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この人生、採点中  作者: 夜凪 灯
第一章 『あなたは、あなたを何点にしますか』

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46/119

Review46 二人の桐谷

 未登録領域。


 壁一面。


 写真。


 中央。


 桐谷玲司。


 そして。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


現実側登録対象


桐谷玲司


状態


活動中


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬は。


 何度見ても。


 意味が。


 入ってこなかった。


「活動中って」


 ナオ。


 声。


 少し。


 震える。


「今」


「普通に」


「向こうに」


「いるってこと?」


「多分」


 佐伯。


 答える。


「でも」


「どうして」


「同じ人が」


「二人」


「……」


 高瀬。


 写真。


 見る。


 職員室。


 男。


 背中。


 名札。


『桐谷 玲司』


「桐谷」


「……」


「お前」


「何か」


「心当たり」


「ある?」


 桐谷。


 長い。


 沈黙。


「ない」


「……」


「一年前」


「俺」


「ここに」


「残った」


「うん」


「じゃあ」


「現実側の俺は」


「どこから」


「出てきた」


「……」


「俺が」


 桐谷。


 少し。


 自分の手を見る。


「本物じゃ」


「ない?」


「それ」


 ナオ。


 すぐ。


「違います」


「……」


 桐谷。


 ナオを見る。


「何が」


「先生」


「今」


「自分」


「桐谷玲司って」


「分かってる」


「……」


「僕」


「先生に」


「担任してもらった」


「……」


「高瀬先生と」


「仲良かった」


「……」


「塩ラーメン」


「好き」


「それ」


「今いる?」


 高瀬。


「大事だろ!」


「重要です」


 ナオ。


「そこ乗る!?」


 少し。


 笑う。


 でも。


 桐谷の。


 表情は。


 重い。


「俺」


「自分が」


「桐谷玲司だって」


「思ってる」


「……」


「向こうの」


「桐谷玲司も」


「多分」


「そう思ってる」


「……」


 高瀬。


 何も。


 言えない。


「じゃあ」


 桐谷。


 一度。


 苦く。


 笑う。


「どっちが」


「偽物なんだろうな」


◇


 現実側。


 旧視聴覚室。


 外。


 藤原。


 真壁。


 白石。


 結良。


「……」


 四人。


 同じ。


 SYSTEM通知。



━━━━━━━━━━━━


現実側登録対象


桐谷玲司


状態


活動中


━━━━━━━━━━━━



「いる」


 真壁。


「学校内?」


 藤原。


「位置」


「出る?」


 次。



━━━━━━━━━━━━


現所在


校内


━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


「めっちゃ」


「近くない?」


「どこ」


 白石。


「……」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


三階


北棟


━━━━━━━━━━━━



 四人。


 同時。


 顔。


 上げる。


「今」


 真壁。


「ここ」


 三階。


 北棟。


「旧視聴覚室も」


「北棟」


「……」


 藤原。


「同じ階」


「じゃあ」


 結良。


 廊下。


 見る。


「今」


「この辺に?」


「高瀬先生たち」


 白石。


「中」


「行ってるんですよね」


「うん」


「なのに」


「桐谷先生」


「外にも」


「いる?」


「……」


 白石。


 顔。


 引く。


「普通に」


「怖いんですけど」


「私も」


 結良。


「今」


「日常系」


「完全終了」


「昨日から」


 真壁。


「してる」


「言わないで」


◇


「探す?」


 白石。


「待って」


 藤原。


「全員で」


「動かない」


「何で」


「外部固定網」


「維持」


「……」


 真壁。


 画面。


 見る。


「内部三人」


「まだ」


「接続中」


「はい」


「俺ら四人」


「離れすぎたら」


「固定網」


「どうなるか」


「分からない」


「じゃあ」


 結良。


「一人だけ」


「見に行く?」


「……」


 藤原。


「誰」


 白石。


「俺」


「却下」


 真壁。


「早!」


「お前」


「ナオの固定」


「かなり重要」


「……」


「じゃあ」


「確かに」


 白石。


 素直。


「篠宮さん」


「え」


 結良。


「私?」


「高瀬先生との」


「日常固定」


「かなり強い」


「……」


「何その」


「嫌な肩書き」


「でも」


「私」


「行ける」


「藤原先生は」


 真壁。


「高瀬先生」


「固定」


「必要」


「俺は」


「観測」


「……」


「じゃあ」


「篠宮さん」


「一人」


「危ない?」


 藤原。


「危ないです」


「でも」


 結良。


「誰か」


「見ないと」


「分からない」


「……」


 少し。


 沈黙。


「私」


「行く」


「篠宮さん」


「うん」


「怖い」


「めっちゃ」


「……」


「でも」


 一度。


 笑う。


「昨日」


「私」


「自分で」


「行くって」


「言ったばっか」


「……」


 藤原。


 少し。


 笑う。


「じゃあ」


「三分」


「三分?」


「長かったら」


「戻る」


「無理しない」


「はい」


「何かあったら」


「走らない」


「……」


「高瀬先生」


「じゃないから」


「大丈夫です」


「それは」


 真壁。


「信用ある」


「ひど」


◇


 結良。


 一人。


 廊下。


 歩く。


 三階。


 北棟。


 夕方。


 誰も。


 ほとんど。


 いない。


「……」


 窓。


 夕陽。


 普通。


 だから。


 余計。


 怖い。


 角。


 一つ。


 曲がる。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


対象


接近中


━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


「出るんだ」


 小さく。


 呟く。


 足音。


 前。


 一人。


 男。


 歩いてくる。


「……」


 白い。


 シャツ。


 職員証。


 年齢。


 三十代後半。


 髪。


 少し。


 乱れてる。


 普通。


 教師。


 結良。


 足。


 止まる。


 男。


 こちら。


 見る。


「……篠宮?」


「……」


 結良。


 胸。


 強く。


 鳴る。


「何してる」


「こんな時間に」


「……」


 声。


 普通。


 自然。


 知ってる人に。


 話すような。


 口調。


「……桐谷先生?」


 男。


 少し。


 眉。


 寄せる。


「何だよ」


「その」


「初めて会ったみたいな顔」


「……」


 結良。


 完全に。


 止まる。


「先生」


「私」


「知ってる?」


「は?」


「……」


「篠宮結良」


「三年四組」


「去年」


「文化祭で」


「ピアノ」


「……」


 結良の。


 顔。


 変わる。


「文化祭」


「知ってる?」


「当たり前だろ」


「高瀬が」


「舞台袖で」


「お前逃げようとしてるって」


「笑ってた」


「……」


 結良。


 息。


 止まる。


 それ。


 高瀬。


 しか。


 今。


 話してない。


「何で」


「知ってる」


「何が」


「……」


 桐谷。


 不思議そうに。


 結良を見る。


「お前」


「今日」


「変だぞ」


「保健室」


「行くか?」


「……」


 佐伯先生の。


 場所。


 知ってる。


「桐谷先生」


「何」


「高瀬先生」


「知ってる?」


「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「知らない方が」


「難しいだろ」


「……」


「面倒で」


「しつこくて」


「コーヒー勝手に飲む」


「……」


 結良。


 顔。


 青くなる。


「先生」


「それ」


「逆」


「……」


「何が」


「コーヒー」


「……」


 一瞬。


 桐谷の。


 顔。


 止まる。


「……」


「俺が」


「高瀬の」


「飲んでた」


「……」


 結良。


 何も。


 言えない。


 中の。


 桐谷と。


 同じ。


 記憶。


◇


 未登録領域。


 高瀬。


「桐谷」


「何」


「もし」


「向こうの桐谷が」


「お前と」


「同じ記憶」


「持ってたら」


「……」


「どうする」


 桐谷。


 長い。


 沈黙。


「嫌だな」


「何が」


「偽物なら」


「怒れる」


「……」


「でも」


「俺と」


「同じこと」


「覚えて」


「同じ人」


「好きで」


「同じもの」


「嫌いで」


「……」


「それで」


「自分が」


「桐谷玲司だって」


「思ってたら」


「……」


「簡単に」


「消せない」


「……」


 佐伯。


「それ」


「大事です」


「何が」


「今」


「向こうの人を」


「偽物って」


「決めなかった」


「……」


「普通」


「そうしたくなる」


「……」


 桐谷。


 少し。


 苦笑。


「自分が」


「こっちに」


「いるからな」


「でも」


「向こうからしたら」


「俺が」


「偽物かも」


「……」


 高瀬。


 胸。


 重い。


「じゃあ」


「俺」


「向こうの桐谷」


「会ったら」


「どうすりゃ」


「高瀬」


「何」


「まず」


「話せ」


「……」


「お前」


「最近」


「それ」


「できるように」


「なっただろ」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「お前」


「俺のこと」


「結構」


「見てたんだな」


「一年前から」


「かなり」


「……」


「気持ち悪」


「帰ったら」


「殴る」


「はい」


◇


 現実側。


 結良。


 桐谷。


 廊下。


「篠宮」


「……」


「何か」


「あった?」


「……」


 結良。


 一瞬。


 迷う。


 全部。


 言う?


