Review41 帰還
翌日。
午前七時五十八分。
高瀬は。
職員室の椅子へ座っていた。
でも。
仕事は。
ほとんど。
手についていなかった。
「高瀬先生」
「何」
藤原。
「五分で」
「同じメール」
「三回開いてます」
「……」
「送らないんですか」
「送る」
「じゃあ」
「送って」
「はい」
クリック。
「……」
送信。
「できた」
「おめでとうございます」
「子ども扱い!」
真壁。
隣。
「今日は」
「いつも以上に」
「落ち着かないですね」
「そりゃ」
「ナオ」
「今日」
「決めるって」
「言ったから」
「うん」
「帰るか」
「残るか」
「うん」
「……」
高瀬。
少し。
椅子に深く座る。
「俺」
「何も」
「できんのよな」
「……」
藤原。
「それが」
「嫌?」
「結構」
「高瀬先生らしい」
「褒めてないな?」
「半分」
「また!」
真壁。
少しだけ。
笑う。
「でも」
「今日は」
「本当に」
「待つしかない」
「分かってる」
「分かってるけど」
「待つ」
「はい」
「……」
高瀬。
時計。
見る。
「高瀬先生」
「何」
「今」
「また見た」
「時計くらい見させろ!」
◇
午前十時二十四分。
授業。
「先生」
「何」
「今日」
「めっちゃ上の空」
「そんなことない」
「ある」
「ない」
「ある」
「……」
教室。
笑い。
高瀬。
黒板。
チョーク。
「はい」
「じゃあ」
「ここ」
「誰か」
「読んで」
一人。
生徒。
本文。
読む。
高瀬。
聞いている。
つもり。
でも。
頭。
ナオ。
昨日。
『明日、決めます』
戻る。
残る。
自己固定型。
成功率。
算出不能。
「先生」
「……」
「先生」
「え?」
「今」
「どこ」
「ここ」
「そういう意味じゃない」
教室。
笑い。
「すまん」
高瀬。
少し。
息を吐く。
「ちょっと」
「考え事」
「珍しく素直」
いつもの女子生徒。
「何」
「大丈夫?」
「……」
「今日は」
少し考える。
「五十八」
「微妙」
「昨日より」
「上?」
「ちょっと」
「じゃあいいじゃん」
「何が」
「今日」
「終わった時」
「六十になってれば」
「……」
「そんな」
「雑な」
「二点なら」
「いけるでしょ」
「軽!」
生徒。
笑う。
高瀬も。
少し笑う。
「じゃあ」
「授業戻る」
「逃げた」
「戻るだけ!」
◇
昼休み。
三人。
いつもの机。
「今日は」
高瀬。
「旧視聴覚室」
「放課後」
「はい」
藤原。
「ナオが」
「待ってる」
「多分」
真壁。
「多分?」
「桐谷から」
「連絡ない」
「……」
高瀬。
「でも」
「昨日」
「決めるって」
「言った」
「うん」
「じゃあ」
「行く」
「はい」
藤原。
「ただし」
「……」
高瀬。
「何」
「帰還を」
「勧めない」
「分かってる」
「ナオ本人が」
「選ぶ」
「分かってる」
「失敗する可能性」
「ある」
「分かってる」
「だから」
「高瀬先生」
「絶対に」
「大丈夫とは」
「言わない」
「……」
高瀬。
一瞬。
止まる。
「分かった」
真壁。
「今」
「言いそうだった?」
「ちょっと」
「……」
「実績」
「うるさい!」
三人。
少し笑う。
◇
午後五時四十一分。
旧視聴覚室。
