Review43 名前を呼べ
━━━━━━━━━━━━
再割当完了まで
残り
69分
━━━━━━━━━━━━
「……69分」
高瀬の声が。
低くなる。
目の前。
女子生徒。
自分の名札を。
何度も見ている。
「読めない」
「……」
「先生」
声。
震えている。
「これ」
「私の名前」
「書いてあるんですよね」
「……うん」
「じゃあ」
「読んで」
高瀬。
口を開く。
でも。
出ない。
「……」
「先生」
女子生徒の。
顔。
少しずつ。
強張る。
「何で」
「言えないの」
「……」
藤原も。
名札を見る。
文字。
確かに。
ある。
なのに。
意味として。
頭に入らない。
「真壁先生」
「……俺も」
「分からない」
「……」
女子生徒。
一歩。
後ろへ。
「怖」
「……」
「めっちゃ」
「怖いんだけど」
高瀬。
「ごめん」
「謝らないで!」
「……」
「先生が」
「悪いみたいになるじゃん!」
声。
少し。
大きくなる。
周囲。
生徒。
何人か。
こちらを見る。
女子生徒。
すぐ。
俯く。
「……ごめんなさい」
「いや」
高瀬。
一歩。
近付く。
「今」
「怒っていい」
「……」
「怖いって」
「言っていい」
「……」
「俺らも」
「普通に」
「めちゃくちゃ焦ってる」
真壁。
「高瀬先生」
「何」
「焦ってるって」
「本人に言う?」
「嘘つくより」
「……」
真壁。
一瞬。
考える。
「まあ」
「今回は」
「賛成」
女子生徒。
少しだけ。
笑いそうになった。
「先生たち」
「今」
「揉める?」
「通常運転」
藤原。
「むしろ」
「これくらいなら」
「まだ大丈夫です」
「……」
女子生徒。
「何その判断基準」
「高瀬先生が」
「走り出してない」
「俺?」
「そこ?」
ほんの一瞬。
笑う。
でも。
スマートフォン。
残り時間。
68:31
笑顔。
すぐ。
消える。
◇
「まず」
真壁。
声を落とす。
「場所変えます」
「どこ」
高瀬。
「人目が少ないところ」
「空き教室」
藤原。
「はい」
「……」
女子生徒。
「私」
「授業」
「今それ気にする!?」
高瀬。
「先生が言う!?」
「確かに!」
女子生徒。
少しだけ。
笑う。
「担任には」
藤原。
「体調不良で」
「私から伝えます」
「……」
「保健室」
「じゃないんですか」
「今日は」
一度。
藤原。
女子生徒を見る。
「こっち」
「……」
「分かりました」
◇
空き教室。
四人。
机。
一つ。
女子生徒。
座る。
高瀬。
向かい。
藤原。
横。
真壁。
少し離れて。
ノート。
「高瀬先生」
真壁。
「何」
「まず」
「名前を」
「無理に」
「思い出そうとするの」
「やめません?」
「……何で」
「今」
「それだけ」
「やってる」
「……」
「でも」
「出ない」
「うん」
「焦る」
「うん」
「余計」
「出ない」
「……」
高瀬。
少し。
息を吐く。
「確かに」
女子生徒。
「先生」
「何」
「テストで」
「分かんない問題」
「飛ばせって」
「いつも言う」
「……」
「それ」
「今使う?」
「先生が教えた」
「ぐう」
藤原。
少し。
笑う。
「本人の方が」
「冷静」
「それな」
「私」
女子生徒。
「普通に」
「怖いですけど」
「……」
「でも」
「先生たちが」
「もっと怖い顔してるから」
「逆に」
「ちょっと」
「落ち着きました」
「複雑!」
◇
「じゃあ」
藤原。
「名前じゃなく」
「この子について」
「覚えてること」
「出しましょう」
「うん」
高瀬。
「最初」
「いつ」
「話した?」
「……」
女子生徒。
「私も」
「覚えてない」
「俺も」
「でも」
「結構前から」
「話してた」
「はい」
「何話した」
「色々」
「雑」
真壁。
「高瀬先生」
「具体的に」
「分かってる!」
高瀬。
目を閉じる。
朝。
廊下。
教室。
授業。
何度も。
顔。
声。
「……顔」
「何」
女子生徒。
「よく」
「俺の顔」
「読む」
「……」
「『先生今日顔変』」
「とか」
「『先生一人で考えてる?』」
「とか」
「……」
女子生徒。
少し。
笑う。
「言いますね」
「うん」
「あと」
「俺が」
「答え決めすぎると」
「地味に」
「刺してくる」
「地味に?」
「結構」
「刺してましたよ」
「自覚あるんかい」
「あと」
女子生徒。
少し考える。
「先生」
「私」
「よく」
「点数」
「聞いてました」
「うん」
「大丈夫度」
「そう」
「何点」
「って」
「……」
高瀬。
少し。
表情が変わる。
「お前」
「何で」
「それ」
「聞き始めた?」
「……」
女子生徒。
止まる。
「分かんない」
「……」
「最初」
「いつ?」
「……」
頭。
探す。
「先生」
「何」
「思い出せない」
「大丈夫」
「大丈夫じゃない」
「……」
「ごめん」
「先生」
「はい」
「今日」
「謝りすぎ」
「……」
高瀬。
少しだけ。
笑う。
「確かに」
◇
残り。
64:12
「四分」
真壁。
「もう?」
「高瀬先生」
「時計見るなって」
「今は見るだろ!」
「見すぎるな」
「難しい!」
藤原。
「一旦」
「本人」
「何が好き?」
「え」
女子生徒。
「好きなもの」
「何でも」
「……」
「急」
「名前と」
「関係ある?」
「あります」
「多分」
真壁。
「多分?」
「正直」
真壁。
「まだ」
「分からない」
「……」
女子生徒。
少し笑う。
「先生たち」
「最近」
「分からないって」
「普通に言いますね」
三人。
一瞬。
止まる。
「何」
女子生徒。
「いや」
高瀬。
少し笑う。
「それ」
「最近」
「大事にしてる」
「へえ」
「で」
「好きなもの」
「……」
女子生徒。
指。
机。
軽く叩く。
「音楽」
「お」
高瀬.
