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この人生、採点中  作者: 夜凪 灯
第一章 『あなたは、あなたを何点にしますか』

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45/119

Review45 三人と四人

「三人」


 桐谷の声が。


 黒い裂け目の向こうから。


 かすかに。


 聞こえる。


「決めろ」


「……」


 七人。


 旧視聴覚室。


 誰も。


 すぐには。


 口を開かなかった。


 裂け目。


 向こう。


 桐谷の。


 顔。


 半分。


 黒い数字。


『003』


 頬。


 首。


 腕。


 少しずつ。


 広がっている。


「高瀬先生」


 真壁。


「時間」


「うん」


 高瀬。


 裂け目を見る。


「俺は」


「行く」


「はい」


 藤原。


「そこは」


「予想通り」


「何だよ」


「止めないの?」


「理由」


「聞きます」


「……」


 高瀬。


 一度。


 息を吸う。


「桐谷と」


「一年前」


「一緒に入った」


「うん」


「俺だけ」


「戻った」


「……」


「それ」


「今回」


「ちゃんと」


「自分で」


「見たい」


「……」


「あと」


 一度。


 桐谷を見る。


「桐谷に」


「会いたい」


「……」


 藤原。


 静かに。


 頷く。


「分かりました」


「止めない?」


「止めません」


「……」


「今」


「高瀬先生が」


「自分で」


「行きたいって」


「言ったので」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「ありがとう」


「まだ」


「帰ってきてから」


「言ってください」


「厳しい!」


◇


「二人目」


 真壁。


 言う前に。


「僕」


 ナオ。


 手。


 上げる。


「……」


 白石。


 すぐ。


 ナオを見る。


「お前」


「行くの?」


「うん」


「何で」


「桐谷先生」


「向こうで」


「ずっと」


「一緒だった」


「……」


「僕が」


「戻れた時も」


「桐谷先生」


「残った」


「……」


「僕」


 一度。


 息を吸う。


「今度」


「迎えに」


「行きたい」


「……」


 白石。


 少し。


 顔をしかめる。


「それ」


「また」


「自分が」


「何とかしようとしてない?」


「……」


 ナオ。


 止まる。


 高瀬。


 少し。


 白石を見る。


「お」


「何」


「いや」


「いいとこ突くなって」


「今」


「先生」


「黙って」


「はい」


 白石。


 ナオを見る。


「お前」


「桐谷先生のために」


「行く?」


「うん」


「自分は?」


「……」


「行きたい?」


「……」


 ナオ。


 少し。


 考える。


 暗い。


 未登録領域。


 戻りたくない。


 本当は。


 怖い。


「……怖い」


「うん」


「行きたくない」


「……」


 全員。


 少し。


 ナオを見る。


「でも」


 一度。


 顔。


 上げる。


「それでも」


「行きたい」


「……」


「桐谷先生に」


「会いたい」


「……」


「一回」


「僕が」


「戻ったこと」


「ちゃんと」


「本人に」


「見せたい」


「……」


 白石。


 少し。


 息を吐く。


「じゃあ」


「行け」


「……」


「でも」


「戻れ」


「……」


 ナオ。


 少し。


 笑う。


「うん」


「戻りたい」


「なら」


「それでいい」


◇


「三人目」


 高瀬。


 真壁。


 佐伯。


 藤原。


 結良。


 白石。


 少し。


 空気。


 変わる。


「私」


 佐伯。


「行きます」


「佐伯先生」


 高瀬。


「理由」


「三年前」


 一度。


 裂け目。


 見る。


「私も」


「ここに」


「落ちた」


「……」


「でも」


「その時」


「逃げることしか」


「考えられなかった」


「……」


「今」


「もう一度」


「同じ場所へ」


「自分で」


「入る」


「……」


「それ」


「多分」


「私に」


「必要です」


「……」


 藤原。


「怖い?」


「はい」


「かなり」


「……」


「でも」


「行きたい」


「はい」


「……」


 高瀬。


 頷く。


「じゃあ」


「佐伯先生」


 真壁。


 でも。


 少し。


 顔。


 硬い。


「何」


 高瀬。


「俺も」


「行きたい」


「……」


 空気。


 止まる。


「真壁」


「桐谷先生」


「一年前」


「俺と」


「関わってる」


「うん」


「制止者」


「俺」


「最初」


「桐谷先生に」


「頼まれて」


「高瀬先生」


「止めた」


「……」


「俺」


「その理由」


「まだ」


「全部」


「知らない」


「……」


「だから」


「行きたい」


「……」


 高瀬。


 真壁を見る。


「でも」


 真壁。


 自分のスマートフォン。


『観測者』


 見る。


「今」


「俺が」


「中で」


「また未来」


「見たら」


「……」


「観測深度」


「上がる」


「……」


「自分で」


「危ないって」


「思う」


「……」


 少し。


 笑う。


「だから」


「行きたいけど」


「行かない」


「……」


 高瀬。


 一瞬。


 何も。


 言えない。


「真壁」


「何」


「それ」


「結構」


「難しい選択だな」


「……」


「はい」


「でも」


 真壁。


 少し。


 藤原を見る。


 結良。


 白石。


「外にも」


「必要な役割」


「ある」


「……」


「俺」


「そっち」


「やります」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「頼む」


「はい」


◇


 内部。


 高瀬。


 ナオ。


 佐伯。


 外部。


 藤原。


 真壁。


 白石。


 篠宮。


「……」


 結良。


 ホワイトボードに。


『中3』


『外4』


 書く。


「何か」


「遠足の班分け」


「みたい」


「篠宮」


「今?」


「緊張」


「誤魔化してます」


「正直!」


 白石。


「俺」


「外で」


「何するんですか」


 真壁。


「水城を」


「繋ぐ」


「……」


「どうやって」


「話す」


「名前呼ぶ」


「今までの」


「話」


「する」


「……」


「そんなので」


「大丈夫?」


 佐伯。


「白石くん」


「何」


「多分」


「そういうのが」


「一番」


