29話 羽の色
羽の色
紅葉が始まりましたとテレビで言っているのを見かけた。
その日、春男はテレビを見ていたようだ。テレビはついていなかったが、いつもはしまってあるリモコンがソファに置きっぱなしになっていた。せっかく薄い、新しいものなのに、めったに付いていることのないテレビだ。なんて珍しい。
テレビもそんなに見ず、新聞もまったく読まずで、最先端の流行に付いていけるのだろうか。こんなことで、作家として平気なんだろうか。オレはちょっと考える。
ところで、そっと内容を聞いてみないと、ときどきそのテレビの内容が作品に影響を及ぼす。
「珍しいな。テレビか?」
春男はお茶を差し出しながら言った。
「うん、そう。たまにはね。そういえば、知っているかい?日本語で、類は友を呼ぶって言うだろう?英語では同じ羽の色をもつ鳥が集まるっていうんだってさ。」
……それはテレビで知る情報ではなく、中学だか、高校時代の英語の教科書で習うものではないだろうか。まさか、社会人になってから改めて聞かされるとは思わなかった。もう英語は勉強したくない。オレは苦手だった。
「まぁ、そう確かに、言うな。これ、なんのお茶だ?」
なんだか、変わった味がする。
「珍しく、普通のどくだみ茶だよ。なんにも交ざってない。」
「そうか。」
オレは、安心して?飲んだ。まぁ、ほんとうかどうかは、オレの舌では分かるまい。
「でもさ。孔雀みたいな、男女で色の違う鳥がどうするんだろうね?同じ色だけで集まっていたら絶滅しちゃうよねぇ。」
そういうことで使う言葉ではない。あくまで比喩だ。
「英語の教育番組をテレビで見ていたのか?」
「ううん。科学捜査について見ていたんだ。手紙のように、同じ紙の上に何度も文字を書いても、それがどの順番で書かれたものなのかわかるんだって。科学って日々進歩しているものなんだねぇ。」
なにやら、春男は感動したようにしているが、はっきり言って、オレはそれがどうしたと言いたい。言ったらすねるので言えないが。
春男の場合は、筆圧がどうのこうの、というより前に書いた字の解読のほうが大変だ。はっきりいって、きれいとは言いがたい。手紙のやりとりも、パソコンで打っている。そのほうが相手に対して、親切だとオレは思う。作品も手書きされたら、読み直すにも時間がかかることだろう。
「自分の後ろに生えている羽の色が見えたら、どんな人がまわりに集まるのか、すぐにわかるのにねぇ。楽しそうだろう。ん?羽が後ろにだけあるとは限らない方がいいかなぁ……。」
なぜ、テレビで見ていただけの科学と、英語のことわざの鳥の羽の色が結びついたのか、どんなに科学が進歩しても、こればっかりはわからないだろう。科学より、心理学の方が解明には近いかもしれない。だが、何年一緒にいても、オレにもよくわからない。答などあるのだろうか。
「いや、だから、そういう問題では……。同色嫌悪という言葉のあるしな。わからないほうがいいんじゃないか?羽が基本的に、飛ぶためのものだから、前にあったら、見えないじゃないか。」
「ああ、それもそうか。そうだね、もしかしたら、みんなが玉虫色みたいな色かもしれないし。それで、色の量が違うんだ。それで、年齢と共に変化していく。いいなぁ。今度の作品に使ってみようかなぁ。」
「まて。書くならもっと詳しく決めてからにしろよ。」
「わかったよ。」
なんだか、春男はよく聞いていないように何か考え込んでいるようだ。話が頭の中で動いているのだろう。
そんな春男を横目で見ながら、こいつと同じ色を持つ人がいたら、その周りは大変だろうなぁと、オレはしみじみ考えていた。