「何聴く」
「色々」
「また雑」
「先生に言われたくない」
「確かに」
「あと」
「甘いもの」
「うん」
「カフェ」
「……」
高瀬.
「カフェ」
「はい」
「前」
「話した?」
「多分」
「……」
「先生」
「何」
「私」
「先生に」
「卒業したら」
「カフェ行きたいって」
「言わなかった?」
「……」
高瀬.
頭.
何か.
引っ掛かる.
放課後.
窓際.
『先生ってカフェ行くんですか』
『行くよ』
『意外』
『失礼』
『卒業したらおすすめ教えて』
「……」
高瀬.
目.
少し.
大きくなる.
「言った」
「……」
「覚えてる」
「本当?」
「うん」
「卒業したら」
「おすすめの」
「カフェ教えてって」
「……」
女子生徒.
少し.
笑う.
「それ」
「私」
「言いました」
「うん」
「何で」
「忘れてたんだろ」
「……」
藤原.
「SYSTEM」
「名前だけじゃなく」
「関連記憶から」
「削ってる?」
「可能性」
真壁.
ノート.
『名前 → 関係記憶も劣化?』
「じゃあ」
高瀬.
「急がないと」
「はい」
◇
その時.
廊下.
足音.
バン.
扉.
開く.
「高瀬先生!」
「うわっ!」
「ナオ!?」
水城尚.
息.
切らしてる.
後ろ.
白石.
「お前ら」
「走った?」
白石.
「早歩き」
「それ禁止!」
ナオ.
「先生」
「どの子」
「……」
高瀬.
女子生徒.
指す.
「この子」
「……」
ナオ.
見る.
スマートフォン.
出す.
━━━━━━━━━━━━
旧001
保護権限
有効
━━━━━━━━━━━━
「何できる」
真壁.
「分かりません」
「役に立たない!」
「先生に言われたくない!」
「確かに!」
こんな時でも.
一瞬.
笑う.
ナオ.
女子生徒へ.
「ごめん」
「何」
「名前」
「聞いていい?」
「……」
女子生徒.
苦笑.
「それが」
「分からない」
「……」
ナオ.
表情.
変わる.
「自分でも?」
「見たら」
「書いてあるのに」
「読めない」
「……」
ナオ.
少しだけ.
目を伏せる.
「僕も」
「前」
「似てました」
「……」
女子生徒.
「水城くん?」
「僕」
「知ってる?」
「昨日」
「戻ってきた子」
「……」
「僕の名前」
「分かる?」
「水城尚」
「……」
ナオ.
少し.
息を吐く.
「よかった」
「何が」
「まだ」
「他人の名前は」
「残ってる」
「……」
真壁.
「自己認識だけ」
「優先的に」
「削られてる?」
「かも」
ナオ.
スマートフォン.
画面.
触る.
「保護権限」
「何か」
「……」
表示.
━━━━━━━━━━━━
干渉可能項目
1
━━━━━━━━━━━━
「一個」
高瀬.
「何」
ナオ.
タップ.
━━━━━━━━━━━━
旧識別情報の
一時復元
━━━━━━━━━━━━
「……」
女子生徒.
「旧識別」
「私?」
ナオ.
「多分」
「使う?」
高瀬.
「待って」
真壁.
「リスク」
「……」
画面.
━━━━━━━━━━━━
実行した場合
旧001保護権限
消失
━━━━━━━━━━━━
「……」
ナオ.
止まる.
「一回きり」
藤原.
「はい」
「使ったら」
「もう」
「次」
「助けられない?」
「……」
ナオ.
女子生徒を見る.
「先生」
「何」
「使います」
「待て」
「何で」
「ナオ」
高瀬.
真っ直ぐ.
見る.
「お前が」
「決めるのは」
「いい」
「でも」
「一回しかない」
「……」
「この先」
「もっと」
「必要な場面」
「来るかもしれない」
「……」
「それでも?」
ナオ.
少し.
考える.
女子生徒.
逆に.
「水城くん」
「何」
「使わなくていいよ」
「……」
「え」
「だって」
「それ」
「大事なんでしょ」
「でも」
「私」
「……」
女子生徒.
怖い.
明らかに.
怖い.
でも.
「先生たち」
「いるし」
「……」
「私も」
「まだ」
「全部」
「なくなってない」
「……」
「だから」
「今」
「取っといて」
「……」
ナオ.
少し.
驚いた顔.
「怖くない?」
「怖いよ」
「……」
「めっちゃ」
「でも」
一度.
高瀬を見る.
「この先生」
「多分」
「また」
「何かやらかすから」
「俺!?」
「その時」
「使って」
「何で俺前提!」
女子生徒.
少し.
笑う.
ナオも.
