35話 見舞い品
見舞い品
風邪を引いた。オレが。まず、くしゃみやら、喉の痛みくらいでは休みはしないが、熱が高い場合のみ、休むことと言われている。そして今日は熱が高い。とりあえず、家で大人しく寝ていることにした。明日まで続くようなら医者へ行く。
風邪を引いたら、基本的には作家たちにはできるだけ、会わない。マスクだけで大丈夫な時は会うが、それ以外は長くは会わないようにしている。
万が一にでも、風邪を移しでもしたら大変だ。編集長に怒鳴られるのは目に見えている。風邪で、倒れられて作品が出来上がらなかったら、死んでも恨まれそうだ。そんな怖いことはできない。
当然、春男にも会わない。しかし、そんなことをしてか知ってか、知らずか、春男はメールをよこした。
『見舞いに行こうか?』
面倒大王の春男にしては珍しい。いや、ただ単に弱っているオレを見たいだけなのかもしれない。
春男がくれば、このごちゃごちゃの寝るためだけの部屋がさぞかし綺麗になるだろう。服も洗ったのか、一度着たものなのかよくわからないものはあるし、していない洗濯物は山になっているし、とりあえず食べるだけの最小限のスペースしかない机のゴミも綺麗になくなるだろう。
こんな状態でなければ、きっとくることは反対しなかっただろう。が!こんな状態で、大量の埃を吸い込んだら風邪が悪化するに決まっている。それだけの埃が舞うであろうという自信があるほど、掃除をしていなかったのだ。
『いらん。うつったら困る』
そう返事をした。
しばらくして、薬が効いてきたのか、なんだか、うとうとしてきた。
チャラーーーン。
携帯が鳴った。自分で設定した音とはいえ、急に鳴るとびっくりする。
見てみると。
『見舞い品を玄関に置いたよー。』
春男だ。
「なんだって、また……。」
オレはふとんからごそごそと起きだして、玄関を覗いてみた。たしかに、なにやら荷物がある。ここまで何で来たのやら。前回来た時は道がわからないからと、タクシーで来た。今回はどうだろう。聞くのが怖いようでもある。
なにやら、荷物が重い。なんだというのだろう。
すっかり、春男の食事を手伝うことがあるせいか、ビニールの中身を見て、品物をそれぞれにしまう習慣が身についた。こんなときは、いいのか悪いのか。
レトルトのおかゆと、モモ缶はこのままでいいとして、コーラは冷蔵庫に……コーラ?
「なんで、コーラなんだ?他はわかるけど。」
そのまま春男にメールしてみた。
『糖分があるし、喉元はすっきりするし、利尿作用があるから』
めずらしく、比較的まともな回答だった。本当だろうか?真意はさておき、とりあえずお礼をメールしてから飲んで寝た。
それにしても、風邪を引いている人間にコーラなど飲ませるものだのだろうか?
「え、飲むよ。」
一週間もたたないうちに風邪はすっかり直った。比較的回復力はあるほうだ。さっそく春男に聞いてみると、あっさり返事が返ってきた。
「母さんがよく、買ってきていた。最初は、どっかの国もまずい飲み物だったんだけど、あんまりにも、まずくて。酒もあんまり好きじゃないから、玉子酒もしないし。で、コーラ。」
今度、春男が風邪を引いたら、これを買っていこうと思った。




