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この人生、採点中  作者: 夜凪 灯
第一章 『あなたは、あなたを何点にしますか』

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37/118

Review37 帰ってきた人

 翌朝。


 高瀬は。


 職員室へ入るなり。


「002」


 と言った。


 藤原が。


 顔を上げる。


「おはようございます」


「おはよう」


「順番」


「ごめん」


 真壁。


 少し離れた席。


「昨日の続きですね」


「うん」


「ナオから」


「来た?」


 藤原。


「いや」


「じゃあ」


「桐谷?」


「それもない」


「……」


 高瀬。


 自分のスマートフォンを出す。


「でも」


「昨日の夜」


「SYSTEM」


「一回だけ」


「俺にも来た」


「内容」


 真壁。


「これ」


 三人。


 画面。


━━━━━━━━━━━━


【SYSTEM】


未登録領域


識別記録照合


━━━━━━━━━━━━


識別番号


002


━━━━━━━━━━━━


状態


帰還済


━━━━━━━━━━━━


現在地


登録領域内


━━━━━━━━━━━━



「……」


 藤原。


「登録領域内」


「はい」


 真壁。


「つまり」


「こっち側」


「うん」


 高瀬。


「普通に」


「この世界にいる?」


「少なくとも」


「SYSTEM上では」


「はい」


「場所」


「出てない?」


「出てない」


「名前」


「ない」


「いつ帰還」


「ない」


「……」


 高瀬。


 少し。


 眉を寄せる。


「情報少な」


「高瀬先生」


 藤原。


「今までより」


「むしろ多いです」


「感覚麻痺してる?」


「かなり」


 真壁。


「同意」


「二人とも!」


◇


「整理」


 藤原。


 ノート。


『002』


『未登録領域への接続歴あり』


『帰還済』


『現在は登録領域内』


「あと」


 真壁。


「星」


「002」


「ナオが触れた」


「うん」


「それ」


「高瀬先生たちが持ってる001の星と」


「同型」


「はい」


「ということは」


「番号ごとに」


「何か」


「紐付いてる?」


「可能性」


 藤原。


「でも」


 高瀬。


「星=本人」


「とは限らない」


「はい」


「所有物」


「鍵」


「識別タグ」


「接続媒体」


「……」


 真壁。


「候補多い」


「じゃあ」


 高瀬。


「現実側」


「002探す」


「どうやって」


「一年前より前」


「消えた人」


「戻った人」


「学校?」


「まずは」


 藤原。


「学校関係」


「SYSTEM」


「今まで」


「この学校中心で動いてる」


「うん」


「なら」


「過去の在籍」


「退職」


「休職」


「長期欠勤」


「記録異常」


「そこ」


「見る」


「賛成」


 真壁。


「ただし」


「はい」


「全件総当たり」


「しない」


「時間ない」


「うん」


「条件」


「帰還」


「って考えるなら」


「一度」


「記録から消えた」


「また戻った」


「そこ」


「探す」


「……」


 高瀬。


「出たり」


「戻ったり」


「した人」


「はい」


◇


 午前。


 三人。


 空き時間。


 過年度職員記録。


「まず」


 藤原。


「教員」


「五年分」


「うん」


 高瀬。


「退職」


「復職」


「異動」


「休職」


「……」


「普通」


 真壁。


「多い」


「そりゃそう」


「でも」


「一度在籍から消えて」


「同年度内に」


「復帰」


「みたいなの」


「少ない」


「何人」


「……」


 藤原。


 画面。


「三人」


「少な」


「一人目」


「産休」


「違う」