「先生」


「何」


「今日」


「何時から」


「学校いる?」


「朝から」


「……」


「普通に?」


「普通に」


「……」


「授業」


「した?」


「した」


「誰に」


「二年」


「……」


「職員室」


「いた?」


「いた」


「……」


「藤原先生」


「会った?」


「朝」


「挨拶した」


「……」


 結良。


 胸。


 冷える。


 藤原。


 そんな。


 記憶。


 ない。


「篠宮」


「何」


「本当に」


「大丈夫か」


「……」


 桐谷。


 少し。


 表情。


 柔らかい。


「顔」


「真っ青」


「……」


 結良。


 思わず。


 小さく。


 笑う。


「先生」


「何」


「高瀬先生みたい」


「それ」


「褒めてる?」


「半分」


「……」


 桐谷。


 一瞬。


 止まる。


 そして。


「それ」


「高瀬」


「よく」


「言われてたな」


「……」


 結良。


 完全に。


 息。


 止まる。


 細かい。


 そこまで。


 知ってる。


「桐谷先生」


「何」


「私」


「今」


「先生に」


「聞きたいこと」


「いっぱいある」


「……」


「でも」


「今」


「一人で」


「聞かない」


「……」


 桐谷。


 少し。


 目を細める。


「どうした」


「成長?」


「それ」


「高瀬先生に」


「言うやつ」


「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「じゃあ」


「戻ろう」


「どこ」


「旧視聴覚室」


「……」


 桐谷。


 笑顔。


 消える。


「何で」


「そこ」


「知ってる?」


「……」


 結良。


 足。


 止まる。


「先生」


「何」


「旧視聴覚室」


「知ってる?」


 桐谷。


 少し。


 眉。


 寄せる。


「当然」


「……」


「一年前」


「高瀬と」


「……」


 そこで。


 桐谷。


 声。


 止まる。


「……?」


「先生?」


 桐谷。


 頭。


 押さえる。


「……」


「何」


「思い出せない」


「何が」


「旧視聴覚室」


「……」


「何か」


「知ってる」


「……」


「でも」


 一度。


 苦しそうに。


「中」


「思い出せない」


「……」


 結良。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


現実側桐谷玲司


記憶整合率


93%


━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


「記憶整合率」


 桐谷。


「何」


「それ」


「見えない?」


「何が」


「……」


 SYSTEM。


 次。



━━━━━━━━━━━━


未登録領域由来記憶


欠損。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


 胸。


 鳴る。


 この桐谷。


 全部。


 同じじゃない。


 未登録領域に。


 関わる部分だけ。


 ない。


「先生」


「何」


「一緒に」


「来て」


「……」


「どこ」


「みんなのとこ」


「……」


 桐谷。


 少し。


 警戒。


「高瀬」


「いる?」


「……」


 結良。


 答え。


 止まる。


「今」


「ちょっと」


「遠い」


「何それ」


「説明」


「難しい」


「……」


 桐谷。


 ため息。


「お前」


「高瀬の影響」


「受けすぎ」


「それ」


「嫌」


「何で」


「顔で」


「全部バレる人に」


「なりたくない」


「……」


 桐谷。


 吹き出す。


「それは」


「分かる」


「ひど!」


◇


 旧視聴覚室。


 外。


 藤原。


「遅い」


 真壁。


「三分」


「超えてる」


「……」


 白石。


「迎え」


「行く?」


「待って」


 真壁。


 スマートフォン。


「篠宮さん」


「接続」


「切れてない」


「……」


 その時。


 足音。


「来た」


 藤原。


 廊下。


 見る。


 結良。


 そして。


 その横。


 一人の。


 男。


「……」


 三人。


 完全に。


 止まる。


「藤原先生」


 結良。


 声。


 少し。


 震える。


「連れてきた」


「……」


 男。


 藤原を見る。


「藤原」


「……」


 藤原。


 何も。


 言えない。


「何」


「その顔」


「……」


 真壁。


 男。


 見る。


「桐谷先生」


「……」


 男。


 真壁を見る。


「真壁」


「お前も」


「何だよ」


「……」


 真壁。


 胸。


 嫌な。


 ざわつき。


「俺」


「知ってる?」


「は?」


「……」


「真壁透」


「知ってる?」


「……」


 男。


 少し。


 怪訝。


「当たり前だろ」


「……」


「一年前」


「お前」


「高瀬を」


「止めた」


「……」


 真壁。


 顔。


 固まる。


「何で」


「知ってる」


「俺が」


「頼んだから」


「……」


 藤原。


 息。


 止まる。


「この人」


「一年前の」


「記憶も」


「持ってる?」


「全部では」


 結良。


「ない」


「旧視聴覚室」


「中の記憶だけ」


「抜けてる」


「……」


 桐谷。


 三人。


 見る。


「何」


「お前ら」


「何を」


「知ってる」


「……」


 真壁。


 藤原を見る。


「話す?」


「……」


 藤原。


 一度。


 息。


 吸う。


「桐谷先生」


「はい」


「今から」


「かなり」


「変な話」


「します」


「高瀬関係?」


「……」


「はい」


「じゃあ」


 桐谷。


 少し。


 ため息。


「大体」


「変だろ」


「慣れてる」


「高瀬先生」


「信用なさすぎ!」


 結良。


「本人いないのに」


「かわいそう」


◇


 未登録領域。


 高瀬。


 突然。


 スマートフォン。


 震える。


「……」


 外部固定網。


 通信。


 不安定。


 文字。



『見つけた』



 藤原。


 続き。



『現実側の桐谷先生』



「……」


 高瀬。


 胸。


 強く。


 鳴る。


 桐谷。


「何」


「見つかった」


「……」


「向こうの」


「お前」


「……」


 桐谷。


 顔。


 少し。


 強張る。


「どんな」


「まだ」


「分からん」


 次。


 メッセージ。



『記憶あり』



 さらに。



『高瀬先生との関係も』



「……」


 高瀬。


 顔。


 変わる。


 桐谷。


 静か。


「そっか」


「……」


「やっぱ」


「俺と」


「同じ?」


「一部」


「未登録領域」


「記憶だけ」


「欠損」


「……」


 佐伯。


「つまり」


「現実側の桐谷先生は」


「一年前」


「分岐する直前まで」


「ほぼ同じ?」


「……」


 ナオ。


「先生」


「二人とも」


「桐谷玲司」


「……」


 桐谷。


「やめろ」


「何が」


「どっちか」


「消せば」


「解決みたいに」


「考えるの」


「……」


 高瀬。


 少し。


 止まる。


 確かに。


 一瞬。


 考えた。


 現実側。


 偽物。


 こっち。


 本物。


 そうなら。


 簡単。


 でも。


 違う。


「……悪い」


「今」


「思った」


「うん」


「でも」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「顔に」


「出てた」


「お前まで!」


「高瀬」


「本当に」


「分かりやすい」


「帰ったら」


「全員」


「教育し直す!」


◇


 外。


 藤原たち。


 現実側桐谷。


 空き教室。


「……つまり」


 桐谷。


 腕。


 組む。


「俺と」


「同じ名前の」


「俺が」


「別の場所に」


「いる?」


「はい」


「……」


「高瀬は」


「そっち」


「います」


「……」


 桐谷。


 一度。


 天井。


 見る。


「頭」


「痛いな」


 白石。


「俺も」


「さっきから」


「ずっと」


「そうです」


「お前」


「誰」


「白石悠真」


「ナオの友達」


「……」


 桐谷。


 顔。


 少し。


 変わる。


「水城尚」


「……」


「覚えてる?」


 白石。


「……」


 桐谷。


 長い。


 沈黙。


「水城」


「二年四組」


「図書委員」


「……」


 白石。


 息。


 止まる。


「覚えてる」


「……」


「でも」


 桐谷。


 眉。


 寄せる。


「転校」


「した?」


「……」


 白石。


「違う」


「……」


「消えた」


「……」


 桐谷。


 目。


 少し。


 大きくなる。


「何」


「それ」


「俺」


「知らない」


「……」


 真壁。


「そこ」


「消されてる」


「未登録領域」


「関係」


「……」


 桐谷。


 椅子。


 座る。


「じゃあ」


「俺」


「一年」


「何してた」


「……」


 藤原。


「普通に」


「先生」


「してた?」


「した」


「……」


「毎日」


「学校」


「来て」


「授業」


「会議」


「……」


「高瀬」


「いないの」


「変だと」


「思わなかった?」


 桐谷。


 止まる。


「……」


「高瀬」


「いた」


「……」


 三人。


 結良。


 完全に。


 止まる。


「何」


 藤原。


「どういう」


「高瀬」


「普通に」


「学校」


「いた」


「……」


 真壁。


「今の高瀬先生?」


「何だよ」


「今のって」


「……」


 桐谷。


 少し。


 苛立つ。


「高瀬は」


「ここに」


「ずっと」


「いた」


「……」


 藤原。


 胸。


 冷える。


「じゃあ」


「あなたが」


「いた現実では」


「桐谷先生も」


「高瀬先生も」


「両方」


「普通に」


「学校にいた?」


「そうだ」


「……」


 結良。


「でも」


「私たちの記憶」


「桐谷先生」


「いない」


「……」


 白石。


「何それ」


「世界」


「違う?」


「……」


 真壁。


 表情。


 変わる。


「分岐」


「……」


「二人の」


「桐谷じゃない」


「二つの」


「現実?」


 SYSTEM。


 全員。


 同時。



━━━━━━━━━━━━


整合性異常を検出。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 次。



━━━━━━━━━━━━


重複対象では


ありません。


━━━━━━━━━━━━



「え」


 藤原。


 次。



━━━━━━━━━━━━


対象A


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━


対象B


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━


所属履歴


異なる。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 真壁。


 息。


 止まる。


「履歴」


「違う」


 次.