「大事です」


「……」


「SYSTEMのために」


「何かするんじゃなく」


「普通に」


「水城くんとの」


「関係を」


「続ける」


「……」


 白石。


 少し。


 ナオを見る。


「じゃあ」


「いつも通り?」


「多分」


 ナオ。


「漫画」


「読むな」


「今?」


「図書委員じゃない!」


「でも」


「サボるな」


「そのやり取り」


「外から」


「やってください」


 真壁。


「了解」


 白石。


 少し。


 笑う。


◇


「藤原」


 高瀬。


「何ですか」


「俺」


「外」


「誰」


「……」


 藤原。


 少し。


 眉。


 上げる。


「私」


「一人?」


「いや」


「固定」


「……」


「俺」


「誰が」


「繋ぐ?」


「……」


 藤原。


 すぐには。


 答えない。


「私」


「……」


「だけ?」


「だけ」


「では」


「ないと思います」


「……」


「真壁先生も」


「篠宮さんも」


「白石くんも」


「佐伯先生」


「水城くん」


「……」


「高瀬先生」


「結構」


「色んな人と」


「繋がってる」


「……」


「でも」


 一度。


 真っ直ぐ。


「私」


「ちゃんと」


「呼びます」


「……」


「高瀬先生」


「って」


「……」


 高瀬。


 少し。


 目。


 細くなる。


「頼む」


「はい」


「あと」


「何」


「勝手に」


「向こうで」


「一人で」


「決めない」


「……」


「はい」


「返事」


「軽い」


「努力します」


「そこは」


「絶対って」


「絶対は」


「言えない!」


 結良。


「先生」


「学習してる」


「褒めた?」


「半分」


「また!」


 少し。


 笑い。


◇


 桐谷。


 裂け目。


 向こう。


 もう。


 ほとんど。


 声。


 聞こえない。


「桐谷!」


 高瀬。


「今から」


「行く!」


 向こう。


 手。


 少し。


 動く。


「……」


 真壁。


「準備」


「します」


 スマートフォン。


 七人。


 同時。


 接続。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


【未登録領域】


内部接続


3


━━━━━━━━━━━━


外部固定網


4


━━━━━━━━━━━━



「出た」


 藤原。


 次。



━━━━━━━━━━━━


暫定構成


内部


高瀬


水城尚


佐伯真由


━━━━━━━━━━━━


外部


藤原


真壁透


白石悠真


篠宮結良


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬。


「名前」


「出てる」


 佐伯。


「番号じゃない」


「はい」


 ナオ。


 少し。


 笑う。


「いいですね」


「うん」


◇


 警告。



━━━━━━━━━━━━


接続開始後


内部対象への


直接干渉は


制限されます。


━━━━━━━━━━━━



「何」


 白石。


「直接干渉」


 真壁。


「中に」


「触れられない?」


「多分」


 藤原。


「声」


「届く?」


 次。



━━━━━━━━━━━━


音声接続


不安定


━━━━━━━━━━━━



「不安定」


 高瀬。


「まあ」


「ゼロじゃない」


「はい」


 真壁。


「あと」


「一個」


「何」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


外部固定網


維持条件


━━━━━━━━━━━━


対象を


単一定義しないこと。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 全員。


 止まる。


「これ」


 結良。


「さっき」


「話してたこと」


「うん」


 藤原。


「高瀬先生を」


「教師だけ」


「って」


「固定しない」


「水城くんを」


「元001だけ」


「って」


「固定しない」


「佐伯先生を」


「元002だけ」


「って」


「固定しない」


「……」


 真壁。


「外にいる」


「俺らが」


「中にいる三人を」


「色んな人として」


「覚えてる」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「何それ」


「めちゃくちゃ」


「人間っぽいな」


◇


「行く」


 高瀬。


 黒い裂け目。


 前。


「待って」


 藤原。


「……」


「何」


 藤原。


 少し。


 高瀬を見る。


「戻ってきたら」


「何する?」


「……」


 高瀬。


「今」


「それ聞く?」


「はい」


「固定」


「作るため?」


「違います」


「……」


「普通に」


「聞きたい」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「帰ってきたら」


「ラーメン」


「……」


 結良。


「急に」


「普通」


「だろ?」


「何ラーメン」


 白石。


「味噌」


「そこ大事?」


「大事」


 真壁。


「店」


「今決める?」


「戻ってから」


「じゃあ」


 藤原。


 少し。


 笑う。


「戻ったら」


「味噌ラーメン」


「はい」


「忘れないで」


「忘れん」


 ナオ。


「僕」


「カレー」


「別行動!」


 佐伯。


 笑う。


「私は」


「コーヒー」


「薄いの?」


 高瀬。


「高瀬先生」


「今」


「行かせませんよ」


「すみません!」


 笑い。


 怖い。


 でも。


 笑える。


 それが。


 少し。


 ありがたかった。


◇


 三人。


 裂け目。


 前。


「高瀬先生」


 真壁。


「何」


「俺」


「未来」


「見ても」


「今は」


「言いません」


「うん」


「だから」


「未来より」


「こっち」


「見て」


「……」


 高瀬。


 真壁を見る。


「分かった」


 白石。


「ナオ」


「何」


「戻ったら」


「図書室」


「うん」


「青いノート」


「続き」


「……」


 ナオ。


 少し。


 笑う。


「書きたい」


「なら」


「戻れ」


「うん」


 結良。


「佐伯先生」


「はい」


「戻ったら」


「保健室」


「行っていい?」


「もちろん」


「寝るだけ」


「保健室潰れません」


「……」


 結良。


 少し。


 笑う。


「それ」


「好き」


 佐伯。


 目。


 少し。


 潤む。


「はい」


 高瀬。


 三人。


 見る。


「じゃあ」


「行こう」


◇


 接続。



