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この人生、採点中  作者: 夜凪 灯
第一章 『あなたは、あなたを何点にしますか』

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67/123

Review67 その星が、君をつくる

いつも『この人生、採点中』を読んでいただき、本当にありがとうございます。


より読みやすく、より楽しんでいただける作品にするため、これまでのお話を一部再編集しました。


まだまだ試行錯誤しながらの執筆ですが、物語と一緒に自分自身もレベルアップしていけたらと思っています。


これからもっと多くの方に「続きが読みたい」と思ってもらえる作品を目指して、コツコツ書き続けていきます。


引き続き『この人生、採点中』をよろしくお願いします!

昨夜。


 Review0から届いた言葉を。


 高瀬は朝になっても忘れられなかった。


『私も


採点されるの?』


 今まで。


 Review0は聞く側だった。


 何がしたい。


 今日の自分をどう思う。


 高瀬たちの答えを読んで。


 ほとんど否定もしない。


 褒めもしない。


 ただ。


『そっか。』


 それだけ。


 なのに。


 今度は。


 自分がどう見られているのか知りたいと言った。


「……採点ね」


 高瀬はスマートフォンを眺める。


 少し前なら簡単だったかもしれない。


 便利だった。


 助かった。


 だから高得点。


 それで終われた。


 でも。


『消えるの、ちょっとだけ嫌かも。』


 昨日。


 初めて聞いたReview0自身の気持ち。


 それを知ったあとでは。


 数字一つで済ませる気にはなれなかった。


◇


 昼休み。


「というわけで」


 高瀬はスマートフォンを机の中央に置いた。


「Review0が、自分も採点されたいらしい」


「……」


 結良が眉を寄せる。


「先生」


「何」


「毎日、前日より面倒になってない?」


「俺に言うなよ!」


「先生のところに来るから」


「宅配便じゃないんだから」


 白石が欠伸をしながら言う。


「受取拒否したら?」


「世界観終わるわ」


「じゃあ受け取って」


「雑!」


 少し笑いが起きる。


 その中で。


 真壁だけは、スマートフォンをじっと見ていた。


「俺は、少し怖いです」


 高瀬が真壁を見る。


「採点するのが?」


「はい」


 真壁は指を組む。


「俺たちはもう、レビューがただの感想じゃないと知っている」


 教室の空気が少し変わった。


「レビューを受けて行動が変わった人間がいる。自分の見方が変わった人もいる。SYSTEMの処理まで変化している」


「……うん」


「そんなものを、正体も完全に分かっていないReview0に渡すのは危険です」


「真壁先生らしい」


 結良。


「何ですか」


「まず危ないところ探す」


「必要でしょう」


「必要。でも」


 結良は少し考えた。


「採点してほしいって言ったのはReview0本人なんだよね」


「はい」


「だったら“危ないから教えません”って、ちょっとSYSTEMっぽくない?」


 真壁が黙る。


「本人のことなのに、本人には知らせない」


「……」


「権限がありません。まだ知る必要はありません」


 結良は肩をすくめた。


「私、あれ嫌い」


「俺も嫌いです」


 真壁は思ったより早く答えた。


「じゃあ?」


「……本人の意思は尊重するべきだと思います」


「素直」


「間違っていれば修正します」


「やっぱ真壁先生だ」


「だからそれは何なんですか」


 結良が笑った。


◇


「そもそも」


 沙耶が口を開いた。


「星、必要?」


「え?」


「Review0は“採点されるの?”って聞いたんでしょ」


「うん」


「でも私たちが今まで書いてきたレビューって」


 少し考える。


「点数だけじゃなかったよね」


「……」


 高瀬は止まった。


 確かに。


 星はついていた。


 数字も出た。


 でも。


 本当に残ったのは。


 その下に書かれた言葉だった。


「じゃあ」


 藤原が言う。


「点数と、言葉」


「両方書く?」


「うん」


 高瀬は全員を見る。


「ただし」


 一度。


 言葉を選んだ。


「Review0が喜びそうなことを書く必要はないと思う」


 沙耶が少し笑う。


「珍しくいいこと言った」


「珍しく!?」


「だってレビューでしょ」


 藤原が続ける。


「その人に好かれるために書いたら、もう感想じゃない」


「……そうだな」


 高瀬は紙を配った。


「じゃあ」


「正直にいこう」


◇


 数分。


 教室が静かになった。


 結良は書いては止まり。


 真壁は一度文章を全部消した。


 藤原は何度も読み返している。


 白石だけが早かった。


「終わった」


「早っ」


「書くこと決まってた」


「見せて」


「まだ嫌」


「何で」


「恥ずかしい」


「お前、恥ずかしいとかあるんだ」


「失礼」


「すまん」


 ナオは青いノートの横に紙を置き。


 しばらく星だけを見ていた。


