36話 サンタクロースの服
サンタクロースの服
これだけ長い間春男の担当していれば、ある程度のことにはなれるというものだろう。それが当然だ。しかし、オレはその日も驚いた。
「なんだ、その格好。」
「サンタクールの衣装だよ。」
春男は真っ赤な服を着ていた。帽子までついている。さすがにひげはなかった。これに、くるのブーツでも備わっていればきっと完璧だろう。
「そんなことくらいは見ればわかる。なんでそんなものがここにあるんだ?資料とか言うなよ。」
「違うよ。父さんの手作りなんだけど、いらなくなったからって送ってきたんだ。サイズ的にはどうにかギリギリ大丈夫なんけど、これを着ていくような場所もないしなぁ。」
あっても着ていってほしくない。勘弁して欲しい。
「なんでそんなもの作ったんだ?」
オレはドサリとソファに座り込んだ。
「なんでもねぇ、母さんが今度ボランティアに参加するんだって。知り合いに誘われたそうだよ。それで、そこでお菓子を配るって話になったんだ。そこに父さんを参加させようとしたんだって。それも、サンタクロースの姿で。で、衣装を自分で作ったのはいいんだけど、母さんが別に買ってきたんだって。そっちを着るからって、これはくれた。」
「普通逆じゃないか?自分で作ったほうを着るだろう?体に合ってるんだから。」
「そんなことをしたら、母さんにばれるじゃないか。」
「ばれるか?」
「確実に。だいぶ違うと思うよ。」
「そうかぁ。で、なんでお前が着てるんだよ。」
「サイズを確かめていたんだ。父さんの体に合わせて作ってあるからねぇ。最近太ったものだから。僕より細くて、こんな服を使う人がいたかなぁって考えてたんだ。」
「んー。接客業をするにはいいかもな。あと、販売系。最近はコンビニでも見るなぁ。」
春男は何か思いついたらしい。
「それだ。コンビニの店長がいる。聞いてみよ。」
さっそく春男は携帯で電話をしだした。それにしても、よく作ったものだ。
「あ、ホント?じゃ、送るよ。うん。じゃ。」
「引き取り先は決まったか?」
「うん。使うって。脱いでくる。」
春男は寝室へと入っていった。脱いだ服をきちんとたたんで、包み始めた。
「あー、明日は郵便局かぁ。」
面倒そうに言った。
「勝手に送っていいのか?」
「ん?だって、父さん好きにしていいって言ったし。」
「なるほど。」
「でね、妹はトナカイを着るんだって。」
「なんだって?」
オレは目を丸くした。
「いやぁ、家にいなくてよかったとたまに思うよねぇ。」
しみじみと春男は言った。
「マキさんは?」
「サンタの奥さんだって。そのままじゃないかねぇー。」
本当に、変わった家族だよなぁとオレは改めて思った。