━━━━━━━━━━━━


接続開始。


━━━━━━━━━━━━



 黒い裂け目。


 一瞬。


 大きく。


 広がる。


「……!」


 高瀬。


 足。


 踏み込む。


 その瞬間。


 床。


 消える。


「うわっ」


 落ちる。


 感覚。


 でも。


 身体。


 落ちてない。


 上下。


 分からない。


 胃。


 浮く。


 耳。


 急に。


 詰まる。


 音。


 消える。


「……!」


 口。


 動かす。


 声。


 聞こえない。


 目。


 開く。


 暗い。


 いや。


 黒ではない。


 色が。


 ない。


 廊下。


 みたいなもの。


 ある。


 でも。


 壁。


 遠い。


 近い。


 見るたび。


 距離。


 変わる。


「……」


 横。


 ナオ。


 いる。


 佐伯。


 いる。


 高瀬。


 少し。


 安心。


「聞こえる?」


 声。


 少し。


 遅れて。


「……聞こえます」


 ナオ。


 口。


 動いた後。


 声。


 来る。


「気持ち悪」


 佐伯。


 顔。


 青い。


「三年前より」


「濃い」


「何が」


「領域」


「……」


「前は」


「もっと」


「場所」


「固定されてた」


「今」


「全部」


「揺れてる」


「……」


 高瀬。


 足元。


 見る。


 床。


 ある。


 でも。


 一歩。


 踏むたび。


 少し。


 沈む。


「これ」


「走れんな」


「高瀬先生」


 ナオ。


「最初から」


「走らないで」


「分かってる!」


 その声。


 少し。


 遅れて。


 聞こえる。


◇


 後ろ。


 裂け目。


 もう。


 細い。


 向こう。


 藤原。


 真壁。


 白石。


 結良。


 見える。


「高瀬先生!」


 藤原。


 声。


 遠い。


 水中。


 みたい。


「聞こえる!」


 高瀬。


 叫ぶ。


 自分の声。


 変。


 半秒後。


 戻ってくる。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


外部固定網


正常。


━━━━━━━━━━━━



 少し。


 安心。


 次。



━━━━━━━━━━━━


内部経過時間


00:01:18


━━━━━━━━━━━━


外部経過時間


00:00:11


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬。


「待って」


「何」


 ナオ。


「時間」


「違う」


「……」


 佐伯。


 画面。


 見る。


「こっち」


「速い」


「約」


「七倍?」


「……」


 高瀬。


 胸。


 冷える。


「じゃあ」


「外で」


「一分」


「こっち」


「七分」


「……」


 ナオ。


「桐谷先生」


「かなり」


「長く」


「ここに」


「……」


 高瀬。


 言葉。


 止まる。


 今まで。


 自分たちが。


 一日。


 二日。


 迷っていた時間。


 向こうでは。


 もっと。


 長かった?


「……」


 佐伯。


「考えるの」


「後」


「……」


「今」


「桐谷先生」


「はい」


◇


 歩く。


 道。


 一本道。


 だったはず。


 でも。


 三回。


 角。


 曲がる。


「……」


 高瀬。


「今」


「俺ら」


「どこ向かってる?」


「前」


 ナオ。


「前って」


「どっち」


「……」


 ナオ。


 止まる。


「前」


「分からない」


「……」


 佐伯。


「未登録領域」


「目的地」


「思わない方がいい」


「何で」


「強く」


「ここへ行きたい」


「って」


「思うと」


「……」


「そこじゃない場所」


「出る」


「嫌がらせ?」


「分からない」


「じゃあ」


「何考える」


「……」


 佐伯。


 少し。


 考える。


「人」


「……」


「場所じゃなく」


「誰に会いたいか」


「……」


 高瀬。


 目。


 閉じる。


 桐谷。


 一年前。


 声。


 笑い。


 まだ。


 少ない。


 でも。


「桐谷」


 名前。


 口にする。


 ナオ。


「桐谷先生」


 佐伯。


「桐谷先生」


 その瞬間。


 廊下。


 少し。


 形。


 変わる。


 遠く。


 白い。


 扉。


 一つ。


「……出た」


 高瀬。


「人」


「なんだ」


◇


 歩く。


 白い扉。


 近付く。


 でも。


 十歩。


 歩いても。


 距離。


 変わらない。


「何これ」


 ナオ。


「先生」


「走る?」


「お前」


「俺より」


「危ないこと」


「言うようになったな」


「成長」


「それ禁止!」


 佐伯。


 少し。


 笑う。


 その瞬間。


 扉。


 近くなる。


「……」


 三人。


 止まる。


「今」


 佐伯。


「笑ったから?」


「何で」


「……」


 ナオ。


「自然な反応」


「SYSTEMが」


「予測できない?」


「……」


 高瀬。


「じゃあ」


「面白い話」


「しながら」


「行く?」


「この状況で」


 ナオ。


「あります?」


「昔」


「修学旅行で」


「先生なのに」


「寝坊した」


「それ」


「今」


「聞きたい」


 佐伯。


「高瀬先生」


「本当に?」


「マジ」


「集合」


「六時半」


「起きた」


「六時二十五」


「……」


 ナオ。


「間に合った?」


「教師の意地」


「五分」


「無理でしょ」


「ホテル内!」


「そういう」


「重要情報」


「先!」


 三人。


 笑う。


 扉。


 少し。


 近付く。


「マジだ」


 高瀬。


「会話」


「効いてる?」


「多分」


 佐伯。


「じゃあ」


「もっと」


「普通の話」


「……」


 ナオ。


「カレー」


「中辛」


「知ってる!」


「トマト」


「嫌い」


「それも!」


 佐伯。


「高瀬先生」


「コーヒー」


「薄い」


「佐伯先生!」


「私じゃなく」


「高瀬先生が」


「覚えてる情報」


「それ!」


 笑い。


 扉。


 どんどん。


 近付く。


 あと。


 三歩。


 二歩。


 一歩。


◇


 扉。


 前。


 高瀬。


 手。


 伸ばす。


「待って」


 佐伯。


「何」


「音」


「……」


 三人。


 静か。


 扉。


 向こう。


 声。


 誰か。


 話してる。


「桐谷?」


 ナオ。


 耳。


 近付ける。


 声。


 二人?


