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14話 かっぱ、河童、合羽

 かっぱ、河童、合羽


 空を見上げると、分厚い雲が広がっている。いつもの事ながら、この時期は傘が手放せない。そして、よく置き忘れる。

「あー、降っているなぁ。」

空を見上げてつぶやいた。どれだけ雨が降っていても、風が吹いていても作品だけは絶対にとってこいと編集長は言う。とりあえず、オレは今日はまず、双子の作家の家を訪ねた。作品は出来上がっていたようで、すぐに、中身を確認して、春男の家に向かった。しかし。

「なんて、格好だ!」

「いいじゃないか、君以外、誰か来るわけじゃないし。」

春男は長くなってきた前髪をゴムで止めてちょんまげみたいにしていた。これが、四捨五入すれば三十路になるような男のする恰好だろうか。あいかわらず、除湿の効きすぎか、寒い。

「さみぃ。切るぞ。」

返事を待たずに切った。乾燥しすぎているのもの問題だ。

「そんなに寒いか?」

「外からくればな。たまには出かけろよ。」

「明日行くよ。」

「どこに?」

「河童の作品展示会。知っているかい?泳げない人のことを金づちにたとえるように、泳ぎが堪能な人のことを河童にたとえるんだってさ。」

それはともかく、河童。そんな展示会があることさえも知らない。

「それで?作品は?」

「明日にはできあがるよ。」

「展示会に出かけるんだろう?」

「でも午前にいくんだ。午後から雨がひどくなるそうだから。」

「その午後に来るよ。」

「わかった。」

そして、その日は帰った。翌日。午後からひどくなるはずの大雨は午前に襲ってきた。そして午後は一転してキレイに晴れ上がった。軽い足取りで春男の家に向かうと、玄関に、まだぬれている合羽が引っかかっていた。まさか?

「春男、お前、もしかして、今日の午前中、行ったのか?河童の展示会。」

春男はいつもの椅子ではなく、なにやら、台所に立っていた。

「行ったよ?」

オレは目を丸くした。

「あんなに暴風雨だったのに?」

「うん。傘はさすがにさせなかったけど、あれ着て行ったよ。」

 ねずみ男のようにして、行ったのか……。展示会の人も顔には出さなかったかもしれないが、かなりあやしげな男に映ったことだろう。

「それにしても、よく開いていたな。」

「うん。展示会の人も言っていた。来る人がいるとは思わなかったって。あんなに、大雨じゃねぇ。お客も僕以外は関係者しかいなかった。おかげで、説明の聞き放題。なかなか楽しかったよ。ついでに、これ、プレゼントしてくれた。はい、出来たよ。」

「なんだ?……かっぱ巻き?」

「プレゼントはきゅうりだけど、せっかくだから巻いてみた。土産にきゅうりが売っていたんだけど、さすがに今日は誰も来ないだろうからって。午後からこんなに晴れるとは思ってなかったんだろうね。」

 オレは食べながらぼんやり思い出していた。そういえば、河童の好物はきゅうり。そして、なかなかうまかった。


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