27話 運動会の季節
運動会の季節
大抵の企業は土日と休みだろうが、オレの場合は作家によって休みがころころ代わる。しかし、その日は珍しく、日曜日と休みが重なった。
遅くまで寝ていたら、昼に急にお腹がすいてきた。家には何もない。
「しょうがない……。」
外に食べに行くことにした。
ぶらぶらと歩いていると、なにやら音がする。そっちのほうをみていると、なにやら歓声も聞こえる。
「あー、運動会かぁ……。」
もうそんな時期なんだなぁとぼんやり考えていると、いつも行っている蕎麦屋が休みだった。ほかにも着ていた人が話していた。
「ああ、そこの家族は今日は運動会だから、休みなのよ。」
そうなのかと、人の話を聞いてわかった。
そういえば、秋の運動会は親が見に来ていたものだ。だが、あまりに遠い記憶のせいかあまりはっきりと思い出せない。自分が何をやったのかもさえも覚えていないのだ。
自分のことさえも覚えていないのだから、他のクラスの春男なんて顔さえも思い浮かばない。
ところで、この蕎麦屋を逃すと、駅付近まで行かないと食べ物屋はない。コンビニのほうが近い。そう思って、コンビニに向かうと。
「ない。」
弁当もパンもない。
「あー、すいません、今日、運動会が二箇所であるんで、売り切れちゃって。」
店主は恐縮そうにいった。
春男の家の前を通ると、向こうから女の子が向かってきている。あれは……。
「翔子さん。」
「あー、佐々木さん。どうしたんですか?」
「運動会のせいで、食いはぐれて駅まで行く途中。翔子さんは?」
「兄さんにアイロンのコツを聞こうと思って。ああ、そうだ、食べるものなら兄さんが何か作ってくれますよ。寄っていきませんか?」
「あー、いいよ。しょっちゅう、夕食作ってもらっているし、仕事もあるだろうから。」
「ないですよ。」
「……え?」
オレは目を丸くした。
「昨日電話したら、なんでも神が降ってきた様で、完成したそうです。」
「マジで?まだ締め切りまで四日あるのに?」
いつも春男には、三日早く締め切りを伝えてある。つまり、一週間も早い。奇跡だ……。結局オレは春男の家に転がり込んだ。
「あー、運動会ねぇ。だから、リュックをしょっていたのか。窓から見てて、遠足かと思ったよ。はい、できたよ。」
春男の作った、チャーハンを食べながら、春男が妹にアイロンかけを教えるのを見ていた。春男の家にアイロンがあるのに、びっくりした。オレの家にはない。
「やっぱり、兄さんがかけると綺麗ねぇ。」
おそらく親父さんがかけても綺麗だろう。
「ありがと。じゃあ、佐々木さん、ごゆっくり。」
そういって、翔子さんは帰っていった。春男はアイロンを片付け始めた。
「お前、運動会の記憶あるか?」
「ないねぇ。今日聞いて、この時期だっけって思ったくらいだ。」
やっぱり。とりあえず、明日になったら、できた原稿を取りに行こうと思った。