 一人は。


 桐谷。


 もう一人。


「誰」


 高瀬。


 聞こえない。


 言葉。


 切れ切れ。


『……まだ……』


『……69……』


『……高瀬……』


「俺?」


 高瀬。


 胸。


 強く。


 鳴る。


『……109……』


「……」


 佐伯。


 高瀬を見る。


「今」


「開ける?」


 高瀬。


 手。


 ドアノブ。


 でも。


 止まる。


「……」


 真壁。


 外。


『未来より、こっち見て』


 声。


 思い出す。


「……開ける」


「理由」


 佐伯。


「桐谷に」


「会うため」


「……」


「109」


「知るためじゃない」


「……」


 佐伯。


 頷く。


「はい」


 高瀬。


 ドアノブ。


 回す。


◇


 扉。


 開く。


 中。


 教室。


 いや。


 旧視聴覚室。


 でも。


 違う。


 壁。


 写真。


 大量。


 貼られてる。


 高瀬。


 藤原。


 真壁。


 佐伯。


 ナオ。


 白石。


 結良。


 桐谷。


 知らない人。


 同じ人。


 違う表情。


 違う時間。


「……何」


 ナオ。


「これ」


 中央。


 桐谷。


 椅子。


 座っている。


 身体。


 半分。


『003』


 黒い。


「桐谷!」


 高瀬。


 近付く。


「来るな」


 桐谷。


 声。


 低い。


「何で!」


「高瀬」


「一回」


「止まれ」


「……」


 高瀬。


 止まる。


「……」


 桐谷。


 ゆっくり。


 顔。


 上げる。


「ナオ」


「はい」


「帰ったな」


「……はい」


「ちゃんと?」


「はい」


「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「そっか」


 ナオ。


 目。


 潤む。


「先生」


「何」


「僕」


「戻りました」


「うん」


「悠真に」


「また明日」


「言いました」


「……」


「小説も」


「まだ」


「途中です」


「……」


「カレー」


「中辛」


「知ってる」


「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「お前」


「そんな」


「喋るようになったんだな」


「……」


「前は」


「質問しても」


「一言だった」


「今」


「高瀬先生」


「うるさいので」


「俺のせい!?」


 桐谷。


 久しぶりに。


 少し。


 声。


 出して。


 笑う。


 その瞬間。


『003』


 首。


 ほんの少し。


 薄くなる。


「……!」


 佐伯。


「今」


「減った」


「桐谷先生」


「笑ったから?」


「……」


 高瀬。


 目。


 細くなる。


「やっぱ」


「桐谷を」


「思い出させる」


「……」


「正解?」


「正解」


 言いかけ。


 止まる。


「違う」


「桐谷が」


「桐谷になる」


「それ」


「手伝う」


 桐谷。


 高瀬を見る。


「お前」


「本当に」


「変わったな」


「最近」


「よく言われる」


「前」


「もっと」


「面倒だった」


「お前も言う!?」


 また。


 笑い。


『003』


 少し。


 薄くなる。


◇


「桐谷」


 高瀬。


「下の名前」


「……」


 桐谷。


 顔。


 止まる。


「言える?」


「……」


 口。


 開く。


「きりたに」


「下」


「……」


 出ない。


「ナオ」


 高瀬。


「知ってる?」


「……」


 ナオ。


 顔。


 硬くなる。


「僕」


「先生」


「桐谷先生って」


「ずっと」


「……」


「下の名前」


「知らない?」


「名簿」


「見たはず」


「……」


「出ない」


 佐伯。


「私も」


「……」


 高瀬。


 胸。


 冷える。


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「そこから」


「消されてる」


「……」


「名前」


「先?」


「多分」


「じゃあ」


 高瀬。


「急いで」


「思い出す」


「待て」


 桐谷。


「何」


「俺」


「名前だけ」


「戻せば」


「桐谷に」


「戻れる?」


「……」


 高瀬。


 止まる。


「違う」


「……」


「だろ」


 桐谷。


「じゃあ」


「何」


「お前ら」


「俺の」


「何知ってる」


「……」


 三人。


 静か。


「ナオ」


 桐谷。


「何」


「俺」


「担任として」


「どんなだった」


「……」


 ナオ。


 考える。


「厳しい」


「うん」


「でも」


「怒る時」


「声」


「大きくない」


「……」


「高瀬先生と」


「逆」


「ナオ!」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「あと」


「本」


「読んでた」


「俺が?」


「はい」


「何」


「ミステリー」


「……」


 桐谷。


 目。


 少し。


 動く。


「そうだ」


「……」


「俺」


「ミステリー」


「好きだった」


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


003固定率


100%


 ↓


96%


━━━━━━━━━━━━



「下がった」


 佐伯。


「四」


 高瀬。


「もっと」


◇


「桐谷」


 高瀬。


「俺と」


「どういう関係」


「……」


「一年前じゃなく」


「その前」


「……」


 桐谷。


 少し。


 目。


 細くなる。


「同僚」


「それだけ?」


「……」


「お前」


 一度。


 笑う。


「よく」


「俺のコーヒー」


「勝手に飲んでた」


「……」


 高瀬。


「マジ?」


「マジ」


「俺」


「人の飲み物」


「勝手に?」


「一口だけ」


「余計ダメ!」


 ナオ。


「先生」


「結構」


「最低」


「おい!」


 桐谷。


 笑う。


「あと」


「お前」


「会議」


「終わると」


「毎回」


「俺の席」


「来て」


「……」


「何」


「今日」


「しんどい」


「って」


「言ってた」


「……」


 高瀬。


 胸。


 少し。


 鳴る。


「俺」


「桐谷に?」


「うん」


「……」


「それ」


「全然」


「覚えてない」


「だろうな」


「……」


「俺」


「何て」


「返してた」


「大体」


「『知らん』」


「冷た!」


「でも」


 一度。


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「そのあと」


「聞いてた」


「……」


 高瀬。


 何も。


 言えない。


「お前」


「帰る前」


「毎日」


「十分くらい」


「俺の席」


「いた」


「……」


「俺ら」


「結構」


「仲良かった?」


「高瀬」


「何」


「それ」


「今」


「聞く?」


「聞きたい」


「……」


 桐谷。


 少し。


 顔。


 柔らかくなる。


「かなり」


「……」