━━━━━━━━━━━━


対象A


現行世界線


━━━━━━━━━━━━


対象B


廃棄世界線


━━━━━━━━━━━━



「……」


 教室。


 静か。


「廃棄」


 結良。


「世界線?」


 桐谷。


 顔。


 強張る。


「どっちが」


 白石。


「廃棄」


 SYSTEM。


 表示。



━━━━━━━━━━━━


廃棄世界線所属


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━



 四人。


 現実側の桐谷を見る。


「……」


 桐谷。


 ゆっくり。


 笑う。


 でも。


 笑えてない。


「俺か」


「……」


 藤原。


 何も。


 言えない。


 桐谷。


「なるほど」


「……」


「だから」


「俺の記憶と」


「お前らの記憶」


「違う」


「……」


 真壁。


「でも」


「今」


「ここにいる」


「……」


 桐谷。


 真壁を見る。


「そうだな」


「廃棄」


「されたはずなのに」


「……」


 その時。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


廃棄処理


再開。


━━━━━━━━━━━━



「……!」


 藤原。


「何」


 結良。


「先生!」


 桐谷。


 自分の。


 手。


 見る。


 輪郭。


 少し。


 透ける。


「……」


 白石。


「消える?」


 真壁。


 立つ。


「待って」


「この人」


「偽物じゃない」


「……」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


不要履歴を


削除します。


━━━━━━━━━━━━



 真壁。


 顔。


 変わる。


「不要じゃない」


 SYSTEM。


 無反応。


「桐谷先生」


 藤原。


「今」


「何したい」


「……」


 現実側の。


 桐谷。


 一瞬。


 驚く。


「何だ」


「急に」


「答えて」


「……」


 桐谷。


 少し。


 考える。


「高瀬に」


「会いたい」


「……」


「何で」


「文句」


「言う」


「……」


「俺の世界では」


「あいつ」


「普通に」


「一年」


「いた」


「……」


「でも」


「今」


「お前らの話」


「聞いたら」


「多分」


「別の高瀬」


「……」


「じゃあ」


 一度。


 笑う。


「どっちの高瀬が」


「面倒か」


「確認したい」


「……」


 結良。


 吹き出す。


「先生」


「それ」


「帰る理由」


「弱くない?」


「弱い?」


「いや」


 藤原。


 少し。


 笑う。


「十分」


 その瞬間。


 桐谷。


 輪郭。


 少し。


 戻る。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


自己定義情報


検出。


━━━━━━━━━━━━



 真壁。


「やっぱり」


「この人も」


「一人の人間として」


「固定できる」


「……」


 現実側桐谷。


「固定?」


「説明」


「後」


「また?」


 結良。


「最近」


「そればっか」


◇


 未登録領域。


 高瀬。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


廃棄世界線


削除処理


再開。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 佐伯。


「向こう」


「危ない」


 ナオ。


「先生」


「どうする」


 高瀬。


 現実側桐谷。


 今。


 消されかけてる。


 こっちの。


 桐谷。


 帰れない。


「桐谷」


「何」


「向こうの」


「お前」


「消したくない」


「……」


 桐谷。


 少し。


 驚く。


「俺も」


「……」


「会ったこと」


「ないけど」


「……」


「そいつ」


「俺じゃ」


「ない」


「でも」


「桐谷玲司として」


「一年」


「生きた」


「……」


「それ」


「消していい理由」


「ない」


「……」


 高瀬。


 笑う。


「じゃあ」


「二人」


「残す?」


「できるのか」


「知らん」


「……」


「でも」


 高瀬。


 少し。


 目。


 細くなる。


「SYSTEM」


「一人に」


「決めたがる」


「……」


「だったら」


「二人」


「いるって」


「決めたら」


「一番」


「嫌がるんじゃない?」


「高瀬先生」


 佐伯。


「それ」


「めちゃくちゃ」


「雑です」


「でも」


 ナオ。


 少し。


 笑う。


「僕」


「好きです」


「だろ?」


「半分」


「そこ!」


◇


 SYSTEM。


 警告。



━━━━━━━━━━━━


重複人格


維持不可。


━━━━━━━━━━━━



「重複じゃ」


「ない」


 高瀬。


 画面。


 睨む。


「履歴」


「違うんだろ」


「……」


「なら」


「別人」


「同じ名前」


「同じ記憶」


「一部」


「同じ」


「……」


「でも」


「一年」


「別に」


「生きた」


「……」


「それ」


「もう」


「同じ人間」


「じゃないだろ」


 桐谷。


 高瀬を見る。


 少し。


 驚いた。


「お前」


「何」


「そこまで」


「考えるように」


「なったんだな」


「……」


「昔の俺」


「そんな」


「考えない?」


「多分」


「本物」


「偽物」


「決めてた」


「……」


 高瀬。


 苦笑。


「ありそう」


「かなり」


◇


 その瞬間。


 外。


 真壁。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


統合候補


生成。


━━━━━━━━━━━━



「統合?」


 藤原。


 次.



━━━━━━━━━━━━


桐谷玲司A


+


桐谷玲司B


━━━━━━━━━━━━


単一人格へ


再統合可能。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 現実側桐谷。


「何だそれ」


 真壁。


「二人の」


「記憶」


「一個に」


「する?」


「……」


 結良。


「それ」


「怖」


 藤原。


「どっちが」


「残る」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


区別は


不要です。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 現実側桐谷。


 少し。


 笑う。


「腹立つな」


「何が」


 白石。


「俺ら」


「一年」


「別々に」


「生きて」


「……」


「区別不要」


「って」


「……」


「勝手に」


「言われるの」


「嫌だ」


 真壁。


 その言葉。


 聞いて。


 少し。


 笑う。


「分かります」


「何で」


「俺も」


「不要って」


「言われた」


「……」


「結構」


「腹立ちますよね」


「かなり」


 初対面。


 なのに。


 一瞬。


 妙に。


 意気投合。


 結良。


「何か」


「真壁先生」


「友達できた?」


「その言い方」


「やめて」


◇


 未登録領域。


 桐谷。


「統合」


 高瀬。


「見えてる?」


「出た」


「どうする」


「……」


 桐谷。


 長い。


 沈黙。


「嫌だ」


「……」


「向こうの俺を」


「俺に」


「混ぜたくない」


「……」


「何で」


「そいつが」


「何考えて」


「一年」


「どう生きたか」


「……」


「俺」


「知らない」


「……」


「それを」


「俺の記憶」


「として」


「勝手に」


「入れられるの」


「嫌だ」


「……」


 高瀬。


 頷く。


「じゃあ」


「統合しない」


「でも」


「俺」


「帰れない」


「……」


「なら」


「三人目」


「いや」


「二人目の」


「桐谷玲司として」


「帰る場所」


「作る」


「……」


 桐谷。


 高瀬を見る。


「できる?」


「知らん」


「また」


「でも」


 一度。


 笑う。


「今まで」


「前例ないこと」


「何回やった」


「……」


 ナオ。


「結構」


「いっぱい」


 佐伯。


「数えたくない」


「じゃあ」


「今回も」


「一個増やす」


◇


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


新規登録形式を


要求しますか?


━━━━━━━━━━━━



「……」


 三人。


 止まる。


「SYSTEMから」


 佐伯。


「聞いてきた」


「珍しい」


 高瀬。


 選択。



YES


NO



「桐谷」


「どうする」


「……」


「俺」


「別の俺と」


「同じ世界に」


「帰る?」


「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「めちゃくちゃ」


「気まずそう」


「第一声」


「何」


「……」


「どうも」


「弱!」


 ナオ。


「先生同士なら」


「お疲れ様です」


「それ」


「いいな」


「二人の桐谷」


「廊下で」


「お疲れ様です」


「地獄!」


 三人。


 笑う。


 桐谷。


 そのまま。


 少し。


 息。


 吐く。


「帰る」


「……」


「向こうの俺」


「いるなら」


「会いたい」


「……」


「俺じゃない」


「俺」


「どう生きたか」


「聞きたい」


「……」


「それ」


「帰る理由?」


「うん」


「十分」


 高瀬。


「じゃあ」


「YES」


 桐谷。


「俺が」


「押す」


「うん」


 指。


 タップ。



━━━━━━━━━━━━


新規登録形式


生成中。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 長い。


 数秒。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


既存名


使用不可。


━━━━━━━━━━━━



「名前」


 ナオ。


「同じ」


「使えない?」


「……」


 桐谷。


 顔。


 強張る。


「じゃあ」


「俺」


「名前」


「変えろって?」


 高瀬。


「それ」


「嫌?」


「……」


 桐谷。


 少し。


 考える。


「嫌だ」


「……」


「俺」


「桐谷玲司」


「だから」


「……」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


識別名変更


必須。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬。


 拳。


 握る。


「また」


「名前」


「決める」


「……」


 佐伯。


「待って」


「識別名」


「本人名」


「同じとは」


「限らない」


「……」


 高瀬。


「つまり」


「SYSTEM上」


「別名」


「実際は」


「桐谷玲司?」


「可能性」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


表示名は


本人選択可。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 桐谷。


「俺が」


「選ぶ?」


「うん」


「何に」


「……」


 ナオ。


「先生」


「ニックネーム」


「嫌」


「即答!」


 高瀬。


「玲司2」


「殴るぞ」


「ごめん!」


 佐伯。


 笑う。


「今」


「こんな時に」


「よく」


「それ出ますね」


「緊張!」


◇


 桐谷。


 少し。


 考える。


 自分。


 桐谷玲司。


 でも。


 現実には。


 もう一人。


「……」


「高瀬」


「何」


「お前」


「俺のこと」


「昔」


「何て」


「呼んでた」


「桐谷」


「それだけ?」


「多分」


「……」


「たまに」


「玲司?」


「……」


 桐谷。


 少し。


 目。


 動く。


「呼んでた?」


「……」


「飲み行った時」


「何回か」


「多分」


「……」


「じゃあ」


 一度。


 画面。


 見る。


「玲司」


「……」


「表示名」


「玲司」


「だけ?」


「うん」


「名字」


「なくす?」


「なくすんじゃない」


「……」


「桐谷玲司」


「俺」


「それは」


「変わらない」


「……」


「でも」


「SYSTEMが」


「区別したいなら」


「勝手に」


「玲司で」


「区別しろ」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「お前」


「結構」


「強引」


「高瀬に」


「言われたくない」


◇


 桐谷。


 入力。



『玲司』



 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


新規表示名


玲司


━━━━━━━━━━━━


本人名


桐谷玲司


保持。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 三人。


 息。


 吐く。


「いける」


 高瀬。


 次.



━━━━━━━━━━━━


新規登録方式


並列存在


━━━━━━━━━━━━



「並列」


 佐伯。


 次.



━━━━━━━━━━━━


前例


0


━━━━━━━━━━━━



 高瀬。


「また」


 ナオ。


「もう」


「慣れました」


「慣れるな!」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「やる」


「うん」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


並列存在帰還


実行しますか?


━━━━━━━━━━━━



YES


NO



 桐谷。


 画面。


 見る。


「高瀬」


「何」


「帰ったら」


「味噌と塩」


「両方ある店」


「探せよ」


「……」


 高瀬。


 笑う。


「任せろ」


「ナオ」


「はい」


「小説」


「読ませろ」


「はい」


「佐伯先生」


「はい」


「コーヒー」


「薄くないやつ」


「努力します」


「そこ」


「努力?」


 少し。


 笑い。


 桐谷。


 YES。


 押す。


◇


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


並列存在帰還


開始。


━━━━━━━━━━━━



 部屋。


 大きく。


 揺れる。


「……!」


 高瀬。


 壁。


 支える。


 写真。


 全部。


 剥がれる。


 空中。


 舞う。


 桐谷。


 身体。


 白い。


 光。


 包まれる。


「桐谷!」


「高瀬!」


「何!」


「外の俺」


「……」


「偽物って」


「言うなよ!」


「……」


 高瀬。


 一瞬。


 目。


 大きくなる。


 そして。


 笑う。


「言わん!」


「本人にも」


「言っとけ!」


「自分で言え!」


「それもそうだ!」


 桐谷。


 笑う。


 光。


 強くなる。


 その瞬間。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


警告。


並列存在により


履歴矛盾が発生します。


━━━━━━━━━━━━



「また」


 佐伯。


 次.