笑った.
「分かりました」
「……」
「でも」
「本当に」
「まずくなったら」
「使います」
「うん」
「勝手に?」
真壁.
「相談します」
「成長」
高瀬.
「それ禁止!」
◇
残り.
57:08
「十二分」
藤原.
「名前」
「まだ」
「分からない」
「じゃあ」
白石.
ずっと.
入口.
「俺」
「何すれば」
「……」
三人.
ナオ.
女子生徒.
白石を見る.
「何その顔」
「いや」
高瀬.
「お前」
「何で来た」
「ナオに」
「今すぐって」
「言われた」
「それだけ?」
「はい」
「……」
女子生徒.
白石を見る.
「白石くん」
「俺の名前は分かる?」
「分かる」
「……」
「同じ学年?」
「はい」
「私と」
「話したこと」
「ある?」
「……」
白石.
少し.
考える.
「ある気がする」
「何」
「体育祭」
「……」
「去年」
「係」
「一緒じゃなかった?」
女子生徒.
目.
少し.
大きくなる.
「……係」
「何」
「救護?」
「……」
高瀬.
「佐伯先生」
「……」
藤原.
「待って」
「この子」
「佐伯先生と」
「関係ある?」
女子生徒.
頭.
押さえる.
「保健室」
「……」
「私」
「よく」
「行ってた?」
「……」
記憶.
揺れる.
白い.
カーテン.
佐伯.
『今日はどうしたの』
『別に』
『別にの人は保健室来ない』
「……」
女子生徒.
「佐伯先生」
「……」
「知ってる」
「当然」
「でも」
「よく」
「話してた」
藤原.
「固定点」
「探せるかも」
「でも」
真壁.
「名前」
「まだ」
「……」
「先」
「佐伯先生」
「呼ぶ?」
高瀬.
「呼ぶ」
「いや」
「俺らが」
「行く?」
女子生徒.
「私」
「歩けます」
「でも」
「時間」
「保健室」
「近い」
「……」
高瀬.
立つ.
「行こう」
「高瀬先生」
藤原.
「何」
「走らない」
「今は走らせろ!」
「廊下」
「はい!」
◇
保健室.
扉.
開く.
「佐伯先生!」
「高瀬先生」
「声」
「ごめん!」
佐伯.
四人.
いや.
六人.
見る.
「何が」
高瀬.
女子生徒.
前.
「この子」
「……」
佐伯.
止まる.
「……」
「知ってる?」
高瀬.
佐伯.
女子生徒を見る.
「……」
少し.
眉を寄せる.
「もちろん」
「……!」
「名前!」
高瀬.
「待って」
佐伯.
「何」
「……」
顔.
少し.
変わる.
「私」
「名前」
「……」
高瀬.
胸.
沈む.
「佐伯先生も?」
「分からない」
「……」
女子生徒.
目.
潤む.
「でも」
佐伯.
「この子」
「知ってる」
「……」
「何で」
「分かる」
「何度も」
「ここ」
「来てる」
「……」
「去年」
「教室」
「しんどくなって」
「……」
「昼休み」
「ここで」
「寝た」
「……」
女子生徒.
記憶.
揺れる.
「私」
「佐伯先生に」
「迷惑?」
「って」
「聞いた?」
「……」
佐伯.
少し.
笑う.
「聞いた」
「……」
「私」
「何て」
「『寝るくらいで」
「保健室潰れません』」
「って」
「……」
女子生徒.
笑う.
涙.
少し.
「言いそう」
「言いました」
「……」
佐伯.
女子生徒.
見る.
「あなた」
「よく」
「笑ってごまかす子」
「……」
「でも」
「本当に」
「しんどい時だけ」
「笑わない」
「……」
「今日」
「笑ってるけど」
「かなり」
「しんどいでしょ」
「……」
女子生徒.
涙.
落ちる.
「はい」
「……」
「怖い」
「うん」
「名前」
「なくなるの」
「怖い」
「うん」
「自分が」
「誰か」
「分からなくなるの」
「……」
佐伯.
そっと.
手.
差し出す.
「触っていい?」
「……はい」
手.
握る.
「今」
「あなた」
「ここにいる」
「……」
「名前」
「思い出せなくても」
「今まで」
「あなたが」
「ここに来た時間」
「消えてない」
「……」
「大丈夫」
佐伯.
一度.
止まる.
「……じゃないか」
少し.
笑う.
「私も」
「怖い」
「……」
「でも」
「一緒に」
「探しましょう」
女子生徒.
少し.
笑う.
「はい」
◇
SYSTEM.
女子生徒.
スマートフォン.
━━━━━━━━━━━━
適合率
69%
↓
66%
━━━━━━━━━━━━
「下がった!」
高瀬.
「何した」
真壁.
「佐伯先生との」
「記憶」
「戻った」
「……」
藤原.
「関係を」
「思い出すと」
「適合率」
「下がる?」
「可能性」
高瀬.
「じゃあ」
「どんどん」
「思い出せば」
「待って」
真壁.
「高瀬先生」
「何」
「また」
「数字を下げるために」
「思い出そうとしてる」
「……」
「違う」
「この子を」
「取り戻す」
「結果として」
「数字が下がる」
「……」
高瀬.
少し.
息を吐く.
「そうだった」
女子生徒.
「先生」
「何」
「今」
「私より」
「怒られてる」
「いつものこと!」
少し.
笑う.
残り.
49:36
「まだ」
高瀬.
