37話 焼き芋をする
焼き芋をする
だんだん寒くなってくると、コートを着るようになって、歩きづらい。それでも、今日は作品をもらうために春男の家に向かっていた。
「春男ー。あ、どうも。」
オレは慌てて、あいさつをした。家の中に入っていくと、ソファに春男の母親が座っていた。
「あら、今日締め切り?」
「ええ、そうです。」
と、オレが返事をした。
「あら、じゃ、仕事の邪魔したわね。またくるわ。じゃあねぇー。」
春男の母親はなんだか、やけに弾んだ足取りで帰っていった。
「なんだか、ご機嫌だなぁ。なにかいいことでもあったのか?」
「父さんがビーズで作ったものをプレゼントしたらしい。」
「ビーズ……あいかわらず、多趣味だなぁ。ついでに、円満そうで何よりだねぇ。お前は、なにをそんなに、落ち込んだような顔をしているんだ?」
まさか、作品を書き直すとでも言い出すのだろうかと、頭をよぎったが、そうではなかった。春男は無言でキッチンの机の上を指差した。なにやら、箱がのっている。
「なんだ?」
中をのぞきこんでみると、さつまいも。しかし、箱がえらく大きい。
「まさか、これ、全部いもなのか?」
こっくりと春男は頷いた。
「どうした……って、聞くまでもないな。すごい量だな。しかも大きいし。マキさんだろ?」
「あたり。」
春男はため息をついた。
「どうするんだよ、こんなに。一人暮らしの人間に送る量じゃないよな。」
「見てからずっと考えていたんだけど、大家さんに言って、庭を借りて焼くのが一番早い。大家さんなら焼き方にも詳しいだろうし。」
「焼く?焼き芋か。なんで詳しいんだ?」
「昔はここにいた生徒たちにいろいろ食べさせていたそうだよ。思い出話の中で聞いたことがあるんだ。たぶん知っていると思うんだ。焼き芋だったら、おすそわけも早くできるし。早く減らすには、これが一番だと思う。君も食べにきてくれ。」
翌日。
仕事の帰りに覗き込むと、春男は庭にいた。といっても共有の庭で、他の部屋の人たちも来ていた。焼き芋パーティだと話を広めたそうだ。
もう焼き終わったあとなのか、芋をもらって、食べながら談笑している。大家さんもきていた。
どうやら、春男の考えは成功だったようで、あっちこっちに渡している。春男はオレに気がついた。自分の分も持ってやってきた。
「ああ、洋介、はい、君の分。まだ、あったかいと思うよ。」
「ああ、もらうよ。どうだ、さばけたか?」
「半分はね。あとは自分でどうにか使うしかないな。まぁ、あれくらいなら悪くなるまでに急ぐ必要もないだろうしね。」
まぁ、でっかいあの箱の半分でもなくなればいいんじゃないかとオレは考えていた。
「うまい。」
「そうだねぇ。それにしても、やっぱり火が消えると寒いよね。」
「お前、普段から外でないから免疫力が弱ってるんじゃないか?風邪とか引くなよ。」
「気をつけておくよ。」
とりあえず、オレは今年、はじめての焼き芋にありついた。