━━━━━━━━━━━━


矛盾解消のため


一方の履歴を


選択してください。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 笑顔。


 止まる。


「どっちかの」


「過去」


「消せって?」


 高瀬。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


選択肢A


現行世界線


━━━━━━━━━━━━


選択肢B


廃棄世界線


━━━━━━━━━━━━



 桐谷。


「……」


 高瀬。


 画面。


 睨む。


「選ばない」


 SYSTEM。


 無反応。


「どっちも」


「桐谷玲司が」


「生きた」


「……」


「片方」


「捨てる」


「必要」


「ない」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


選択しない場合


帰還中止。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「高瀬」


「何」


「どうする」


「……」


 高瀬。


 胸。


 強く。


 鳴る。


 どっちも。


 残したい。


 でも。


 SYSTEMは。


 選べと言う。


 A。


 B。


 正解。


 不正解。


 ずっと。


 同じ。


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「C」


「は?」


「高瀬先生?」


 ナオ。


「選択肢」


「ないです」


「作る」


「……」


 桐谷。


 吹き出す。


「お前」


「昔から」


「そういうとこ」


「ある?」


「最近!」


 高瀬。


 画面。


 入力欄。


 ない。


 なら。


 声。


「選択肢C」


「両方」


「残す」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


無効入力。


━━━━━━━━━━━━



「もう一回」


「両方」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


無効。


━━━━━━━━━━━━



「両方」


「高瀬」


 桐谷。


 笑う。


「しつこい」


「知ってるだろ」


「かなり」


「両方!」


 SYSTEM。


 画面。


 揺れる。



━━━━━━━━━━━━


無効


無効


無効


━━━━━━━━━━━━



「高瀬先生」


 ナオ。


「SYSTEM」


「バグってない?」


「もっと」


「やる?」


「やりましょう」


「ナオ!」


 三人。


「両方!」


「両方!」


「両方!」


 佐伯まで。


 笑いながら。


「両方!」


 SYSTEM。


 激しく。


 乱れる。



━━━━━━━━━━━━


選択不能。


━━━━━━━━━━━━


予測不能。


━━━━━━━━━━━━


履歴単一化


失敗。


━━━━━━━━━━━━



「……!」


 高瀬。


「きた」


 次.



━━━━━━━━━━━━


暫定処理


全履歴保持。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 桐谷。


 目。


 大きくなる。


「全部」


 高瀬。


「残る」


 次.



━━━━━━━━━━━━


並列存在帰還


続行。


━━━━━━━━━━━━



「行け!」


 高瀬。


 光。


 爆発。


◇


 現実側。


 旧視聴覚室。


 現実側桐谷。


 突然。


 胸。


 押さえる。


「……っ」


「先生!」


 結良。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


並列存在


受入準備。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 真壁。


 目。


 大きくなる。


「成功?」


 藤原。


「まだ」


 その瞬間。


 旧視聴覚室。


 扉。


 内側。


 激しい。


 光。


「下がって!」


 真壁。


 四人。


 現実側桐谷。


 一歩。


 後ろ。


 扉。


 開く。


 まず。


 高瀬。


「……っ」


 床。


 転がる。


「先生!」


 結良。


「痛っ!」


「帰り方」


「ダサ!」


「今言う!?」


 次。


 ナオ。


「……」


 白石。


「ナオ!」


「ただいま」


「二回目やるな!」


 そして。


 佐伯。


「……」


 藤原。


「佐伯先生」


「はい」


「戻りました」


 最後。


 光。


 残る。


「……」


 現実側桐谷。


 じっと。


 見る。


 高瀬。


 息。


 止める。


 光。


 中。


 一人。


 男。


 出てくる。


 桐谷玲司。


「……」


 二人。


 同じ。


 いや。


 服。


 違う。


 表情。


 違う。


 目。


 違う。


 でも。


 顔。


 同じ。


 廊下。


 静か。


「……」


 現実側桐谷。


 一歩。


 前。


 未登録領域から。


 戻った桐谷。


 一歩。


 前。


 二人。


 向かい。


「……」


 白石。


 小声。


「何か」


「気まず」


「言うな」


 結良。


「でも」


「気まずい」


「確かに」


 高瀬。


 息。


 飲む。


 二人の。


 桐谷。


 数秒。


 見つめ合う。


 そして。


 現実側桐谷。



「……お疲れ様です」



「……」



 戻った桐谷。



「お疲れ様です」



「……」


 全員。


 止まる。


 ナオ。


「本当に」


「言った」


 高瀬。


「職員同士!」


 結良。


 吹き出す。


 白石。


 肩。


 震える。


 藤原。


 口元。


 押さえる。


 佐伯。


 笑う。


 真壁。


 完全に。


 顔。


 逸らす。


「笑うなよ!」


 二人の桐谷。


 同時。


「……」


 さらに。


 全員。


 爆笑。


「同じ!」


 高瀬。


「そこまで!」


 戻った桐谷。


「高瀬!」


 現実側桐谷。


「お前」


「本当に」


「うるさいな」


「二倍で怒られた!」


◇


 笑い。


 少し。


 落ち着く。


 二人。


 改めて。


 見る。


「俺」


 現実側桐谷。


「桐谷玲司」


「……」


「俺も」


 戻った桐谷。


「桐谷玲司」


「……」


 少し。


 間。


「でも」


 現実側。


「一年」


「違う」


「うん」


「……」


「じゃあ」


 戻った桐谷。


「俺ら」


「同じじゃ」


「ないな」


「……」


 現実側。


 少し。


 笑う。


「多分」


 高瀬。


 胸。


 熱くなる。


 SYSTEM。


 全員。


 同時。



━━━━━━━━━━━━


並列存在


登録完了。


━━━━━━━━━━━━


対象A


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━


対象B


桐谷玲司


表示名


玲司


━━━━━━━━━━━━



「……」


 戻った桐谷。


「玲司」


「俺だけ」


「距離感」


「近くない?」


 高瀬。


「呼びやすい!」


「勝手に」


「呼ぶな!」


 現実側桐谷。


「俺」


「桐谷?」


「そうなるな」


「何で」


「俺が」


「名字担当?」


「知らん!」


 また。


 笑い。


 でも。


 SYSTEM。


 最後。



━━━━━━━━━━━━


警告。


廃棄世界線の


復元を確認。


━━━━━━━━━━━━



 笑顔。


 少し。


 止まる。


 次.



━━━━━━━━━━━━


復元対象は


桐谷玲司


1名ではありません。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 真壁。


 顔。


 変わる。


「何」


 藤原。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


廃棄世界線


残存対象


━━━━━━━━━━━━



 数字。



━━━━━━━━━━━━


18

━━━━━━━━━━━━



「……十八」


 高瀬。


 息。


 止まる。


 現実側桐谷。


 顔。


 強張る。


「俺の」


「世界」


「……」


「他にも」


「残ってる?」


 戻った桐谷。


 現実側の自分。


 見る。


「誰」


 SYSTEM。


 次.



