33話 七夕な友人たち
七夕な友人たち
春男には、あまり趣味というものがないが、へたすれば仕事と趣味が一緒になっているような気さえするほどにない。唯一、展示会やら、美術館などに出品されているものを見に行くのが好きだ。しかし、それを自分でやってみようとか、自分にもできるかもしれないという発想はまったくでてこないそうだ。
「面倒で。」
まぁ、それはともかく。その日。珍しく、春男は家にいなかった。帰宅途中の春男と駅であったのだ。後ろ姿だけで、見つけることができる自分が怖い。しかし、展示会の帰りにしては、なぜか時間が遅い。
「おい、春男。珍しいな。どこかに行っていたのか?」
春男はくるりと振り向いた。
「うん。干物の展示会に。」
干物?思わず、口があんぐりと開いた。なにかと聞き間違えたのだろうか?とりあえず、家に向かって歩き出した。
「って、あの、アジとか、ああいうのか?」
「そう。それだけじゃないよ。フルーツとか。ドライフルーツだね。魚もあったけど、干し肉とかもあって、面白かったよ。土産もあれこれ買ったし。いる?」
「食って、うまかったらくれ。」
そんな展示会、どこでやっているのやら……。毎回、よく見つけるものだと感心する。
「あれが人間だったら、ミイラだねぇ。」
なんだか、干物が食べられなくなりそうなので、慌てて、話を変えた。
「だけど、展示会にしては遅い時間だな。」
「うん。、見ていた。」
「……工事現場?」
聞きなおしたのは、人の名前か?と思ったからだったのだが。
「そう。その展示会のすぐ側でやっていたんだ。道路の工事だったけど。ものすごい速さの回転している銀の円盤で地面を切るんだ。あんなもので、切れるんだねぇ。どうしてなのか、もっと詳しく聞きたかったんだけど、仕事中だったし。切っている音もかなり大きくてね。さすがに、友人にもいないんだよねぇ、土木関係は。」
春男はため息をついた。
「そうなのか?」
なんだか、春男の友人にはどんな職業の人でもいそうな気がしていたが、いない職業もあるのだと、いま、はじめて知った。春男は手で数えながら言った。
「大工と、農家はいるんだ。でも、工事はねぇ。電気系ならいるんだけど。」
あいも変わらず、多種多様だ。
「お前のことだから、いるんだと思っていたよ。」
「あのねぇ、僕にだって、友人の限界人数ってものがあるんだよ。」
「限界人数?」
「そんなにたくさんいても、会えないじゃないか。基本的に、一年に一度会えばいいよ。へたすりゃ、五年に一度でもいい。顔を忘れる前に会えればいいのさ。」
さすが、面倒大王。自分の友人に会うのさえも面倒だとは。どうしてこんな奴に友人が多いのか、謎だ。そうこう話しているうちに、また工事の明かりが見える。
「しかし、秋から冬にかけて、工事が増えるよなぁ。」
「これがくると、こんな季節になったんだなぁって思うよね。」
春男はなんだか、しみじみと言ったが、季節感を感じるようなものだろうか?まるで、あっちこっちを回っているサーカスが来たような表現だった。
きっと、春男と毎日会っていたら、友人は確実に減るだろうとオレはぼんやりと考えていた。オレだって、仕事じゃなかったら会わないだろう。……たぶん。