「二人目」


「病休」


「復帰」


「普通」


「三人目」


「……」


 藤原。


 少し。


 止まる。


「何」


 高瀬。


「これ」


「誰」


「一年前」


「じゃない」


「三年前」


「うん」


「一度」


「退職扱い」


「……」


「二か月後」


「同じ学校に」


「復職」


「……は?」


 三人。


 画面を見る。


『佐伯――』


 名前。


 そこで。


 高瀬の表情が。


 少し。


 変わる。


「佐伯?」


「知ってる?」


 真壁。


「……名前だけ」


「どこで」


「分からん」


「また」


 高瀬。


 少し。


 頭を押さえる。


「でも」


「聞いたこと」


「ある」


「教員?」


 藤原。


「養護教諭」


「……」


 高瀬。


 目を細める。


「保健室?」


「はい」


「今」


「いる?」


 藤原。


 画面。


「います」


「……」


 三人。


 止まる。


「今も?」


「はい」


「この学校?」


「はい」


「……」


 高瀬。


 少しだけ。


 笑う。


「近!」


「高瀬先生」


「声」


「ごめん」


「でも」


「三年前」


「退職」


「二か月後」


「復職」


「同じ学校」


「これ」


「普通?」


 真壁。


「かなり」


「珍しい」


「理由」


 藤原。


「記録」


「……」


「空欄」


「また空欄」


 高瀬。


「嫌になってくるな」


◇


「佐伯先生」


 高瀬。


 少し考える。


「顔」


「分かる?」


「分かります」


 藤原。


「保健室」


「今も勤務」


「話したこと」


「あります?」


「私は」


「何度か」


「真壁先生」


「少し」


「高瀬先生」


「……」


「俺」


「多分」


「ある」


「多分?」


「保健室」


「行ったことあるし」


「でも」


「印象」


「薄い」


「……」


 真壁。


「それ」


「逆に気になる」


「何が」


「この学校で」


「三年前からいる人」


「普通」


「もう少し」


「記憶あるでしょ」


「……」


「確かに」


 高瀬。


 少し。


 眉を寄せる。


「俺」


「佐伯先生」


「どんな顔だったっけ」


 藤原。


 止まる。


「……」


「何」


「私も」


「今」


「顔」


「浮かばない」


「……」


 真壁。


「俺も」


 三人。


 無言。


「名前」


「知ってる」


 高瀬。


「保健室」


「いる」


「会ったこと」


「ある」


「なのに」


 藤原。


「顔が」


「出てこない」


「……」


「行こう」


 高瀬。


「待って」


 真壁。


「今」


「授業」


「……」


「また」


「はい」


「昼休み」


「分かった」


◇


 昼休み。


 三人。


 保健室前。


「普通に」


 高瀬。


「行く?」


「普通に」


 藤原。


「何聞く」


 真壁。


「いきなり」


「三年前一回消えました?」


「は」


「ダメ」


「分かってる」


「高瀬先生」


「何」


「今日は」


「藤原先生が」


「話す」


「俺?」


「高瀬先生は」


「顔に出る」


「……」


「否定できない」


 藤原。


 少し笑う。


「じゃあ」


「私から」


 ノック。


「失礼します」


「どうぞ」


 声。


 女性。


 三人。


 入る。


「……」


 高瀬。


 一瞬。


 止まる。


 佐伯。


 いる。


 白衣。


 眼鏡。


 落ち着いた顔。


「藤原先生」


「こんにちは」


「こんにちは」


「真壁先生も」


「どうも」


 そして。


 高瀬。


「……」


 佐伯が。


 少しだけ。


 笑う。


「高瀬先生」


「久しぶりですね」


「……」


 胸。


 少し。


 ざわつく。


「久しぶり」


 何が。


 久しぶり?