━━━━━━━━━━━━


現行世界線への


接触可能対象


━━━━━━━━━━━━


17


━━━━━━━━━━━━



「一人」


 ナオ。


「違う」


「何が」


 佐伯。


「十八人」


「残ってる」


「でも」


「接触できるのは」


「十七」


「……」


 高瀬。


「残り」


「一人」


「どこ」


 SYSTEM。


 画面。


 暗転。


 最後。


 一行。



━━━━━━━━━━━━


対象No.18


現在


Review69内部。

━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬。


 胸。


 強く。


 鳴る。


 Review69。


 まだ。


 起きていないはず。


 なのに。


 すでに。


 そこに。


 一人。


 いる。


「誰だよ」


 高瀬。


 画面。


 見る。


 回答。


 ない。


 その時。


 真壁。


 突然。


 頭。


 押さえる。


「……っ」


「真壁!」


 藤原。


「見えた?」


「……」


 真壁。


 呼吸。


 荒い。


「一瞬」


「誰」


「……」


 目。


 上げる。


 高瀬を見る。


「知ってる」


「……」


「俺ら」


「全員」


「知ってる」


「誰」


 真壁。


 口。


 開く。


 でも。


 声。


 出ない。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


観測制限。


━━━━━━━━━━━━


対象No.18の


実名共有を禁止。

━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬。


「じゃあ」


「特徴」


「それも」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


禁止。

━━━━━━━━━━━━



「ふざけんな!」


 真壁。


 その時。


 少し。


 笑う。


「でも」


「何」


「一個」


「SYSTEMが」


「止められないこと」


「ある」


「……」


 真壁。


 全員を見る。


「俺」


「その人の」


「名前」


「言えない」


「うん」


「特徴も」


「言えない」


「……」


「でも」


 一度。


 胸。


 押さえる。


「その人を」


「知ってる俺の」


「気持ちまでは」


「消せない」


「……」


 高瀬。


「何感じた」


 真壁。


 少し。


 目。


 潤む。



「会いたい」



「……」



「めちゃくちゃ」



「会いたい」



 高瀬。


 何も。


 言えない。


 SYSTEM。


 数字。



━━━━━━━━━━━━


既存予測モデル


崩壊率


48%


 ↓


51%

━━━━━━━━━━━━



「……」


 藤原。


「上がった」


 真壁。


 少し。


 笑う。


「名前」


「言えなくても」


「人は」


「残る」


「……」


 高瀬。


 画面。


 見る。


 69。


 そこに。


 いる。


 一人。


 全員が。


 知っている。


 でも。


 名前を。


 言えない。


 そして。


 真壁は。


 会いたいと。


 思った。


 その一人が。


 Review69の。


 中から。


 こちらを。


 待っている。 二人の桐谷


 未登録領域。


 壁一面。


 写真。


 中央。


 桐谷玲司。


 そして。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


現実側登録対象


桐谷玲司


状態


活動中


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬は。


 何度見ても。


 意味が。


 入ってこなかった。


「活動中って」


 ナオ。


 声。


 少し。


 震える。


「今」


「普通に」


「向こうに」


「いるってこと?」


「多分」


 佐伯。


 答える。


「でも」


「どうして」


「同じ人が」


「二人」


「……」


 高瀬。


 写真。


 見る。


 職員室。


 男。


 背中。


 名札。


『桐谷 玲司』


「桐谷」


「……」


「お前」


「何か」


「心当たり」


「ある?」


 桐谷。


 長い。


 沈黙。


「ない」


「……」


「一年前」


「俺」


「ここに」


「残った」


「うん」


「じゃあ」


「現実側の俺は」


「どこから」


「出てきた」


「……」


「俺が」


 桐谷。


 少し。


 自分の手を見る。


「本物じゃ」


「ない?」


「それ」


 ナオ。


 すぐ。


「違います」


「……」


 桐谷。


 ナオを見る。


「何が」


「先生」


「今」


「自分」


「桐谷玲司って」


「分かってる」


「……」


「僕」


「先生に」


「担任してもらった」


「……」


「高瀬先生と」


「仲良かった」


「……」


「塩ラーメン」


「好き」


「それ」


「今いる?」


 高瀬。


「大事だろ!」


「重要です」


 ナオ。


「そこ乗る!?」


 少し。


 笑う。


 でも。


 桐谷の。


 表情は。


 重い。


「俺」


「自分が」


「桐谷玲司だって」


「思ってる」


「……」


「向こうの」


「桐谷玲司も」


「多分」


「そう思ってる」


「……」


 高瀬。


 何も。


 言えない。


「じゃあ」


 桐谷。


 一度。


 苦く。


 笑う。


「どっちが」


「偽物なんだろうな」


◇


 現実側。


 旧視聴覚室。


 外。


 藤原。


 真壁。


 白石。


 結良。


「……」


 四人。


 同じ。


 SYSTEM通知。



━━━━━━━━━━━━


現実側登録対象


桐谷玲司


状態


活動中


━━━━━━━━━━━━



「いる」


 真壁。


「学校内?」


 藤原。


「位置」


「出る?」


 次。



━━━━━━━━━━━━


現所在


校内


━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


「めっちゃ」


「近くない?」


「どこ」


 白石。


「……」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


三階


北棟


━━━━━━━━━━━━



 四人。


 同時。


 顔。


 上げる。


「今」


 真壁。


「ここ」


 三階。


 北棟。


「旧視聴覚室も」


「北棟」


「……」


 藤原。


「同じ階」


「じゃあ」


 結良。


 廊下。


 見る。


「今」


「この辺に?」


「高瀬先生たち」


 白石。


「中」


「行ってるんですよね」


「うん」


「なのに」


「桐谷先生」


「外にも」


「いる?」


「……」


 白石。


 顔。


 引く。


「普通に」


「怖いんですけど」


「私も」


 結良。


「今」


「日常系」


「完全終了」


「昨日から」


 真壁。


「してる」


「言わないで」


◇


「探す?」


 白石。


「待って」


 藤原。


「全員で」


「動かない」


「何で」


「外部固定網」


「維持」


「……」


 真壁。


 画面。


 見る。


「内部三人」


「まだ」


「接続中」


「はい」


「俺ら四人」


「離れすぎたら」


「固定網」


「どうなるか」


「分からない」


「じゃあ」


 結良。


「一人だけ」


「見に行く?」


「……」


 藤原。


「誰」


 白石。


「俺」


「却下」


 真壁。


「早!」


「お前」


「ナオの固定」


「かなり重要」


「……」


「じゃあ」


「確かに」


 白石。


 素直。


「篠宮さん」


「え」


 結良。


「私?」


「高瀬先生との」


「日常固定」


「かなり強い」


「……」


「何その」


「嫌な肩書き」


「でも」


「私」


「行ける」


「藤原先生は」


 真壁。


「高瀬先生」


「固定」


「必要」


「俺は」


「観測」


「……」


「じゃあ」


「篠宮さん」


「一人」


「危ない?」


 藤原。


「危ないです」


「でも」


 結良。


「誰か」


「見ないと」


「分からない」


「……」


 少し。


 沈黙。


「私」


「行く」


「篠宮さん」


「うん」


「怖い」


「めっちゃ」


「……」


「でも」


 一度。


 笑う。


「昨日」


「私」


「自分で」


「行くって」


「言ったばっか」


「……」


 藤原。


 少し。


 笑う。


「じゃあ」


「三分」


「三分?」


「長かったら」


「戻る」


「無理しない」


「はい」


「何かあったら」


「走らない」


「……」


「高瀬先生」


「じゃないから」


「大丈夫です」


「それは」


 真壁。


「信用ある」


「ひど」


◇


 結良。


 一人。


 廊下。


 歩く。


 三階。


 北棟。


 夕方。


 誰も。


 ほとんど。


 いない。


「……」


 窓。


 夕陽。


 普通。


 だから。


 余計。


 怖い。


 角。


 一つ。


 曲がる。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


対象


接近中


━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


「出るんだ」


 小さく。


 呟く。


 足音。


 前。


 一人。


 男。


 歩いてくる。


「……」


 白い。


 シャツ。


 職員証。


 年齢。


 三十代後半。


 髪。


 少し。


 乱れてる。


 普通。


 教師。


 結良。


 足。


 止まる。


 男。


 こちら。


 見る。


「……篠宮?」


「……」


 結良。


 胸。


 強く。


 鳴る。


「何してる」


「こんな時間に」


「……」


 声。


 普通。


 自然。


 知ってる人に。


 話すような。


 口調。


「……桐谷先生?」


 男。


 少し。


 眉。


 寄せる。


「何だよ」


「その」


「初めて会ったみたいな顔」


「……」


 結良。


 完全に。


 止まる。


「先生」


「私」


「知ってる?」


「は?」


「……」


「篠宮結良」


「三年四組」


「去年」


「文化祭で」


「ピアノ」


「……」


 結良の。


 顔。


 変わる。


「文化祭」


「知ってる?」


「当たり前だろ」


「高瀬が」


「舞台袖で」


「お前逃げようとしてるって」


「笑ってた」


「……」


 結良。


 息。


 止まる。


 それ。


 高瀬。


 しか。


 今。


 話してない。


「何で」


「知ってる」


「何が」


「……」


 桐谷。


 不思議そうに。


 結良を見る。


「お前」


「今日」


「変だぞ」


「保健室」


「行くか?」


「……」


 佐伯先生の。


 場所。


 知ってる。


「桐谷先生」


「何」


「高瀬先生」


「知ってる?」


「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「知らない方が」


「難しいだろ」


「……」


「面倒で」


「しつこくて」


「コーヒー勝手に飲む」


「……」


 結良。


 顔。


 青くなる。


「先生」


「それ」


「逆」


「……」


「何が」


「コーヒー」


「……」


 一瞬。


 桐谷の。


 顔。


 止まる。


「……」


「俺が」


「高瀬の」


「飲んでた」


「……」


 結良。


 何も。


 言えない。


 中の。


 桐谷と。


 同じ。


 記憶。


◇


 未登録領域。


 高瀬。


「桐谷」


「何」


「もし」


「向こうの桐谷が」


「お前と」


「同じ記憶」


「持ってたら」


「……」


「どうする」


 桐谷。


 長い。


 沈黙。


「嫌だな」


「何が」


「偽物なら」


「怒れる」


「……」


「でも」


「俺と」


「同じこと」


「覚えて」


「同じ人」


「好きで」


「同じもの」


「嫌いで」


「……」


「それで」


「自分が」


「桐谷玲司だって」


「思ってたら」


「……」


「簡単に」


「消せない」


「……」


 佐伯。


「それ」


「大事です」


「何が」


「今」


「向こうの人を」


「偽物って」


「決めなかった」


「……」


「普通」


「そうしたくなる」


「……」


 桐谷。


 少し。


 苦笑。


「自分が」


「こっちに」


「いるからな」


「でも」


「向こうからしたら」


「俺が」


「偽物かも」


「……」


 高瀬。


 胸。


 重い。


「じゃあ」


「俺」


「向こうの桐谷」


「会ったら」


「どうすりゃ」


「高瀬」


「何」


「まず」


「話せ」


「……」


「お前」


「最近」


「それ」


「できるように」


「なっただろ」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「お前」


「俺のこと」


「結構」


「見てたんだな」


「一年前から」


「かなり」


「……」


「気持ち悪」


「帰ったら」


「殴る」


「はい」


◇


 現実側。


 結良。


 桐谷。


 廊下。


「篠宮」


「……」


「何か」


「あった?」


「……」


 結良。


 一瞬。


 迷う。


 全部。


 言う?


