かったか?」
少々嫌味をこめて言ってみたが春男にはまったくわからなかったようだ。
「そうだねぇ。比較的面白かったかな。今度、飛行機の模型もやるみたいだけど、君も行ってみる?」
「……いや、いい。」
余計に気分が落ち込んだ。そうこうしているうちに、駅についた。
「しかし、同じような趣味の人で、話も盛り上がるし、いいんじゃないか?」
「そうだねぇ。」
春男はのんきにいった。そのうちにあの人は春男の彼女になるかもしれないなぁと、オレはぼんやり帰宅道を歩きながら考えていた。結婚でもしたら、いまのように頻繁に行くことはできないだろう。オレはため息をついた。




