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12話 ポスト

ポスト


春男はあまり家から出ない。しかし、それでも絶対に出ないというわけには行かない。食料が必要になるからだ。もちろん家庭用品もだが。

それとは別に、春男が近くに出かける用は、ポストにある。手紙やハガキなどは郵便局かポストに出すものだ。荷物なら取りに来てもらえるが、ハガキを取りに来てもらうようになったら、絶対に絶交するといってある。まぁ、春男の場合は絶交になっても気にしないかもしれないが。

とりあえず、友人への手紙や懸賞などのハガキのような薄くて、軽いものは、いまのところは自分で出している。

友人当てはともかく、懸賞に応募する時間があるなら作品を早く書き上げればいいのだが、本人は書いている間の休憩だという。しかし、オレはひそかに思っている。ああやって、たまには自分の住所を書かないと、忘れるからじゃないかと。携帯の番号のようなものだ。毎日使っているのに、自分の番号を覚えていない者は多い。

その懸賞が当たるのかと聞かれると、たまに、としかいえない。いままでに、なにかあっただろうかというほどに、記憶もあいまいだった。

問題は、悪いことにそのポストは、春男の家とオレの家の間にあるのだ。このポストが春男の家から最短だった。

「はい、これ。帰りに出してきて。」

ハガキを何枚か渡された。春男はにっこりと笑っている。

「あのな、いつも言っているだろう?自分で出せよ。」

「いいじゃないか、帰る途中にあるだろう?」

「こういうものは自分で出すから意義があるんだろう。何かあたったら半分もらうぞ。」

「分けられるような物だったらね。」

ハガキの裏を見ながらオレは考えていた。米は、分けられるが旅行は無理だろう、食器は要らないし、調味料はあたっても、ここにおいて置くのが一番だ。本当に、なにかこれが欲しいというような出し方とは言えないようだ。

「インターネットでも出せるんだけど、ハガキのほうが出したって感じがするからねぇ。」

そういうものだろうか?自分でポストに入れるわけでもないというのに。

「これ、締め切り、まだなんだろうな?」

「うん。君が来そうな日に間に合いそうなやつを選んだから。その前の締め切りのものは、買い物ついでに出しに行ったよ。買い物先と反対ってところが面倒だよねぇ。」

春男はため息をついた。たしかに、そのとおりだ。そこまで面倒なら、いっそのこと、出さなきゃいいのに。しかし、このハガキはどこから持ってきたのだろうか?

「ああ、それ?年賀のあまり。年賀の懸賞の交換ついでに、普通のハガキにしてもらう。出、今年中に使い切る。なかなか、いいだろう?」

「最初の年賀の懸賞の時点で、何も当たらなかったら、どうするんだ?」

「郵便局に用ができるまで待つ。」

春男はそう言ったが、おそらく、そんな日はこない。

切手は、買い物先で買ってきている。それも、まだかなりの量が引き出しの中に眠っている。ハガキは年賀のあまり。春男の母親のように、誰かに荷物を出すこともない。もしハガキの交換だけならオレに行かせる気だろう。

オレはため息をついた。なぜ、あんなところにポストがあるのか。家が先か、ポストが先か。とりあえず、出し忘れないようにはしよう。

別に出すのを忘れたからといって、春男には分からないだろうが、ただ単にオレの性格上なだけのことである。



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