「先生」


「何」


「今日」


「何時から」


「学校いる?」


「朝から」


「……」


「普通に?」


「普通に」


「……」


「授業」


「した?」


「した」


「誰に」


「二年」


「……」


「職員室」


「いた?」


「いた」


「……」


「藤原先生」


「会った?」


「朝」


「挨拶した」


「……」


 結良。


 胸。


 冷える。


 藤原。


 そんな。


 記憶。


 ない。


「篠宮」


「何」


「本当に」


「大丈夫か」


「……」


 桐谷。


 少し。


 表情。


 柔らかい。


「顔」


「真っ青」


「……」


 結良。


 思わず。


 小さく。


 笑う。


「先生」


「何」


「高瀬先生みたい」


「それ」


「褒めてる?」


「半分」


「……」


 桐谷。


 一瞬。


 止まる。


 そして。


「それ」


「高瀬」


「よく」


「言われてたな」


「……」


 結良。


 完全に。


 息。


 止まる。


 細かい。


 そこまで。


 知ってる。


「桐谷先生」


「何」


「私」


「今」


「先生に」


「聞きたいこと」


「いっぱいある」


「……」


「でも」


「今」


「一人で」


「聞かない」


「……」


 桐谷。


 少し。


 目を細める。


「どうした」


「成長?」


「それ」


「高瀬先生に」


「言うやつ」


「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「じゃあ」


「戻ろう」


「どこ」


「旧視聴覚室」


「……」


 桐谷。


 笑顔。


 消える。


「何で」


「そこ」


「知ってる?」


「……」


 結良。


 足。


 止まる。


「先生」


「何」


「旧視聴覚室」


「知ってる?」


 桐谷。


 少し。


 眉。


 寄せる。


「当然」


「……」


「一年前」


「高瀬と」


「……」


 そこで。


 桐谷。


 声。


 止まる。


「……?」


「先生?」


 桐谷。


 頭。


 押さえる。


「……」


「何」


「思い出せない」


「何が」


「旧視聴覚室」


「……」


「何か」


「知ってる」


「……」


「でも」


 一度。


 苦しそうに。


「中」


「思い出せない」


「……」


 結良。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


現実側桐谷玲司


記憶整合率


93%


━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


「記憶整合率」


 桐谷。


「何」


「それ」


「見えない?」


「何が」


「……」


 SYSTEM。


 次。



━━━━━━━━━━━━


未登録領域由来記憶


欠損。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 結良。


 胸。


 鳴る。


 この桐谷。


 全部。


 同じじゃない。


 未登録領域に。


 関わる部分だけ。


 ない。


「先生」


「何」


「一緒に」


「来て」


「……」


「どこ」


「みんなのとこ」


「……」


 桐谷。


 少し。


 警戒。


「高瀬」


「いる?」


「……」


 結良。


 答え。


 止まる。


「今」


「ちょっと」


「遠い」


「何それ」


「説明」


「難しい」


「……」


 桐谷。


 ため息。


「お前」


「高瀬の影響」


「受けすぎ」


「それ」


「嫌」


「何で」


「顔で」


「全部バレる人に」


「なりたくない」


「……」


 桐谷。


 吹き出す。


「それは」


「分かる」


「ひど!」


◇


 旧視聴覚室。


 外。


 藤原。


「遅い」


 真壁。


「三分」


「超えてる」


「……」


 白石。


「迎え」


「行く?」


「待って」


 真壁。


 スマートフォン。


「篠宮さん」


「接続」


「切れてない」


「……」


 その時。


 足音。


「来た」


 藤原。


 廊下。


 見る。


 結良。


 そして。


 その横。


 一人の。


 男。


「……」


 三人。


 完全に。


 止まる。


「藤原先生」


 結良。


 声。


 少し。


 震える。


「連れてきた」


「……」


 男。


 藤原を見る。


「藤原」


「……」


 藤原。


 何も。


 言えない。


「何」


「その顔」


「……」


 真壁。


 男。


 見る。


「桐谷先生」


「……」


 男。


 真壁を見る。


「真壁」


「お前も」


「何だよ」


「……」


 真壁。


 胸。


 嫌な。


 ざわつき。


「俺」


「知ってる?」


「は?」


「……」


「真壁透」


「知ってる?」


「……」


 男。


 少し。


 怪訝。


「当たり前だろ」


「……」


「一年前」


「お前」


「高瀬を」


「止めた」


「……」


 真壁。


 顔。


 固まる。


「何で」


「知ってる」


「俺が」


「頼んだから」


「……」


 藤原。


 息。


 止まる。


「この人」


「一年前の」


「記憶も」


「持ってる?」


「全部では」


 結良。


「ない」


「旧視聴覚室」


「中の記憶だけ」


「抜けてる」


「……」


 桐谷。


 三人。


 見る。


「何」


「お前ら」


「何を」


「知ってる」


「……」


 真壁。


 藤原を見る。


「話す?」


「……」


 藤原。


 一度。


 息。


 吸う。


「桐谷先生」


「はい」


「今から」


「かなり」


「変な話」


「します」


「高瀬関係?」


「……」


「はい」


「じゃあ」


 桐谷。


 少し。


 ため息。


「大体」


「変だろ」


「慣れてる」


「高瀬先生」


「信用なさすぎ!」


 結良。


「本人いないのに」


「かわいそう」


◇


 未登録領域。


 高瀬。


 突然。


 スマートフォン。


 震える。


「……」


 外部固定網。


 通信。


 不安定。


 文字。



『見つけた』



 藤原。


 続き。



『現実側の桐谷先生』



「……」


 高瀬。


 胸。


 強く。


 鳴る。


 桐谷。


「何」


「見つかった」


「……」


「向こうの」


「お前」


「……」


 桐谷。


 顔。


 少し。


 強張る。


「どんな」


「まだ」


「分からん」


 次。


 メッセージ。



『記憶あり』



 さらに。



『高瀬先生との関係も』



「……」


 高瀬。


 顔。


 変わる。


 桐谷。


 静か。


「そっか」


「……」


「やっぱ」


「俺と」


「同じ?」


「一部」


「未登録領域」


「記憶だけ」


「欠損」


「……」


 佐伯。


「つまり」


「現実側の桐谷先生は」


「一年前」


「分岐する直前まで」


「ほぼ同じ?」


「……」


 ナオ。


「先生」


「二人とも」


「桐谷玲司」


「……」


 桐谷。


「やめろ」


「何が」


「どっちか」


「消せば」


「解決みたいに」


「考えるの」


「……」


 高瀬。


 少し。


 止まる。


 確かに。


 一瞬。


 考えた。


 現実側。


 偽物。


 こっち。


 本物。


 そうなら。


 簡単。


 でも。


 違う。


「……悪い」


「今」


「思った」


「うん」


「でも」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「顔に」


「出てた」


「お前まで!」


「高瀬」


「本当に」


「分かりやすい」


「帰ったら」


「全員」


「教育し直す!」


◇


 外。


 藤原たち。


 現実側桐谷。


 空き教室。


「……つまり」


 桐谷。


 腕。


 組む。


「俺と」


「同じ名前の」


「俺が」


「別の場所に」


「いる?」


「はい」


「……」


「高瀬は」


「そっち」


「います」


「……」


 桐谷。


 一度。


 天井。


 見る。


「頭」


「痛いな」


 白石。


「俺も」


「さっきから」


「ずっと」


「そうです」


「お前」


「誰」


「白石悠真」


「ナオの友達」


「……」


 桐谷。


 顔。


 少し。


 変わる。


「水城尚」


「……」


「覚えてる?」


 白石。


「……」


 桐谷。


 長い。


 沈黙。


「水城」


「二年四組」


「図書委員」


「……」


 白石。


 息。


 止まる。


「覚えてる」


「……」


「でも」


 桐谷。


 眉。


 寄せる。


「転校」


「した?」


「……」


 白石。


「違う」


「……」


「消えた」


「……」


 桐谷。


 目。


 少し。


 大きくなる。


「何」


「それ」


「俺」


「知らない」


「……」


 真壁。


「そこ」


「消されてる」


「未登録領域」


「関係」


「……」


 桐谷。


 椅子。


 座る。


「じゃあ」


「俺」


「一年」


「何してた」


「……」


 藤原。


「普通に」


「先生」


「してた?」


「した」


「……」


「毎日」


「学校」


「来て」


「授業」


「会議」


「……」


「高瀬」


「いないの」


「変だと」


「思わなかった?」


 桐谷。


 止まる。


「……」


「高瀬」


「いた」


「……」


 三人。


 結良。


 完全に。


 止まる。


「何」


 藤原。


「どういう」


「高瀬」


「普通に」


「学校」


「いた」


「……」


 真壁。


「今の高瀬先生?」


「何だよ」


「今のって」


「……」


 桐谷。


 少し。


 苛立つ。


「高瀬は」


「ここに」


「ずっと」


「いた」


「……」


 藤原。


 胸。


 冷える。


「じゃあ」


「あなたが」


「いた現実では」


「桐谷先生も」


「高瀬先生も」


「両方」


「普通に」


「学校にいた?」


「そうだ」


「……」


 結良。


「でも」


「私たちの記憶」


「桐谷先生」


「いない」


「……」


 白石。


「何それ」


「世界」


「違う?」


「……」


 真壁。


 表情。


 変わる。


「分岐」


「……」


「二人の」


「桐谷じゃない」


「二つの」


「現実?」


 SYSTEM。


 全員。


 同時。



━━━━━━━━━━━━


整合性異常を検出。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 次。



━━━━━━━━━━━━


重複対象では


ありません。


━━━━━━━━━━━━



「え」


 藤原。


 次。



━━━━━━━━━━━━


対象A


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━


対象B


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━


所属履歴


異なる。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 真壁。


 息。


 止まる。


「履歴」


「違う」


 次.