「半分以上」
「高瀬先生」
「何」
「その言い方」
「パチンコみたい」
「真壁!?」
「何ですか」
「急に変な例え!」
「時間」
「減ってるの」
「見て」
「変なテンションなので」
「お前も焦ってるやん!」
全員.
一瞬.
笑う.
緊張.
少し.
ほどける.
◇
「他」
佐伯.
「この子」
「何が」
「残ってる」
「……」
高瀬.
「俺との」
「会話」
「いっぱい」
「でも」
「名前」
「呼んでない」
「……」
声.
少し.
落ちる.
「俺」
「いつも」
「お前」
「とか」
「先生」
「とか」
「……」
女子生徒.
「まあ」
「普通」
「うん」
「でも」
高瀬.
胸.
痛い.
「毎日」
「話してたのに」
「名前」
「……」
「一回も」
「呼んでない?」
「……」
女子生徒.
少し考える.
「多分」
「……」
高瀬.
何も.
言えない.
「高瀬先生」
藤原.
「今」
「自分責める?」
「……」
「ちょっと」
「後で」
「今は」
「はい」
高瀬.
息.
吐く.
「後」
「何」
「先生」
女子生徒.
「私」
「先生に」
「自分の名前」
「言ったこと」
「ある?」
「……」
「多分」
「最初」
「……」
「でも」
「思い出せない」
「私も」
「……」
「じゃあ」
女子生徒.
一度.
目.
閉じる.
「もう一回」
「……」
「言えばいい?」
「え」
「私」
「自分で」
「思い出せたら」
「先生に」
「もう一回」
「名乗る」
「……」
高瀬.
目.
少し.
大きくなる.
「それ」
「いい」
「うん」
「俺が」
「名簿から」
「答え取るより」
「……」
「お前が」
「思い出して」
「俺に」
「教えて」
「……」
女子生徒.
少し.
笑う.
「先生」
「何」
「今度は」
「忘れないで」
「……」
高瀬.
返事.
すぐには.
しない.
「忘れない」
では.
軽い.
絶対.
も.
違う.
「名前で」
「呼ぶ」
「……」
女子生徒.
少し.
目を細める.
「それでいい」
◇
残り.
43:01
ナオ.
ずっと.
考えていた.
「先生」
「何」
「僕」
「一個」
「気になる」
「何」
「この子」
「どうして」
「001候補になったんですか」
「……」
空気.
変わる.
「適合率」
真壁.
「69%」
「でも」
「条件」
「不明」
「ナオ」
「お前」
「001だった時」
「何か」
「共通」
「……」
ナオ.
女子生徒.
見る.
「自分」
「分からなくなってた」
「……」
「僕」
「001になる前」
「自分が」
「何したいか」
「分からなかった」
「……」
「戻りたいって」
「思ってたけど」
「何のため」
「分からなかった」
「……」
女子生徒.
少し.
顔.
変わる.
「私」
「……」
高瀬.
「何」
「進路」
「……」
「最近」
「めっちゃ」
「分からない」
「……」
「何したいか」
「決まってない」
「……」
「親には」
「大学」
「行きなさいって」
「……」
「先生には?」
高瀬.
「俺」
「聞いてない」
「言ってないから」
「……」
「でも」
女子生徒.
声.
少し.
小さくなる.
「私」
「何したいか」
「分からないの」
「ずっと」
「恥ずかしかった」
「……」
「周り」
「決まってきてる」
「……」
「だから」
「笑って」
「ごまかしてた」
「……」
佐伯.
手.
少し.
強く.
握る.
「それ」
「悪いこと?」
「……」
「分かんない」
「なら」
藤原.
「今」
「決めなくても」
「いいんじゃない」
「……」
「進路の話?」
「それも」
一度.
女子生徒を見る.
「自分が」
「何者か」
「も」
「……」
「今」
「答えなくても」
「いい」
「……」
真壁.
小さく.
「未確定」
「……」
全員.
真壁を見る.
「何」
「いや」
真壁.
少し.
笑う.
「俺も」
「最近」
「未確定なので」
「……」
女子生徒.
少し.
笑う.
「先生」
「何」
「それ」
「励まし?」
「かなり」
「下手」
「自覚」
「……」
高瀬.
笑う.
「真壁」
「何」
「お前」
「いいこと言うようになったな」
「今」
「女子生徒に」
「下手って」
「言われたけど」
「それも成長」
「それ禁止」
少し.
笑い.
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
適合率
66%
↓
61%
━━━━━━━━━━━━
「また下がった」
藤原.
「何」
高瀬.
「自分が」
「未確定でもいいって」
「思えた?」
「……」
真壁.
「001の適合条件」
「自分の未確定を」
「SYSTEMへ」
「委ねること?」
「……」
ナオ.
「番号」
「与えられたら」
「何者か」
「決めてもらえる」
「……」
女子生徒.
「それ」
「ちょっと」
「楽かも」
「……」
全員.
静かになる.
「何したいか」
「分からない時」
「あなたは001です」
「って」
「言われたら」
「……」
「少なくとも」
「何者かには」
「なれる」
「……」
高瀬.
胸.
冷える.
SYSTEMは.
弱っている人を.
ただ.
奪うんじゃない.
答えを.
与える.
役割を.
与える.
番号を.
与える.
「……だから」
高瀬.
「入りやすい」
「何が」
「評価」
「……」
「自分で」
「決められない時」
「誰かに」
「お前はこうだって」
「言われると」
「……」
「楽」
「でも」
女子生徒.