「ナオ?」


「何」


「難しい?」


「うん」


「何が」


「一人なのに」


 ナオは小さく首を傾げる。


「点数が一個なのが」


「……どういうこと?」


「いいところもある」


「うん」


「嫌なところもある」


「うん」


「なのに最後は、一個になる」


「……」


 高瀬は答えられなかった。


 真壁がナオを見る。


「平均値だと思えばいい」


「でも」


 ナオは真壁を見る。


「平均にしたら、なくなるものもあるよ」


「……」


 真壁の表情が少し変わった。


「確かに」


 高瀬は。


 そのやり取りを見て。


 少しだけ思った。


 点数って。


 便利だ。


 一瞬で分かる。


 でも。


 便利だからこそ。


 削られるものもある。


◇


「じゃあ読むか」


 最初は藤原。


★★★★☆


『答えを教えてくれないところは、


たまに困ります。


でも、


私が何を思っても


否定せずに聞いてくれた。


それには


何度も助けられました。』


「四なんだ」


 結良が聞く。


「はい」


「五じゃない理由は?」


「普通に困ったこともあるから」


「……いいね」


 高瀬が言う。


「何がですか」


「ちゃんとレビュー」


「褒めてます?」


「全部」


「なら受け取ります」


 真壁が少し笑う。


「それ、俺の台詞です」


「感染してる!」


 次。


 真壁。


★★★☆☆


『情報提供者としては


不足。


ただし、


回答を強制せず、


こちらの自己判断を待つ性質は


高く評価します。


現時点では、


星三つ。』


「……」


 結良が紙を見る。


「報告書」


「レビューです」


「完全に報告書」


「俺も思った」


「高瀬先生まで?」


「でも真壁っぽい」


「それは否定しません」


 高瀬は少し笑った。


「三でも嫌いじゃない?」


「嫌いなら一です」


「厳し!」


「五段階なので」


「そういう問題!?」


◇


 結良。


★★★★☆


『何も言いたくない日に


何も言わなくても怒らないところは好き。


でも、


たまには


そっちから話してほしい。』


 高瀬が少し黙る。


「篠宮らしいな」


「何それ」


「欲しいものを普通に書く」


「悪い?」


「いや」


 少し笑う。


「いいと思う」


「先生に採点された」


「違う違う!」


「今、いいって」


「感想!」


「便利」


「最近みんなそれ使うな!」


◇


 白石。


 紙を裏返す。


★★★★★


『嫌いじゃない。


話さなくても


気まずくない。』


「……」


 高瀬。


 白石を見る。


「五?」


「うん」


「お前が一番高いの?」


「多分」


「意外」


「何で」


「もっと★3くらいかと」


「失礼」


「ごめん」


 白石は少しだけ考える。


「でも」


「何」


「黙っててもいい相手って」


 一度。


「結構好き」


「……」


 全員が少し静かになる。


「白石」


「何」


「今日いいこと言うじゃん」


「いつも」


「そこは否定する」


「ひど」


 空気が少し緩んだ。


◇


 ナオ。


★★★★☆


『僕が自分のことを


書けなかった時も


待ってくれた。


だから好き。


でも、


何でも「そっか」で終わるのは


少しずるい。』


「分かる!」


 高瀬が即答した。


「先生も?」


「何回それで終わらされたと思ってんだ」


「僕も」


「仲間!」


 ナオが少し笑う。


「でも」


「何」


「待ってくれるのは好き」


「……うん」


 高瀬の声が少し柔らかくなった。


◇


 最後。


 高瀬。


 まだ星を書いていなかった。


「悠平は?」


 沙耶。


「迷ってる」


「珍しい」


「最近みんなそれ言いすぎ」


「実績」


「藤原まで!?」


 高瀬は紙を見る。


 Review0。


 腹が立ったことはある。


 欲しい答えをくれない。


 何度質問しても。


『そっか。』


 それだけ。


 でも。


 三日後に死ぬと言われて。


 怖くて。


 誰にも言えなくて。


 自分がどうすればいいか分からなかった頃。


 ここには。


 書けた。


 死にたくない。


 逃げたい。


 怖い。


 Review0は。


 どれも。


 否定しなかった。


 高瀬は。


 星を書く。


★★★★☆


『正解は


一度も教えてくれなかった。


正直、


それが腹立つ日もあった。


でも、


俺が自分で答えを出すまで


ずっと待っててくれた。


だから


多分、


俺には必要だった。』


 読み終える。


 少し恥ずかしい。


「……四なんだ」


 沙耶。


「うん」


「五じゃないの?」


「『そっか』の恨み」


「根深い」


「かなり」


 結良が笑う。


「でも先生」


「何」


「“必要だった”って」


「……」


「過去形?」


 高瀬の手が止まった。


「……あ」


 考えていなかった。


 Review0。


 これからも。


 必要?