 高瀬。


 目。


 少し。


 熱くなる。


「そっか」


「うん」


「……」


 SYSTEM。



96%


↓


88%



「八」


 佐伯。


「効いてる」


◇


 外。


 旧視聴覚室。


 藤原。


 真壁。


 白石。


 結良。


 スマートフォン。


 ノイズ。


「声」


 白石。


「ほぼ」


「聞こえない」


「でも」


 真壁。


「数値」


「見える」


「003」


「88」


「……」


 藤原。


「下がってる」


「中」


「うまく」


「やってる」


 結良。


「高瀬先生」


「暴走してない?」


「……」


 三人。


 少し。


 黙る。


「何」


「いや」


 真壁。


「そこ」


「一番」


「不安」


「分かる」


 藤原。


「でも」


 一度。


 目。


 閉じる。


「信じます」


 結良。


「全部?」


「……」


 藤原。


 少し笑う。


「今日は」


「全部」


「お」


 結良。


「先生に」


「言ってあげたい」


「帰ってきたら」


「はい」


◇


 中。


「桐谷」


 高瀬。


「好きな食べ物」


「何だ急に」


「大事」


「……」


「ラーメン」


「お!」


「何味」


「塩」


「合わん!」


「何で」


「俺味噌」


「知らん」


「だから」


「前も」


「ラーメン」


「一緒に行って」


「別の店」


「選んでた」


「……」


 高瀬。


「一緒に」


「行ってた?」


「たまに」


「……」


「何で」


「俺」


「それ」


「全部」


「忘れてる」


「……」


 桐谷。


 少し。


 表情。


 曇る。


「高瀬」


「何」


「それ」


「今」


「考えるな」


「……」


「戻ってから」


「思い出せる分」


「増やせばいい」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「お前」


「俺より」


「今を見てる」


「昔から」


「そうだった」


「……」


「俺」


「未来」


「気にしすぎ?」


「めちゃくちゃ」


「即答!」


 ナオ。


 笑う。


 佐伯も。


 少し。


 笑う。


 SYSTEM。



88


↓


79



「まだ」


 佐伯。


「下がる」


「桐谷先生」


「次」


「嫌いなもの」


 ナオ。


「高瀬」


「俺!?」


「半分」


「お前まで!」


◇


 笑い。


 でも。


 突然。


 桐谷の。


 身体。


 強く。


 震える。


「……っ」


「桐谷!」


 高瀬。


 前。


 出る。


 桐谷。


「触るな!」


「……」


 高瀬。


 止まる。


 SYSTEM。



━━━━━━━━━━━━


003固定率


79%


━━━━━━━━━━━━


抵抗行動を検出。


━━━━━━━━━━━━



「抵抗?」


 佐伯。


 次。



━━━━━━━━━━━━


役割再適用。


━━━━━━━━━━━━



 桐谷。


 目。


 一瞬。


 焦点。


 消える。


「桐谷?」


「……」


「高瀬」


 声。


 違う。


 平坦。


「接続を」


「中止しろ」


「……」


 高瀬。


 顔。


 変わる。


「桐谷」


「違う」


「接続を」


「中止」


「しろ」


「……」


「お前」


「そんな」


「喋り方」


「しない」


「……」


「高瀬」


「帰れ」


「……」


「ナオ」


「戻れ」


「佐伯」


「対象外へ」


「移行しろ」


「……」


 ナオ。


 顔。


 強張る。


「先生」


「それ」


「SYSTEM?」


 桐谷。


 無表情。


「私は」


「003」


「……」


 高瀬。


 胸。


 冷える。


「俺?」


 小さく。


「私は」


「003」


「……」


「名前」


「桐谷じゃない?」


「識別名」


「003」


「……」


 高瀬。


 拳。


 握る。


「ふざけんな」


「高瀬先生」


 佐伯。


「怒るのは」


「いい」


「うん」


「でも」


「話しかけて」


「……」


 高瀬。


 一度。


 息。


 吸う。


「桐谷」


「003」


「……」


「塩ラーメン」


「……」


「ミステリー」


「……」


「俺のコーヒー」


「勝手に」


「飲まれてた」


「……」


「高瀬」


 声。


 少し。


 揺れる。


「お前」


「それ」


「逆」


「……」


 高瀬。


 目。


 大きくなる。


「何が」


「俺が」


「……」


 一度。


 口元。


 少し。


 動く。


「お前の」


「コーヒー」


「飲んでた」


「……」


 高瀬。


 笑う。


「お前じゃん!」


「……」


 桐谷。


 ほんの少し。


 笑う。


 SYSTEM。



79


↓


71



「戻った!」


 ナオ。


「桐谷先生」


「僕」


「嫌いなもの」


「知ってます」


「何」


「朝」


「……」


 桐谷。


「それは」


「嫌い」


「朝?」


「弱い」


「先生」


「朝」


「機嫌」


「悪かった」


「……」


「高瀬先生より」


「悪い?」


「俺」


「比較対象!」


 桐谷。


 笑う。


 SYSTEM。



71


↓


63



「あと」


 佐伯。


「下がってる」


◇


 外。


 真壁。


「63」


「かなり」


 藤原。


「いける?」


「まだ」


 白石。


「何で」


「これ」


「ゲームみたいで」


「嫌だな」


「……」


 結良。


「分かる」


「人なのに」


「数字」


「下げれば」


「助かるみたい」


「……」


 藤原。


「じゃあ」


「数字」


「見るの」


「やめる?」


 真壁。


 画面。


 見る。


 一瞬。


 止まる。


「……」


「できます?」


 結良。


「怖い」


「……」


「でも」


 真壁。


 スマートフォン。


 伏せる。


「やめます」


「……」


 藤原も。


 伏せる。


 白石。


 結良。


 同じ。


「中」


「信じる」


 藤原。


「はい」


◇


 中。


 桐谷。


 呼吸。


 少し。


 荒い。


「高瀬」


「何」


「お前」


「俺」


「助けに」


「来た?」


「……」


 高瀬。


 少し。


 考える。


「違う」


「……」


「お前が」


「お前のまま」


「帰りたいか」


「聞きに来た」


「……」


 桐谷。


 目。


 少し。


 大きくなる。


「帰りたい?」


「……」


 長い。


 沈黙。


「分からない」


「……」


 ナオ。


 高瀬。


 佐伯。


 誰も。


 急かさない。


「……怖い」


 桐谷。


「うん」


「俺」


「向こう」


「戻って」


「何する」


「……」


「高瀬」


「ナオ」


「真壁」


「藤原」


「佐伯先生」


「……」


「みんな」


「変わってる」


「……」


「俺だけ」


「一年前に」


「残ってる」


「……」


 高瀬。


「じゃあ」


「残りたい?」


「違う」


「……」