「それ」
「怖い」
「うん」
「……」
「じゃあ」
一度.
息を吸う.
「今」
「分からないままで」
「いいや」
「……」
高瀬.
少し.
笑う.
「うん」
「それ」
「俺も」
「最近」
「やってる」
「先生」
「何」
「三十六歳ですよね」
「年齢関係ないだろ!」
笑う.
女子生徒.
今度は.
少し.
自然に.
◇
残り.
34:17
適合率.
57%
「下がってる」
藤原.
「でも」
真壁.
「名前」
「まだ」
「……」
女子生徒.
少し.
焦る.
「思い出さなきゃ」
「待って」
高瀬.
「……」
「今」
「名前」
「ゴールにしすぎてる」
「でも」
「時間」
「分かってる」
「……」
「ただ」
「お前」
「名前以外」
「かなり」
「戻ってきてる」
「……」
「カフェ」
「進路」
「佐伯先生」
「俺との」
「やり取り」
「……」
「だから」
「名前も」
「そのうち」
「出る」
「……」
「それまで」
「何か」
「もっと」
「お前の話」
「しよう」
女子生徒.
高瀬を見る.
「何話す」
「何でも」
「……」
「恋愛?」
「お」
「高瀬先生」
藤原.
「食いつかない」
「俺何も言ってない!」
女子生徒.
笑う.
「先生」
「何」
「今」
「ちょっと」
「聞きたそうだった」
「生徒の恋愛」
「無理に聞かん!」
「ちょっと?」
「……」
「高瀬先生」
真壁.
「アウト」
「違う!」
場.
笑い.
女子生徒.
肩.
少し.
軽くなる.
「じゃあ」
「好きな人」
「いません」
「終わった!」
「何で残念そう」
「話題が!」
「先生」
「はい」
「焦りすぎ」
「お前に言われた!」
◇
「好きな場所」
藤原.
「学校で」
「……」
女子生徒.
「屋上」
「入れない」
「だから好き」
「何それ」
「行けないから」
「行きたい」
「……」
「あと」
「音楽室」
「音楽好きだから?」
「うん」
「楽器」
「やる?」
「ピアノ」
「……」
高瀬.
何か.
引っ掛かる.
「文化祭」
「……」
女子生徒.
「去年」
「弾いた」
「……」
高瀬.
記憶.
舞台.
ピアノ.
制服.
女子生徒.
演奏.
終わる.
拍手.
そして.
自分.
『――、よかったぞ』
「……!」
名前.
音.
寸前.
消える.
「先生?」
「今」
「出そうだった」
「何が」
「名前」
「……」
全員.
顔.
変わる.
「文化祭」
「ピアノ」
「俺」
「お前に」
「声かけた」
「……」
「何て」
「よかったぞって」
「それだけ?」
「あと」
「名前」
「……」
「呼んだ」
「……」
女子生徒.
目.
閉じる.
「私」
「何弾いた」
「……」
高瀬.
そこ.
出ない.
「藤原」
「私は」
「覚えてない」
「真壁」
「担当違った」
「白石」
「……」
白石.
少し.
「曲」
「俺」
「聞いた気が」
「何」
「……」
口.
動く.
でも.
出ない.
女子生徒.
両手.
頭.
「気持ち悪い」
「……」
「分かるのに」
「出ない」
「……」
高瀬.
「無理すんな」
「でも」
「……」
女子生徒.
急に.
顔.
上げる.
「スマホ」
「何」
「動画」
「文化祭」
「……」
自分の.
写真.
動画.
「ある?」
「友達」
「送ってくれた」
「見よう」
スマートフォン.
写真.
アルバム.
去年.
文化祭.
動画.
再生.
舞台.
ピアノ.
女子生徒.
座っている.
曲.
流れる.
「……」
本人.
息.
止まる.
「これ」
「……」
音.
少しずつ.
部屋.
満たす.
高瀬.
見ている.
記憶.
戻る.
舞台袖.
緊張.
『先生、無理』
『もう出番だぞ』
『逃げる』
『どこへ』
『屋上』
『入れん』
『じゃあ終わった』
「……」
高瀬.
小さく.
笑う.
「お前」
「逃げようとした」
「……」
女子生徒.
「言った?」
「言った」
「屋上」
「……」
「俺」
「入れんって」
「言った」
「……」
女子生徒.
笑う.
「先生」
「全然」
「励ましてない」
「今思った!」
そのあと.
『失敗したら?』
『失敗したら失敗したでいいだろ』
『雑』
『でもお前、弾きたいんだろ』
『……うん』
『じゃあ行け』
「……」
高瀬.
胸.
強く.
鳴る.
「お前」
「弾いた」
「……」
「終わったあと」
映像.
拍手.
画面外.
声.
一人.
『――!』
高瀬.
自分の.
声.
「……!」
動画.
ノイズ.
名前.
聞き取れない.
「戻して」
再生.
『――!』
「聞こえない」
「もう一回」
『――!』
「……」
女子生徒.
涙.
少し.
浮かぶ.
「私」
「この時」
「めっちゃ」
「嬉しかった」
「……」
「先生」
「名前」
「呼んだ」
「うん」
「……」
「何だった」
高瀬.
目.
閉じる.
音.
口.
感覚.
名前.
誰か.
自分.
呼んでる.
その時.
女子生徒.
「……あ」
「何」
「ピアノ」
「うん」
「この曲」
「私」
「お母さんに」
「教えてもらった」
「……」
「お母さん」
藤原.