「どうしました?」


 藤原。


 自然に。


「少し」


「昔の記録で」


「確認したいことがあって」


「昔?」


「三年前」


「佐伯先生」


「一度」


「退職扱いになってますよね」


「……」


 佐伯の。


 表情。


 ほんの少し。


 止まった。


「よく」


「見つけましたね」


 三人。


 空気。


 変わる。


「知ってる?」


 高瀬。


 思わず。


 口。


 出る。


 佐伯。


 高瀬を見る。


「何を」


「いや」


「退職記録」


「もちろん」


「自分のなので」


「……」


 真壁。


「二か月後」


「復職」


「理由」


「記録空欄」


「はい」


「理由」


「聞いても?」


 佐伯。


 少し。


 笑う。


「体調不良です」


「……」


 高瀬。


 すぐ。


 違和感。


「それなら」


「休職」


「じゃない?」


「……」


 佐伯。


 高瀬を見る。


「高瀬先生」


「はい」


「昔から」


「変なところ」


「細かいですね」


「……」


「昔から?」


 佐伯の。


 目。


 少し。


 細くなる。


「ええ」


「あなた」


「三年前も」


「同じこと」


「聞きましたよ」


「……」


 三人。


 完全に。


 止まる。


「俺が?」


「はい」


「何を」


「どうして」


「一度辞めたのに」


「戻ってきたのか」


「……」


 高瀬。


 記憶。


 ない。


「で」


「何て答えた?」


 佐伯。


 すぐには。


 答えない。


「佐伯先生」


 藤原。


「覚えてます?」


「覚えてます」


「……」


 佐伯。


 少しだけ。


 視線を。


 高瀬から。


 外す。


「帰る場所が」


「残ってたから」


「……」


 高瀬。


 胸。


 大きく。


 鳴る。


「何それ」


 佐伯。


 また。


 高瀬を見る。


「当時も」


「同じ顔しました」


「……」


「意味分からないって」


「はい」


「で」


「私」


「何て?」


「……」


 佐伯。


 少しだけ。


 笑う。


「そのうち」


「分かりますよ」


「って」


「……」


 高瀬。


「今」


「分かりかけてる」


「でしょうね」


 三人。


 息。


 止まる。


◇


「佐伯先生」


 真壁。


「一つ」


「いいですか」


「どうぞ」


「未登録領域」


「……」


 佐伯の。


 顔。


 変わる。


 ほんの一瞬。


 でも。


 三人とも。


 見逃さなかった。


「知ってる?」


 高瀬。


「……」


「何のことですか」


「今」


 藤原。


「反応しました」


「……」


 佐伯。


 少しだけ。


 目を伏せる。


「先生方」


「はい」


「その言葉」


「どこで」


「聞きました?」


「SYSTEM」


 高瀬。


 藤原。


 真壁。


 二人とも。


 高瀬を見る。


「何」


「言うんだ」


 真壁。


「隠す理由ないだろ」


「今は」


「もう言ったし」


 佐伯。


 静かに。


「SYSTEM」


「……」


「まだ」


「動いてるんですね」


「……まだ?」


 高瀬。


「佐伯先生」


「あなた」


 一度。


 息を吸う。


「三年前」


「何があった?」


 佐伯。


 高瀬を見る。


 長い。


 沈黙。


「高瀬先生」


「何」


「私」


「今」


「あなたに」


「全部話すべき?」


「……」


 高瀬。


 少し。


 止まる。


「分からない」


「昔なら」


「聞いてたでしょうね」


「多分」


「……」


「今は?」


 高瀬。


 少し。


 考える。


「佐伯先生が」


「話したい範囲で」


「……」


 佐伯。


 少しだけ。


 目を見開く。


「変わりましたね」


「最近」


「よく言われる」


「そうですか」


「で」


「話せる?」


 佐伯。


 少し。


 考える。


「少しだけ」


 三人。


 黙る。


「三年前」


「私」


「ここから」


 一度。


 保健室の外。


 どこか。


 遠くを見るように。


「消えました」


「……」


「SYSTEM上」


「削除」


「はい」


「現実では?」


 真壁。


「五日間」


「記録なし」