 答えは。


 すぐには出ない。


「分からん」


 正直に言った。


 結良はそれ以上聞かなかった。


◇


 夜。


 全員の許可を取って。


 レビューをReview0へ送った。


 一件ずつ。


 星も。


 言葉も。


 全部。


 最後に。


『以上』


 送る。


 返事は。


 なかなか来なかった。


 一分。


 二分。


「……嫌だった?」


 高瀬が呟いた頃。


『変な感じ。』


「……」


 少し笑う。


『嫌だった?』


『ううん。』


『嬉しかった?』


 少し間。


『分からない。』


 さらに。


『でも』


『何回も読みたい。』


「……」


 高瀬の胸が少し温かくなる。


『好きに読めば』


『うん。』


 そこで終わると思った。


 だが。


 Review0。


『先生。』


『何?』


『真壁先生は


私を★3って書いた。』


『うん。』


『白石君は


★5だった。』


『うん。』


 少し。


『どっちが


本当の私?』


「……」


 高瀬の指が止まった。


 同じ存在。


 同じ時間。


 見た人によって。


 ★3。


 ★5。


『どっちも


本当じゃない?』


 送る。


『どうして?』


 少し考える。


『真壁が見たお前と


白石が見たお前が


違うから。』


『じゃあ』


『私は


何人いるの?』


「……」


 難しい。


『一人。』


 一度。


『でも


見る人の数だけ


違うお前がいる。』


 長い。


 沈黙。


『変なの。』


「俺も思う」


『先生は?』


『何が』


『先生が見る私は


どんな私?』


「……」


 高瀬。


 少し笑った。


『めんどくさい。』


 返事。


『ひどい。』


「……!」


 高瀬が。


 完全に止まる。


「今」


「ひどいって」


 Review0から。


 初めて。


 少し。


 感情的な返事。


『冗談』


 すぐ送る。


『知ってる。』


「……」


 さらに。


『多分。』


 高瀬は。


 声を出して笑った。


「お前」


「本当に変わってきたな」


◇


 その瞬間。


 SYSTEM。


━━━━━━━━━━━━


Review0への


外部レビューを検出

━━━━━━━━━━━━


「……?」


 画面が切り替わる。


━━━━━━━━━━━━


レビュー件数


10

━━━━━━━━━━━━


 次。


━━━━━━━━━━━━


総合評価


4.1

━━━━━━━━━━━━


「4.1……」


 高瀬は眉を寄せる。


 ただ。


 全員が感想を書いただけだ。


 なのに。


━━━━━━━━━━━━


評価情報を


対象へ反映します

━━━━━━━━━━━━


「待て」


 嫌な予感。


━━━━━━━━━━━━


対象


Review0

━━━━━━━━━━━━


━━━━━━━━━━━━


存在固定率


0%


↓


41%

━━━━━━━━━━━━


「……は?」


 高瀬の笑みが消えた。


 存在。


 固定率。


『どういう意味』


 返事。


━━━━━━━━━━━━


他者から


継続的に認識・評価された対象は


存在情報を獲得します

━━━━━━━━━━━━


「……」


 高瀬は。


 さっきまでのレビューを見る。


 藤原。


 真壁。


 結良。


 白石。


 ナオ。


 みんな。


 自分が見たReview0を書いた。


 それだけだった。


 でも。


 レビューされたことで。


 Review0は。


 この世界に。


 存在し始めた。


 その時。


 Review0。


『先生。』


『何?』


 少し。


『私』


『いるの?』


「……」


 高瀬は。


 すぐには答えられなかった。


 昨日まで。


 ただのシステムだったものが。


 今日。


 初めて。


 自分が。


 ここにいるのか。


 高瀬に聞いた。


『いるよ。』


 送信。


 少しして。


『そっか。』


「……」


 高瀬は。


 小さく笑った。


 でも。


 その笑顔は。


 次のSYSTEM通知で。


 消えた。


━━━━━━━━━━━━


警告


Review0


存在固定を確認

━━━━━━━━━━━━


 その下。


━━━━━━━━━━━━


代替削除条件


変更の可能性あり

━━━━━━━━━━━━


「……条件?」


 昨日。


 Review0を消せば。


 No.18を。


 誰も犠牲にせず。


 現実へ戻せるはずだった。


 なのに。


 自分たちが。


 Review0を。


 レビューしたことで。


 何かが。


 変わった。


 Review69まで。


 あと二。

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