三人。
扉。
「桐谷」
「いる」
「今日は早いな」
「待ってた」
「……」
高瀬。
少し。
表情が変わる。
「ナオは?」
「いる」
「起きてる?」
「起きてる」
向こう。
少し。
間。
「先生」
「ナオ」
「……」
声。
昨日より。
少し。
しっかりしている。
「何点」
高瀬。
「三十一」
「上がってる!」
真壁。
「毎日七とか」
「法則ある?」
「ないです」
ナオ。
「たまたま」
「そっか」
高瀬。
少し。
笑う。
「ナオ」
「うん」
「決めた?」
沈黙。
でも。
長くない。
「決めました」
「……」
三人。
少し。
姿勢。
変わる。
「戻る?」
高瀬。
「はい」
「……」
「本当に?」
藤原。
「はい」
「怖い?」
真壁。
「怖いです」
「……」
「でも」
ナオ。
一度。
息を吸う。
「戻りたい」
「悠真に」
「会いたい」
「……」
「小説」
「続き」
「書きたい」
「……」
「学校」
「行きたい」
「……」
「あと」
「何」
少し。
笑う声。
「高瀬先生が」
「本当に」
「毎日うるさいのか」
「確認したい」
「おい!」
藤原。
笑う。
真壁も。
少し。
笑った。
「誰情報」
高瀬。
「桐谷先生」
「桐谷!」
「事実」
「お前!」
向こう。
ナオ。
小さく。
笑う。
その笑い声。
昨日までより。
少し。
明るい。
「ナオ」
高瀬。
声。
少し。
柔らかくする。
「じゃあ」
「始める?」
「……」
ナオ。
少し。
黙る。
「先生」
「何」
「もし」
「失敗したら」
「……」
高瀬。
胸。
少し。
痛む。
「分からん」
「……」
「ごめん」
「謝らなくていいです」
「……」
「でも」
高瀬。
「一個だけ」
「何」
「失敗しても」
「俺ら」
「お前が」
「いなかったことには」
「しない」
「……」
「戻れなくても」
「ナオ」
「お前が」
「いたこと」
「忘れない」
「……」
藤原。
「私も」
真壁。
「俺も」
向こう。
長い。
沈黙。
「……はい」
ナオ。
声。
少し。
震える。
「それ」
「めちゃくちゃ」
「安心します」
◇
「桐谷」
高瀬。
「俺ら」
「何すればいい」
「何も」
「……」
「また?」
「今回は」
「本当に」
「何もするな」
「……」
「ナオが」
「自分で」
「戻る」
「……」
「外から」
「引っ張ったら」
「自己固定じゃ」
「なくなる」
真壁。
「じゃあ」
「俺ら」
「名前呼ぶのも」
「ダメ?」
「強く固定しようとして」
「呼ぶな」
「……」
「普通に」
「呼ぶなら」
「いい」
「普通に」
高瀬。
「難しいな」
「お前は特に」
「桐谷!」
向こう。
少し。
笑い。
◇
SYSTEM。
三人。
同時。
通知。
━━━━━━━━━━━━
【SYSTEM】
識別対象001
━━━━━━━━━━━━
本人名
水城尚
━━━━━━━━━━━━
自己固定型帰還
実行確認
━━━━━━━━━━━━
「……」
高瀬。
画面。
見つめる。
━━━━━━━━━━━━
実行には
本人承認が必要です。
━━━━━━━━━━━━
「ナオ」
「見えてる?」
「はい」
向こう。
ナオの。
スマートフォン。
同じ表示。
━━━━━━━━━━━━
帰還を実行しますか?
