↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この人生、採点中  作者: 夜凪 灯
第一章 『あなたは、あなたを何点にしますか』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/117

Review51 知らない自分を嫌いにならない

 翌朝。


 午前七時四十九分。


 高瀬は職員室の自席で、同じ画面を三分ほど見続けていた。


 メールを開いている。


 文面も読める。


 返信も、三行で済む。


 それなのに指が動かない。


『だから今度は、忘れないでね。』


 昨夜。


 Review0に表示された、その一文。


 目を閉じれば、すぐ浮かぶ。


 顔は見えない。


 名前も知らない。


 それでも。


 声だけが、妙に近い。


『先生を辞めないで。』


「……」


 高瀬は息を吐き、椅子の背にもたれた。


「朝から重いですね」


「うわっ」


 すぐ横から声がして、肩が跳ねる。


 藤原が立っていた。


「いつからいた?」


「今です」


「本当に?」


「本当に」


「最近、人の気配に敏感になりすぎてる」


「それより」


 藤原は高瀬のパソコンを見る。


「このメール」


「うん」


「昨日からありますよね」


「……」


「返信してない?」


「今しようと思ってた」


「三分くらい?」


「見てた?」


「通りすがりに二回」


「二往復したの!?」


「コピー機です」


「仕事してた!」


「はい」


 藤原は少しだけ笑った。


 でも。


 そのまま隣へ行かない。


 高瀬の顔を、少し長く見る。


「昨日」


「うん」


「眠れました?」


「……」


 高瀬は答えようとして。


 一度、口を閉じた。


「寝た」


「何時間」


「聞く?」


「聞きます」


「四」


「それは」


「寝た」


「寝不足です」


「判定厳しい」


「普通です」


 高瀬は苦笑した。


 藤原も、ほんの少し口元を緩める。


「No.18」


 その言葉が出た瞬間。


 高瀬の笑顔が、わずかに止まった。


「……うん」


「昨日」


「少し思い出したんですよね」


「顔は見えてない」


「はい」


「名前も」


「はい」


「でも」


 高瀬は机の上のスマートフォンを見る。


「声」


「残ってる」


「……」


「あと」


「味噌ラーメン」


 藤原が一瞬だけ目を丸くする。


「そこ?」


「いや、結構大事なんよ」


「分かってます」


「今ちょっと笑っただろ」


「少し」


「やっぱり!」


「でも」


 藤原の表情が戻る。


「高瀬先生」


「何」


「焦って思い出そうとしてません?」


「……」


 高瀬の目が泳ぐ。


「してない」


「してますね」


「顔?」


「今の間」


「顔じゃなかった!」


 少し笑う。


 けれど高瀬は、すぐには続けられなかった。


 指先でスマートフォンの縁をなぞる。


「……怖いんだよな」


 藤原は何も言わない。


「何が?」


 少し待ってから、静かに聞いた。


「思い出すのが」


「……」


「会いたいのに?」


「うん」


「矛盾」


「分かってる」


 高瀬は小さく笑った。


「もしさ」


「はい」


「思い出した俺が」


 一度、言葉が止まる。


「今の俺から見て」


「めちゃくちゃ嫌なやつだったら」


「……」


「どうしようって」


 藤原の眉が、ほんの少し寄った。


「嫌なやつ?」


「三年前」


「姉を0点にした」


「……」


「自分で姉の記憶を消した」


「……」


「No.18のことも」


「多分」


「俺が忘れた」


「……」


 高瀬は視線を落とす。


「今なら」


「絶対やらない」


 少し考える。


「……いや」


「絶対は言えん」


「はい」


「でも」


「一人で決めない」


「……」


「なのに」


 一度、唇を噛む。


「昔の俺は」


「何回も」


「勝手に決めてる」


「……」


「その俺も」


「俺なんだよな」


 藤原は高瀬を見たまま、すぐには返さなかった。


 数秒。


 職員室の音。


 コピー機。


 キーボード。


 誰かの挨拶。


 普通の朝。


 その中で。


「高瀬先生」


「うん」


「今の高瀬先生」


「三年前の自分」


「嫌いですか」


「……」


 質問。


 思ったより。


 刺さる。


「分からん」


「……」


「多分」


「嫌いっていうより」


「腹立つ」


「何で」


「もっと周り見ろよって」


「……」


「一人で決めんなよって」


「……」


「今の俺が」


「昔の俺に」


