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34話 落ち葉の季節

 落ち葉の季節


 誰でもそうだろうが、家から出ずに、食べれば、当然太る。しかし、太りすぎは健康に影響する。健康を悪くすれば、作品の仕上がりの時期にも影響を及ぼす。つまり、担当のオレとしては、作家を健康に保たせるのも、役目みたいなものだ。

「だから、もみじを見に行くぞ。」

「えーさみぃーのにぃ。」

「まだ一番寒いわけじゃないだろうが。着込んでいけ。ほら、行くぞ。」

本当に、しぶしぶだった春男を連れ出した。着込んでいる姿は、だるまに近い。少しは歩かねば。もうすでに服はワンサイズ上のものになってきている。一日歩いたくらいではどうにもならないだろうが、何もしないよりかはマシだろう。

昨日のうちに、会社の同僚の女の子にこの辺でもみじが美しい場所を聞いた。彼女と行くのかとさんざんからかわれたが、春男と行くということは黙っておいた。

「おお、綺麗なもんだな。」

他にも、何人か歩いている人たちがいる。オレはかなり、春男と二人で歩くことへの抵抗感が減っていた。これも慣れというものだろう。

「そうだねぇ。」

面倒そうだった春男も、実際見ると歩く気になったようだった。

「秋だなぁ。」

「この辺はねぇ。」

「この辺は?秋は落ち葉だろう?」

 もちろん葉が落ちない植物があるにしてもだ。

「いや?赤道近くじゃ、四季関係ないし。日本はまだ、四季があるからうつりゆく姿が見られるけど、一年中、暑いところとか、寒いところは別だよ。新芽と落ち葉が一緒に存在している植物とかあるし。まぁ、雨の量とかにも関係するんだろうけど。」

「そうなのか。」

日本から一歩も出たことがないオレには、よくわからない話だ。しかたがない。一度も、外国へ行きたいと思ったことがないのだから。あまり興味がないのだろう。

「お。どんぐりだ。久しぶりに見たな。」

 オレが拾い上げるのを見て、春男は顔をしかめた。

「あー、僕ねぇ、どんぐりにいやな思い出があるんだ。」

「なんだ?」

「昔、拾って帰ったら、母さんがそれでクッキー作ってくれたんだけど、食べ過ぎて気分悪くして、それ以来、どんぐりに近づきもしなくなった。」

「そりゃ、災難だな。」

「あー、なんか、変なことも思い出した。もみじを持って帰ったら父さんが押し花をして、しおりを作ってくれたんだけど、綺麗だからって僕の分まで全部、妹が持ってったなぁ。本なんか読んでるところ、みたことなかったけど。そう考えるとなんだか、秋にあんまりいい思い出はないみたいだなぁ。」

どうやらすっかり忘れていた記憶が思い出されてきたようだ。

「またしおりでも作ろうかなぁ。」

「ダメだ。」

オレはすぐさま却下した。

「しおりを作れば使いたくなるだろう?使うってことは本を読むってことだろう?お前がしおりを使うほどの本は当然分厚いだろう?そうすると、読んでいるうちにその内容に影響されて、お前の作品が変わる。」

「……いつもそこまで考えているの?」

「考えてんだよ!」

 オレたちはのんびりと歩いた。



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