「名前」
「連絡先」
「……」
高瀬.
「緊急連絡票!」
真壁.
「ある」
「……」
高瀬.
一瞬.
立ち上がる.
止まる.
「名簿」
「答え見る?」
「……」
女子生徒.
高瀬を見る.
「先生」
「何」
「見ないで」
「……」
「私」
「思い出したい」
「……」
高瀬.
ゆっくり.
座る.
「分かった」
◇
残り.
19:42
適合率.
52%
「時間」
藤原.
「でも」
真壁.
「49下回ったら」
「再割当」
「止まる可能性」
「ある」
「あと三」
「……」
女子生徒.
動画.
もう一度.
見る.
「お母さん」
「何て」
「呼ぶ」
「普通に」
「お母さん」
「自分のこと」
「家で」
「何て」
「……」
一瞬.
「……」
「何」
「小さい頃」
「ゆーちゃん」
「……」
高瀬.
胸.
鳴る.
「ゆ?」
女子生徒.
「うん」
「ゆーちゃん」
「誰が」
「お母さん」
「……」
藤原.
「名前」
「ゆ」
「から?」
「多分」
「……」
高瀬.
頭.
何か.
近付く.
「ゆ」
悠.
優.
結.
由.
「……」
女子生徒.
目.
閉じる.
「私」
「名前」
「好きじゃなかった」
「何で」
「よく」
「間違えられるから」
「……」
「読み方?」
「うん」
「漢字」
「難しい?」
「違う」
「……」
「読み方が」
「二つ」
「ある」
「……」
高瀬.
「ゆい?」
女子生徒.
顔.
少し.
動く.
「……違う」
「ゆう?」
「……」
「違う」
「ゆな?」
「……」
目.
大きく.
なる.
「……」
「ゆな?」
高瀬.
もう一度.
女子生徒.
胸.
押さえる.
「近い」
「……」
「何」
「違う」
「でも」
「近い」
「……」
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
適合率
52%
↓
49%
━━━━━━━━━━━━
「下がった!」
ナオ.
「49」
真壁.
「でも」
「再割当処理」
「止まってない」
「何で」
画面.
━━━━━━━━━━━━
基準値到達後のため
処理継続
━━━━━━━━━━━━
「一回69行ったら」
藤原.
「止めても」
「進む?」
「残り」
高瀬.
「何分」
画面.
14:08
「……」
高瀬.
拳.
握る.
「名前」
女子生徒.
必死.
「ゆ」
「……」
「ゆな」
「……」
「違う」
「何だ」
「何だった」
「……」
呼吸.
浅くなる.
「先生」
「私」
「忘れたくない」
「うん」
「私」
「……」
「私」
「誰」
「お前は」
高瀬.
声.
少し.
強くなる.
「今」
「名前」
「分からなくても」
「……」
「俺に」
「何回も」
「顔変って」
「言って」
「……」
「点数聞いて」
「……」
「カフェ行きたいって」
「言って」
「……」
「ピアノ」
「逃げようとして」
「……」
「それでも」
「弾いて」
「……」
「進路」
「分かんなくて」
「笑って」
「ごまかして」
「……」
「佐伯先生の」
「保健室で」
「寝て」
「……」
「それ全部」
「お前だろ」
「……」
女子生徒.
涙.
落ちる.
「名前」
「思い出せなくても」
「今」
「ここまで」
「消えてない」
「……」
「だから」
「焦るな」
「……」
「俺らが」
「いる」
「……」
「ナオも」
「白石も」
「佐伯先生も」
「藤原も」
「真壁も」
「……」
「お前が」
「お前だった」
「証拠」
「こんだけ」
「ある」
「……」
女子生徒.
泣く.
「先生」
「何」
「それ」
「……」
「ちょっと」
「くさい」
「今!?」
全員.
吹き出す.
女子生徒も.
泣きながら.
笑う.
「でも」
一度.
息.
「嬉しい」
高瀬.
少し.
笑う.
「なら」
「いい」
◇
残り.
7:31
「七分」
真壁.
「名前」
「……」
ナオ.
スマートフォン.
握る.
「先生」
「保護権限」
「……」
高瀬.
ナオを見る.
「使う?」
「残り」
「七分」
「……」
女子生徒.
「ナオ」
初めて.
呼び捨て.
「何」
「まだ」
「待って」
「……」
「私」
「出そう」
「本当に?」
「うん」
「……」
女子生徒.
目.
閉じる.
ピアノ.
母.
『ゆーちゃん』
文化祭.
高瀬.
声.
『――!』
保健室.
佐伯.
『――さん』
教室.
友達.
『――、帰ろ』
音.
重なる.
「ゆ」
口.
動く.
「……ゆ」
高瀬.
何も.
言わない.
待つ.
「……」
女子生徒.
涙.
拭く.
「ゆ」
次.
「……ゆら」
「……」
高瀬.
胸.
大きく.
鳴る.
藤原.
「ゆら?」
女子生徒.
顔.
変わる.
「……」
「ゆら」
自分で.
言う.
「……私」
息.
吸う.
「ゆら」
瞬間.
名札.
滲んでいた.
文字.
少し.
戻る.
『―― 結良』
「……結良」
女子生徒.
目.
大きく.
なる.
「結良」
もう一度.
「私」
「結良」
高瀬.
「名字」
まだ.
上.
滲んでいる.
「……」
残り.
4:59
「あと五分」
真壁.