「言いたい」


 藤原が少しだけ笑う。


「それなら」


「何」


「昔の高瀬先生が」


「今ここにいたら」


「多分」


「今の高瀬先生と」


「喧嘩しますね」


「絶対する」


「すぐ?」


「五分」


「長い」


「三分」


「短くなった」


 二人。


 少し笑った。


「でも」


 藤原が続ける。


「喧嘩できるなら」


「まだ」


「嫌い切ってないんじゃないですか」


「……」


 高瀬。


 顔を上げる。


「本当に」


「どうでもいい人なら」


「何も言いたくならない」


「……」


「昔の自分に」


「言いたいことがあるなら」


「それ」


「まだ」


「自分として」


「見てるんじゃないですか」


「……」


 高瀬。


 少し。


 考える。


「藤原」


「はい」


「今日」


「かなり」


「いいこと言うな」


「今日?」


「そこ拾う!?」


◇


 午前十一時三十七分。


 休み時間。


「高瀬先生」


「何」


「篠宮さん」


 真壁が廊下の先を見る。


 結良。


 一人。


 窓際。


 立っている。


 普段なら。


 誰かと話しているか。


 高瀬を見つけて、何か言ってくる。


 でも今日は。


 外。


 ずっと見ている。


「……」


 高瀬。


「俺」


「行く」


「はい」


「一人で?」


「うん」


「大丈夫?」


「何が」


「会話」


「お前」


「俺を何だと思ってる」


「最近」


「複数人で」


「考える人」


「褒めてる?」


「全部」


「……」


 高瀬。


 少し嬉しそう。


「では」


 真壁。


「行ってください」


「雑!」


◇


 高瀬。


 結良の横。


 三歩くらい。


 離れて止まる。


「……」


 結良。


 気付かない。


 いや。


 多分。


 気付いてる。


 でも。


 見ない。


「篠宮」


「……」


「何」


「今日」


「何点」


「……」


 高瀬。


 少し。


 止まる。


「それ」


「俺が聞かれる側じゃない?」


「今日は」


「逆」


「……」


 結良。


 ようやく。


 高瀬を見る。


「何点に見える」


「……」


 高瀬。


 結良の顔を見る。


 いつもの。


 少し。


 いたずらっぽい目。


 今日は。


 ない。


「三十四」


「低」


「でも」


「昨日より」


「どう」


「分かんない」


「……」


「じゃあ」


 結良。


 少し。


 笑う。


「三十四で」


「いい」


「適当」


「先生の採点なので」


「俺」


「今」


「Reviewみたいなことした?」


 高瀬。


 顔。


 少し変わる。


「……」


 結良。


 すぐ気付く。


「あ」


「ごめん」


「何で謝る」


「今」


「嫌だった?」


「……」


 高瀬。


 少し考える。


「一瞬」


「うん」


「でも」


「今」


「篠宮が」


「何点か」


「決めたわけじゃない」


「……」


「俺が」


「勝手に」


「今の顔見て」


「そう思っただけ」


「……」


「違ったら」


「違うって」


「言えばいい」


「……」


 結良。


 少し。


 目を細める。


「先生」


「何」


「昨日より」


「ちょっと」


「面倒くさい」


「何で!」


「考えすぎ」


「それは」


「ある」


 二人。


 少し。


 笑う。


 でも。


 笑い。


 長く続かない。


「篠宮」


「何」


「Review0」


「……」


 結良。


 顔。


 止まる。


「思い出した?」


「少し」


「何か」


「……」


 結良。


 窓。


 外。


 見る。


「昨日」


「寝る前」


「ずっと」


「ピアノのフレーズ」


「頭にあった」


「うん」


「何回も」


「何回も」


「……」


「で」


 一度。


 喉。


 鳴る。


「知らない人の」


「声」


「聞こえた」


「……」


 高瀬。


 身体。


 少し。


 硬くなる。


「No.18?」


「分かんない」


「どんな声」


「女の人」


「若い?」


「多分」


「……」


「何て」


 結良。


 すぐ。


 答えない。


「先生」


「何」


「今」


「聞きたい?」


「めちゃくちゃ」


「……」


「でも」


「私」


「言いたくないって」


「言ったら」


「……」


 高瀬。


 一瞬。


 口を閉じる。


 少し前なら。


「何で」


「重要だから」


「聞かせて」