━━━━━━━━━━━━


対象A


現行世界線


━━━━━━━━━━━━


対象B


廃棄世界線


━━━━━━━━━━━━



「……」


 教室。


 静か。


「廃棄」


 結良。


「世界線?」


 桐谷。


 顔。


 強張る。


「どっちが」


 白石。


「廃棄」


 SYSTEM。


 表示。



━━━━━━━━━━━━


廃棄世界線所属


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━



 四人。


 現実側の桐谷を見る。


「……」


 桐谷。


 ゆっくり。


 笑う。


 でも。


 笑えてない。


「俺か」


「……」


 藤原。


 何も。


 言えない。


 桐谷。


「なるほど」


「……」


「だから」


「俺の記憶と」


「お前らの記憶」


「違う」


「……」


 真壁。


「でも」


「今」


「ここにいる」


「……」


 桐谷。


 真壁を見る。


「そうだな」


「廃棄」


「されたはずなのに」


「……」


 その時。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


廃棄処理


再開。


━━━━━━━━━━━━



「……!」


 藤原。


「何」


 結良。


「先生!」


 桐谷。


 自分の。


 手。


 見る。


 輪郭。


 少し。


 透ける。


「……」


 白石。


「消える?」


 真壁。


 立つ。


「待って」


「この人」


「偽物じゃない」


「……」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


不要履歴を


削除します。


━━━━━━━━━━━━



 真壁。


 顔。


 変わる。


「不要じゃない」


 SYSTEM。


 無反応。


「桐谷先生」


 藤原。


「今」


「何したい」


「……」


 現実側の。


 桐谷。


 一瞬。


 驚く。


「何だ」


「急に」


「答えて」


「……」


 桐谷。


 少し。


 考える。


「高瀬に」


「会いたい」


「……」


「何で」


「文句」


「言う」


「……」


「俺の世界では」


「あいつ」


「普通に」


「一年」


「いた」


「……」


「でも」


「今」


「お前らの話」


「聞いたら」


「多分」


「別の高瀬」


「……」


「じゃあ」


 一度。


 笑う。


「どっちの高瀬が」


「面倒か」


「確認したい」


「……」


 結良。


 吹き出す。


「先生」


「それ」


「帰る理由」


「弱くない?」


「弱い?」


「いや」


 藤原。


 少し。


 笑う。


「十分」


 その瞬間。


 桐谷。


 輪郭。


 少し。


 戻る。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


自己定義情報


検出。


━━━━━━━━━━━━



 真壁。


「やっぱり」


「この人も」


「一人の人間として」


「固定できる」


「……」


 現実側桐谷。


「固定?」


「説明」


「後」


「また?」


 結良。


「最近」


「そればっか」


◇


 未登録領域。


 高瀬。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


廃棄世界線


削除処理


再開。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 佐伯。


「向こう」


「危ない」


 ナオ。


「先生」


「どうする」


 高瀬。


 現実側桐谷。


 今。


 消されかけてる。


 こっちの。


 桐谷。


 帰れない。


「桐谷」


「何」


「向こうの」


「お前」


「消したくない」


「……」


 桐谷。


 少し。


 驚く。


「俺も」


「……」


「会ったこと」


「ないけど」


「……」


「そいつ」


「俺じゃ」


「ない」


「でも」


「桐谷玲司として」


「一年」


「生きた」


「……」


「それ」


「消していい理由」


「ない」


「……」


 高瀬。


 笑う。


「じゃあ」


「二人」


「残す?」


「できるのか」


「知らん」


「……」


「でも」


 高瀬。


 少し。


 目。


 細くなる。


「SYSTEM」


「一人に」


「決めたがる」


「……」


「だったら」


「二人」


「いるって」


「決めたら」


「一番」


「嫌がるんじゃない?」


「高瀬先生」


 佐伯。


「それ」


「めちゃくちゃ」


「雑です」


「でも」


 ナオ。


 少し。


 笑う。


「僕」


「好きです」


「だろ?」


「半分」


「そこ!」


◇


 SYSTEM。


 警告。



━━━━━━━━━━━━


重複人格


維持不可。


━━━━━━━━━━━━



「重複じゃ」


「ない」


 高瀬。


 画面。


 睨む。


「履歴」


「違うんだろ」


「……」


「なら」


「別人」


「同じ名前」


「同じ記憶」


「一部」


「同じ」


「……」


「でも」


「一年」


「別に」


「生きた」


「……」


「それ」


「もう」


「同じ人間」


「じゃないだろ」


 桐谷。


 高瀬を見る。


 少し。


 驚いた。


「お前」


「何」


「そこまで」


「考えるように」


「なったんだな」


「……」


「昔の俺」


「そんな」


「考えない?」


「多分」


「本物」


「偽物」


「決めてた」


「……」


 高瀬。


 苦笑。


「ありそう」


「かなり」


◇


 その瞬間。


 外。


 真壁。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


統合候補


生成。


━━━━━━━━━━━━



「統合?」


 藤原。


 次.



━━━━━━━━━━━━


桐谷玲司A


+


桐谷玲司B


━━━━━━━━━━━━


単一人格へ


再統合可能。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 現実側桐谷。


「何だそれ」


 真壁。


「二人の」


「記憶」


「一個に」


「する?」


「……」


 結良。


「それ」


「怖」


 藤原。


「どっちが」


「残る」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


区別は


不要です。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 現実側桐谷。


 少し。


 笑う。


「腹立つな」


「何が」


 白石。


「俺ら」


「一年」


「別々に」


「生きて」


「……」


「区別不要」


「って」


「……」


「勝手に」


「言われるの」


「嫌だ」


 真壁。


 その言葉。


 聞いて。


 少し。


 笑う。


「分かります」


「何で」


「俺も」


「不要って」


「言われた」


「……」


「結構」


「腹立ちますよね」


「かなり」


 初対面。


 なのに。


 一瞬。


 妙に。


 意気投合。


 結良。


「何か」


「真壁先生」


「友達できた?」


「その言い方」


「やめて」


◇


 未登録領域。


 桐谷。


「統合」


 高瀬。


「見えてる?」


「出た」


「どうする」


「……」


 桐谷。


 長い。


 沈黙。


「嫌だ」


「……」


「向こうの俺を」


「俺に」


「混ぜたくない」


「……」


「何で」


「そいつが」


「何考えて」


「一年」


「どう生きたか」


「……」


「俺」


「知らない」


「……」


「それを」


「俺の記憶」


「として」


「勝手に」


「入れられるの」


「嫌だ」


「……」


 高瀬。


 頷く。


「じゃあ」


「統合しない」


「でも」


「俺」


「帰れない」


「……」


「なら」


「三人目」


「いや」


「二人目の」


「桐谷玲司として」


「帰る場所」


「作る」


「……」


 桐谷。


 高瀬を見る。


「できる?」


「知らん」


「また」


「でも」


 一度。


 笑う。


「今まで」


「前例ないこと」


「何回やった」


「……」


 ナオ。


「結構」


「いっぱい」


 佐伯。


「数えたくない」


「じゃあ」


「今回も」


「一個増やす」


◇


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


新規登録形式を


要求しますか?


━━━━━━━━━━━━



「……」


 三人。


 止まる。


「SYSTEMから」


 佐伯。


「聞いてきた」


「珍しい」


 高瀬。


 選択。



YES


NO



「桐谷」


「どうする」


「……」


「俺」


「別の俺と」


「同じ世界に」


「帰る?」


「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「めちゃくちゃ」


「気まずそう」


「第一声」


「何」


「……」


「どうも」


「弱!」


 ナオ。


「先生同士なら」


「お疲れ様です」


「それ」


「いいな」


「二人の桐谷」


「廊下で」


「お疲れ様です」


「地獄!」


 三人。


 笑う。


 桐谷。


 そのまま。


 少し。


 息。


 吐く。


「帰る」


「……」


「向こうの俺」


「いるなら」


「会いたい」


「……」


「俺じゃない」


「俺」


「どう生きたか」


「聞きたい」


「……」


「それ」


「帰る理由?」


「うん」


「十分」


 高瀬。


「じゃあ」


「YES」


 桐谷。


「俺が」


「押す」


「うん」


 指。


 タップ。



━━━━━━━━━━━━


新規登録形式


生成中。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 長い。


 数秒。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


既存名


使用不可。


━━━━━━━━━━━━



「名前」


 ナオ。


「同じ」


「使えない?」


「……」


 桐谷。


 顔。


 強張る。


「じゃあ」


「俺」


「名前」


「変えろって?」


 高瀬。


「それ」


「嫌?」


「……」


 桐谷。


 少し。


 考える。


「嫌だ」


「……」


「俺」


「桐谷玲司」


「だから」


「……」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


識別名変更


必須。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬。


 拳。


 握る。


「また」


「名前」


「決める」


「……」


 佐伯。


「待って」


「識別名」


「本人名」


「同じとは」


「限らない」


「……」


 高瀬。


「つまり」


「SYSTEM上」


「別名」


「実際は」


「桐谷玲司?」


「可能性」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


表示名は


本人選択可。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 桐谷。


「俺が」


「選ぶ?」


「うん」


「何に」


「……」


 ナオ。


「先生」


「ニックネーム」


「嫌」


「即答!」


 高瀬。


「玲司2」


「殴るぞ」


「ごめん!」


 佐伯。


 笑う。


「今」


「こんな時に」


「よく」


「それ出ますね」


「緊張!」


◇


 桐谷。


 少し。


 考える。


 自分。


 桐谷玲司。


 でも。


 現実には。


 もう一人。


「……」


「高瀬」


「何」


「お前」


「俺のこと」


「昔」


「何て」


「呼んでた」


「桐谷」


「それだけ?」


「多分」


「……」


「たまに」


「玲司?」


「……」


 桐谷。


 少し。


 目。


 動く。


「呼んでた?」


「……」


「飲み行った時」


「何回か」


「多分」


「……」


「じゃあ」


 一度。


 画面。


 見る。


「玲司」


「……」


「表示名」


「玲司」


「だけ?」


「うん」


「名字」


「なくす?」


「なくすんじゃない」


「……」


「桐谷玲司」


「俺」


「それは」


「変わらない」


「……」


「でも」


「SYSTEMが」


「区別したいなら」


「勝手に」


「玲司で」


「区別しろ」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「お前」


「結構」


「強引」


「高瀬に」


「言われたくない」


◇


 桐谷。


 入力。



『玲司』



 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


新規表示名


玲司


━━━━━━━━━━━━


本人名


桐谷玲司


保持。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 三人。


 息。


 吐く。


「いける」


 高瀬。


 次.



━━━━━━━━━━━━


新規登録方式


並列存在


━━━━━━━━━━━━



「並列」


 佐伯。


 次.



━━━━━━━━━━━━


前例


0


━━━━━━━━━━━━



 高瀬。


「また」


 ナオ。


「もう」


「慣れました」


「慣れるな!」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「やる」


「うん」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


並列存在帰還


実行しますか?


━━━━━━━━━━━━



YES


NO



 桐谷。


 画面。


 見る。


「高瀬」


「何」


「帰ったら」


「味噌と塩」


「両方ある店」


「探せよ」


「……」


 高瀬。


 笑う。


「任せろ」


「ナオ」


「はい」


「小説」


「読ませろ」


「はい」


「佐伯先生」


「はい」


「コーヒー」


「薄くないやつ」


「努力します」


「そこ」


「努力?」


 少し。


 笑い。


 桐谷。


 YES。


 押す。


◇


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


並列存在帰還


開始。


━━━━━━━━━━━━



 部屋。


 大きく。


 揺れる。


「……!」


 高瀬。


 壁。


 支える。


 写真。


 全部。


 剥がれる。


 空中。


 舞う。


 桐谷。


 身体。


 白い。


 光。


 包まれる。


「桐谷!」


「高瀬!」


「何!」


「外の俺」


「……」


「偽物って」


「言うなよ!」


「……」


 高瀬。


 一瞬。


 目。


 大きくなる。


 そして。


 笑う。


「言わん!」


「本人にも」


「言っとけ!」


「自分で言え!」


「それもそうだ!」


 桐谷。


 笑う。


 光。


 強くなる。


 その瞬間。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


警告。


並列存在により


履歴矛盾が発生します。


━━━━━━━━━━━━



「また」


 佐伯。


 次.