YES
NO
━━━━━━━━━━━━
「……」
ナオ。
息。
吸う音。
「先生」
「何」
「押します」
「うん」
「……」
高瀬。
言いたい。
大丈夫。
絶対。
帰ってこい。
何とかなる。
全部。
言いたい。
でも。
言わない。
「ナオ」
「はい」
「待ってる」
「……」
「うん」
「それだけ」
藤原。
「私も」
真壁。
「俺も」
向こう。
桐谷。
少し。
間。
「早く行け」
「桐谷先生」
「何」
「最後」
「もっと」
「いいこと」
「言えないんですか」
「帰ったら」
「言う」
「……」
「じゃあ」
ナオ。
少し。
笑う。
「帰ります」
――タップ。
◇
━━━━━━━━━━━━
本人承認
確認
━━━━━━━━━━━━
自己固定
「物語を書き終える」
━━━━━━━━━━━━
外部固定
白石悠真
━━━━━━━━━━━━
帰還目的
「また明日」を伝える
━━━━━━━━━━━━
帰還処理
開始
━━━━━━━━━━━━
その瞬間。
旧視聴覚室。
扉。
大きく。
震えた。
「……!」
「下がって!」
真壁。
三人。
一歩。
後ろへ。
光。
扉の隙間。
白い。
強い。
「ナオ!」
高瀬。
「高瀬先生!」
藤原。
「普通に!」
「無理だろ!」
向こう。
ナオ。
声。
「大丈夫じゃないです!」
「正直!」
「でも!」
一度。
息。
「行きます!」
光。
強く。
なる。
━━━━━━━━━━━━
識別番号001
解除処理
━━━━━━━━━━━━
次。
━━━━━━━━━━━━
001
100%
↓
74%
━━━━━━━━━━━━
「下がってる」
藤原。
━━━━━━━━━━━━
74%
↓
41%
━━━━━━━━━━━━
「……」
真壁。
━━━━━━━━━━━━
41%
↓
12%
━━━━━━━━━━━━
高瀬。
拳。
握る。
「ナオ」
「……」
返事。
ない。
「ナオ?」
「高瀬先生」
真壁。
「待つ」
「……」
「分かってる」
でも。
怖い。
扉。
光。
SYSTEM。
━━━━━━━━━━━━
001
12%
↓
0%
━━━━━━━━━━━━
三人。
息。
止まる。
次。
━━━━━━━━━━━━
識別番号001
解除完了。
━━━━━━━━━━━━
「……」
高瀬。
胸。
大きく。
鳴る.
「ナオは?」
次.
━━━━━━━━━━━━
対象
水城尚
━━━━━━━━━━━━
「……」
藤原.
目.
少し.
潤む.
━━━━━━━━━━━━
分類
該当なし
━━━━━━━━━━━━
真壁.
「採点不能?」
次.
━━━━━━━━━━━━
評価対象外
━━━━━━━━━━━━
高瀬.
少し.
笑いそうになる.
「ナオ」
「……」
でも.
まだ.
姿.
ない.
扉.
光.
消えない.
次.
━━━━━━━━━━━━
帰還経路
自己固定
━━━━━━━━━━━━
外部固定切断
なし
━━━━━━━━━━━━
「悠真」
藤原.
「残った」
高瀬.
少し.
息.
吐く.
「よし」
真壁.
「まだ」
「……はい」
◇
その瞬間.
警告.
━━━━━━━━━━━━
ERROR
━━━━━━━━━━━━
三人.
表情.
変わる.
「何」
高瀬.
━━━━━━━━━━━━
登録領域
受入先
未設定
━━━━━━━━━━━━
「……受入先?」
藤原.
真壁.
「学校?」
「家?」
「身体?」
高瀬.
「何が」
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
対象
水城尚
現行登録
不存在
━━━━━━━━━━━━
「名簿」
藤原.
「ナオ」
「今」
「この世界に」
「登録がない」
真壁.
「戻る場所」
「ない?」
高瀬.
「ふざけんな」
「帰還条件」
「揃っただろ!」
SYSTEM.
無反応.
「桐谷!」
高瀬.
「何とか」
向こう.
桐谷.
声.
初めて.
焦っている.
「予定と違う」
「何が!」
「自己固定型」
「前例がない」
「じゃあ」
「どうすんだよ!」
桐谷.
「待て」
「待てって」
「ナオ」
「今」
「どこ!」
向こう.
返事.
ない.
高瀬.
扉.
一歩.
近付く.
真壁.
今度は.
腕.
掴む.
「待って」
「でも!」
「今」
「入ったら」
「帰還経路」
「変わるかもしれない」
「……」
「ナオ」
「自分で」
「戻ろうとしてる」
「……」
「最後まで」
「奪わない」
高瀬.
止まる.
苦しい.
でも.