 そう。


 言っていた。


「じゃあ」


「言わなくていい」


「……」


 結良。


 目。


 少し。


 大きくなる。


「マジ?」


「マジ」


「聞きたそう」


「死ぬほど」


「顔」


「出てる」


「でも」


 一度。


 高瀬。


 息を吐く。


「篠宮の記憶」


「俺のものじゃない」


「……」


「だから」


「言いたくなったら」


「教えて」


「……」


 結良。


 しばらく。


 高瀬を見る。


「先生」


「何」


「気持ち悪い」


「何で!」


「成長しすぎ」


「褒めろ!」


 結良。


 少し。


 笑う。


「でも」


 一度。


 声。


 柔らかくなる。


「ありがとう」


「……」


「うん」


◇


 少し。


 沈黙。


 二人。


 窓。


 外を見る。


 校庭。


 体育。


 声。


 普通。


「私」


 結良。


 先に。


 口を開く。


「言う」


「え」


「さっきの」


「……」


「いいの?」


「うん」


「自分で」


「言いたくなった」


「……」


 高瀬。


 頷く。


「聞く」


「昨日」


「寝る前」


「女の人」


「言った」


 結良。


 少し。


 目を閉じる。


『結良』


「……」


『それ』


『あなたが悪いんじゃないよ』


「……」


 高瀬。


 眉。


 少し。


 寄る。


「何が」


「分かんない」


「……」


「でも」


「私」


「泣いてた」


「……」


「三年前?」


「多分」


「……」


「その人」


「私の肩」


「掴んで」


「……」


『あなたが作ったものが』


『間違って使われたからって』


『あなたまで』


『間違いになるわけじゃない』


「……」


 結良。


 目。


 開ける。


 少し。


 涙。


 溜まっている。


「先生」


「何」


「私」


「Review」


「作った」


「うん」


「それが」


「今」


「こんな」


「……」


 声。


 少し。


 詰まる。


「人」


「消したり」


「番号にしたり」


「……」


「先生」


「姉の記憶」


「消したり」


「……」


「ナオ」


「消えたり」


「……」


「桐谷先生」


「二人に」


「なったり」


「最後」


「ちょっと」


「特殊だけど」


「……」


 結良。


 笑えない。


「私が」


「作らなかったら」


「……」


 高瀬。


「篠宮」


「でも」


「先生」


「私」


「作った」


「うん」


「……」


「これ」


「私のせい?」


「……」


 高瀬。


 すぐには。


 否定しなかった。


 それを。


 結良も。


 見ている。


「……」


 数秒。


「一部」


「そうかもしれない」


「……」


 結良。


 少し。


 目。


 見開く。


「先生」


「でも」


「全部」


「違う」


「……」


「篠宮が」


「最初」


「作ったのは」


「今日の自分を」


「自分でどう思う?」


「って」


「聞くものだった」


「……」


「人を」


「0点にする」


「ものじゃない」


「……」


「001とか」


「作るものでもない」


「……」


「それを」


「誰が」


「どう変えたか」


「まだ」


「分からない」


「……」


「だから」


「篠宮に」


「一切責任ない」


「とも」


「今」


「俺は言えん」


「……」


 結良。


 黙る。


 高瀬。


 続ける。


「でも」


「篠宮自身が」


「間違い」


「ってことには」


「絶対」


「ならない」


「……」


 結良。


 高瀬を見る。


 目。


 少し。


 赤い。


「そこ」


「絶対」


「使うんだ」


「……」


 高瀬。


 一瞬。


 笑う。


「ここは」


「使う」


「……」


「何で」


「人が」


「何か」


「失敗したからって」


「その人全部」


「失敗になるわけじゃない」


「……」


「俺」


「三年前」


「姉に0点」


「つけた」


「……」


「多分」


「他にも」


「やらかしてる」


「……」


「でも」


 一度。


 自分の胸。


 指す。


「今」


「俺」


「0点の人間?」


「……」


 結良。


 少し。


 考える。


「五十八」


「低!」


「今の話」


「ちょっと長い」


「そこ減点!?」


 結良。


 涙。


 残ったまま。


 少し笑う。