━━━━━━━━━━━━


矛盾解消のため


一方の履歴を


選択してください。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 笑顔。


 止まる。


「どっちかの」


「過去」


「消せって?」


 高瀬。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


選択肢A


現行世界線


━━━━━━━━━━━━


選択肢B


廃棄世界線


━━━━━━━━━━━━



 桐谷。


「……」


 高瀬。


 画面。


 睨む。


「選ばない」


 SYSTEM。


 無反応。


「どっちも」


「桐谷玲司が」


「生きた」


「……」


「片方」


「捨てる」


「必要」


「ない」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


選択しない場合


帰還中止。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「高瀬」


「何」


「どうする」


「……」


 高瀬。


 胸。


 強く。


 鳴る。


 どっちも。


 残したい。


 でも。


 SYSTEMは。


 選べと言う。


 A。


 B。


 正解。


 不正解。


 ずっと。


 同じ。


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「C」


「は?」


「高瀬先生?」


 ナオ。


「選択肢」


「ないです」


「作る」


「……」


 桐谷。


 吹き出す。


「お前」


「昔から」


「そういうとこ」


「ある?」


「最近!」


 高瀬。


 画面。


 入力欄。


 ない。


 なら。


 声。


「選択肢C」


「両方」


「残す」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


無効入力。


━━━━━━━━━━━━



「もう一回」


「両方」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


無効。


━━━━━━━━━━━━



「両方」


「高瀬」


 桐谷。


 笑う。


「しつこい」


「知ってるだろ」


「かなり」


「両方!」


 SYSTEM。


 画面。


 揺れる。



━━━━━━━━━━━━


無効


無効


無効


━━━━━━━━━━━━



「高瀬先生」


 ナオ。


「SYSTEM」


「バグってない?」


「もっと」


「やる?」


「やりましょう」


「ナオ!」


 三人。


「両方!」


「両方!」


「両方!」


 佐伯まで。


 笑いながら。


「両方!」


 SYSTEM。


 激しく。


 乱れる。



━━━━━━━━━━━━


選択不能。


━━━━━━━━━━━━


予測不能。


━━━━━━━━━━━━


履歴単一化


失敗。


━━━━━━━━━━━━



「……!」


 高瀬。


「きた」


 次.



━━━━━━━━━━━━


暫定処理


全履歴保持。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 桐谷。


 目。


 大きくなる。


「全部」


 高瀬。


「残る」


 次.



━━━━━━━━━━━━


並列存在帰還


続行。


━━━━━━━━━━━━



「行け!」


 高瀬。


 光。


 爆発。


◇


 現実側。


 旧視聴覚室。


 現実側桐谷。


 突然。


 胸。


 押さえる。


「……っ」


「先生!」


 結良。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


並列存在


受入準備。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 真壁。


 目。


 大きくなる。


「成功?」


 藤原。


「まだ」


 その瞬間。


 旧視聴覚室。


 扉。


 内側。


 激しい。


 光。


「下がって!」


 真壁。


 四人。


 現実側桐谷。


 一歩。


 後ろ。


 扉。


 開く。


 まず。


 高瀬。


「……っ」


 床。


 転がる。


「先生!」


 結良。


「痛っ!」


「帰り方」


「ダサ!」


「今言う!?」


 次。


 ナオ。


「……」


 白石。


「ナオ!」


「ただいま」


「二回目やるな!」


 そして。


 佐伯。


「……」


 藤原。


「佐伯先生」


「はい」


「戻りました」


 最後。


 光。


 残る。


「……」


 現実側桐谷。


 じっと。


 見る。


 高瀬。


 息。


 止める。


 光。


 中。


 一人。


 男。


 出てくる。


 桐谷玲司。


「……」


 二人。


 同じ。


 いや。


 服。


 違う。


 表情。


 違う。


 目。


 違う。


 でも。


 顔。


 同じ。


 廊下。


 静か。


「……」


 現実側桐谷。


 一歩。


 前。


 未登録領域から。


 戻った桐谷。


 一歩。


 前。


 二人。


 向かい。


「……」


 白石。


 小声。


「何か」


「気まず」


「言うな」


 結良。


「でも」


「気まずい」


「確かに」


 高瀬。


 息。


 飲む。


 二人の。


 桐谷。


 数秒。


 見つめ合う。


 そして。


 現実側桐谷。



「……お疲れ様です」



「……」



 戻った桐谷。



「お疲れ様です」



「……」


 全員。


 止まる。


 ナオ。


「本当に」


「言った」


 高瀬。


「職員同士!」


 結良。


 吹き出す。


 白石。


 肩。


 震える。


 藤原。


 口元。


 押さえる。


 佐伯。


 笑う。


 真壁。


 完全に。


 顔。


 逸らす。


「笑うなよ!」


 二人の桐谷。


 同時。


「……」


 さらに。


 全員。


 爆笑。


「同じ!」


 高瀬。


「そこまで!」


 戻った桐谷。


「高瀬!」


 現実側桐谷。


「お前」


「本当に」


「うるさいな」


「二倍で怒られた!」


◇


 笑い。


 少し。


 落ち着く。


 二人。


 改めて。


 見る。


「俺」


 現実側桐谷。


「桐谷玲司」


「……」


「俺も」


 戻った桐谷。


「桐谷玲司」


「……」


 少し。


 間。


「でも」


 現実側。


「一年」


「違う」


「うん」


「……」


「じゃあ」


 戻った桐谷。


「俺ら」


「同じじゃ」


「ないな」


「……」


 現実側。


 少し。


 笑う。


「多分」


 高瀬。


 胸。


 熱くなる。


 SYSTEM。


 全員。


 同時。



━━━━━━━━━━━━


並列存在


登録完了。


━━━━━━━━━━━━


対象A


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━


対象B


桐谷玲司


表示名


玲司


━━━━━━━━━━━━



「……」


 戻った桐谷。


「玲司」


「俺だけ」


「距離感」


「近くない?」


 高瀬。


「呼びやすい!」


「勝手に」


「呼ぶな!」


 現実側桐谷。


「俺」


「桐谷?」


「そうなるな」


「何で」


「俺が」


「名字担当?」


「知らん!」


 また。


 笑い。


 でも。


 SYSTEM。


 最後。



━━━━━━━━━━━━


警告。


廃棄世界線の


復元を確認。


━━━━━━━━━━━━



 笑顔。


 少し。


 止まる。


 次.



━━━━━━━━━━━━


復元対象は


桐谷玲司


1名ではありません。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 真壁。


 顔。


 変わる。


「何」


 藤原。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


廃棄世界線


残存対象


━━━━━━━━━━━━



 数字。



━━━━━━━━━━━━


18

━━━━━━━━━━━━



「……十八」


 高瀬。


 息。


 止まる。


 現実側桐谷。


 顔。


 強張る。


「俺の」


「世界」


「……」


「他にも」


「残ってる?」


 戻った桐谷。


 現実側の自分。


 見る。


「誰」


 SYSTEM。


 次.



━━━━━━━━━━━━


現行世界線への


接触可能対象


━━━━━━━━━━━━


17


━━━━━━━━━━━━



「一人」


 ナオ。


「違う」


「何が」


 佐伯。


「十八人」


「残ってる」


「でも」


「接触できるのは」


「十七」


「……」


 高瀬。


「残り」


「一人」


「どこ」


 SYSTEM。


 画面。


 暗転。


 最後。


 一行。



━━━━━━━━━━━━


対象No.18


現在


Review69内部。

━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬。


 胸。


 強く。


 鳴る。


 Review69。


 まだ。


 起きていないはず。


 なのに。


 すでに。


 そこに。


 一人。


 いる。


「誰だよ」


 高瀬。


 画面。


 見る。


 回答。


 ない。


 その時。


 真壁。


 突然。


 頭。


 押さえる。


「……っ」


「真壁!」


 藤原。


「見えた?」


「……」


 真壁。


 呼吸。


 荒い。


「一瞬」


「誰」


「……」


 目。


 上げる。


 高瀬を見る。


「知ってる」


「……」


「俺ら」


「全員」


「知ってる」


「誰」


 真壁。


 口。


 開く。


 でも。


 声。


 出ない。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


観測制限。


━━━━━━━━━━━━


対象No.18の


実名共有を禁止。

━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬。


「じゃあ」


「特徴」


「それも」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


禁止。

━━━━━━━━━━━━



「ふざけんな!」


 真壁。


 その時。


 少し。


 笑う。


「でも」


「何」


「一個」


「SYSTEMが」


「止められないこと」


「ある」


「……」


 真壁。


 全員を見る。


「俺」


「その人の」


「名前」


「言えない」


「うん」


「特徴も」


「言えない」


「……」


「でも」


 一度。


 胸。


 押さえる。


「その人を」


「知ってる俺の」


「気持ちまでは」


「消せない」


「……」


 高瀬。


「何感じた」


 真壁。


 少し。


 目。


 潤む。



「会いたい」



「……」



「めちゃくちゃ」



「会いたい」



 高瀬。


 何も。


 言えない。


 SYSTEM。


 数字。



━━━━━━━━━━━━


既存予測モデル


崩壊率


48%


 ↓


51%

━━━━━━━━━━━━



「……」


 藤原。


「上がった」


 真壁。


 少し。


 笑う。


「名前」


「言えなくても」


「人は」


「残る」


「……」


 高瀬。


 画面。


 見る。


 69。


 そこに。


 いる。


 一人。


 全員が。


 知っている。


 でも。


 名前を。


 言えない。


 そして。


 真壁は。


 会いたいと。


 思った。


 その一人が。


 Review69の。


 中から。


 こちらを。


 待っている。

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