「……」


「家にも」


「いなかった」


「病院にも」


「……」


「高瀬先生と」


「同じ」


 藤原。


「近いですね」


「はい」


「で」


「戻った」


「はい」


「どうやって」


 高瀬。


「……」


 佐伯。


 少し。


 笑う。


「それ」


「今」


「一番聞きたいですよね」


「うん」


「でも」


「答えません」


「何で」


「答えを」


「先に知ると」


「戻れない人がいる」


「……」


 三人。


 空気。


 変わる。


「ナオ」


 高瀬。


 思わず。


 口にする。


 佐伯。


 表情。


 完全に。


 止まる。


「……」


「知ってる?」


 高瀬。


「ナオ」


「……」


「No.001」


 佐伯。


 目。


 細くなる。


「その名前」


「誰が」


「付けたんですか」


「本人」


「……」


「本人が」


「俺に」


「ナオって」


「……」


 佐伯。


 少し。


 息を吐く。


「そうですか」


「知ってるんだな」


「……」


「佐伯先生」


 藤原。


「ナオと」


「会ったこと」


「あります?」


「……」


 長い。


 沈黙。


「あります」


 三人。


 止まる。


「いつ」


 高瀬。


「三年前」


「……」


「俺より前?」


「はい」


「ナオ」


「その時から」


「未登録領域に?」


「いいえ」


「……」


 佐伯。


 声。


 少し。


 低くなる。


「その時は」


「まだ」


「普通に」


「こっちにいました」


「……」


 高瀬。


「生徒?」


 佐伯。


 すぐには。


 答えない。


「それは」


「本人に」


「聞いてください」


「……」


「でも」


 一度。


 高瀬を見る。


「一つだけ」


「何」


「ナオは」


「最初から」


「001だったわけじゃない」


「……」


 真壁。


「誰も最初から番号じゃない」


「はい」


「桐谷先生も」


「同じこと言ってました」


「でしょうね」


 佐伯。


 少し。


 寂しそうに笑う。


◇


「じゃあ」


 高瀬。


「002」


 佐伯の。


 表情。


 今度は。


 はっきり。


 変わる。


「……」


「佐伯先生」


 高瀬。


「あなた?」


「……」


 藤原。


 真壁。


 何も言わない。


 佐伯。


 長い。


 長い。


 沈黙。


「その質問」


「はい」


「SYSTEMに」


「聞いた?」


「いや」


「普通に」


「……」


 佐伯。


 少しだけ。


 笑う。


「そういうところ」


「本当に」


「変わったんですね」


「答え」


「……」


 佐伯。


 机。


 引き出し。


 ゆっくり。


 開ける。


「何」


 三人。


 少し。


 身構える。


 佐伯。


 小さな。


 透明袋。


 取り出す。


「……」


 中。


 星形の。


 キーホルダー。


 古い。


 傷だらけ。


 裏。


 刻印。


『002』


「……」


 三人。


 完全に。


 言葉を失う。


「佐伯先生」


 藤原。


「あなたが」


「002?」


 佐伯。


 少し。


 その星を。


 見つめる。


「正確には」


「……」


「そう呼ばれていました」


 真壁。


 表情。


 硬くなる。


「いました」


「過去形?」


「はい」


「今は?」


「今は」


 佐伯。


 星。


 袋ごと。


 机へ。


 置く。


「佐伯真由です」


「……」


 高瀬。


 少し。


 目を細める。


「それ」


「大事?」


「ものすごく」


「……」


「002として」


「戻ったんじゃない」


「佐伯真由として」


「戻った?」


 佐伯。


 少しだけ。


 笑う。


「はい」


 藤原。


「どうやって」


「……」


 佐伯。


 高瀬を見る。


「待っていた人が」


「いました」


「……」


「一人?」


「はい」


「誰」


「それは」


「今は」


「話しません」


「……」


「でも」


 佐伯。


 一度。


 真壁を見る。


「外部固定」


「……」


 真壁。


 目。


 少し。


 大きくなる。


「知ってる」


「はい」


「私も」