止まる.
「……ナオ」
小さく.
「自分で」
「来い」
「待ってるから」
◇
未登録領域.
ナオ.
一人.
立っていた.
桐谷.
少し離れた場所.
見えている.
でも.
間.
白い.
壁.
みたいなもの.
「桐谷先生!」
「ナオ!」
「出られない!」
「焦るな!」
「無理!」
「分かる!」
「どうすれば!」
ナオ.
手.
見る.
数字.
ない.
001.
消えた.
「僕」
「番号」
「ない」
「いい!」
「でも」
「向こう」
「僕の場所」
「ないって!」
「……」
桐谷.
顔.
強張る.
「水城尚」
「何」
「お前」
「戻ったら」
「どこ行きたい」
「……」
「場所」
「何」
「家」
「学校」
「図書室」
「悠真のとこ」
「……」
ナオ.
息.
止まる.
「図書室」
「何で」
「青いノート」
「……」
「僕」
「図書室」
「行きたい」
「……」
「続きを」
「書きたい」
桐谷.
目.
変わる.
「それだ」
「何」
「戻る場所」
「住所じゃない」
「……」
「お前が」
「自分で」
「帰りたい場所」
「……」
「決めろ」
◇
外.
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
受入先
検索中
━━━━━━━━━━━━
高瀬.
「何か」
「変わった」
次.
━━━━━━━━━━━━
本人指定を
待機
━━━━━━━━━━━━
「本人」
藤原.
「ナオが」
「決める」
「……」
高瀬.
目.
閉じる.
「ナオ」
「聞こえるか」
返事.
ない.
でも.
「好きなとこ」
「選べ」
「……」
「俺らが」
「ここにしろって」
「決めない」
「……」
「お前が」
「帰りたいとこ」
「自分で」
「決めろ」
◇
ナオ.
暗闇.
青いノート.
図書室.
白石.
漫画.
『仕事しろ』
『また明日』
笑い.
本.
窓.
机.
「……」
ナオ.
目.
閉じる.
「図書室」
一度.
声.
強く.
「僕」
「学校の」
「図書室に」
「帰ります」
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
本人指定
確認
━━━━━━━━━━━━
受入先
校内図書室
━━━━━━━━━━━━
桐谷.
少し.
笑う.
「行け」
「……」
「ナオ」
「桐谷先生」
「何」
「あとで」
「絶対」
「帰ってきてください」
「……」
桐谷.
すぐには.
返さない.
「先生」
「約束」
「……」
「今は」
「できない」
「……」
「でも」
一度.
ナオを見る.
「戻る方法」
「探す」
「……」
ナオ.
少し.
笑う.
「それで」
「いいです」
光.
ナオ.
身体.
包む.
「桐谷先生」
「何」
「また」
一度.
笑う.
「明日」
桐谷.
表情.
止まる.
そして.
小さく.
「……ああ」
「また明日」
ナオ.
消える.
◇
学校.
図書室.
午後五時五十九分.
誰も.
いない.
窓.
夕方.
机.
棚.
突然.
床.
小さな.
光.
そして.
「……っ」
一人.
男子生徒.
膝.
つく.
「……」
息.
苦しい.
手.
床.
触れる.
「……触れる」
机.
触る.
硬い.
冷たい.
「……」
ナオ.
目.
潤む.
「触れる」
声.
震える.
自分の.
足.
手.
制服.
「……僕」
ポケット.
何か.
ある.
取り出す.
小さな.
紙.
学生証.
そこ.
名前.
『水城 尚』
「……」
ナオ.
指.
震える.
「僕」
「水城尚」
今度は.
その名前.
他人のものに.
見えない.
自分.
「……帰った」
その瞬間.
図書室.
扉.
開く.
「……?」
一人.
男子生徒.
白石悠真.
「え」
二人.
止まる.
「……」
白石.
ナオを見る.
顔.
見る.
息.
止まる.
「お前」
ナオ.
声.
出ない.
白石.
何か.
思い出そうとする.