「じゃあ」


「何」


 桐谷。


 目。


 伏せる。


「戻った時」


「俺の場所」


「ある?」


「……」


 その言葉。


 ナオ。


 少し。


 顔。


 変わる。


 自分も。


 同じだった。


「桐谷先生」


「何」


「僕」


「戻った時」


「同じこと」


「思いました」


「……」


「僕の場所」


「ないって」


「……」


「でも」


「図書室」


「ありました」


「悠真」


「いました」


「先生たち」


「いました」


「……」


「桐谷先生」


「今」


「場所」


「なくても」


「……」


「帰ったら」


「作れば」


「いいんじゃないですか」


「……」


 桐谷。


 ナオを見る。


「お前」


「本当に」


「喋るようになったな」


「先生のせいです」


「高瀬?」


「はい」


「それは」


「悪影響」


「おい!」


 笑い。


 小さい。


 でも。


 桐谷。


 ちゃんと。


 笑う。


◇


 高瀬。


「桐谷」


「帰って」


「何したい」


「……」


「何でもいい」


「ラーメン」


「塩」


「俺」


「味噌」


「別々食う?」


「それ」


「一緒に行く意味」


「なくない?」


「じゃあ」


「両方ある店」


「……」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「探すか」


「……」


 高瀬。


 胸。


 熱くなる。


「それ」


「帰る理由に」


「弱い?」


 佐伯。


「弱くないです」


「……」


「薄いコーヒーでも」


「人を」


「繋ぎ止めましたから」


「佐伯先生」


「まだ根に持ってる?」


「事実です」


 少し。


 笑い。


「あと」


 桐谷。


「何」


「ナオの」


「小説」


「読む」


 ナオ。


「嫌って」


「言ってた」


「帰ったら」


「読む」


「……」


「最後まで」


「書け」


「……」


 ナオ。


 少し。


 笑う。


「はい」


「あと」


 高瀬。


「真壁」


「……」


 桐谷。


 表情。


 変わる。


「真壁に」


「謝る」


「……」


「何を」


 高瀬。


「一年前」


「俺が」


「あいつを」


「巻き込んだ」


「……」


「制止者に」


「なったのも」


「俺のせい」


「……」


「でも」


 高瀬。


「それ」


「真壁」


「自分で」


「変え始めてる」


「……」


「知ってる」


「見えてた?」


「少し」


「じゃあ」


「帰って」


「本人に」


「言え」


「……」


 桐谷。


 少し。


 目を閉じる。


「そうだな」


◇


 SYSTEM。


 突然。


 大きく。


 画面。



━━━━━━━━━━━━


003固定率


37%


━━━━━━━━━━━━



「……」


 佐伯。


「一気に」


 高瀬。


「半分以下」


 次。



━━━━━━━━━━━━


自己定義情報


増加。


━━━━━━━━━━━━



「桐谷」


「自分で」


「戻った後」


「言い始めたから」


 ナオ。


 次.



━━━━━━━━━━━━


003


識別維持


困難。


━━━━━━━━━━━━



「よし」


 高瀬。


 言って。


 止まる。


「……」


「高瀬先生?」


「数字」


「追わない」


「……」


「桐谷」


「どう」


「……」


 桐谷。


 少し。


 胸。


 押さえる。


「さっきより」


「自分」


「戻ってる」


「……」


「名前」


「下」


「……」


 口。


 動く。


「きりたに」


「……」


 少し。


 額。


 押さえる。


「……れ」


「……」


 高瀬。


 息。


 止まる。


「れ?」


「……」


「れん」


 ナオ。


「蓮?」


 桐谷。


 目。


 大きくなる.


「……」


「違う」


「でも」


「近い」


「……」


 佐伯。


「急がない」


「名前だけじゃ」


「ない」


「はい」


◇


 その瞬間。


 部屋。


 壁。


 写真。


 全部。


 一斉に。


 揺れる。


「……!」


 高瀬。


 見る。


 写真。


 七人。


 いや。


 もっと。


 高瀬。


 桐谷。


 ナオ。


 一年前。


 三年前。


 知らない時間。


 その中。


 一枚。


 写真。


 大きく。


 光る。


「何」


 高瀬。


 近付く。


 写真。


 二人。


 高瀬。


 桐谷。


 ラーメン屋。


「……」


 高瀬。


「俺ら?」


 桐谷。


 見る。


「……」


「覚えてる?」


「少し」


 写真。


 裏。


 文字。


 手書き。


『高瀬・桐谷』


 その下。


『10/9』


 さらに。


 二人の。


 名前。


 フルネーム。


 でも。


 桐谷。


 下の名前。


 黒く。


 塗り潰されてる。


「……」


 ナオ。


「消されてる」


 佐伯。


「でも」


「痕跡」


「残ってる」


「……」


 高瀬。


 写真。


 よく見る。


 端。


 店の。


 伝票。


 小さい。


 文字。


 予約名?


 読めない。


「もっと」


 近付く。


 SYSTEM。


 警告。



━━━━━━━━━━━━


観測禁止情報。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬。


「禁止?」


 次.



━━━━━━━━━━━━


閲覧した場合


Review69


強制進行。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 三人。


 止まる。


「69」


 ナオ。


 高瀬。


 写真。


 見る。


 桐谷の。


 下の名前。


 そこに。


 答えが。


 あるかもしれない。


「先生」


 ナオ。


「見る?」


 高瀬。


 手。


 伸ばす。


 でも。


 止める。


「……」


 桐谷。


 高瀬を見る。


「見たい?」


「めちゃくちゃ」


「俺も」


「……」


「でも」


 桐谷。


 少し。


 笑う。


「今」


「名前」


「答え」


「見て」


「戻したら」


「……」


「それ」


「俺が」


「思い出したことに」


「なる?」


「……」


 高瀬。


 手。


 下ろす。


「ならん」


「……」


「じゃあ」


「見ない」


「うん」


 SYSTEM。


 警告。


 消える。


◇


 その瞬間。


 外。


 真壁。


 突然。


 目。


 見開く。


「……」


「真壁先生?」


 藤原。


「何」


「見えた」


「……」


「言いたくないなら」


「……」


 真壁。


 息。


 浅い。


「違う」


「これは」


「……」


「言う」


「必要」


「何」


 真壁。


 旧視聴覚室。


 見る。


「中の三人」


「今」


「写真」


「見てる」


「……」


「何で分かる」


 結良。


「観測」


「……」


「その写真」


「見たら」


「69」


「進む」


「……」


「でも」


 次.