「でも」


「昨日より」


「上」


「……」


「なら」


「いい」


◇


「先生」


「何」


「もし」


「昔の私」


「めっちゃ」


「嫌な人だったら」


「……」


 高瀬。


 朝。


 藤原との。


 会話。


 思い出す。


「俺も」


「今日」


「同じこと」


「考えてた」


「え」


「昔の俺」


「今の俺から見たら」


「結構」


「腹立つ」


「……」


「じゃあ」


 結良。


「どうする」


「……」


 高瀬。


 少し。


 考える。


「喧嘩する」


「自分と?」


「うん」


「怖」


「でも」


「言いたいこと」


「いっぱいある」


「……」


「何て」


「一人で決めんな」


「周り見ろ」


「人の話聞け」


「……」


「先生」


「何」


「それ」


「今の先生にも」


「結構」


「当てはまる」


「……」


「篠宮」


「はい」


「そこは」


「今」


「黙っとこう」


「嫌です」


「即答!」


 少し。


 笑う。


「でも」


 高瀬。


「昔の俺が」


「嫌なやつでも」


「そいつ」


「消せない」


「……」


「俺だから」


「……」


「なら」


「今の俺が」


「続き」


「やるしかない」


「……」


「昔の俺が」


「間違えたなら」


「今の俺が」


「違う選び方」


「する」


「……」


 結良。


 静か。


「それ」


「私も?」


「うん」


「昔の篠宮が」


「何したか」


「全部」


「まだ分からん」


「……」


「でも」


「今の篠宮が」


「どうするか」


「それは」


「今決められる」


「……」


 結良。


 長く。


 黙る。


 そして。


 小さく。


「そっか」


「うん」


「……」


「じゃあ」


 一度。


 制服の袖。


 握る。


「私」


「Review0」


「消さない」


「うん」


「でも」


「昔のまま」


「そのまま」


「使うんじゃなく」


「……」


「今の私で」


「考える」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「いいと思う」


「乗るの早い」


「今」


「篠宮が」


「決めたから」


「……」


「それなら」


「乗る」


「……」


 結良。


 少し。


 笑う。


「先生」


「何」


「今日」


「六十一点」


「上がった!」


「三点」


「でかい!」


◇


 午後三時二十一分。


 音楽室。


 結良。


 一人。


 ピアノ。


 前。


 今日。


 高瀬。


 いない。


 誰も。


 いない。


 鍵盤。


 一音。


 鳴らす。


「……」


 昨日。


 思い出した。


 フレーズ。


 弾く。


 ゆっくり。


 もう一度。


 もう一度。


 そして。


 途中。


 違う。


 一音。


 指が。


 勝手に。


 動く。


「……?」


 知らない。


 コード。


 でも。


 身体。


 知ってる。


 そのまま。


 弾く。


 今まで。


 途切れていた。


 フレーズ。


 その先。


 旋律。


 続く。


「……」


 結良。


 息。


 止まる。


 記憶。


 断片。


 三年前。


 音楽室。


 自分。


 沙耶。


 そして。


 もう一人。


 女子生徒。


 窓際。


 制服。


 背中。


「……」


 顔。


 見えない。


 でも。


 笑ってる。


『結良』


「……」


『それ』


『もうちょい』


『明るくできない?』


『無理』


『即答』


『だって今』


『明るい気分じゃない』


『じゃあ』


「……」


 声。


 少し。


 笑う。


『そのままでいいじゃん』


「……」


 結良。


 指。


 止まる。


「……誰」


 小さく。


 呟く。


 記憶。


 また。


『Reviewも』


『それでいいと思う』


『今日』


『最悪なら』


『最悪って書けばいい』


『でも』


『明日』


『変わったら』


『変わったって書けばいい』


「……」


 結良。


 目。


 大きくなる。


「No.18」


 その瞬間。


 旧式Review。


 勝手に。


 起動。



━━━━━━━━━━━━


過去記憶


同期率


23%

━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


 画面。


 見る。


 次.