「……」
「誰」
一瞬.
ナオの.
顔.
曇る.
でも.
白石.
胸.
押さえる.
「……違う」
「何」
「知ってる」
「……」
「俺」
「お前」
「知ってる」
ナオ.
目.
少し.
大きくなる.
「悠真」
「……」
白石.
その名前.
呼ばれて.
顔.
変わる.
「ナオ?」
「……」
ナオ.
涙.
溢れる.
「うん」
「……」
白石.
何も.
言えない.
「ナオ」
「うん」
「お前」
「どこ」
「……」
「どこ行ってたんだよ」
声.
震える.
ナオ.
笑う.
泣きながら.
「ごめん」
「何で」
「分かんない」
「……」
「でも」
一度.
息.
吸う.
「悠真」
「何」
ずっと.
言いたかった.
たった.
四文字.
「また明日」
「……」
白石.
完全に.
顔.
崩れる.
「遅えよ」
「……」
「何年」
「待たせんだよ」
ナオ.
笑う.
「ごめん」
「だから」
「謝んな」
白石.
一歩.
近付く.
ナオ.
少し.
身構える.
次の瞬間.
肩.
強く.
掴まれる.
「……」
ナオ.
目.
見開く.
触れられた.
ちゃんと.
「……悠真」
「何」
「痛い」
「知らねえよ!」
二人.
泣きながら.
笑った.
◇
同じ頃.
旧視聴覚室前.
三人.
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
帰還処理
完了
━━━━━━━━━━━━
「……」
高瀬.
息.
止まる.
━━━━━━━━━━━━
対象
水城尚
━━━━━━━━━━━━
登録領域
復帰
━━━━━━━━━━━━
「戻った」
藤原.
「場所」
真壁.
━━━━━━━━━━━━
校内図書室
━━━━━━━━━━━━
「……」
高瀬.
一瞬.
走り出しそうになる.
止まる.
「高瀬先生」
「分かってる」
「でも」
「行く」
「走る?」
「早歩き!」
「それ禁止!」
三人.
笑いながら.
階段.
駆け――
「高瀬先生!」
「はい!」
「走らない!」
「はい!」
早歩き.
かなり速い.
◇
図書室.
扉.
開く.
「ナオ!」
「高瀬先生」
ナオ.
いる.
白石.
隣.
二人とも.
目.
赤い.
「……」
高瀬.
一瞬.
何も.
言えない.
「先生」
ナオ.
少し.
笑う.
「何点」
高瀬.
聞く.
ナオ.
少し.
考える.
「七十二点」
「一気に上がった!」
白石.
「何の話?」
「色々」
「先生」
ナオ.
「はい」
「帰りました」
「……」
高瀬.
少し.
目.
熱くなる.
「うん」
「おかえり」
今度は.
言えた.
ナオ.
少し.
泣きそうになる.
「ただいま」
藤原.
笑う.
「おかえりなさい」
真壁.
「おかえり」
「……」
ナオ.
三人.
見る.
「先生たち」
「何」
「四人ですね」
「……」
高瀬.
少し笑う.
「いや」
白石.
見る.
「五人?」
白石.
「俺入ってんの?」
「入れ」
「雑!」
笑い.
図書室.
久しぶりに.
明るい.
◇
でも.
高瀬.
一つ.
気付く.
「ナオ」
「はい」
「桐谷」
ナオの.
笑顔.
少し.
止まる.
「……残りました」
「……」
「帰れないって」
「……」
高瀬.
拳.
少し.
握る.
でも.
今.
ナオ.
帰った.
この瞬間を.
別の罪悪感で.
塗り潰したくない.
「そっか」
「……」
「じゃあ」
「次」
ナオ.
高瀬を見る.
「助ける?」
「……」
高瀬.
少し.
笑う.
「本人に」
「まず」
「聞く」
「……」
ナオ.
笑う.
「成長」
「それ禁止!」
全員.
少し.
笑った.
◇
その夜.
高瀬.
ノート.