 真壁.


 顔.


 さらに.


 青くなる.


「何」


 藤原.


「別の未来」


「見えた」


「……」


「写真」


「見なかった未来」


「……」


「桐谷先生」


「戻ってる」


「……」


 藤原.


 少し.


 息.


 吐く.


「じゃあ」


「それで」


「待って」


 真壁.


「でも」


「……」


「何」


「桐谷先生」


「戻ったあと」


「高瀬先生」


「知らない」


「……」


 全員.


 止まる.


「記憶」


 結良.


「また?」


「多分」


 真壁.


「桐谷先生は」


「戻る」


「でも」


「高瀬先生との」


「関係」


「全部」


「ない」


「……」


 藤原.


 顔.


 硬くなる.


「じゃあ」


「見ないのも」


「正解じゃない」


「……」


 真壁.


「正解」


「ない」


「……」


 白石.


「じゃあ」


「どうすんの」


 真壁.


 旧視聴覚室.


 見る.


「中の」


「三人が」


「決める」


「……」


「俺ら」


「答え」


「送らない」


「……」


 藤原.


 ゆっくり.


 頷く.


「はい」


◇


 中.


 高瀬.


 写真.


 見ない.


 桐谷.


 呼吸.


 少し.


 安定.


「桐谷」


「何」


「下の名前」


「今」


「出そう?」


「……」


 目.


 閉じる.


「れ」


「……」


「れい」


「……」


 高瀬.


 何か.


 胸.


 引っ掛かる.


「れい?」


「……」


 桐谷.


 息.


 止まる.


「玲」


「……」


「れい」


 ナオ.


「先生」


「桐谷」


「玲?」


「……」


 桐谷.


 頭.


 押さえる.


 その瞬間.


 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


本人名


部分復元。


━━━━━━━━━━━━


桐谷 玲――


━━━━━━━━━━━━



「あと」


 高瀬.


「一文字?」


「……」


 桐谷.


 何か.


 苦しい.


「れい」


「……」


 記憶.


 ラーメン.


 高瀬.


 職員室.


 ナオ.


 教室.


 誰か.


『玲司先生』


「……」


 桐谷.


 目.


 開く.



「玲司」



「……」



 高瀬.


 胸.



 強く.



 鳴る.



「桐谷」



「玲司」



「……」



 桐谷.



 涙.



 少し.



「俺」



 一度.



 笑う.



「桐谷玲司」



 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


本人名


復元完了。


━━━━━━━━━━━━



 次.



━━━━━━━━━━━━


003


識別率


37%


 ↓


18%


━━━━━━━━━━━━



「……」


 ナオ.


 笑う.


「先生」


「おかえり」


 桐谷.


 少し.


 ナオを見る.


「まだ」


「早い」


「高瀬先生みたい」


「誰が!」


 高瀬.


「俺」


「そんな?」


 二人.


「はい」


「即答!」


 笑い.


 でも.


 SYSTEM.


 次.



━━━━━━━━━━━━


警告。


003識別解除時


未登録領域との


接続理由が消失します。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 三人.


 止まる.


「接続理由」


 佐伯.


 顔.


 変わる.


「桐谷先生」


「今」


「ここに」


「いられる理由」


「003」


「……」


 高瀬.


「じゃあ」


「003」


「完全に消したら」


「桐谷」


「どうなる」


 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


接続対象外となります。


━━━━━━━━━━━━



「それ」


 ナオ.


「帰れるってこと?」


 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


不明。


━━━━━━━━━━━━



「また!」


 高瀬.


「ここまで来て」


「分からんか!」


 桐谷.


 少し.


 笑う.


「高瀬」


「何」


「SYSTEMに」


「キレても」


「答え」


「増えない」


「分かってる!」


◇


 その瞬間.


 部屋.


 大きく.


 揺れる.


「……!」


 佐伯.


「時間」


 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


内部経過


02:51:44


━━━━━━━━━━━━


外部経過


00:24:41


━━━━━━━━━━━━



「もう」


「三時間?」


 高瀬.


「外」


「二十五分」


「……」


 佐伯.


「長居」


「危険」


「帰還方法」


「決めないと」


「……」


 桐谷.


 高瀬を見る.


「俺」


「一個」


「思い出した」


「何」


「一年前」


「お前が」


「帰る時」


「……」


 高瀬.


 身体.


 止まる.


「俺」


「お前に」


「何した」


「……」


 桐谷.


 少し.


 目.


 伏せる.


「俺」


「高瀬の」


「外部固定」


「全部」


「切った」


「……」


「何で」


「帰すため」


「……」


「だから」


「俺のこと」


「忘れた?」


「……」


「多分」


 高瀬.


 胸.


 重く.


 沈む.


「お前」


「自分で」


「やった?」


「うん」


「……」


「何で」


「高瀬」


 一度.


 真っ直ぐ.


「お前」


「死にかけてた」


「……」


「選択肢」


「なかった」


「……」


「俺が」


「残るか」


「お前が」


「戻るか」


「……」


「だから」


「俺が」


「決めた」


「……」


 高瀬.


 何も.


 言えない.


「ごめん」


 桐谷.


「……」


「謝んな」


 高瀬.


 声.


 少し.


 震える.


「でも」


「俺」


「お前」


「忘れた」


「うん」


「お前」


「一人」


「残った」


「うん」


「……」


「それ」


「俺」


「知らんまま」


「一年」


「普通に」


「……」


 声.


 詰まる.


「高瀬」


「何」


「俺」


「それ」


「選んだ」


「……」


「お前に」


「責任」


「乗せるな」


「……」


 高瀬.


 拳.


 握る.


 でも.


 少しずつ.


 開く.


「分かった」


「……」


「でも」


「今度」


「勝手に」


「一人で」


「残るの」


「禁止」


「……」


 桐谷.


 少し.


 笑う.


「お前に」


「言われたくない」


「それな」


 ナオ.


「二人とも」


「同じ」


「ナオ!」


 少し.


 笑い.


◇


 SYSTEM.


 突然.



