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15話 ウクレレ

 ウクレレ

 

春男とオレは同級生だ。しかし、春男にアルバムと聞いたら、CDではなく、写真の方を思い浮かべるだろうというくらい、音楽に縁がない。というよりも本人がそんなに関心がないのだろう。年齢はあまり関係ないのかもしれない。オレなど、いつも音楽を携帯している。

しかし、春男は珍しくその日、音楽の話をした。

「ウクレレって知っているかい?」

春男の言うことには、やっと驚かないようになってきたのに、これにはさすがにちょっと言葉を失った。どうして、ウクレレなんだろう。本当に、自分の頭に浮かんでいる楽器で良いのか、ちょっと考え込んだくらいだ。

「ああ。知識としてはな。」

それ以外、知っている若い者がいるだろうか。家族の人がやっているとかでもないかぎり、まず家にはないだろう。音楽が趣味だという人でもそんなに多くはないと思われる。少なくとも、オレの周りにはいない。春男の周りはわからないが。

「買うのか?」

恐る恐る聞いてみた。楽器を買うのは、春男の自由だが、そのうち演奏に付き合わされたりしたらどうしよう。

「ううん。アロハシャツの店を見つけたんだ。専門店だって。そこで、楽器の演奏も教えてくれるそうなんだけど、僕は面倒でね。」

ひさしぶりに春男は面倒くさがりでよかったと思った。しかし、春男は一体どこからそんな情報を得たのだろう。

「ん?テレビでやっていた。」

よっぽど、地域に密着した番組だったに違いない。

「それで?」

「アロハシャツを買ってきたけど、いる?」

春男はそこにあったガサガサと袋を開けてみせた。すると、たしかに、あの独特な派手なシャツが出てきた。いや、絶対に、これは着られない!家の中でも誰かに見られるなら着ないぞ。四十年もあとならまだしも、今は無理だ。

「い、いらない。どうしたんだ、それ?」

「父さんが買って来いって。」

 春男は自分に服を当てながら言った。

「親父さんが?お前、それ、着るのか?」

春男の父親は裁縫も趣味にしている。

「どこかに行くわけじゃないし寝。一枚は僕が家で着る。もう二枚は父さんに渡そうと思って。一枚は自分で着るんだけど、一枚はこれを分解して、自分で作ってみるんだって。この時期に足元に毛糸が落ちていたら変だろう。」

オレはふと、隠し事というのは大変なんだなぁと改めて感心していた。そんなことまで考えていたとは。たしかに、この暑い時期の毛糸はまずいだろう。春男の父親はまだ家事が万能であることを妻に隠し続けているようだ。

「いいかげん、少しずつでもばらせばいいのに。」

「母さんが入院したら、考えてみるって。」

「入院するのか?」

オレは目を丸くした。そんな話は聞いていない。

「したら、の話だよ。」

「何だ……。」

しかし、一生、隠しておくといっていたことから考えればそれだけでも進歩なのかもしれない。問題なく、ゆっくりとばれていくことをオレも期待している。


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