「結良」
高瀬.
呼ぶ.
女子生徒.
顔.
上げる.
「……」
高瀬.
少し.
笑う.
「やっと」
「名前で」
「呼べた」
「……」
結良.
涙.
また.
出る.
「先生」
「何」
「遅い」
「ごめん」
「それは」
「謝って」
「はい」
全員.
少し.
笑う.
◇
でも.
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
下の名前
復元確認。
━━━━━━━━━━━━
再割当処理
継続。
━━━━━━━━━━━━
「名字」
藤原.
「必要」
「……」
結良.
名札.
見る.
上.
まだ.
読めない.
「名字」
「……」
「思い出せない」
「ナオ」
高瀬.
「保護権限」
「使います」
「待って」
結良.
「でも」
高瀬.
「残り」
「……」
3:42
「使う」
ナオ.
画面.
触る.
「結良」
「いい?」
女子生徒.
少し.
ナオを見る.
「……うん」
「お願いします」
ナオ.
タップ.
━━━━━━━━━━━━
旧識別情報
一時復元。
━━━━━━━━━━━━
画面.
一瞬.
白く.
なる.
結良の.
名札.
『篠宮 結良』
「……!」
高瀬.
「篠宮」
藤原.
「篠宮結良」
真壁.
「篠宮」
佐伯.
「結良ちゃん」
白石.
「篠宮」
ナオ.
「篠宮結良」
全員.
名前.
呼ぶ.
結良.
泣きながら.
笑う.
「うるさい」
「今は我慢!」
高瀬.
「篠宮」
「何」
「結良」
「何ですか!」
高瀬.
笑う.
「覚えた」
「……」
「今度は」
「ちゃんと」
「名前で」
「呼ぶ」
結良.
目.
少し.
細くなる.
「じゃあ」
「忘れたら」
「ジュース」
「まだ言う!?」
「罰金」
「増えた!」
笑い.
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
本人名
篠宮結良
復元完了。
━━━━━━━━━━━━
残り.
1:17
「間に合った」
藤原.
「まだ」
真壁.
「最後まで」
「はい!」
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
識別番号001
再割当
中止。
━━━━━━━━━━━━
「……」
高瀬.
肩.
力.
抜ける.
結良.
目.
閉じる.
「終わった?」
ナオ.
「多分」
「高瀬先生」
真壁.
「多分禁止」
「だって」
「SYSTEM」
「次」
画面.
━━━━━━━━━━━━
候補対象
篠宮結良
除外。
━━━━━━━━━━━━
「……」
「終わった」
高瀬.
笑う.
「篠宮」
「……」
結良.
「はい」
「お前」
「誰」
結良.
一瞬.
高瀬を見る.
「先生」
「冗談!」
「今それやる!?」
全員.
笑う.
結良.
笑いながら.
「篠宮結良です」
「うん」
「高瀬先生」
「何」
「三十六歳」
「そこまで確認する!?」
空き教室.
緊張.
ほどける.
本当に.
少しだけ.
普通.
戻った.
◇
「ナオ」
真壁.
「保護権限」
「……」
ナオ.
画面.
見る.
━━━━━━━━━━━━
旧001
保護権限
使用済。
━━━━━━━━━━━━
権限
消失。
━━━━━━━━━━━━
「なくなった」
「はい」
高瀬.
「ありがとな」
「……」
ナオ.
少し.
笑う.
「僕が」
「前」
「助けてもらったので」
「うん」
「今度」
「返しただけ」
「……」
結良.
「私」
「水城くんに」
「借り?」
「そういう言い方」
ナオ.
「嫌です」
「何で」
「次」
「返さなきゃって」
「なるから」
「……」
結良.
「じゃあ」
「ありがとう」
「はい」
「それだけ?」
「それだけ」
「……」
結良.
少し.
笑う.
「いいね」
「うん」
高瀬.
その会話.
少し.
嬉しい.
◇
その時.
高瀬の.
スマートフォン.
知らない番号.
SMS.
「……」
嫌な.
予感.
開く.
『間に合いましたね。』
高瀬.
顔.
少し.
険しくなる.
『見てたのか』
返信.
『はい。』
『篠宮を
何で選んだ』
既読.
長い.
『選んだのは
SYSTEMです。』
『条件は』
返信.
『自分自身への評価が
空白になり始めた者。』
「……」
高瀬.
真壁.
藤原.
共有.
「自分への評価」
藤原.
「空白」
真壁.
「何者か」
「分からなくなる」
「……」
結良.
「私」
「それ」
「当てはまった?」
「多分」
高瀬.
「でも」
「それだけ」
「じゃない気が」
SMS.
続き.
『加えて、』
『既存の001と
最も近い人物。』
「……」
ナオ.
顔.
変わる.
「僕?」
高瀬.
『近いって何が』
返信.
『役割ではありません。』
『性格でもありません。』
少し.
『接触です。』
「……」
全員.
静か.
『旧001が
帰還後に最も強く
意識した人物。』
ナオ.
目.
大きくなる.
「僕」
「篠宮さん」
「今日」
「初めて」
「まともに」
「……」
真壁.
「違う」
「帰還後」
「ナオが」
「一番」
「意識した人物」
「白石じゃない?」
「……」
高瀬.
画面.
『違うだろ』
送る.
返信.
『はい。』
「……」
次.
『水城尚が
帰還後、
最も強く意識した対象は――』
表示.
少し.
遅れる.
『高瀬です。』
「……」
高瀬.
完全に.