━━━━━━━━━━━━


003識別率


18%


 ↓


9%


━━━━━━━━━━━━



「九」


 佐伯.


「もう」


「一桁」


 次.



━━━━━━━━━━━━


自己定義


桐谷玲司


安定。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬.


「桐谷」


「どう」


「……」


 桐谷.


 胸.


 手.


 当てる.


「俺」


「桐谷玲司」


「うん」


「塩ラーメン」


「うん」


「朝弱い」


「うん」


「ミステリー好き」


「うん」


「ナオの担任」


「うん」


「真壁に」


「謝る」


「うん」


「高瀬」


「……」


「友達」


「……」


 高瀬.


 少し.


 笑う.


「うん」


「かなり」


 桐谷.


 笑う.


「そこ」


「自分で言う?」


「お前が」


「言ったんだろ!」


 SYSTEM.



9


↓


1



「……」


 全員.


 止まる.


 あと.


 一.


 次.



━━━━━━━━━━━━


003識別解除


実行しますか?


━━━━━━━━━━━━



YES


NO



「……」


 高瀬.


 桐谷.


 見る.


「俺ら」


「押せる?」


 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


対象本人のみ


実行可能。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 ナオ.


 少し.


 笑う.


「また」


「本人」


「うん」


 高瀬.


「桐谷」


「どうする」


「……」


 桐谷.


 画面.


 見る.


 YES.


 NO.


「怖い」


「うん」


「解除したら」


「俺」


「消えるかもしれない」


「うん」


「戻れるかも」


「うん」


「分からない」


「うん」


 高瀬.


 少し.


 笑う.


「選ぶ?」


 桐谷.


 高瀬.


 見る.


「お前」


「何も」


「言わない?」


「……」


「戻れって」


「言いたい」


「……」


「でも」


「決めるの」


「お前」


「……」


 桐谷.


 目.


 少し.


 潤む.


「高瀬」


「何」


「それ」


「一年前」


「お前に」


「言わせたかった」


「……」


「ごめん」


「今」


「言ったから」


「いい」


 桐谷.


 画面.


 見る.


 指.


 YES.


 近付く.


◇


 その瞬間.


 外.


 真壁.


 突然.


 目.


 見開く.


「……!」


「真壁先生」


 藤原.


「何」


「見えた」


「……」


「言う?」


 真壁.


 呼吸.


 荒い.


「……」


 旧視聴覚室.


 見る.


「言わない」


「……」


「今」


「中の」


「桐谷先生が」


「選ぶ」


「……」


「未来」


「送ったら」


「邪魔になる」


 藤原.


 少し.


 笑う.


「はい」


「それで」


「いい」


◇


 中.


 桐谷.


 YES.


 押す.


━━━━━━━━━━━━


003


識別解除。


━━━━━━━━━━━━



 瞬間.


 部屋.


 全部.


 白く.


 なる.


「桐谷!」


「先生!」


 ナオ.


「玲司先生!」


「……!」


 桐谷.


 目.


 大きく.


 なる.


 ナオ.


 初めて.


 下の名前.


 呼ぶ.


「帰りましょう!」


「……」


 桐谷.


 笑う.


「それ」


「慣れない」


 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


対象


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━


分類


該当なし


━━━━━━━━━━━━



「……」


 高瀬.


「きた」


 次.



━━━━━━━━━━━━


評価


不能


━━━━━━━━━━━━



「ナオと」


 佐伯.


「同じ」


 次.



━━━━━━━━━━━━


帰還処理


――――


━━━━━━━━━━━━



「……」


 表示.


 止まる.


 高瀬.


「何」


「何で」


 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


帰還不可。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 三人.


 笑顔.


 消える.


「何で!」


 高瀬.


 次.



━━━━━━━━━━━━


対象


桐谷玲司


━━━━━━━━━━━━


帰還先


不存在。


━━━━━━━━━━━━



「また」


 ナオ.


「僕の時と」


「同じ?」


「違う」


 佐伯.


 画面.


 見る.


「ナオは」


「本人指定で」


「図書室」


「作れた」


「桐谷先生」


「何か」


「帰りたい場所」


「……」


 桐谷.


 止まる.


「学校」


「……」


 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


登録拒否。


━━━━━━━━━━━━



「何で」


 高瀬.


 次.



━━━━━━━━━━━━


現実側


桐谷玲司


存在中。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 三人.


 完全に.


 止まる.


「何」


 ナオ.


「どういう」


 高瀬.


 胸.


 強く.


 鳴る.


「現実側に」


「桐谷」


「いる?」


「……」


 桐谷.


 顔.


 青くなる.


「そんな」


「はず」


 SYSTEM.



━━━━━━━━━━━━


同一対象の


重複登録を


禁止します。


━━━━━━━━━━━━



「……」


 佐伯.


 息.


 止まる.


「じゃあ」


「桐谷先生」


「戻れないのは」


「場所が」


「ないからじゃない」


「……」


「もう」


「誰かが」


「桐谷玲司として」


「現実に」


「いるから?」


「……」


 高瀬.


 身体.


 冷える.


「誰だよ」


 桐谷.


 自分.


 見る.


「俺」


「ここ」


「いる」


「じゃあ」


「向こうの」


「俺」


「……」


 SYSTEM.


 最後.



━━━━━━━━━━━━


現実側登録対象


桐谷玲司


状態


活動中


━━━━━━━━━━━━



 そして.


 写真.


 一枚.


 壁.


 勝手に.


 光る.


「……」


 高瀬.


 見る.


 職員室.


 現在.


 今日.


 撮影されたような.


 画像.


 そこ.


 一人.


 男.


 背中.


 立っている.


 顔.


 見えない.


 でも.


 首から.


 名札.



『桐谷 玲司』



「……」


 ナオ.


 声.


 震える.


「先生」


 桐谷.


 写真.


 見る.


 自分と.


 同じ.


 名前.


 現実側に.


 いる.


「……誰だ」


 高瀬.


 拳.


 握る.


 桐谷を.


 救えば.


 終わりじゃない.


 むしろ.


 今.


 初めて.


 分かった.


 一年前.


 桐谷が.


 帰らなかったんじゃない.


 帰れなかった.


 なぜなら.


 この一年.


 現実側には.


 ずっと.



 別の。



 桐谷玲司が。



 いた。

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