「それで」


「帰還処理が」


「止まりました」


「……」


「同じ」


 藤原。


「真壁先生と」


「近い」


「はい」


「ただ」


 佐伯。


 少し。


 顔が。


 曇る。


「私の場合」


「戻るために」


「一つ」


「失いました」


「……」


 高瀬。


「何」


 佐伯。


 少し。


 笑う。


 でも。


 その笑顔。


 寂しい。


「名前」


「……?」


「私を」


「待っていた人の」


「名前を」


「……」


 三人。


 誰も。


 動かない。


「どういう意味」


 高瀬。


「その人が」


「私を」


「佐伯真由として」


「呼び戻した」


「……」


「でも」


「戻った瞬間」


「私は」


「その人の名前を」


「忘れました」


「……」


 藤原。


「今も?」


「はい」


「顔」


「覚えてる?」


「ぼんやり」


「声」


「少し」


「名前だけ?」


「……」


 佐伯。


 小さく。


 首を振る。


「名前だけじゃない」


「……」


「その人と」


「どんな関係だったか」


「……」


「そこも」


「かなり」


「抜けています」


「……」


 高瀬。


 胸。


 重くなる。


「代償?」


「私は」


「そう思ってます」


「SYSTEMが?」


「分かりません」


「未登録領域の仕組み?」


「それも」


「分からない」


「……」


「でも」


「戻る時」


「何か」


「置いてくる」


「必要がある?」


 真壁。


「可能性」


 佐伯。


「はい」


◇


「じゃあ」


 高瀬。


「俺」


「一年前」


「何置いてきた」


「……」


 三人。


 佐伯を見る。


「記憶」


 藤原。


「桐谷先生」


「……」


「高瀬先生」


「戻ったあと」


「桐谷先生を」


「忘れてた」


「……」


 佐伯。


 少しだけ。


 高瀬を見る。


「可能性は」


「高いと思います」


「じゃあ」


「俺」


 高瀬。


 声。


 少し。


 低くなる。


「桐谷を」


「置いてきたんじゃなく」


「桐谷の記憶を」


「置いてきた?」


「……」


「それで」


「俺だけ」


「帰った?」


「……」


 佐伯。


「高瀬先生」


「何」


「今」


「自分を責めるの」


「早いです」


「……」


「まだ」


「何が起きたか」


「全部」


「分かってない」


「……」


「あなた」


「昔も」


「それ」


「早かった」


 高瀬。


 少し。


 顔を上げる。


「俺」


「三年前」


「佐伯先生と」


「この話」


「した?」


「少し」


「何で」


「……」


 佐伯。


 少しだけ。


 笑う。


「あなた」


「私が戻ったあと」


「ずっと」


「『何か変だ』って」


「言ってました」


「……」


「誰も」


「気付かなかったのに」


「高瀬先生だけ」


「何度も」


「保健室に来て」


「……」


「私」


「最初」


「面倒でした」


「ひど!」


「でも」


 佐伯。


 少しだけ。


 笑う。


「最後」


「助かりました」


「……」


「何で」


「私が」


「自分の名前を」


「忘れそうになった時」


「……」


「高瀬先生」


「何度も」


「佐伯先生」


「って」


「呼んだので」


「……」


 高瀬。


 何も。


 言えない。


「あなた」


「三年前から」


「やってるんですよ」


「何を」


「名前で」


「人を」


「繋ぎ止めること」


「……」


 藤原。


 少し。


 目を細める。


「高瀬先生」


「無意識」


「うん」


 真壁。


「しかも」


「一回目じゃない」


「……」


 高瀬。


 小さく。


 笑う。


「俺」


「結構」


「昔から」


「しつこい?」


「かなり」


 佐伯。


 即答。


「そこは濁して!」


 少し。


 笑い。


 でも。


 高瀬の胸。


 何か。


 温かい。


◇


「佐伯先生」


 真壁。


「俺」


「今」


「識別率50%」


「……」


 佐伯。


 表情。


 変わる。


「かなり」


「危ないですね」


「ですよね」


「でも」


「外部固定」


「二人」


「それで」


「止まってる」


「はい」