━━━━━━━━━━━━


初回回答者


音声記録


一部復元可能。

━━━━━━━━━━━━



「音声」


 指。


 震える。


 再生。


 押す。


 ノイズ。


 数秒。


 そして。


 女の子の声。



『今日の自分?』



『……最悪。』



 結良。


 胸。


 強く。


 鳴る。



『でも』



『明日は』



『もうちょい』



『マシにしたい。』



 昨日。


 戻った言葉。


 でも。


 音声で。


 初めて。


 聞く。


「……」


 声。


 知ってる。


 知ってる。


 絶対。


 知ってる。


「名前」


 結良。


 息。


 浅い。


「名前」


 次。


 音声。


 続く。



『結良は?』



「……」


 結良。


 自分の。


 三年前の声。



『私は……』



『今日』



『この質問』



『作れてよかった。』



『……』



 女の子。



『じゃあ』



『今日は』



『それでいいじゃん。』



「……」


 結良。


 涙。


 落ちる。


 何で。


 こんな。


 声。


 忘れた。


 こんな。


 普通の。


 会話。


 忘れた。


 SYSTEM。


 突然。


 割り込む。



━━━━━━━━━━━━


警告。


初回回答者情報への


接近を確認。

━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


 顔。


 上げる。



━━━━━━━━━━━━


復元を


中止してください。

━━━━━━━━━━━━



「嫌」


 結良。


 初めて。


 即答。



━━━━━━━━━━━━


中止を


推奨します。

━━━━━━━━━━━━



「嫌」


「……」


 指。


 再生。


 続きを。


 押す。



━━━━━━━━━━━━


警告。

━━━━━━━━━━━━



「うるさい」


 声。


 震えてる。


 でも。


 手。


 止めない。



━━━━━━━━━━━━


これ以上の復元は


篠宮結良に


重大な心理負荷を


与える可能性があります。

━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


 手。


 止まる。


 怖い。


 さっき。


 高瀬。


 言った。


『一人にしない』


「……」


 結良。


 スマートフォン。


 閉じる。


「今は」


 小さく。


「一人で」


「やらない」


 立つ。


 高瀬。


 呼びに。


 行こう。


 その時。


 ピアノ。


 誰も。


 触っていないのに。


 一音。


 鳴る。


「……」


 結良。


 振り返る。


 もう一音。


 そして。


 昨日の。


 フレーズ。


 ピアノ。


 勝手に。


 鳴る。


「……何」


 音。


 途中。


 止まる。


 旧式Review。


 画面。



『えらい。』



「……」


 結良。


 身体。


 固まる。



『昔の結良なら』



『一人で続けてた。』



「……」



『ちゃんと』



『誰か呼びに行くんだね。』



 結良。


 目。


 潤む。


「……見てたの」


 入力。



『No.18?』



 返事。



『うん。』



「……」



『私』



『あなたのこと』



『知ってる?』



 長い。


 既読。


 そして。



『知ってるよ。』



 結良。


 唇。


 震える.



『私は』



『あなたのこと』



『忘れた?』



 返事。


 少し。


 遅い.



『うん。』



「……」


 胸.


 痛い.



『ごめん』



 送る.


 すぐ.


 返事.



『謝らないで。』



 次.



『私が』



『忘れてって』



『お願いしたから。』



「……」


 結良。


 呼吸.


 止まる.



『何で』



 既読.


 長い.


 長い.


 そして.



『Reviewを』



『守るため。』



「……」



 次.



『あなたを』



『守るため。』



「……」



 さらに.



『高瀬先生を』



『守るため。』



「……」



 結良。



 完全に。



 動けない.



 三年前。



 三人。



 Review0。



 沙耶。



 結良。



 No.18。



 そして。



 高瀬。



 全員.



 繋がっていた.



「先生」



 結良.



 小さく.



 呟く.



 その瞬間.



 最後.



『結良。』



「……」



『今度は』



『一人で』



『私を助けに来ないでね。』



 結良.



 涙.



 落ちる.



 高瀬が.



 今日.



 言った.



『一人にしない』



 No.18も.



 同じことを.



 言う.



 昔の自分は.



 一人で.



 何かを.



 背負った.



 だから.



 今度は.



 違う.



 結良は.



 スマートフォンを.



 握る.



 音楽室を.



 出る.



 一人で.



 答えを.



 探すためではない.



 誰かを.



 呼びに行くために.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。