止まる.
ナオ.
「先生?」
高瀬.
「俺?」
SMS.
『本来、』
『次の001候補は』
『高瀬でした。』
「……」
藤原.
真壁.
顔.
変わる.
「じゃあ」
藤原.
「何で」
「篠宮さんに」
返信.
まるで.
聞いていたように.
『高瀬は、
001に適合しませんでした。』
「……」
高瀬.
少し.
息.
吐く.
「採点不能」
真壁.
次.
『そのためSYSTEMは、』
『高瀬と日常的に接触し、』
『自己評価が最も不安定な人物へ』
『候補を移しました。』
「……」
高瀬.
画面.
握る.
結良.
自分と.
毎日.
話していた.
だから.
巻き込まれた.
「……俺のせい」
「違います」
藤原.
即答.
「でも」
「高瀬先生」
「今」
「それ」
「やる時間じゃない」
「……」
「あとで」
「一緒に」
「考える」
「……」
高瀬.
結良を見る.
「篠宮」
「何」
「ごめ」
言いかける.
結良.
手.
出す.
「それ」
「禁止」
「……」
「何が」
「今」
「先生」
「全部」
「自分のせいにしようとした」
「……」
「私」
「さっき」
「言ったじゃん」
「何を」
「自分が」
「何したいか」
「分からなかったって」
「……」
「それ」
「先生が」
「作ったわけじゃない」
「……」
「だから」
一度.
少し.
笑う.
「先生のせい」
「ゼロとは」
「言わない」
「ゼロじゃないの!?」
「接触多いらしいので」
「ぐう」
「でも」
「全部じゃない」
「……」
高瀬.
少し.
笑う.
「お前」
「強いな」
「今」
「戻ったばっかなので」
「……」
結良.
自分の.
名札.
『篠宮 結良』
見る.
「私」
「今」
「自分の名前」
「分かる」
「うん」
「だから」
「大丈夫じゃないけど」
「……」
「考えられる」
高瀬.
ゆっくり.
頷く.
「分かった」
◇
その時.
ナオの.
スマートフォン.
新しい通知.
「……」
「何」
高瀬.
ナオ.
画面.
見る.
表情.
変わる.
━━━━━━━━━━━━
【SYSTEM】
旧001
保護権限消失を確認。
━━━━━━━━━━━━
次.
━━━━━━━━━━━━
代替監視対象を設定。
━━━━━━━━━━━━
「代替?」
真壁.
ナオ.
画面.
━━━━━━━━━━━━
対象
水城尚
━━━━━━━━━━━━
「僕?」
ナオ.
次.
━━━━━━━━━━━━
評価対象外状態に
異常を検出。
━━━━━━━━━━━━
高瀬.
胸.
嫌な.
音.
鳴る.
━━━━━━━━━━━━
自己固定
再検証開始。
━━━━━━━━━━━━
「……」
ナオ.
表情.
固まる.
「自己固定」
藤原.
「小説」
「……」
真壁.
「ナオ」
「青いノート」
「今どこ」
「……図書室」
ナオ.
息.
止まる.
「先生」
「何」
「今日」
「昼」
「……」
「続きを」
「書こうとした」
「うん」
「でも」
一度.
声.
小さくなる.
「何を書きたかったか」
「分からなくなりました」
「……」
高瀬.
完全に.
笑顔.
消える.
「いつから」
「……」
ナオ.
自分でも.
分からない顔.
「帰ってきてから」
「少しずつ」
SYSTEM.
最後.
━━━━━━━━━━━━
自己固定強度
72%
━━━━━━━━━━━━
低下中。
━━━━━━━━━━━━
高瀬.
ナオ.
見る.
結良を.
守った.
代わりに.
ナオが。
帰還のために。
自分で作った。
大事な固定点が。
今。
崩れ始めている.
「……ナオ」
「先生」
高瀬.
拳.
握る.
今度は.
誰か一人を.
助ければ。
誰かが。
代わりに.
削られる.
そんな.
ゲームみたいな.
ルールには.
絶対に。
乗らない.
「真壁」
「はい」
「藤原」
「はい」
「佐伯先生」
「はい」
「篠宮」
「何」
「白石」
「はい」
高瀬.
一度.
全員を見る.
「今度は」
息.
吸う.
「ナオ一人を」
「助ける方法じゃなく」
「誰も」
「落とさない方法」
「探す」
真壁.
少し.
目を細める.
「できます?」
高瀬.
すぐには.
答えない.
「分からん」
「……」
「でも」
少し.
笑う.
「七人いる」
「……」
「一人で」
「答え出すより」
「マシだろ」
藤原.
笑う.
「はい」
結良.
「先生」
「何」
「七人」
「うん」
「私」
「入ってる?」
「当たり前だろ」
「……」
結良.
少し.
笑う.
「じゃあ」
「やります」
白石.
「俺も?」
「お前も」
「何すれば」
「今から考える!」
「ノープラン!?」
ナオ.
思わず.
笑う.
その瞬間.
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
自己固定強度
72%
↓
71%
━━━━━━━━━━━━
「……」
笑顔.
止まる.
高瀬.
時計を見る.
今度は.
制限時間.
表示されていない.
だからこそ.
もっと.
怖い.
いつ。
ゼロになるか.
分からない.
ナオは.
一度.
帰ってきた.
でも.
帰還は.
ゴールじゃなかった.
ここから.
本当に.
こちら側で.
生き続けるための.
戦いが。
始まる.