『水城尚 帰還成功』
『自己固定型』
『外部固定切断なし』
『登録領域:校内図書室』
『白石悠真 記憶保持』
『識別番号001 解除』
その下.
『ナオは戻った。』
『001は戻っていない。』
「……」
高瀬.
少し.
笑う.
さらに.
『それでいい。』
書く.
スマートフォン.
通知.
SYSTEM.
━━━━━━━━━━━━
対象
水城尚
━━━━━━━━━━━━
評価
対象外
━━━━━━━━━━━━
「……」
高瀬.
少し.
笑う.
「採点できんか」
次.
━━━━━━━━━━━━
自己固定型帰還
成功
━━━━━━━━━━━━
新規事例として
記録します
━━━━━━━━━━━━
高瀬.
眉.
少し.
寄る.
「記録?」
次.
━━━━━━━━━━━━
参照番号
41
━━━━━━━━━━━━
「……41」
高瀬.
少し.
不思議そうに.
見る.
そして.
画面.
最後.
━━━━━━━━━━━━
本事例により
既存予測モデルを
再構築します
━━━━━━━━━━━━
「……」
高瀬の.
笑顔.
消える.
さらに.
━━━━━━━━━━━━
今後
自己固定対象への
対策を更新します
━━━━━━━━━━━━
「対策」
胸.
冷たくなる.
SYSTEM.
学習した.
ナオが.
自分で帰った.
その方法を.
今度は.
SYSTEMが.
対策する.
次.
━━━━━━━━━━━━
優先監視対象
高瀬
━━━━━━━━━━━━
「……俺?」
そして.
━━━━━━━━━━━━
自己固定形成率
高
━━━━━━━━━━━━
高瀬.
動かない.
自分も.
SYSTEMから.
外れ始めている.
ナオと.
同じように.
次.
━━━━━━━━━━━━
警告
Review69到達前に
自己固定が完了した場合
━━━━━━━━━━━━
高瀬.
息.
止まる.
━━━━━━━━━━━━
Review69は
発生しません
━━━━━━━━━━━━
「……」
高瀬.
画面.
見つめる.
69.
未来に.
唯一.
残った記録.
でも.
自分が.
自分として.
完成してしまえば.
そこには.
辿り着かない.
「……」
少し.
間.
そして.
高瀬.
笑う.
「なら」
小さく.
「別に」
「行かなくても」
「いいじゃん」
自分でも.
少し.
驚いた.
前なら.
69.
見たい.
知りたい.
辿り着きたい.
そう.
思っていた.
でも.
今.
ナオが.
帰った.
番号を.
捨てて.
自分で.
帰る場所を.
選んだ.
なら.
未来に残った記録より.
自分で選ぶ今日の方が.
大事かもしれない.
高瀬は.
スマートフォンを.
伏せた.
その瞬間.
知らない番号から.
SMS.
『それを言えたなら、』
「……」
『Review69は、
まだ必要です。』
高瀬.
眉.
寄る.
『さっきSYSTEMは
発生しないって言ったぞ』
返信.
『SYSTEMにとっては。』
「……」
次.
『でも、
69という数字は
SYSTEMが作ったものではありません。』
「……」
高瀬.
胸.
強く.
鳴る.
『じゃあ誰が』
送信.
既読.
長い.
そして.
『あなたです。』
「……」
一年前の.
高瀬.
未来記録.
69.
自己選択率.
すべて.
SYSTEMに.
決められたと思っていた.
でも.
もし.
69だけは.
高瀬自身が.
残した数字だとしたら.
意味が.
全部.
変わる.
最後.
一通.
『Review69は、
採点結果ではありません。』
高瀬.
画面.
見つめる.
『では何だ』
返信.
『あなたが、
あなた自身に残した
質問です。』
「……」
高瀬.
動けなかった.
69.
神回.
未来.
そこにあるのは.
答えではない.
質問.
そして.
今の高瀬は.
初めて.
答えをもらうためではなく.
自分で答えるために.
そこへ向かい始めていた.