「じゃあ」


 佐伯。


 真壁を見る。


「今」


「絶対」


「一人にならないで」


「……」


 高瀬。


「それ」


「物理的に?」


「違います」


「関係」


「……」


「外部固定は」


「同じ場所に」


「いることじゃない」


「その人を」


「誰かが」


「その人として」


「認識し続けること」


「……」


「ただ」


「一つ」


「何」


 真壁。


「固定点」


「弱くなる時があります」


「……」


「いつ」


 佐伯。


 少し。


 言いづらそうに。


「その人自身が」


「自分を」


「否定した時」


「……」


 三人。


 静かになる。


「例えば」


 藤原。


「真壁先生が」


「自分なんて」


「真壁透じゃない」


「って」


「思ったら?」


「はい」


「……」


「外から」


「名前呼んでも」


「本人が」


「拒絶してると」


「弱い」


「……」


 高瀬。


 真壁を見る。


「真壁」


「何」


「お前」


「自分のこと」


「嫌い?」


「……」


「高瀬先生」


「はい」


「今それ」


「ここで聞く?」


「大事かなって」


「……」


 真壁。


 少し。


 考える。


「嫌いなところ」


「多いです」


「……」


「でも」


 一度。


 息を吸う。


「今」


「全部嫌いでは」


「ないです」


「……」


「前より」


「少し」


「マシ」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「それでいいじゃん」


「簡単に言う」


「簡単じゃないけど」


「……」


 藤原。


「真壁先生」


「はい」


「私」


「今の真壁先生」


「前より好きです」


「……」


 真壁。


 完全に。


 止まる。


 高瀬。


「藤原!?」


「何ですか」


「急!」


「今言える時に」


「言った方がいいかなって」


「……」


 真壁。


 顔。


 少し。


 赤くなる。


「藤原先生」


「はい」


「そういうの」


「困る」


「嫌?」


「……」


 少し。


 間。


「嫌では」


「ない」


 高瀬。


「おおお」


「高瀬先生」


「はい」


「黙って」


「はい!」


 佐伯。


 小さく。


 笑った。


「いいですね」


「何が」


 高瀬。


「こういうの」


「固定点」


「強いです」


「……」


 三人。


 少し。


 照れた。


◇


 保健室。


 退出前。


 高瀬。


 一度。


 振り返る。


「佐伯先生」


「はい」


「002」


「……」


「もう」


「呼ばれたくない?」


 佐伯。


 少しだけ。


 笑う。


「嫌です」


「そっか」


「はい」


「じゃあ」


 一度。


 真っ直ぐ。


 見る。


「佐伯先生」


「……」


「また」


「話聞かせて」


 佐伯。


 少し。


 目を細める。


「はい」


「高瀬先生」


「何」


「今度は」


「一人で来ないでください」


「何で」


「三年前」


「一人で来て」


「二時間くらい」


「質問されました」


「俺うざ!」


「自覚」


「今!?」


 藤原。


 真壁。


 二人。


 笑う。


◇


 廊下。


 三人。


「002」


 高瀬。


「まさか」


「佐伯先生」


「はい」


 藤原。


「でも」


「これ」


 真壁。


「かなり大きい」


「何が」


「帰還者」


「実在」


「うん」


「未登録領域から」


「戻れる」


「うん」


「ナオも」


「戻れる可能性」


「ある」


「……」


 高瀬。


 少し。


 笑う。


「あるな」


「ただ」


 藤原。


「代償」


「……」


 笑顔。


 少し消える。


「佐伯先生は」


「待ってた人の」


「記憶」


「失った」


「高瀬先生は」


「桐谷先生の」


「記憶」


「……」


 真壁。


「ナオが」


「戻る時」


「何を」


「失う?」


 三人。


 黙る。


「それ」


 高瀬。


「先に」


「分かる方法」


「探す」


「うん」


「勝手に」


「戻さない」


「はい」


「本人に」


「選ばせる」


「はい」


「……」


 真壁。


 少し。


 高瀬を見る。


「ちゃんと」


「覚えてる」


「褒めろ」


「成長」


「それ禁止!」


◇


 その夜。


 高瀬。


 ノート。


『No.002=佐伯真由』


 書いて。


 止まる。


「……違う」


 線。


 引く。


『佐伯真由』


『過去にSYSTEMから002と識別』


『現在は帰還済』


「こっち」


 少し。


 納得。


 その下。


『帰還時の代償』


『待っていた人物に関する記憶』


『高瀬も桐谷の記憶を失った可能性』


『ナオ帰還時の代償は不明』


 最後。


『名前を呼ぶこと=外部固定』


『本人の自己認識も重要』


「……」


 ペン。


 置く。


 スマートフォン。


 SMS。


「……」


 知らない番号。


 開く。



『002に会いましたね。』



 高瀬。


 眉。


 寄る。



『見てんの?』



 返信。



『今回は、


かなり近くで。』



「……」


 高瀬。


 少し。


 表情。


 変わる。



『どこにいる』



 送信。



 返事。



『その質問を


最後の権利に使いますか?』



「……また」


 高瀬。


 少し笑う。



『使わん』



 返信。



『学習しましたね。』



『うるさい』



 数秒。



『では、


一つだけ忠告します。』



「……」



『002の帰還は、


成功例ではありません。』



 高瀬。



 表情。



 変わる。



『どういう意味』



 返信。



『佐伯真由は、


戻りました。』



 次。



『でも、


帰還処理は


完了していません。』



「……」



 高瀬。



『まだ何かある?』



 返信。



『はい。』



『何』



 少し。



 長い。



『002は、


今も一部が


未登録領域に残っています。』



「……」



 高瀬の。



 指。



 止まる。



 次。



『だから彼女は、


時々、


自分の一部を忘れます。』



「……」



 高瀬。



 佐伯。



 顔。



 浮かぶ。



 そして。



 最後。



『次に彼女が忘れるのは、


自分の名前です。』



「……」



 高瀬。



 立ち上がる。



 すぐ。



 三人のグループ。



『佐伯先生のところ行く』



 送信。



 真壁。



『一人で?』



 藤原。



『今どこですか』



 高瀬。



 一瞬。



 止まる。



 今。



 夜。



 もう学校は。



 閉まっている。



『明日朝一』



 送る。



 真壁。



『俺も行く』



 藤原。



『私も』



「……」



 高瀬。



 少し。



 息を吐く。



「三人で」



 そして。



 同じ頃。



 佐伯真由。



 自宅。



 洗面所。



 鏡。



 自分の顔。



 見ていた。



「……」



 何か。



 違和感。



 手。



 洗面台。



 名札。



 学校から。



 持ち帰った。



 自分の。



 名前。



『佐伯 真由』



「……」



 佐伯。



 それを。



 長く。



 見る。



「……さえき」



 一度。



 口にする。



「まゆ」



 少し。



 間。



「……」



 顔。



 変わる。



「……誰?」



 自分の。



 名前なのに。



 一瞬。



 他人のものに。



 見えた。



 佐伯の。



 呼吸が。



 浅くなる。



 次の瞬間。



 スマートフォン。



 画面。



 勝手に。



 点灯。



━━━━━━━━━━━━


【SYSTEM】


002


帰還維持率


11%


━━━━━━━━━━━━



 佐伯。



 動けない。



━━━━━━━━━━━━


外部固定


0


━━━━━━━━━━━━



「……」



 そして。



 最後。



━━━━━━━━━━━━


再接続まで


残り


1

━━━━━━━━━━━━



 佐伯は。



 自分の名前を。



 もう一度。



 言おうとした。



「……さ」



 出ない。



 たった。



 四文字。



 それが。



 どうしても。



 口から。



 出てこなかった。

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